パンク侍、斬られて候 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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レビュー : 176
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043777037

作品紹介・あらすじ

江戸時代、ある晴天の日、街道沿いの茶店に腰かけていた浪人は、そこにいた、盲目の娘を連れた巡礼の老人を、抜く手も見せずに太刀を振りかざし、ずば、と切り捨てた。居合わせた藩士に理由を問われたその浪人・掛十之進は、かの老人が「腹ふり党」の一員であり、この土地に恐るべき災厄をもたらすに違いないから事前にそれを防止した、と言うのだった…。圧倒的な才能で描かれる諧謔と風刺に満ちた傑作時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 学生時代、高い学費を払っているにもかかわらず講義中に小説ばかり読んでいる友人がいました。

    ある日、いつものように教科書で隠して読み耽っていると、うしろからやってきた教授に見つかってしまいました。

    運悪く気性のはげしい教授だったので、友人はその場に立たされ、ひどい詰問を受けました。

    はじめは黙ってうつむいていたのですが、あまりに執拗な責苦に業を煮やした友人は教授の顔をきっと睨み、

    「あなたのつまらない講義を受けるより、この小説をさいごまで読んだほうがどれだけ有意義かわからない」

    と言って、教室をあとにしました。

    友人はもちろん単位をおとしました。


    私にはそれが良いことか悪いことか、それならはじめから受講しなければいいのにと思いながらも判断をつけかねているのですが、そのときその友人が読んでいたのがこの本だったのです。

    なんだか回りくどくてすいません。

  • パンクロックが自由であるように、文学だって形ばかりにこだわる必要はない

    この本を読んで立ち上がろう!!

  • (ややネタバレあり注意)

    やばかった。僕が彼の本を手に取るのは、彼の適当かつセンスに満ち溢れた文章をボケーッとした表情で味わいたい時で、今回もそういうつもりだったのだけど、ちょっと内容が予想外だった。

    彼の小説でよくあるパターンはダメ男が主人公で、そいつがダメな状況に陥っており、そのダメ状況を脱するためにアイディアを練って行動に移すのだが、いかんせんダメ男なので、ダメ状況を脱するどころかダメが雪だるま式に増えて余計にダメになる、みたいなのが多い。というか僕が読んだことがあるものは全部そう。

    そうなんだけど、今回のは主人公が必ずしもダメじゃなかった。時代小説なのだが、剣術の達人だし、頭もキレる。マヌケなところはあるし、完璧ではないのだけど、彼の他の小説の主人公に比べてダメ臭がしない。

    で、ともかく時代小説なんだけど、実際読んでみたら全然時代小説らしくなくて、カタカナ用語は沢山出てくるわ、しゃべり方が現代語調だし、ストーリーも展開もわけわかんない。

    特に後半のいくさ(?)のシーンからラストにかけて。
    ざっくり言うとB級映画的なスラップスティックていうか、いやスプラッターっていうか、とにかくめちゃくちゃで、ちゃんと完結しないし、わけわかんないんだけど、でもまぁなんかわけわかんなさに説得力があるというか。

    腹振り党の連中は馬鹿げているが、しかしそれに対する藩の役人にだって正義も思想もなにもない。そして茶番な世界がその「茶番性」をむき出しにして崩壊する。なんてバカげた世界と思うかもしれない。しかし、私たちの世界だって、物理的に崩壊しないだけで、本質的にはこんなもんなんではあるまいか?

    だからこそ、一番ラストのろんのセリフ、「こんな世界だからこそ絶対に譲れないものがあるのよ」が説得力を持つ。「ああ、そうかも」ってね。


    ちなみに、一つ解説っぽいこと書いておくと、「この小説自体が、町田康の小説に出てくるダメ主人公が、一発逆転で現状打破のために書いた作品」みたいに考えると、このメチャクチャな展開も、登場人物たちのやたら現代的で社会批評的なセリフなんかが出てくる理由もスッキリするかも。だから、町田康の小説によく出てくるダメ男は、この作品においていっこうに姿を表さないにも関わらず、一貫してこの物語に存在している、なんてことが言えるのかも、ね。


    ※ところで最近、園子温監督の「TOKYO TRIBE」というB級映画を映画館で観まして、その直後ぐらいにこの小説を読んだのだけど、ノリがかなり近いのではないかなと思った。カオス。

  • ピース又吉さんのエッセイにて知った作品。歴史小説的なやつか…と思って読み始めたら、全く違った。想像の斜め上のぶっ飛び設定で繰り広げられるファンタジー時代劇!!

    言葉使いはかたいのに(時代劇だから?)口語は今風の言葉が混じるし、文章の勢いがすごいのに、何故かとても文学的な感じがする。どういう頭脳だと、こんな魅力的な文章が書けるんだろう!ステキ!と素直に思ってしまった。
    好き嫌いが別れるタイプかもしれないけど、私はとても好みで読みやすかった。敬服。

    物語が広がりすぎて、最後にどう着地するのかなと思ってたけど、キレイに収まって不思議と読後感も悪くない。最後に、あー楽しかった!と終われる作品だった。
    これはいい作家さんを知ったなぁ、こういう人を鬼才と言うんかなぁ、と思わせる作家さん。ハマるかハマらないかは読者次第だけど、一読の価値はある作家さんだと思いました。

    --

    江戸時代、ある晴天の日、街道沿いの茶店に腰かけていた浪人は、そこにいた、盲目の娘を連れた巡礼の老人を、抜く手も見せずに太刀を振りかざし、ずば、と切り捨てた。居合わせた藩士に理由を問われたその浪人・掛十之進は、かの老人が「腹ふり党」の一員であり、この土地に恐るべき災厄をもたらすに違いないから事前にそれを防止した、と言うのだった…。圧倒的な才能で描かれる諧謔と風刺に満ちた傑作時代小説。

  • 舞台は江戸時代。
    「腹ふり党」という新興宗教のような組織をめぐる話。

    町田康にかかれば時代小説もパンクになってしまう。
    猿はしゃべるわ超能力者は出てくるわの奇想天外時代劇。

    めちゃくちゃな展開で掻き回した後に待っていた物語のオチにはかなり鳥肌が立った。

    ほとんど意味不明なのになんでこんなに面白いんじゃろ?

  • みんな現実の嘘臭さとばからしさを感じている。だが腹振り党のような虚妄も馬鹿らしい。この本の魅力は、それに気づいている人物達のずっこけであり、作者の文学という嘘に対する笑いである。

  • 今の日本を扱き下ろしまくっている。

  • 町田康初体験は『パンク侍、斬られて候』。
    今から8年前、図書室の書架をざああああっと眺めていた所、この衝撃的な書名と表紙に出会ったのでした。今にして思えば完全なジャケ借りタイトル借り。表紙写真の御仁が町田康その人であるという事すら知らなんだ。

    時代物に擬態した現代小説。
    しかし当人は「擬態」である事を隠す素振が全くない。
    大時代な舞台装置の中で当然のように語られる現代。

    なんだこれは。

    って初読時のショックの凄まじさたるや。
    こんなことがあるのか、こんなものがあったのか、こんなこともアリなのか。
    とひたすら唖然・呆然としながら一気に読了。私の多くはない読書経験において、「読んで呆気にとられる本」と出会えるというのは非常に幸運な事であるよ、と詠嘆したのでした。

    以来すっかり町田康作品の虜となり、他の小説やエッセイなどを読み漁ったのですが、文体だけでなく立ち位置だとか視点だとか鬱屈だとか腹立ちだとか、そういうものの「ブレなさ」がまたつくづく恰好良いのですよね。

  • 現代の「葉隠」で候。
    この本は、れっきとしたビジネス書兼、哲学書兼、警句である。

    今は、上辺だけの華やかさ・肩書きだけには敏感で、自尊心だけが一人歩きする群衆の時代。
    手に入れたいものがあれば猿の手も借り、手に負えないものがあればサクッと切り捨て御免の時代。
    時には人間狂い咲き。時には冷徹に他人を斬って。
    この世界ってば、なんて無意味で虚無的。しかしこんな世の中でも、己の内に絶対に譲れないものがあったら。
    絶対的に、不変に譲れないものが。
    それさえあれば、これからの世の中頑張れそう。
    それを見つける前にまず、今までズバズバと知らぬ間に他人を斬りつけていた人、傷つけていたかも知れない人は一度この本を読んで、斬られた方が宜しいと思う。
    尊公も、貴方も、貴女も、おめぇも。そして、私も。         

    ・・・・ずば。

  • 町田康、中毒性あり。第二次マイブームに突入してしまった。やめられず、どうせ飽きると思いつつ四冊買う。あの文章にハマったらクセになる。この本も、時代劇か、だるいかもと警戒して読み出したら時代劇とは程遠い珍妙ワールドに引き込まれてあっという間に読了。全く時代劇の読みにくさとは無縁の別ジャンルである。笑いの波長が合えばもう可笑しくて、ニヤニヤしてしまう。時についていけないシュールさもこの作品ではよい塩梅。麻薬性のある町田ワールドから帰って来たくなくなる悦楽の読書タイムだった。

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プロフィール

1962年生まれ、大阪府堺市出身。バンド「INU」のボーカリストとして活動する一方、俳優、詩人としても活躍。1996年「くっすん大黒」で小説家デビューし、第7回bunkamuraドゥマゴ文学賞、第19回野間文芸新人賞を同時受賞。2000年「きれぎれ」で第123回芥川賞を受賞以降は、作家としての活動にほぼ専心している。
その他受賞歴として、2001年『土間の四十八滝』で第9回萩原朔太郎賞、2002年「権現の踊り子」で第28回川端康成文学賞、2005年に『告白』で第41回谷崎潤一郎賞、2008年『宿屋めぐり』で第61回野間文芸賞をそれぞれ受賞。
上記文芸作が代表作として評価を得る一方、映画化された『パンク侍、斬られて候』など、メディア化作品が多い。エッセイストとしても定評があり、『猫にかまけて』『スピンク日記』などが人気。

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