新世界 (角川文庫)

著者 : 柳広司
  • KADOKAWA/角川書店 (2006年10月25日発売)
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  • 87レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043829019

新世界 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  原爆の開発のため作られた科学者の町”ロスアラモス”。戦勝パーティーが行われた翌日、一人の男が殺されているのが見つかる。原爆の開発責任者”ロバート・オッペンハイマー”は友人のイザドア・ラビに事件の調査を依頼する。

     最近でも日本に原爆を落としたことは是か非か、という議論を見かけることがあります。戦争を終わらせるためにやむを得なかったという意見もあれば、国際法に違反する戦争犯罪だ、という意見もあったりするみたいですが戦後、それも平成生まれの自分からすると原爆も戦争も繰り返してはいけない、くらいにしか実感がわかず世界大戦当時の原爆投下の是非については、どちらの意見も正しいように思えてしまうのが事実です。

     この小説に登場するのはその原爆を開発した科学者や投下したパイロットなどその当事者たちです。事件の調査が進むとともに彼らの中の狂気の部分が明らかになってきます。それは原爆を生み出した、という罪の意識と、それを麻痺させようとする戦時下の全体主義や科学者としての興味、喜びといったものです。

     こういう矛盾した感情を抱いて、そして知性があるからこそ人間というものは恐ろしい生き物なのだろうな、ということを思いました。

     ミステリという体裁をとっていて犯人探しの要素もあるのですが、個人的にはこのミステリは犯人探し(フーダニット)ではなく、なぜ殺したのか(ホワイダニット)のミステリだと思います。最後に明かされるその動機はまさに狂気そのものです。

     しかし読み終えたころには、その狂気は本当に狂気だったのか、この状況では狂うことが人間として当たり前なのではないか、という思いも抱かされます。それもまた原爆という魔力を持った存在が、このミステリの中心にいるからではないでしょうか。

     作品のタイトルである『新世界』。第二次世界大戦後、アメリカとソ連の核競争が始まり、最近でも北朝鮮やイランの核開発、そしてフクシマ原発など、核の脅威は止むことはありません。それがアメリカの原爆投下から生まれた『新世界』の姿のように思います。

     犯人は連行される際、ラビたちに自分の思いを叫びます。その叫びはある意味では原爆、あるいは原爆を生み出した科学力自身の叫びであるかのように思います。そしてそれこそが『新世界』に足を踏み入れる前の人類に対する最後の呼び声だったのではないでしょうか。

     そしてその叫びがアメリカの戦勝、世界大戦の終わりという勝ち鬨でかき消されてしまったとき、人類は核との共存という新世界に疑問を抱くことなく突入しました。そして現在、核は広島、長崎という一地方にとどまらず世界すらも破壊する力を持っています。その脅威に気づいた今からでも、犯人の、そして科学の叫びに耳を傾け、そして選択する必要があるのではないか、と思いました。

  • オッペンハイマーを中心に描かれた、ミステリー。戦時中の科学者のことをうまく描写しているなあと思う一方で、展開がやや緩慢。もう少しテンポアップして、ミステリー要素強めのほうが好みです。反対に著者の主張を出すのであれば、ミステリーの要素でなくても、と思ってしまいました。

  • ロバート・オッペンハイマー。原子爆弾を開発した中心人物。
    ストーリーの内容は別に面白いことはない。

  • ミステリーかつ反戦(というには語弊があるか)。もっとどちらかに寄せても良かったのでは。
    ジョーカーゲーム等から柳広司さんを知った若い世代にこそ、読んでほしい。そういった意味では、とっつきやすいと思う。

  • とっつきにくくって頁が進まないったらありゃしない。ってのが、素直な感想で、ドキュメンタリーを呈したサスペンスミステリ?趣味が悪い。の一言に尽きるのだが「新世界」というタイトルは言い得て妙。とは、思った。「およそ戦争においては最善なんてものはありえない。私たちはつねにより良い方を求めて判断を下すしかないんだ。」一度ゴーしてしまった案件を止めるのは最悪の事態しかないかもしれなくて、ベストよりベター。というのは確かにそういう一面があるかもしれんな。と。原発にしろ何にしろ。作る方は夢中で使う方は…。

  • 怖かった…

  • メッセージ性は強いが、文章がどうにも馴染みにくい。

  • 原爆を落とされた国ではなく、落とした国の人がこのようなお話を書いてくれるといいと思うのだけれど。

  • 話として云々より、この時期(マンハッタン計画)のロスアラモスが舞台なのが個人的にキモ!でした。
    昨年、アブラハム・バイス「神は老獪にして」を読んでから一時期、物理学者の伝記にハマっていました。
    綺羅星の如く輝く才能・・・は凡人にはさておき、
    その奇人変人ぶりがハンパじゃない人たちに魅せられまして。もちょっとその辺を書いて欲しかったなあ、本筋とは関係なく。
    ミステリとしてはまあまあですが、原爆に対する真摯な作者の姿勢がますますこの作家への信頼感を募らせます。
    ちなみに文中でオッピー(オッペンハイマーの愛称ですって^^;;)が書いた「イルカ放送」、名前だけ出てくるハンガリー系物理学者のレオ・シラード作のSFだそうです。これ気になる・・・・

  • 4 

    8月に読むべき本かなと思っていたが、そんなタイミングにこだわる必要もなく実に興味深い作品だった。実話と創作を上手く組み合わせ、史実をベースに本当に良く練られていると思う。わざわざロバートの書いたものとして本編が扱われているのも、史実との擦り合わせを考慮したものと解することができる。

    ただ、終盤の謎解き部分で“○○が凶器を知っていたのはおかしい”説が出てくるが、これを成立させるには伏線部の描写が明らかに足りない。これを持ち出すぐらいならこの部分はなくても良い。

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