硫黄島 (角川文庫)

著者 :
制作 : 生頼 範義 
  • 角川書店
3.17
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本棚登録 : 69
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043800018

作品紹介・あらすじ

終戦から六年後のある日の夕方、ひとりの男が新聞社に勤める私のところに訪ねてきた。投降前に硫黄島の岩穴にうずめてきた日記を米軍当局の許可を得て掘り出せることになった。そのことを記事にしてほしいという。私はいくつか疑念を抱きながらも記事にした。ところが、後日、彼は硫黄島に渡り、現地で自殺してしまう。男を死に向かわせたものは何だったのか。私は男の足跡を辿りはじめる。昭和文学史に名を残す不朽の戦争文学。

感想・レビュー・書評

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  • 37回(1957年上半期)芥川賞受賞作。この時点では、すでに第2次世界大戦の終了後12年を経ているのだが、未だに戦争の後遺症が色濃く残っていたことにまず驚く。戦争を清算してしまうことができない人たちがいたのだ。本編の主人公、片桐はそうした1人で、今で言えば典型的なPTSDを抱えた人物だ。彼の一生は、戦争、なかんずく硫黄島での強烈な体験によって決せられてしまったのだから。一方、小説の作法は、新聞記者として物書きとしてのキャリアをスタートさせた菊村らしく、取材記を語るスタイル。それがかえって斬新さとなった。
     なお、解説によれば、1998年時点での「文芸春秋」のアンケートでは、過去60数年間の芥川賞作品(約120作)の第14位だったらしいが、今では読者はずいぶん少なくなったようだ。

  • 戦争映画や文学で、一時期多く取り上げられた
    「硫黄島」
    どれもまだ読んでおりませんでしたので読んでみた。

    短編がいくつか入っているうちの最初の作品。

    島での悲惨な戦いがメインでは無い。

    戦の後の復員兵
    (帰ってきたのに兵士扱いみたいな呼び名…復員兵)
    が、島に忘れ物をしてきた。
    読むほどに、情景が暗い。
    古い映画のフィルムを、目を凝らして見ているような
    フラッシュバックする画面を見つめるような
    そんな風景が浮かびます。

    短いけど、暗く寂しい話。
    戦争などしようとする人の気が知れない。

  • 「硫黄島」
    戦争の大義を固く信じていたのに、彼は負け戦を生き延びてしまった
    そのことに耐えられなかった
    戦地での体験はそれほど強烈なフラッシュバックとして甦るのだろうか
    …といったアプレゲールものである
    虚言を強引にセンチメンタリズムへ落とし込んだ印象も強いのだが
    昭和32年の芥川賞を受賞している

    「しかばね衛兵」
    戦友なんて言ってみても結局
    誰だって一番かわいいのは我が身に決まっている
    それを思いつつ戦友の死体を前にしたとき、心が傷つく兵たちの話

    「奴隷たち」
    戦争が終わって、ソ連の捕虜になった日本兵たちの話
    その連帯意識は、鉄壁の収容体制が仕掛ける罠に打ち砕かれ
    やがて真っ赤に塗り替えられるのだろう

    「きれいな手」
    フィリピンに赴任した伝令兵
    だれも殺していない上にカトリックの洗礼を受けている自分は
    生き延びる運命にある、そう信じていた

    「ある戦いの手記」
    軍隊の上下関係に乗じて己のサディスティックな性向を満たす上官と
    それに対して抗えなさを感じつつも逃亡を試みる下士官
    戦闘よりも、軍隊の外に出ることのほうが
    彼らにはずっと恐ろしい

    「不法所持」
    刑事サスペンスもの
    戦中も国内の治安に携わってきたであろう刑事部長には
    友人らしい友人がなく
    戦友どうしでかばいあう心理も理解できない

  • 短編小説。
    硫黄島から生きて帰ってきた男が硫黄島で死ぬさまを描く

  • P309
    間接的に戦争の背景を題材にしているが、言い回し等多少古さを感じ、物語に入り込むのに時間がかかる。

  • 全体を通して戦争を扱った短編集。
    表題作「硫黄島」は芥川賞受賞作だそうです。
    どの話も、誰が誰を殺したかと云う事に終始拘り
    葛藤し、破滅する主人公を描くパターンです。
    …と描くとゲンナリ気味ですが、
    語弊を恐れず云えばそれが面白いです。
    鳥瞰すれば、誰が誰を、では無く、
    みんな戦争と云う現象により殺し殺されて行ったのだ、
    と云う様にも読めます。
    思想的に苦手な人は苦手な書き方かもしれませんが、
    物凄く嵌りました。
    個人的には「奴隷たち」「ある戦いの手記」が好きです。
    (井田中尉は桐島が好きだったんじゃないかとか思うと…笑)

  • 解説で三好徹さん(読売新聞社での後輩)がディスってる、「生きるか死ぬともつかぬ海戦にでたこともない某作家は、海軍を讃美する文章を書きつらねる」センセイって誰? 文中引き合いに出している個人的に知遇を得ていた大岡昇平、古山高麗雄、城山三郎は除外。まさか、佐和子さんの父君じゃないだろうな…と思ってウィキを見たら違うっぽくて安心した。(断言は出来ないが、海軍に在籍して従軍経験はあるが阿川弘之さんの故郷広島市は原爆を落とされているので海軍讃美はせんだろう)。

    菊村到さんというと二時間ドラマ向けな色っぽいサスペンスの印象が強かったのだが、最初期には戦争体験を扱った重い作品が多いのですね。この文庫は芥川賞受賞作の表題作と文學界新人賞「不法所持」(第37回芥川賞に「硫黄島」とダブルノミネート)を含む短編集だが、イーストウッドの例の映画が2006年公開、この文庫は2005年初版。とりあえず、「芥川賞全集」以外での初期短編の再発はありがたい(表題作以外はこちらでしか今気軽に読めないわけだから)。「硫黄島」「不法所持」が表題作の単行本があるらしく、本書収録作の初出が1957年から1958年に集中しているからまだまだこの頃の作品はあるのかもしれない。ちょっと今から探すのは大変そうだなあ。

  • 短篇集。ひたすら、暗い....鬱。

    文学的には中身が高尚だとか、
    レベルが高いとかそうなのかもしれないが
    読んでて暗くなるのはどーも好かん。

  • 戦争を感じさせる作品。
    自分は経験したことはないが、臨場感が伝わってきた。

  • 第37回芥川賞。
    硫黄島で終戦を迎えた復員兵の話。
    復員兵・片桐は硫黄島で投身自殺した。生前出逢ったことのある新聞記者である「私」は、片桐の同僚や職場の後輩に会って、片桐が自殺した原因を知ろうとする。
    片桐には、戦地で人を殺してしまったという自責の念が常にあった。誰も片桐を責めることはないのだが、心の傷は相当深い。終戦を変わった角度から描いた作品。

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