- Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043806010
感想・レビュー・書評
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短編四作品。四作品目の「あせごのまん」が一番好みかも。
昔話を聞いているような..ただ方言がわかりにくくて読むのが大変だった。
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作品解説(カバーより):クリクリとよく動く尻に目を射られ、そっと後をつけた女は、同級生服部ヒロシの姉、サトさんだった。ヒロシなら、すぐ帰ってくるよ――。風呂に入っていけと勧められた鍵和田の見たものは、緑色の張りぼての風呂桶。そこに裸のサトさんが入ってきて……。
第12回 日本ホラー小説大賞 短編賞受賞作
表題の他「浅水瀬」「克美さんがいる」「あせごのまん」を含む計四作。たしかに斬新さはあるものの、ホラー小説大賞として読んだ場合、むしろ、怪談じみた「浅水瀬」や、人間の怖さを描いた「克美さんがいる」に恐怖を感じる。「あせごのまん」は日本昔話を読んでいるようで面白いが、ホラーというジャンルではないだろう。
それぞれ短編としてまとまってはいるが、後一押し欲しいところ。 -
2015年、21冊目も完全初読みの作家、あせごのまん。
2005年、第12回日本ホラー小説大賞短編賞受賞の表題作含む短編を四編収録。ちなみに、この年の大賞は恒川光太郎の名作『夜市』。
収録順に簡単に触れていきましょう。
「余は如何にして服部ヒロシとなりしか」
失恋し、仕事も失った鍵和田。前を行く女性の尻に目を射られ、その後をつけていくと……。
ホラーというより、生理的嫌悪感を伴う、不条理モノと言った感覚。正直、あまり好みではなかった。
「浅水瀬」
米田健一は大学院受験の初日試験を終え、バイクで帰路につく。バイクをトバしていると……。
ホラーでは比較的ありがち、オーソドックスな中身。ソレも含め、オチの予想は早い段階でついてしまった。主人公の性格が自己中心的で、歪んでるのも後々効いてくる。
「克美さんがいる」
家族の死。保険の証書や銀行の預金通帳を探していると1冊のノートを発見するのだが……。
ミステリー・ホラー的な感じ。コレも特に目新しさは感じなかった。もぅ一、二捻り欲しいかな。
「あせごのまん」
阿波と土佐の境、阿瀬郷という土地。ソコの炭焼の家に子どもが生まれる。名は「まん」。「まん」は成長すると……。
民話的な話が土地言葉で語られているのが新鮮。イイ感じなんだけど、ラストが弱い気がする。
好みは「あせごのまん」「浅水瀬」「克美さんがいる」「余は如何にして~」の順かな……。★2.5~2.8で、甘めの★★★☆☆評価。 -
2014.12.2読了
表題が、第12回日本ホラー大賞短編賞受賞作。
受賞作をはじめ、どれもこれも、既視感が拭えなかった。
表題作は、つげ義春の「ゲンセンカン主人」を彷彿とさせる。星新一か筒井康隆にも、役割のみ決まっている家に、たまたま立ち寄った人が役割を務める話があった。世に奇妙でもあった気がするし、川上弘美の「春立つ」だってモチーフは同じだ。ただ、お湯の張っていない埃だらけの湯舟に浸かる狂気は強烈に印象に残る。
他に、3作品を収録。
浅水瀬 -せんすいせ-
事故にあった若者が死を迎えるまで。
克美さんがいる
入れ替わり。文章が見え透いている。
あせごのまん
高知弁が味わい深い他はこれといって印象に残らない昔話的なお伽話。
総じて、期待をいい意味で裏切ってくれない、凡百の作品。 -
第12回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品。
identityって必要だなと思った。
結局エリクソンの正しさが証明されたってわけだ。
もし自分が理解できないからといって
文句を垂れていはいけない。
あなたは「自分」って何か
わかるのかい。
「自分」を本当に理解できたのならば
あなたは
病院にいきなさい。 -
シュールなことこの上ない。それほどぐろいわけではないけどえぐい。それほどえろい訳ではないのにえろい。独特の世界観でした。表題作が一番好き。いくら美人でも尾行をしてはいけませんという話。
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短編4作品の中、わたしのベスト1は『浅水瀬』だろう、この話には本物が持つ真の怖さがある。無理に怖がらせたり、設定が突飛じゃないのが良い。背筋が寒くなる感じは日本ならではの恐怖なのだ。このお話を読んで、過剰な驚かしや、苦痛をともなう恐怖は似非恐怖なのだあらためて思う。
表題の『余は如何にして服部ヒロシとなりしか』は、ヒロシの姉、サトさんがとてもエロい。彼女の尻に魅せられて30男が我を見失い、ふらふらとその後を付いていく様は、まるで食虫植物の蜜に誘われて命を落とす昆虫の姿を思わせる。 -
(収録作品)余は如何にして服部ヒロシとなりしか(第12回日本ホラー小説大賞短編賞)/浅水瀬/克美さんがいる/あせごのまん
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何とも言いがたい話でしたよ。
頑張って感想です。
簡単な粗筋。
「僕」がそっと後をつけていた女性は、同級生の服部ヒロシのお姉さんだった。
誘われてその服部家へ向かうと、そこには見覚えのある緑色の風呂桶があった。
彼女に勧められるがままにその風呂に入ると――。
正直、何と言ったらいいのか分かりません。
面白い……の、だとは、思います。
現実と空想の狭間が分からなくなる話。
不思議な雰囲気と妙なリアルさがひしひしと伝わってくるんですよね。
でも毎度の話、期待しすぎたのがいけなかったのだと思う。笑
ホラー大賞の選評で林真理子氏が「馬鹿馬鹿しい面白さ」って表現しているんですよ。
だから完璧にダークコメディみたいなのを想像してました。笑
いや、見方によってはコメディにもなるのだろうけど。
なんだか……ラストが軽かったんですよね。
これは短編集なのだが、ほぼ全てにおいて最後の最後で気が抜けるというか。
初めての作家様なので少し見解を。
例えるならば、現代の話なのに昔話だとか語り部の雰囲気を出す作家様だと思います。
結構なエンターテイナー。
垢抜けたらそれこそ直木賞とか取りそうだなーといった感じです。
私的には『花まんま』を濃密にしたイメージ。
『花まんま』が醤油なら、『余は如何に~』がソース。笑
でももう一歩踏み込んでくれたら良かったのに……。
まぁオイラはあまり……といった感じだったが、結構気に入る人もいるんじゃないだろうか。
オイラ的には同時収録の『克美さんがいる』が好きでした。
あの嫌悪感が最高です。
ねちねちと根に持ち続ける女の執念と自侭意識がもう面白くて面白くて(悪趣味)。
でもやっぱり最後がなぁ……軽いんです。
ちょっと次回に期待したい作家様でした。
(そしてかなり毒舌でスイマセン;) -
うわー、何というか……めちゃめちゃシュール! なかなかにわけわかんなくて、馬鹿馬鹿しくて、むしろ要素としては笑えるのに妙に怖い。タイトルからしてこのラストも予想はつくけど、怖さが後を引くなあ。怪作、という感じ。
「克美さんがいる」がかなり好きな作品。これには……やられたなあ。これも表題作に似て、自らの存在感が揺らぐような恐怖の作品。こっちの方がリアルで切実。