吾輩はシャーロック・ホームズである (角川文庫 や 39-3)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009年9月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043829033
作品紹介・あらすじ
イギリス留学中、心を病んで自分のことをシャーロック・ホームズだと思いこんだ夏目漱石。ある日、ヨーロッパで有名な霊媒師の降霊会が行われ、参加する漱石だったが、その最中、霊媒師が毒殺されて……。
感想・レビュー・書評
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題名とあらすじからドタバタコメディー系ミステリーかと思いきや、読み進めるとそこに織り込まれたテーマはかなりディープで良い意味で期待を裏切られました。
テンポよく殺人事件にせまりながらも、イギリスや中国とは違う日本特有の美を求め続けてもがき苦しむ漱石、大英帝国の他者への傲慢さと偏見を突きつけられるワトソンなど、隠れテーマがしっかりしていて読み応えある作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本屋で面白そうだったので手にとってみました。
柳広司さんという作家さんは初めて知ったのですが、いやー面白かった!
まず夏目漱石が自分がホームズだと思い込むという設定がいかにも面白そうで。
私自身あまり夏目漱石の作品をきちんと読んだことがないので分からないですが。
ミステリー作品が多い作家さんということで、それこそ原作のシャーロック・ホームズシリーズのように話が一切矛盾せずに事件がすっと解決するのがいい。
でもところどころ幻想的というか、不思議なシーンが入ったり、でもそれがあまり不愉快じゃないというのがまたいい。
時々笑えるシーンもあるし、ミステリーと笑いのバランスがちょうどよかったですw
夏目漱石ファンのための、シャーロック・ホームズ本としてもいいし。
逆にシャーロック・ホームズのファンのための夏目漱石本としてもいいと思いました!
私は後者でしたが、見事に夏目漱石読みたくなりましたね♪
更に昔読んでいたシャーロック・ホームズシリーズも含めた探偵モノが読みたくなりました。
私にとっては探偵モノにはまっていたちょっと懐かしい記憶も蘇らせてくれた、ステキな作品です★-
「夏目漱石ファンのための」
柳広司は「ジョーカー・ゲーム」シリーズで、好きになった作家さんなのですが、次は漱石を主人公にしたシリーズ?を読む...「夏目漱石ファンのための」
柳広司は「ジョーカー・ゲーム」シリーズで、好きになった作家さんなのですが、次は漱石を主人公にしたシリーズ?を読むつもり。その中でも、これは異色作になるのかな、、、
2013/08/07 -
>nyancomaruさん
こちらでもお気に入り登録&コメントありがとうございます♪
有名なのは「ジョーカーゲーム」ですよね。
私逆にそちら...>nyancomaruさん
こちらでもお気に入り登録&コメントありがとうございます♪
有名なのは「ジョーカーゲーム」ですよね。
私逆にそちらのシリーズにはまだ手を出せていないですが。。
調べてみたら、本作の後に「漱石先生の事件簿」を出してるのですね!
こちらもまだ未読なのですが、本作と繋がってるのか、気になるところですね。2013/08/09
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正直、なにこれ…でした。
イギリスに留学した夏目漱石がノイローゼになり、自分はシャーロックホームズだと思い込む…って話。
てっきりホームズになりきって事件を解決するのかと思いきや…ボロクソに書かれてるし、そもそも夏目漱石がいる意味というか夏目漱石である必要が全くわからない。これはホームズのオマージュ作品なの⁇謎解きもイマイチパッとしないし。
何回も脱落しそうになりました。我慢の一冊。
残念。 -
ロンドン留学中、精神的に参った夏目漱石が自分をホームズだと思い込み、ワトソン(ホームズ作品の登場人物が実在する世界)に預けられ…という話。
設定が面白すぎて、かえって内容で上回るのはなかなか難しいよ…。
英文学と漱石、どちらも色々と使っていて、見つけるのが楽しかった。
ただ、途中で「おっ、そっちに行くの?!」となったワトソンのことはうやむやになったのが私の好み的にはちょっと残念。 -
要素が満載でまとめきれないので、とりあえず面白かった要素をメモ。
19C後半のイギリスのコスモポリタニズム、オリエンタリズム、漱石の文学論、信頼できない語り手。
この時代を取り巻く様々な特徴をこんなにも盛り込んだ上、全てを繋げて一つのストーリーを作り上げてるのは流石としか言えない。面白かった。
コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズと、漱石の倫敦塔、三四郎を読んだ後だと面白さが増す。
・コスモポリタニズム
アイルランド、南アフリカ、中国、日本…様々なところから人や物が行き交っている。その「異なるもの」「今までのイギリスになかったもの」が物語の中核に絡んでいる。19Cのグローバル化の渦中にいるイギリスらしいな!ってときめく
・オリエンタリズム
(オリエンタリズムについてふんわりとしか理解してないからズレたこと言ってるかも?)
ナツメの描かれ方が滑稽で可哀想でイタい感じになってるのはワトソンの一人称を元に書かれてるからってのもあるだろうな。
ナツメのいうところの「文明化とは己と他人を区別し、他者を見下す冷ややかさに他ならない」(うる覚え)っていうのも結構本質をついてる。
日本、中国、南アフリカ、いずれもイギリスはそこからもたらされてる文物に興味を抱いて生活に取り込んでいる。それと同時にこれらの地域を文化的に見下しイギリス式の生活スタイルを広げてる。
・漱石の文学論
「中国のものでも西洋のものでもない日本の美を見出さねば」っていうの、漱石の本で読んだことあると思うんだけどなんだっけ??彼岸過迄??違ったかも。なんだっけ……。ちゃんと反映されてる面白さある。
作中度々に三四郎からとってきてるなってセリフがあった。「田舎から出てきた学生が、都会で自我をしっかり持った近代的な女に恋し、失恋する」ってストーリー構造はたしかに同じだな。二つを比較して読みなおしたら面白いかも。
・信頼できない語り手
ワトソンがアヘンの幻想を見てる時「裏切ったのはあなた。親しい人に自分をワトソン先生と呼ばせていい気になって…サー・コナン・ドイル」(台詞引用じゃなくてざっくりしたまとめ)と糾弾される場面がある。
ここで、ヘェ!ワトソン先生は実はコナンドイルだったんだ!と思ったんだけど、最後までそのフラグは回収されずじまいだった。あれは何だったんだ…?
でもこれ、ワトソン先生は実はコナン・ドイルだけど、ドイルは最後までそれに気づかず自分がワトソンだと思い込んでるって読みも成り立つのでは…?
・アヘンの世界でワトソンが見ているものは、物事の本質、真実をついてるものが多い。
ワトソンがナツメから文学論を聞き、日本からの留学生ナツメではなく文学者漱石として彼に触れたのもこの時のみ。オリエンタリズムと偏見に曇った目はアヘンの幻想の手を借りないと晴れない…?
・ナツメの教授に会いに行った時「サー」って嫌味言われたの、ワトソンはホームズのことかな?と思ってたけど、これはコナン・ドイルへの嫌味だったのでは?アヘンの夢でも「南ア戦争のパンフレットを書いて勲章をもらって」って非難されてるし。
・コナン・ドイルが軍医として従軍したのは南ア戦争、ワトソンが軍医として従軍したのはアフガン戦争。でも作中でアフガン戦争って名前出して言及することは一度も無くなかった…?(読み返して確認しよ)
・ワトソンくんをワトソンって呼んでる人物は先生の元々の知り合いか、知り合いに「ワトソン先生だよ」と紹介された人だけでは??ほかは皆「ドクター」じゃない?(要確認)
・ホームズが交流したり姿を現したりする相手はワトソンしかいないよね?ホームズは実在しているのか??
文学者ナツメは最後に正気に戻ったけど、コナンドイルは依然狂気の中ってオチなのかも??
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いやぁ。。。
ジョーカー・ゲームの読みやすさをとワクワクを期待したら…。
残念だった。。。
題材は良かったのに。。。 -
夏目漱石が神経衰弱になったのは本とこんな感じなんじゃないかなと思っちゃう
ワトソンとホームズもほんとにいるのかいないのか、ワトソン自体が怪しいっていうのも引き込まれたぜぇ
アイリーンが殺された結末は嫌だなあ
そうでないことを祈ったよー -
イギリス留学中のナツメさんがシャーロック・ホームズになりきって珍道中!?を繰り広げる話。
物語や推理を楽しむより、当時の世界観、日本と欧州の違いみたいなものを感じとる話って感じ。 -
漱石好きのミステリー好きにはたまらない設定。
かなりボンクラ臭漂うけど、一読の価値はあります! -
話題の作家・柳広司の作品。
内容的には、精神病を患った夏目漱石が自身のことをシャーロック・ホームズであると思い込み、ワトスン博士とともに謎解きに挑戦する、という高度なお話。
書く、という面から見るとすごい作品だと思う。まずシャーロック・ホームズシリーズを把握しきること、時代背景の描写など、書くにあたって注意しなければならない点はたくさんある。
残念だったのはシャーロック・ホームズシリーズにならっているから、柳広司の文体が把握できなかったこと。そして指紋照合という技術が出てきたこと。なんかオチとしてイマイチな感じ。とってつけた感。 -
東洋の小さな島国、日本から来ている留学生「ナツメ」。彼はある日「ワトスン」の診療所に連れてこられた。何でも彼は自分のことを「シャーロックホームズ」だと思い込んでいるというのだ。(ちなみにその前は、自分のことを猫だと思い込んでおり、名前はまだない等と言っていたらしい)
ホームズ不在の折、ワトスンは精神薄弱した夏目漱石と行動を共にすることとなるのだか、そこで奇っ怪な事件に巻き込まれていく。
何が奇怪って、もう設定が奇っ怪だろと。あらすじ読んで衝動買いした。笑
読み始めは、「自分大好き英国人」による日本人バッシングとか、あまりにもナツメがダメダメなのとかで、最後まで読めるか不安になりましたよ。
しかし、話が進むにつれ、(ワトスンと共に)ダメダメなナツメに愛着が湧いてくるから不思議なものでした。物語も単純な事件→推理だけではなく、自分の国とは、人種差別とはなど、色々な問題を提起していて、なかなか深い。
正岡子規との関係や、ホームズの過去の事件についての言及など夏目漱石やホームズが好きな人ならニヤニヤする描写も多数ですが、両方ともしらないという人も楽しんで読めること請け合いです。 -
ホームズのいるロンドンに留学した夏目漱石の事件簿。ナツメがかわいい。
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あの「ワトスン氏」のもとを訪れたのは、自らをあの「シャーロック・ホームズ」とおもいこんだ
ナツメと言う小柄な日本人青年≒若かりし頃の「夏目漱石」だった。
そしてあつらえたようにシャーロック・ナツメ・ホームズのもとに事件の報せがやってくる。
タイトル買い。柳広司さんの作品は初体験ですが、
非常にバランス感覚のいい作品でした。
幻想的な世界観で、現実と非現実がロンドンの霧の中で交錯します。
中盤以降、ミステリとしての盛り上がりにあわせて、時代背景を活かした
植民地政策や差別意識への批判が絡んでくるなど、とても面白い。
事件解決が本格推理として成立する内容なのも、「ホームズ」らしくてすばらしい。
漱石先生の著作と、シャーロック・ホームズシリーズが読みたくなります。
久しぶりに読み返してみようかな。実家に残ってるだろうか。