つきのふね (角川文庫)

著者 :
制作 : 国分 チエミ 
  • 角川書店
3.57
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本棚登録 : 4880
レビュー : 589
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043791026

作品紹介・あらすじ

あの日、あんなことをしなければ…。心ならずも親友を裏切ってしまった中学生さくら。進路や万引きグループとの確執に悩む孤独な日々で、唯一の心の拠り所だった智さんも、静かに精神を病んでいき-。近所を騒がせる放火事件と級友の売春疑惑。先の見えない青春の闇の中を、一筋の光を求めて疾走する少女を描く、奇跡のような傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • ノストラダムスの大予言とは
    何だったんだろう。

    1999年の自分は
    子供の頃からの
    プロボクサーになるという夢を叶えたばかりでした。

    一種の刷り込みのように
    幼い頃の自分たちの不安感を煽るだけ煽って
    冗談のように消えていった
    世紀の大ボラ(笑)。


    1998年、高校受験を再来年に控えたこの物語の主人公たちも
    ノストラダムスの大予言のせいで
    2000年以降がものすごく朧気で
    未来を夢見ることができないでいる。


    クラスメートから無視されている
    中学二年生の主人公
    鳥井さくら。

    さくらの唯一の親友だった梨利(りり)。

    梨利を好きなラテン系のノリの
    C組の勝田くん。

    さくらの心の拠り所である
    24歳の青年
    戸川智(さとる)。


    人のSOSサインに敏感であるが故に精神を壊し、
    全人類を乗せて飛び立つ宇宙船の設計図を
    狂ったように描き続ける智が
    本当に切ない。


    そして親友だった梨利を裏切った罪悪感に苛まれるさくらや、

    空虚な心を抱え
    薬に溺れる梨利たちの
    思春期だからこその
    純粋さと焦燥感、未来への不安に苦悩する姿が
    読む者を否応なしに
    大人でも子供でもなかったあの頃へと
    引き戻していく。


    凹んだ時
    壊れてしまいそうな時に
    自分をいつものラインに戻してくれる
    「心の平和」のような存在。

    勝田くんにとって
    それは
    さくらと梨利だった。

    自分にとってそれは誰なんやろ。

    どんなけ知識を仕入れて解ったつもりになっても、
    人は人との出会いや
    繋がりの中からしか
    成長できない生き物なのかもしれない。


    物語の終盤
    さくらと勝田くんは
    精神を壊した心優しき青年、智を救うために
    最後の手段に賭けます。

    それにしても
    大人たちが作った
    終わることを望むような
    破滅の予言より、

    バカな勝田くんが
    大切な人たちのために
    希望と再生を込めて書いた
    稚拙な予言に
    同じくバカな自分の心は
    どうしようもなく震えてしまう。


    マイナスな言葉は
    マイナスな人生を連れて
    未来の自分を縛りつける。

    だとしたら未来とは
    自分の意志の力で
    変えていけるものなんじゃないのかな。

    こうありたいと願う心こそが
    それぞれの未来や明日を作っていく。


    自分はそう信じていたいです。

    • まろんさん
      円軌道の外さん、こんにちは!

      この本、森絵都さんのごくごく初期の作品で
      今の筆致にくらべると荒削りなところはたくさんあるのだけれど
      でも、...
      円軌道の外さん、こんにちは!

      この本、森絵都さんのごくごく初期の作品で
      今の筆致にくらべると荒削りなところはたくさんあるのだけれど
      でも、いちばん好きな作品なんです♪
      幼い日の智さんが書いた、たどたどしい手紙。
      その最後の一行に、読むたびにぽろぽろ泣かされます。
      少年少女にも、遥か昔に少年少女時代を過ごした大人たちにも
      もっともっと読んでもらいたい本ですよね!
      2013/06/12
    • 円軌道の外さん

      まろんさん、
      お返事大変遅くなりました!

      自分も春に仕事を変わってから
      体調を崩してばかりで
      なかなかゆっくり
      本を読め...

      まろんさん、
      お返事大変遅くなりました!

      自分も春に仕事を変わってから
      体調を崩してばかりで
      なかなかゆっくり
      本を読めない状況です(^_^;)

      まろんさんも
      かなりお疲れのようだけど
      ムリしないでくださいね。


      森絵都さんの小説は
      カラフルに次いで
      これが二度めだけど、
      思春期の頃の
      不安定な心を持て余した自分を思い出して
      胸が痛くなりました。


      何をもって
      人は人を差別したり
      病気だと決めつけたりするんでしょうね…

      人と違うことこそが
      個性であるし
      ホンマはみんな違っていいんですよね。

      『好き』なことは
      胸張って『好き』って言える
      そんな子供たちを育てていきたいし、

      まろんさんのように
      好きを熱く語れる
      カッコいい大人たちが増えることを
      自分は願ってます(^_^)v

      2013/07/15
  • タイトルの『つきのふね』の’正体’が分かるラスト、嗚咽が漏れた。
    誰もが『つきのふね』を待っているのかもしれない。
    鍵を掛けたガラス戸越しの向こうで。
    救って欲しくて、救いたくて。

    でも誰もが『つきのふね』になれるのかもしれない、とこの小説は言う。
    世界の終わりの、炎と、雷鳴と、雨の中に大切な人がいるのなら。

    作者の‘伝えたい’という思いがガシガシ伝わってくる小説。

    • ひとしさん
      5552さんのレビューを見て面白そうなので読みたいリストに登録させていただきました。
      これって児童書なんですね!
      5552さんのレビューを見て面白そうなので読みたいリストに登録させていただきました。
      これって児童書なんですね!
      2018/05/22
    • 5552さん
      ひとしさん、コメントと読みたいリストへの登録ありがとうございます!
      『つきのふね』良かったです。
      たぶん中高生向けに書かれたヤングアダル...
      ひとしさん、コメントと読みたいリストへの登録ありがとうございます!
      『つきのふね』良かったです。
      たぶん中高生向けに書かれたヤングアダルト小説なのですが、大人の方にも響くものがある小説だと思っています。
      上手い、というより、好きだなあと心から感じる作品でした。
      機会がありましたら是非是非読んでください(^-^)
      2018/05/22
  • 自分の弱さを知っているから、心にずしっときた。自分の弱さを救ってくれる友人もいるから、心にずしっときた。大きな宇宙船になれなくても、「小さくてもとうといもの」になりたいと思った。

  • 人間に疲れ植物になりたがる中学生のさくらにズンっとする始まり。親も教師もあてにならないし、親友梨利とも万引き事件で気まずくなる。捕まった方と逃げた方どちらの方が心の傷が深いのだろう。
    さくらを助けてくれたのは心優しい智さん。だけど彼も心が病んでいて。死ぬことと生きることどっちがいいのか、どっちが楽なのか…どんどん悪くなる智さんを助けようとする事で変わっていくさくら達。
    「この世にはあいまいにおかしい人などいくらでもいるのかもしれない」。みんな少し病んでいる?だからこそ大切な誰かにそばにいて欲しいし、そばにいてあげたいと思う。
    手紙の使い方が上手いなぁ。

  • 中学生の多感な時期。
    友達関係の悩みや、将来に対する不安。
    そういった心の揺れ動きが描きだされていてよかったです。
    バカでおせっかいな勝田君。いい感じです。
    やることバカなんだけど、友達を、相手をどうにかしてあげたいっていう真っ直ぐな気持ちが伝わります。

    最後の、幼い智の手紙はやられました・・

    遠い昔・・中学のころを思い出しました。
    そのころ、どんなことで悩んでたかな・・。きっと時代は違うけど同じようなこと悩んでたのかも。
    ちなみに、ノストラダムス懐かしい。
    小学生のころに、この予言を知り怖くて泣いたのは覚えています。

  • ひとはみんな、弱い。

    この厳しい世界を生きていくこと、とりわけ上手く生きていこうとすることは、時にものすごく残酷で、脆く弱い人間の心に重くのしかかる。

    繊細で壊れやすい、こころ。

    だけど、人は弱さと同時にちゃんと強さも持ってる。

    『人より壊れやすい心に生まれついた人間は、それでも生きていくだけの強さも同時に生まれ持ってるものなんだよ』

    ある意味で狂気に触れる物語だと思った。
    だけど、人間の心の弱さと脆さをここまで繊細に克明に描いたこの作品は、どこかで絶対に私たちに寄り添ってくれる作品だとも思う。

    ひんやりとした背筋をすっとさせる冷たさと、人の心にある暖かさと、両方で包まれるような物語だと感じました。


    『つきのふね』、中高生向けのいわゆる児童書として書かれたそうですが、絶対に大人の方が心にずっしり来ると思う。
    それだけ、現実の厳しさと、人のこころの弱さと脆さも知っているから。

    何もかも嫌になったら、読むべき本かもしれない。

    そして、大切なものをまた信じぬけるかもしれないって、きっと思わせてくれると思う。

  • 最後に添えられた、幼いころの智さんの手紙の

    ぼくわ小さいけどとうといですか。
    ぼくわとうといものですか?

    この2行だけで泣けます!

    直木賞を受賞した「風に舞いあがるビニールシート」等の作品に比べると、
    いろいろ破綻があったり荒削りだったりするけれど、このラスト2行だけで、私にとっては森絵都作品のベスト1です。

  • わたしの人生のバイブルです。小学生のときに読んだので、今読んだらまた違う読み方ができるかも。わたしを本の虫にさせた原因のひとつでもあります(笑)

    子どもには絶対将来読ませたい一冊です。

  • 記録

  • 『生身のあたしを捕まえてほしい。(文中より)』


    きっと、女子はみんな思っているんじゃないかなぁ?
    自分の弱さとか強さとかずるいところ、全部ひっくるめて自分を受け止めてくれる人に出会いたいと。


    これぞ青春なのかな?と、
    中2の女子が主役にしては、ちょっとスリリングなストーリーに危なっかしく微笑ましく、読み進めました。

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プロフィール

森 絵都(もり えと)
1968年、東京都生まれの小説家、翻訳家。早稲田大学第二文学部文学言語系専修卒業。
1990年、『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。2006年、短編集『風に舞いあがるビニールシート』で、第135回直木賞を受賞。
2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞を受賞し、2008年に映画化もされた。2017年『みかづき』で第12回中央公論文芸賞を受賞、2017年本屋大賞2位。ほか、多数の文学賞を受賞している。

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