キップをなくして (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 657
レビュー : 64
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043820030

作品紹介・あらすじ

駅から出ようとしたイタルは、キップがないことに気が付いた。キップがない! 「キップをなくしたら、駅から出られないんだよ」。女の子に連れられて、東京駅の地下で暮らすことになったイタルは。

感想・レビュー・書評

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  • ある初夏の朝、電車の切符をなくしてしまった少年が「駅の子」になる話。

    読書感想文が書きやすそう。

    切符をなくしたら駅から出られない、なんて…まさかホラー展開があるのでは、でも池澤さんだしそれはないかな、とそわそわしつつ読みました。

    それにしても、なれるものなら「駅の子」になってみたい。電車乗り放題だし、食堂も売店での買い物もタダだし。もちろん、ずっとじゃなくて、ほんのちょっと数週間だけ。

    ミンちゃんがご飯を食べない理由。タカギタミオの苛立ち。フクシマケンの現実の視点。

    切符をなくしても駅から出られるとわかったとき、状況に流されるままじゃなく、自分で選択して行動できる、とわかったとき、子どもたちはどうするのか。

    世の中には、変えることができる決まりと、変えられない摂理がある。

    「決まっている」と思っていることは、実はそうではないかもしれない。

    疑ったり迷ったり、「自分はどうしたいか」を考えて行動することで、変えることができる決まりもある。そんなことを考えた。

  • キップをなくした子は東京駅で「駅の子」になる、
    そんなファンタジックな舞台設定だけど
    丁寧な描写と、(解説で知りましたが)実は
    綿密に計算された時代背景の上になる物語。

    「単なる子ども向けファンタジーでしょ?」と
    一蹴できない、
    読者自身がそのちょっと不思議な世界に
    迷い込んだように感じさせてくれるのは、
    そこから来ているのかもしれないな。

    柔らかく爽やかなストーリーと、
    子ども達のしたたかさ、賢さに素直に感動する、
    メッセージがすっと入ってくる、
    とても好きな作品でした。

    実は「南の島のティオ」を
    合唱曲として歌ったことがあって、
    池澤夏樹さんには少し馴染みがあったんだけど、
    小説読んだのは初めてだった。

    合唱曲のティオはかなり不思議な世界観で、
    それはそれで好きだったんだけど
    こんな優しくて丁寧な物語を書く人だとは。
    ティオも小説で読んでみたいな。

    メインテーマとして死生観が語られるんだけど、
    人の心は小さな心の集まりで、
    亡くなった人の小さな心はだんだん解散して
    宇宙の大きな心に入る。
    そしてまた仲間を募って新しい命に入る、
    というのは、個人的にはとても腑に落ちた。

    “楽しいことも苦しいことも含めて、欲ばって、
    与えられた機会を隅から隅まで使って、
    生きられたか”
    平坦な生活を無為に過ごしてないで、
    もっと貪欲に生きよう。

    ちなみに、ジブリのプロデューサー鈴木敏夫さんも
    ジブリでアニメ映画にしたい「好きな本」だそうで、
    読んで納得。
    舞台、風景、子ども達の個性、どこをとっても
    ジブリ映画になったら絶対いい。是非見たい。

  • 素晴らしいの一言。
    池澤さん、こういうのも書くんだ。
    じんときた。静かに静かに、心に響いた。ほんのり温かく、ほんのり寂しい気持ちになった。

  • 「キップをなくしたら駅から出られない。駅で暮らす。みんな一緒。」キップを亡くした小学校6年生の遠山至のまごつく様子を読みながら、似たような小説を読んだなと思いました。でも、この小説のテーマは全く違いました。池澤夏樹 著「キップをなくして」、2005.7発行。3部構成の気がします。駅の子として暮らす(安全のために働く)少年少女、線路に落ちた子供を助け殉職した鉄道員(特別の駅長さん)、鉄道事故死した少女の旅立ち。読みながら、生と死について、いろいろ考えさせられる小説でした。読後、余韻が続く物語です。

  • とても綺麗なお話に感動しました。子供たちにとって、大事なことをしっかりと考えさせ、見守る大人たち。いろいろな問題を解決していく子供たち。ミンちゃんのエピソードはとても悲しかったけど、現実を受け入れて、前に進む、生命の力強さの大切さを感じました。文庫版解説によると、時代設定は国鉄廃止の1987年と青函トンネル開通の1988年のあいだの夏休み前。その数ヶ月の、子供たちの成長を、路線内(一部北海道は別だけど)だけでミニマムに描く設定も面白かった。

  • キップをなくして駅から出られない子どもたち。
    でもいろいろ特権もあって駅の中の食堂やKioskは食べ放題。家や学校のこともとりあえず大丈夫っていう謎な状況だけど、物語はいたってまじめに、生と死、友情、成長を紡いでいく。
    ものすごくよかったーって感じではないけど、もっとピュアな心で読んだらいいのかな。
    と、言うわけで、夏休みの読書感想文には良さそう。

  • 死について優しい眼差しで描いている作品。
    ミンちゃんの出会った、3日で死んでしまった赤ちゃんの話が印象的。3日だったけど、お日様が眩しくておしっこが出るのも嬉しかった、って言ってた赤ちゃん。
    死んでしまって悲しいものは悲しいけど、それは仕方のないこと。これまでの経験をもって向こうに行けるなら、それでいい。最初はおどおどしてみえたミンちゃんが自分の中で納得のいく考えにたどり着いて、後半足取りのしっかりしてきたところが良かった。

  • キップを無くしたこどもたちが、東京駅で共同生活をして、通学する子どもたちを助ける手伝いをする。「若おかみは小学生」ではないけど、子どもが(大人の助けも得つつ)自立して生活するというのが、楽しい。それに死というものが関係してくるのも「若おかみは小学生」に共通するかもしれないが、死を受け入れるということがどういうことかが描かれている。東京駅と東京都内の駅で仕事するすごくローカルな話だけど、みんなが一緒に北海道に旅をする、そして別れがあるということがすごくぐっとくる感じがする。

  • 鉄道童話

  • この小説の舞台は1987年5月~7月くらい。国鉄からJRになったばかりで、そしてまだ青函連絡船が就航している、最後の夏。キップをなくした主人公の少年はステーションキッズに仲間入りする。夜行列車に乗り、船に乗って、SLにも乗る、少年のひと夏の大冒険って感じだけど、生と死というテーマがある。終盤の登場人物たちの魂についての会話がグッとくる。

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著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2021年 『特別授業3.11 君たちはどう生きるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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