漱石先生の事件簿 猫の巻 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043829040

作品紹介・あらすじ

柳広司×夏目漱石
傑作パスティーシュ!(文体模写)

探偵小説好きの僕はひょんなことから先生の家に書生として住み込むことになった。
先生は癇癪持ちで、世間知らず。書生の扱いときたら猫以下だ。
家には先生以上の“超変人”が集まり、次々に奇妙奇天烈な事件が舞い込んでくる。
後始末をするのは、なぜかいつも僕の仕事だ。
先生曰く、

「だって君、書生だろ?」。

『吾輩は猫である』の物語世界がミステリーとしてよみがえる。
ユーモアあふれる“日常の謎”連作集!
<解説・田中芳樹>

感想・レビュー・書評

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  • 『吾輩は猫である』はミステリーだった!?
    誰もが書き出しは知っているのにストーリーは覚えていない。本書はその『猫』のエピソードを事件に見立てて謎を解くスタイルになっています。

    ・なぜ猫は踊ったのか?
    ・泥棒に入ったのは誰だったのか?
    ・鼻子の恋の行方は?
    ・中学生との全面戦争!?などなど。

    個人的に好きな「天璋院様の御祐筆の妹さんのお嫁に行った先の―」のくだりもでてきますし、謎の言葉オタンチンパレオロガスやトチメンボー、首縊(くく)りの力学ももちろんでてきます。

    しかし『猫』のラストはたしか、酔っ払った吾輩が水甕に転落し、というものでしたが…。はたして本書の結末はどうなるでしょうか??
    ―もちろんそれは読んでのお楽しみということで!

    →再読記録に
    「漱石山房探訪記」アリマス

  • ※初版のミステリーYA!で読む
    ○『吾輩は猫である』や漱石先生エピソードを元に、漱石先生のお家に架空の書生さんを住まわせて。
    〇吾輩は猫であるの他、漱石先生作品がもっと面白くなる
     エピソードにくすりとなる
    〇明治の時代背景がはいいろに横たわっている

    1吾輩は猫でない?
     鼠を盗んだのは先生のネコか?
     …“ぼく”か夏目先生のお家に転がり込んだのは?先生と“ぼく”

    2猫は踊る
     元日のお昼過ぎ、猫が躍る。
     …猫はなんで踊ったのか。先生の家に来る人たちももれなく変人。ご近所ミステリー
     
    3泥棒と鼻恋
     先生の家に泥棒が入る。なんで猫は騒がなかったのか
     …オタンチン・パレオロガス
      寒月さんの恋

    4矯風演芸会
     東風くんは、なぜヘンテコな朗読会を聞く羽目になったのか
     …孫文先生、いえ猫の話

    5落雲館大戦争
     中学生野球チーム対先生
     …猫とお昼寝 

    6春風影裏に猫が家出する
     猫はどこ?先生、心配する
     …ビール
      先生はホントは猫に…?

    〇はちゃめちゃな漱石先生が素敵
     ほの暗い時代が時々顔をのぞかせている
    〇もっかい猫を読まなくちゃ

  • 我輩は猫であるの世界観そのまま で
    小さな事件 でもっと面白く (失礼)なってます。
    柳 広 司さんはこの話から本当に影響受けたんだろな。
    書生 の陰の活躍と私は先生の奥さんの時々見せるさばさばしたとこが好き。
    幸せ な猫の姿が目に浮かびます。

  • 『吾輩は猫である』は未読だけど、面白かった。
    寒月さんや迷亭氏との掴みどころのない会話がとにかく心地良い。中身はないけどスルスル読めるリズムで、これぞ衒学的!という感じだった。
    ミステリーとしての謎は日常的なもので派手さはないが、丁寧に伏線が張られていたしで、これも満足。
    終わり方が素敵!

  • 面白い!漱石先生ファンなら、しかも『吾輩は猫である』好きなら楽しくてしょうがない。
    原典の猫目線から、書生と言う人間目線で描かれた登場人物たちと、名無しの『猫』の姿と言ったら。『猫』がどう思って人間たちを見ているかを知ってるからこその面白さがたまらない。『先生』の変人ぶりも健在(笑)。
    著者の想像、創作ながら原作のイメージを壊す事なく、ほぼ忘れていた原典の事件や出来事が蘇り、そこに推理が加わるものだから楽しさが倍増します。
    こんな事、思いつけるなんてすごい!と感心すると共に、著者の漱石先生に対する敬愛の念が伝わってくる。意外なラストシーンが好き。こうなって欲しかったの、と思わず嬉しくなってしまった。
    もう一度原典を読み直してみたくなりますし、原典では分かりづらい表現が現代風に分かりやすく解説されていると言う観点で本書を読むのも一つの方法、楽しみ方かも知れない。

  • 「吾輩は猫である」パスティシュ。猫の視点ではなく、先生のうちに住み込みの書生で探偵小説ファンの少年「僕」の目で語られる、先生と猫と先生の友人たちをめぐる物語。本家の夏目漱石「吾輩は猫である」は学生時代に十ページぐらいで挫折してしまったが、こちらは楽しくツルリと読めてしまった。これでもかと僕に繰り出される無理難題に、僕が戸惑うと、黄門様の印籠かよ!という頻度で繰り出される「だって君、この家の書生だろう?」。そんな言葉に押され、章ごとに、仕掛けられた謎を「僕」がそれを解いていく趣向。解説の、僕の目の前で鼠が消え失せ、猫が踊り、泥棒が山の芋を盗んでいったかと燃え場、先生の家では奇妙な演芸会が開催され、ついには裏手にある中学の生徒たちとの戦争がはじまりますのとおりに。本家にも手をつけたくなること請け合いの一冊です。あと、猫の巻、と銘打ってあるからには、いまのところみあたらないけど、続編も期待していいのかしら。

  • 吾輩は猫である。 をきちんと読んだことがなく
    あまり純文学を読まないためここから入門。

    辞書を引きながら、独特なキャラクターに翻弄されて
    中盤まで読んだらリズムを掴めてきて一気に読んだ。
    本編がわからないためどんな風に股ぐらからのぞいてみたのか謎であるが、それもまた楽しみかなと思った。

    書生の探偵力がすごすぎたのと、先生のイメージが全く違くて驚かされてばかり。
    後半では、先生が果たしてただの癇癪持ちなのか、
    それとも実はわかっているのかミステリアスだった。
    一番好きだったのは、最後のシーン。
    常日頃どんなふうに扱っていても、猫の名前を呼ばなくても、名を呼ぶ一声だけで、息を吹き返すその猫と先生の関係性が素敵だった。

  • 先生による後書きがとてもよかった。先生の人間味を始めて感じられたとともに、こういう意味で書いてるんだなぁと、後書きを読んで初めて気がつくことができた。
    謎解き自体にそこまで納得できるわけではないが、先生と僕の掛け合いが楽しかった。

  • タイトルに偽りあり。柳広司の作風もこの作品自体も好きですが、漱石先生と明示しない方が良いのでは。

  • 「吾輩は猫である」を元にしたパスティーシュというか。文庫版で再読。文庫版での表紙イラストが素敵。

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著者プロフィール

一九六七年生まれ。二〇〇一年『贋作『坊っちゃん』殺人事件』で第十二回朝日新人文学賞受賞。〇八年に刊行した『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。他の著書に『象は忘れない』『風神雷神』『二度読んだ本を三度読む』『太平洋食堂』『アンブレイカブル』などがある。

「2022年 『はじまりの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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