マリコ/マリキータ

  • 角川書店 (2006年5月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (231ページ) / ISBN・EAN: 9784043822010

作品紹介・あらすじ

民俗学者の僕は、グアムでマリコに出逢う。子どもたちにマリキータと呼ばれ、自由気ままに暮らす彼女は、ごく自然に僕の部屋でシャワーを浴び、楽しいお喋りをし、ベッドを共にして帰った。表題作の他、4篇を収録。

みんなの感想まとめ

異国の地、グアムを舞台にしたこの短編集は、旅と人間関係の微妙な交差点を描いています。主人公である民俗学者が、自由に生きる女性マリコとの出会いを通じて、異文化との触れ合いや自己の内面を探求する様子が描か...

感想・レビュー・書評

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  •  日本との時差は1時間、わずか3時間のフライトで行くことのできるグアム。手軽な南国のリゾートであり、また小さなアメリカを体験できる島。その手軽さからか、古くから多くの日本人が最初に訪れる海外のひとつでもあったし、現地の観光スポットでは日本語が通じることも多い。そんな身近なグアムなのに、実はグアムを舞台にした小説や映画やドラマというものが、あまりないことに気付きます。

     この本は、日本においてグアムを舞台に書かれた貴重な小説のひとつ。しかも作者はあの「ハワイイ紀行」の池澤夏樹というから、これは旅ゴコロのまえにまず読書ゴコロをそそられるではありませんか。マリコは南の島で異国の子どもたちと暮らす女性で、現地では「マリキータ」と呼ばれている。一方、研究者の「僕」はある意味で典型的な日本人。そんな僕は日本を抜け出して彼女を追う生き方などできるだろうか…。ほかに「帰ってきた男」など5篇を収録した珠玉の短編集です。

  • 少し、スピリチュアルな側面もある短編集です。
    読者をあっという間に別世界へ誘う、圧巻の文章。

    知識に裏打ちされた、物事の描写がある一方で、自然、精神概念といった形のないものの描写が、文理一体、作者の知性が伺えます。
    池澤さんの本をしばらく読むことになりそう。

    ストーリーの規模感が全く異なる作品が、それぞれの魅力をもって一冊にまとまっています。

  • p.2006/5/25

  • 池澤夏樹読んでみたいなと思って一番最初に買った本。
    小説というより日記みたいで読みやすい!

    小難しい男性の女々しさ、、、嫌いじゃない。
    マリコ・マリキータ、とても好きな話になりました。

  • 「梯子の森と滑空する兄」収録されている五編の中では一番短くて地味かもしれないけど、私は一番印象に残った。主人公は歯医者の待合室という狭い空間から動かないのに、読んでいるとなんとなく解放されたような気分になる話。「身近な人にあって自分にないもの」を表現するときに、羨望とかそういう感情を抜きにして、淡々と書いているのがいい。私自身が「兄」のように色んなものを手放して生きられるタイプではないから、「ぼく」から見た「兄」がすがすがしく思えたのかもしれない。

  • 感性が良い。新鮮だ。

  • 「何の気なしにパラパラと」な短編集。
    マリコの要素がだんだんなくなって、マリキータの要素が占めていく。
    どこにだって行けるし、どんな風にだってなれる。
    自分を求めて留まることより変化し続けることを選ぶ人々のお話。
    私はどっち?うーん。

    以下引用。
    「ぼくはマリコが変わることを、この三月、半年、一年の間にすっかり変わってしまうことを想像しておびえた。マリコは蓄積しない。周囲に応じてどんどん自分を変えてゆくことで生きているのだ。だから、どんな土地、どんな状況でも無意識のうちに巧みに適応し、その時々の自分にふさわしい仕事や友人や恋を得て、その力でまた自分を未来の方に押し出してゆく。ずっとそばで見てないと、たちまち引き離されてしまう。そうなったら、もう追いつけない。そこまで僕の手が届くかどうか、不安だった。」

  • 「マリコ・マリキータ」は切ない。その切なさを味わいたくて何度も読んでしまう。
    「帰ってきた男」も大好きな話。なんとなく「やがてヒトに与えられた〜」に近いものを感じる。
    この遺跡に立ってみたい。この風景を見てみたい。

  • 池澤さんの小説の登場人物はほんとに気持ちのいい性格をしてる。
    繕ったりすることもなく、自分を自由に表現していて清々しく思う。
    彼は理系的な表現を良くするんだけども、一方で人間が理解できないもの、どうにも出来ないものの存在も信じ、大事にしていて、その二つの融合が独特の味を出していると思います。
    本書もそのような短編が揃っています。「帰ってきた男」はちょっとイメージでは描けないような幻想的なイメージの作品です。この本の中では異色。

  • それぞれ、内容は違うけど、「旅」をする人が見える話が5つ入っています。

    池澤さんのお話って、いつも思うのですが、「こういう人が身近にいれば、わたしの人生が少しだけ変わりそうな気がする」人が出てくることが多くて、何となく自分もそんな人になりたいな、などと思ってしまいます。

    あまり表ざたにはしませんが、池澤さんも、スピリチュアリティの高いひとだと思います。
    3篇目「アップリンク」、5編目「帰ってきた男」を読んで、特にそれを感じました。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    南の島、異国の子供たちと暮らすマリコ。研究者の僕に日本を脱け出し、彼女を追う生き方ができるだろうか(「マリコ/マリキータ」)?前人未踏の遺跡を探検した僕とピエールは、静謐のなか忘我の日々を過ごした。でも僕には、そこにとどまり現世と訣別する道は選べなかった(「帰ってきた男」)。夜に混じり合う情熱の記憶。肌にしみわたる旅の芳香。深く澄んだ水の味わい、5篇の珠玉の短篇集。

    ----------------------------------------

    何年ぶりかの再読。この本の再読はつらくなるほど切ない。そう分かっているのに、再読せずにはいられなくなる時がある。そして再読し…、堪えきれないほどの寂寥感に苛まれるのだ。

    池澤夏樹の短編の中では、表題作が一番好きだ。ごく短い短編なのに、マリコという魅力的な女性を鮮やかに描ききっている。職も住むところも転々とし、世界中どんなところにいってもそこでしっかりと生き続けることができる、さわやかで自立した個性であるマリコ。いわば、いつまでも軽やかに変化し続けることができる女性。かつての漂泊詩人のように放浪作家のように、一か所にとどまることを良しとせず、常に旅をし、旅に生き、旅に死することもいとわないような人生。それは自由で優雅かもしれないし、孤独で過酷なのかもしれない。ただ、あまりにも魅力的に描かれている。
    まぶしいばかりのマリコに想いを寄せる主人公は文化人類学者。定住し、蓄積し、貯蓄し、さまざまな人間関係の中にがんじがらめになっている。所詮、マリコのようなノマド民族とは相容れないのだろう。無理に一緒になれば必ずどちらかが不幸になる。
    籠の中の鳥と大空を飛ぶ鳥との短い恋とでもいうのか。
    主人公はマリコの生き方に惹かれ、その人生を美しく思い、憧れてもいる。しかし、「急げば間に合うと思いながら、いつになっても足が動かなかった」というラストの一文に、絶望的にどうしようもうない現実とやらが、主人公を打ちのめす。
    こうして、主人公はかけがえのないものを失った。何もかもかなぐり捨てて追い求めるべきだと頭で分かっていながら、結局何もできないまま、残りの人生を圧倒的な喪失感と自責の念に責められながら抜け殻のように生きていくしかない。地球上のどこかにいるマリコ…そしてそこにいる自分…を妄想しつつ、もう決して手に入らないものを狂おしいほど求めつつ。
    届かぬ想いに、落涙するほかない。

  •  やはり面白い。

  • 短編集。
    「帰ってきた男」は展開が気になってどんどん読んでしまいました。
    他にも「梯子の森と滑空する兄」、「マリコ/マリキータ」はお気に入りです。

  • 星野智幸のような雰囲気で、だけど別世界のようで、五十嵐大輔の絵が似合いそうな、なんだかむっとしたにほひのたちこめるような作品。だけどカラっとしてたり風が吹いていたり、きもち悪いんだかいいんだか・・・人の思考はどこまで深くいけるんだろうと思った。表紙の絵がすき。

  • 美しい短編集でした。いろんなところへ連れて行ってもらった気分。特に表題作が好き。

    ○心に残った言葉たち○
    「自分で信じて周囲にも信じさせてしまった嘘はもう嘘とは呼べない」(梯子の森と滑空する兄 p.79)
    「社会っていうのは、つまりたくさんの梯子なんだ」(同 p.83)
    「ぼくたちはみんな個体の中に閉じ込められていて、互いの競争を促され煽られて、小さな桶の底を右往左往しながら狂ったように踊っている」(帰ってきた男 p.204)

  • あまり印象が残ってない。。

  • 短編集。それぞれの作品が全く異なる世界へ連れて行ってくれる。
    どことなくナイーブで、知的な印象。
    とても誠実な職人が、彼の作品を所有する人について思いをめぐらせ、つくり上げたような、丁寧な精巧さがあるなと、思った。
    『帰ってきた男』が一番好き。とてもスケールの大きい話。

  • 高校のときに国語の校内模試で「梯子の森と滑空する兄」が問題文に使われて、気に入ったので先生にタイトルを聞きにいった。
    そしたら図書館に本を入れてもらえた。はじめて読んだ池澤作品で、いまでも大好きです。
    生きるというか世を渡るということが、巧い人っていうのはほんとうに巧いんだよな。

  • 第8回講座/参考文献

  • 2007.5.22

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著者プロフィール

(いけざわ・なつき)
作家。1945年、北海道帯広市に生まれる。小学校から後は東京育ち。30代の3年をギリシャで、40~50代の10年を沖縄で、60代の5年をフランスで過ごす。ギリシャ時代より、詩と翻訳を起点に執筆活動に入る。1984年、『夏の朝の成層圏』で長篇小説デビュー。1987年発表の『スティル・ライフ』で第98回芥川賞を受賞。その後の作品に『母なる自然のおっぱい』(読売文学賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『楽しい終末』(伊藤整文学賞)、『静かな大地』(親鸞賞)、『花を運ぶ妹』(毎日出版文化賞)など。その他、自伝『一九四五年に生まれて――池澤夏樹 語る自伝』(聞き手・文 尾崎真理子)、編著に『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集』(全30巻)、『池澤夏樹=個人編集日本文学全集』(全30巻)などがある。

「2026年 『遙かな都』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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