- 角川書店 (2009年3月25日発売)
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感想 : 38件
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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784043808038
作品紹介・あらすじ
幼稚園のときに事故で家族を亡くした知世子。孤独を抱え「チョコリエッタ」という虚構の名前にくるまり逃避していた彼女に、映画研究会の先輩・正岡はカメラを向けて……こわばった心がときほぐされる物語。
感想・レビュー・書評
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新入部員が集まらず、廃部になりかけている映画研究部に所属している、知世子という女子高生が主人公です。知世子は幼いころ、両親と出掛けたドライブ旅行で事故にあい、母親を失ってしまいます。亡くなった母親の忘れ形見が、ジュリエッタと名づけられた犬。知世子とジュリエッタは姉妹のように、ずっと一緒に過ごしてきました。その愛犬ジュリエッタも歳老いて亡くなり、知世子は学校の進路調査のアンケートに、将来の希望を「犬になりたい」と書きます。心に暗い影を持ち、どちらかというと世界を否定して生きてきた知世子にとって、本当に心を許し合えたのはジュリエッタだけだったから。
映画好きの方はすでにお気づきかもしれませんが、犬の名は、往年の映画女優ジュリエッタ・マシーナから取られたものです。仔犬の瞳がクリクリと愛らしく、ジュリエッタ・マシーナの目にそっくりだったから。名前をつけたのは、事故で亡くなった母親でした。
物語の中にはジュリエッタ・マシーナが主演した、フェデリコ・フェリーニ監督の名作〝道〟と、ニーノ・ロータの曲がしばしば出てきます。〝道〟はボクも感銘を受けた大好きな映画なので、それだけで嬉しくなってしまいました。
この小説は知世子の夏休みと、その前後の日常が静かに綴られているだけで、大きな起伏があるわけではありません。けれど、たまらなく良いのです。青春時代を映画と共に過ごした方なら、きっと分かっていただけるのではないでしょうか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なぜこんなにひきつけられてしまうのか。
主人公が進路調査の紙に、なぜ犬になりたいと書いてしまうのか、なぜ死んでしまいたい殺してほしいと思ってしまうのか。
喪失感や虚しさでいっぱいの心と、その心にあかりが灯り、希望が見える出来事に、涙してしまう。
読み終わってしまうことが残念でたまらなかった。 -
お父さんはきっと再婚するだろうし
霧湖ちゃんも結婚して出て行くんだろうな
映画を観た後、知世子は先輩に連絡しただろうか
チョコリエッタが形に残せてよかったね
映画では先輩を菅田将暉が演じてるそうでそっちも観てみたいと思った -
面白かった! 正岡正宗が持っているハサミを「ドイツ製のな」と、聞いてもないのに自慢げに言ってて、こじらせ具合が良かった!
付箋を貼った箇所が、巻末の解説で野中さんも好きなシーンとしてあげられていて嬉しかった。 -
映画みたいな小説。
山に置いてきてしまった自分をチョコリエッタとして迎えに行ったのかな。
犬であるチョコリエッタは先輩がつくったフィルムの中で生きているから、知世子ちゃんはまた自分としてめげずに生きていけば良いよ。
「記憶ってさ、もしかして、選べないんじゃないかな?」
私は、記憶は全部脳みそに記録されていると思う。両親とジュリエッタとのあまい生活も、別れてからの生活も。でも取り出せる記憶は選べないような気がするな。 -
西加奈子『円卓』のこっこからの、チョコリエッタ。
個性的というか、偏屈で凶暴な何かを心に住まわせている少女の小説を、偶然にも立て続きに読むことになった。
幼時、家族旅行での車で事故を起こし、母を失った知世子。
それから父親との関係もうまくいかない。
事故以来母親代わりを務めてくれた従妹の霧湖とも、愛犬のジュリエッタが死んで以来、うまくいかない。
霧湖は自分のために就職もできなかった。
今、霧湖は結婚を考え始めている。
知世子は成長につれ霧湖からも心が離れつつあるが、いなくなるのも受け入れられない。
知世子の高2の夏、映画研究会の先輩、正岡正宗のバイクで連れまわされ、あちこちで映像を撮ることになる。
二人とも、感受性は鋭いけれど、表現がたどたどしい。
勿論、この二人が恋愛関係になることもない。
文体は明晰。
河原で行きずりの子どもたちとハーモニカを吹く場面や、親戚の淑子と過ごす秋の海辺など、映像的な美しさがある。
もうちょっと知世子に寄り添えたなら、楽しめたのかもしれない。
近日中に、大島さんのトークライブを視聴する機会がありそうだ。
それまでに『渦』を読んでみたい。 -
久々の大島さん。
大きな喪失感を抱えているままであろう十代の知代子とは全く年代も状況も違っていても彼女の痛みや虚しさ、寂しさがよく伝わってきました。
それでいて風景描写含めてノスタルジックで温かさの感じる文体に切ないような、ホロリとするような気持ちになった。
個性的な登場人物たちも作品をよりよくしていました。 -
これ、映画も好きなんだけれど本もよかった。
ひと夏の話。 -
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大事な家族を突然亡くした経験は私にはないから、彼女の気持ちがわかるとは言わない。それにしたって不機嫌な時間が長すぎるでしょと思ってしまうくらい、彼女はずっと不機嫌。思春期を迎え、それまで母親代わりだったまだ若い叔母のことも疎ましく思い、唯一心を通い合わせていると感じていた飼い犬も喪って悶々。前向きに生きることに努める様子もなかった彼女だけど、無意識のうちに気持ちの整理をつけてゆく。
記憶は選べない。でも、いつか思い出す瞬間って、最高でなくともささやかな幸せを感じた瞬間じゃないだろうかと思うのです。よかった。 -
すごくおおざっぱに言ってしまえば,不機嫌な10代のお話かな.
母親の死を引きずっている知世子は,母親とのつながりの思い出をいっぱい残していた(かつ,一緒に育ってきた)愛犬のジュリエッタを亡くし,自分だけが取り残されていくような喪失感を感じている.
そんな彼女が,人を殺したい衝動を持っていた正岡先輩と再会し,彼が撮影するビデオカメラの前に立つようになる.
10代の頃のいらだちとそれからを鮮やかに切り取って描いた秀作. -
主人公の宮永知世子は高校2年生。本当の名前はチョコリエッタ(うそ)。進路指導調査に「犬になりたい」と書いて呼び出しをくらいます。チョコリエッタが幼稚園の時の夏休みに家族で山に遊びに行く途中に事故に遭い、お母さんが亡くなり、チョコリエッタもしばらく入院し、小学校は2ヶ月遅れで入学します。事故のあった時にお父さんの妹の霧湖ちゃんが飼い犬のジュリエッタのお世話で留守番をしていたのですが、そのままジュリエッタとチョコリエッタのお世話をしています。そんなチョコリエッタの日常と夏休みのお話です。
全体的によくわからないのかわかるのか、わからないお話ですが、イタリア映画の情景を思いながら、緩やかにチョコリエッタの心に入り込んでいきました。 -
チョコリエッタ。
呟くだけでなんだか自分の時間も進むようだ。
チョコリエッタ。
何度でも口にしたい。
チョコリエッタ。 -
受験期の焦った空気に焦るだとか、自分でないものになりたいとか10代の若い頃特有の悩みに
「分かるけど…う~ん。。」という感想しか持てず。
が、巻末野中柊氏の解説を読んで
自分は真剣にこの本に向き合っていなかった、表面的でしか捉えていなかった、と反省。
イタリア映画、観てみようかな。。。 -
チョコリエッタ 私は犬。
夏休みへの ノスタルジー
ジェルソミーナの音楽と、先輩と、おじいちゃんの喫茶店。
現実の世界にいる、霧湖ちゃん。 -
特に何か具体的な目的があるわけでもなく、日々をそれなりに過ごしていく、過ごし方。高校生の。
知らないけれど知っている。見た目は重ならないけれど、中身は重なるような気がして。
難しい。
150106 -
今の気分にどんぴしゃり!ときました。
喪失、そして再生への糸口、何だかほっとしました -
どきっとする文がいくつか。
これは高校生の時に読みたかったような気もするけど、丁度その時でもなく、高校生の自分がはっきり思い出せないくらい年をとった後でもなく、今読んで正解だったのかもしれないな。 -
宮永知世子。チョコリエッタ。
幼い頃、事故で母を亡くし、父をある意味で失い、ジュリエッタという犬を相手に過ごす。
心の成長は止めたいのに、止まらない。
そんな彼女の母代りとなった父の妹霧湖がどこにも行かないことだけをひたすら願い、願いながらも反抗してしまうどっちつかずの知世子がよく分かる。
自分を外側から眺めることは、なかなかに難しい。
「犬になりたい」と望むチョコリエッタに、ひとつの出会いが示される。
外側から見た自分が、どのような進展をもたらすのだろうか。ふらふらと危なげでかわいい話だった。
著者プロフィール
大島真寿美の作品
