生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)

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  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043803026

作品紹介・あらすじ

彫刻家・川島伊作が病死した。彼が倒れる直前に完成させた愛娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。江知佳の身を案じた叔父の川島敦志は、法月綸太郎に調査を依頼するが。

感想・レビュー・書評

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  • 「このミス」1位を受賞した本格ミステリ大賞受賞作。
    でも、ちょっといまいち。長い..
    いわゆる謎解き探偵小説。しかし、見せ場や盛り上がりシーンもなく、エンターテイメント性には欠ける物語。
    主人公の探偵の人間性もいまいち好きになれません。また登場人物のキャラもいまいち。

    ストーリとしては、
    有名彫刻家が病死直前に完成させた、娘をモデルとした石膏像。
    しかし、その石膏像の首が何者かに切断され、持ち去られる事件が発生。
    持ちだした人物は誰か?
    その目的は?
    娘への殺人予告なのか?
    さらに、その彫刻家を売り出そうとしていたキュレータの怪しい行動。
    娘の身を案じた彫刻家の弟は主人公の法月に調査を依頼します。
    法月はきれっきれの探偵というわけでもないですが、洞察力は素晴らしく、いかにもといった観察眼を要所要所に見せてくれます。しかし、人間性溢れるのか、あちこち抜けています。それがちょっとしっくりきません(笑)。
    どうせなら、完璧な探偵役になってもらいたいのですが、あとがきを読むと意図的にそのような人物像にしたとの事。

    そして、結局娘は殺されてしまいます。
    娘を殺したのは誰なのか?
    刑事事件となった本件ですが、主人公の父親が警視ということで、この事件の捜査を行う事に。
    親子で事件の真相に迫りますが、父親や刑事は民間人に捜査内容をべらべらしゃべりすぎでは?

    明らかになる事件の真相、犯人。
    それまでの伏線が回収されて、そういうことか、となるわけですが、いかんせん途中が長くて、だれてしまい、やられた!とかいった感覚もなく、へーそうなのね、で終わってしまいます。登場人物の人間性が掘り下げられているわけでもなく、人間の業が語られるわけでもなく、淡々とネタを解説される感じ。

    真相にはいろいろ凝ったネタが散りばめられていて、謎解き大好きなミステリーファンには良いのでしょうが、自分が求めるものとはちょっと違う。
    そんな凝ったネタは面倒くさい(笑)

    ということで、本格ミステリ好きな方にはお勧め。

  • 再読。最後の…がこれ見よがしで鼻につく。でも長い割には読みやすかった。最後のインタビューで、作者が意図したい事はわかったが、なんかもう少し他の書き方があったのでは?と思った。

  • 最初は事件は起こらず美術の物語が進む。
    ドロドロ。
    偶発的な部分が多く、ファンシーだったが、
    楽しめた。

  • 長かった!でもとてつもなくおもしろかった!
    ある彫刻家が自分の娘をモデルした彫像を作った。彫刻家は末期癌で彫像を完成した直後倒れて亡くなる。
    完成作品を見た者は誰もなく、葬儀後に確認すると彫像の首が切り取られてなくなっていた…
    ここから怒涛の展開。彫刻家の娘、娘のストーカー、娘の実母とその再婚相手、美術評論家など入り乱れて色んな伏線がたくさん出てきて飽きない。最後に一気に回収され、まとめ方にうーんと唸るほど面白い☆
    もっと世間に読まれて良い作品の1つだと個人的には思いました❗️

  • がんで亡くなった著名彫刻家、川島伊作のアトリエに残されていた遺作には、首がなかった。何者かが侵入し、首を切り落として持ちさっとと考えられる。そうした中、その彫刻のモデルとなった川島の娘が行方不明になる。素人探偵法月綸太郎は、その謎を明らかにすることができるのか。

    主人公を作家本人にするタイプのミステリである。そしてまた、長い。前半では彫刻の首と無くなった彫刻家の生前の姿を、中盤からは行方不明となった娘の話になるのだが、全てにおいてあーでもない、こーかもしれないの可能性の話の連続で、特に前半部は事件なのかも不明なため、かったるい。

    この作家が、自分の名前で事件を明らかにする(解決するとは言ってない)というスタイルを取るのだが、とぼけたキャラクターなのか、それとも超敏腕探偵なのかがよくわからないままだったのもあり、全体にキャラクターの立ち位置がわかりにくかった。前半部の彫刻の首の話は、作者の独りよがりに感じる。

    最後の解決部分も、無くても良かったんじゃない?というような後付の理由だったりして、長いなーと思わせられていたのが辛かったかな。

    文章としてはちゃんと読めるし、展開も悪いものではない。なにかが足りない。なにかが。

  • サスペンスドラマじみたドロドロの因縁とインテリ向けな蘊蓄の連続にローギアで読み進めるも
    真ん中辺りでやっと投下されたグロテスクな起爆剤で事態は一気に加速する。
    因縁と蘊蓄が一つの場所に堕ちてゆく。
    切断された石膏の首。
    狙われた女の不審な行動。
    石膏の眼差しが語る悲劇の真相。

  • ずっと読みたかった「このミス」1位だった法月綸太郎シリーズ

    連続殺人とか、派手なトリックとか、そう言うのは無かったのですけど、納得の本格だったのです。
    彫刻なんて、フツーの読者はサッパリだけど、分かるようにちゃんと大事な所を解説と言うか、法月探偵と共に「ふーん。なるほど」と言う位には掴めて良いのですよね
    だから、「あっと驚く展開」が予想以上に鳥肌だったのです。

    しーなの好きな法月親子の関係と言うか、お母さんの事とかもチラッと出て来て、今後の展開や何かの事件に関係してくるのでは……?とちょっとwkwkしてしまったのです。
    闇は闇なのでしたが。

    緻密な伏線……とゆーのが感想には必ず出てくるのでは?と思う位あれもこれも後々「ああー……!」と頷いたり、悔しかったり。
    よくよく考えてみると、要らない設定とかもあるのですけど(例えば、1だけで良くない?2とか3とかそれ以降とか……要る?)躓いたり迷ったりする法月探偵は好感が持てるのです。

    巻末のインタビューにもあったのですけど、完全無欠の名探偵はやっぱりカッコイイし、江神さんも鳴海雄一郎(?)も大好きだけど、やっぱり間違ったり後悔したりしながらの法月探偵も好きなのです
    探偵が一人でワトソン役が居ない場合は、多重推理が成り立ちにくい分けだから、法月探偵みたいな読者と一緒に間違って行く探偵になるのでしょうか。

    そう言う面から見ても、探偵と読者とストーリーがちゃんと一緒に進んで行くのですよね。
    つまりそれって、読みやすい?のでしょうか。多分そういう事なのですよね。

    読みやすい。理解しやすい。突然名探偵が思い付くトンデモ推理に着いていけない……とゆー事態に陥りにくいのですよね。

    解決や結末は「鮮やかー!」と言うよりもシリアスな展開で余韻もしんみり。
    他の法月探偵シリーズを読みたいな……読み返したいな……と思ったのです。
    次にまた未読のものを見かけたら、迷わず買ってしまいそうなのでした。

  • 久しぶりに本格推理ものを読んだ。以前から気になっていた法月綸太郎シリーズです。
    この筆者の作品は僕好みでした。まず登場する探偵が、ホームズや相棒の右京さんみたいなぶっ飛んだ頭脳の持ち主ではなく、割と右往左往しちゃうタイプの探偵。
    しかし最後の結論に至る論理の構成は完璧で緻密。
    基本的に読者目線で話が進むので、探偵が立てた仮説が」次から次へと証言によって覆される様は眩暈がしそうです。そういう展開が好きな読者には最良の一冊となるでしょう。

  • 最後は、お見事っ!の一言。
    途中は、難しいのとややこしいのとで読むペースが落ちてしまいましたが、随所気になっていた言葉が伏線でラストに綺麗に回収されていくのと、ややこしくって首を傾げながら読んでいた場面を分かりやすく解説してくれたことで、スッキリしました。

    全体としては、やはり難しく、理解するのが精一杯で二転三転する犯人像に驚くことよりもその都度納得してしまい、物語を読んだというよりも物語に読まされた感が強い作品ではありました。が、ミステリー小説としては完成度はかなり高いと言えると思います。

  • ノックス・マシンが「このミス2013」1位になったため、書店に行くと必ずと言っていいほど過去の授賞作である本作が隣においてあります。
    いい機会なので読んでみちゃいましょう。

    かの有名な法月綸太郎シリーズ。
    彫刻家である川島伊作が病死する直前に完成させた渾身の作品。
    娘である江知佳がモデルとなったその石膏像は、伊作の代表作から続く久々の連作だとして彫刻界で話題になっていた。
    しかし、石膏像の頭部が何者かによって切断され、持ち去られてしまう。
    不気味に思った叔父敦志が、かねてからの知り合いである法月綸太郎に事件の真相究明を依頼するが、必死の捜査もむなしく江知佳は首から上だけの姿で発見される。
    一体彼女を殺害したのは誰なのか。
    そして綸太郎は、川島伊作の周囲を取り囲む複雑な人間模様の謎を解き明かすことができるのか。

    あらすじを読んでわかるとおり、かなり序盤から不穏な空気が漂い始めています。
    なんたって首を切られた像ですからね。人をモチーフにしているオブジェに加えられる人為的な破壊活動は不気味以外の何物でもない。
    そうして予想どおり事件は起こってしまい、名探偵は事件の真相を追いかけます。
    本作ですばらしいのは、最も衝撃的な要素を見出すためのヒントがきちんと用意されていることだと思います。
    しかもかなり堂々と。
    作者のこのフェアな姿勢と真っ向から向き合って推理してやるぜ!という方、是非読んでみてください。

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著者プロフィール

1964年島根県松江市生まれ。京都大学法学部卒業。88年『密閉教室』でデビュー。02年「都市伝説パズル」で第55回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。05年『生首に聞いてみろ』が第5回本格ミステリ大賞を受賞し、「このミステリーがすごい! 2005年版」で国内編第1位に選ばれる。2013年『ノックス・マシン』が「このミステリーがすごい! 2014年版」「ミステリが読みたい! 2014年版」で国内編第1位に選ばれる。

「2023年 『赤い部屋異聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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