グラスホッパー (角川文庫)

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  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 2765
  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043849017

感想・レビュー・書評

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  • グラスホッパーは伊坂幸太郎による2004年に書き下ろされた小説。


    後から知ったのだが、これが伊坂幸太郎のハードボイルドな殺人を扱った最初の作品だった。


    この前にマリアビートルを読んでいたので、この作品に手を伸ばしたわけだが、相変わらず面白くてすぐに全部読んでしまった。


    マリアビートルもそうだったのだが、今作もジグゾーパズルのピースをはめて行くように、それぞれ章ごとに別のキャラクターの目線で事件が描かれており、話が進んでいくごとに、それが一つの事件として重なり合っていく。


    このキャラクターの目線で、別のキャラクターを攻撃した章の次はその攻撃を受けたキャラクターの目線から章が始まったりするので、その事件や場面がより頭の中で具体的にイメージされる。


    そのキャラクターの名称も傑作だ。


    鈴木(これはなぜか平凡)、鯨(でかいから)、蝉(うるさいから)、スズメバチ(黄色と黒の服だから)、槿(あさがお)など、ユーモアに溢れていてなぜか親しみがわく。


    この名前で殺人が起きるものだから、コミカルに感じてしまう。


    実際に人が死ぬシーンもリアルなのだが、伊坂幸太郎の手によると暗さを感じさせず、すがすがしいのだから大したものだ。


    主人公は、妻の復讐を誓って敵の会社に潜り込み、妻を殺した主犯格を追い掛けるという設定。


    死んだはずの妻がいたるところで主人公と対話(幻聴)するので、まるで主人公と妻の物語のようのも感じる。


    また次々と人を自殺に追いこむ通称自殺屋の鯨が過去に自分が葬った人物の幻覚に悩まされるシーンや架空のロックスター、ジャック・クリスピンの名言など、実際に存在していない人物が存在しているような感覚に陥る。


    押し屋、槿(あさがお)と主人公鈴木の最後の場面でのやりとりでのブライアンジョーンズのローリングストーンズによる下りは、知っているだけに、僕も槿同様、納得してしまった。


    この小説から伊坂幸太郎は大量殺人の話も良く書いていくけど、やっぱりこの話の書き方がベースになっているなと感じる(実際に繋げているらしい)。


    マリアビートルでは、この小説で出てきたキャラクターが何人か登場するし、裏の社会の中で別の話とも繋がっているところが、とても面白い。


    最後に、伊坂幸太郎は例えの天才だな、と思う。


    少々斬新でいびつなんだけど、その中に美しい表現だったり、生々しくイメージできるメタファーが伊坂幸太郎でなければ表現できないと思う。


    最後まで読み切った時の爽快さは、別の殺人を題材にした小説では味わえない深さが伊坂作品には存在する。

  • 2年ぶりくらいの伊坂幸太郎作品を読みました。
    ユニークな描写は相変わらず癖になる。
    著者の書く鈴木の妻への一途で強い想いが凄く好き。
    伊坂幸太郎さん独特の一途さが凄く好きで、温かく、そして安心する。
    個人的には蝉推し。
    この本は誰かと語るということが出来る作品だと思います。
    ドストエフスキーとオーデュボンの祈りを読んでいるとより楽しめるかと思います。

  • 昔、読んだ伊坂作品のレビュー。
    グラスホッパーは、伊坂作品の中では、
    ちょっと外れた部類に属すると思っている。
    何が現実で、何が空想はたまた夢なのか、そんな中で、
    毎日、たたかい、がんばっていこうという気持ちを持つことを印象付ける作品である。
    この作品は、何度読んでも、毎回印象がかわる作品ので、趣がある。
    また、登場人物に子供(ぶんきょうく・・・)がでてくるが、
    これが趣を深くするのが、秀逸である。
    ちょっと、えぐい部分はありますが、一読いだだければと。
    (ちなみに、直木賞候補作品でありました。)

  • 「マリアビートル」発売記念に再読。あー、なんて面白いんだろう!登場人物がものすごく生き生きとしている。押し屋、自殺屋、ナイフ使い。個性豊かな殺し屋たちの狂想曲。残酷な描写が多いせいか、ファンの間でも評価の分かれる作品だけど、個人的には伊坂作品の中でもTOP3に入るほど好きな作品。何より、終盤の「食べることに挑む」シーンが素晴らしい。本作で描かれているのは「死」ではなく「生」なのだなあ、としみじみ思う。

  • 気に入った言葉。

    ・世の中は、善悪じゃないんだから。ルールを決めてるのは偉い奴らでしょ。そいつに保護されちゃえば、全部問題ないってこと。
    ・この期に及んでも彼らは、「位置」を気にしている。自分の死が間近にあるにもかかわらず、他の人間よりは優秀であることを、確かめたがっている。
    ・人は本当に死ぬまでは、自分が死ぬとは信じないからだ。
    ・この国じゃあ、たくさん殺したほうが裁判が長引くんだ。変だろ?
    ・分かりやすくしていけばいいのですよ。身のまわりにある物や、人を一つずつ片付けていけばいいんです。余計な雑音を取り払っていけば、必要なものだけが残ってるものです。あなたの生活で、複雑なものを順に消していけばいい。清算するんですよ。片端から。清算です。
    ・殺して食って生きている、という当たり前のことを誰もが自覚すりゃいいのに、と思わずにはいられない。
    ・未来はもう決まってるんです。自然に任せればいいんですよ。あなたは、今日、一仕事を終えてきた。それはたぶん、きっかけかもしれません。そこから、川が緩やかに流れるように、物事が繋がっていくんですよ。その仕事をやり遂げた時、次のきっかけを手にしませんでしたか?
    ・連絡はつくようにしておかないとまずいって。世の中は情報で作られてるんだから。街ってのはさ、ビルとか道路とか通行人でできてるんじゃなくて、情報でできあがっているんだって。情報を集めた奴が生き残るってことだよ。
    ・いくら危ない状況にいてもね、たぶん大丈夫だろう、って思うもんなんだって。危険、と書かれた箱だって、開けてみるまでは、「それほど危険じゃないだろう」って高をくくってるわけ。指名手配犯がパチンコ屋に行くのと同じ心理だよ。まあ大丈夫じゃねえか、って考えてるわけ。急に、大変なことにはならないだろう、って。危険な段階を踏んで訪れると、思い込んでるわけ。肺癌になると言われても、煙草をやめないのと同じ。
    ・どんなに酷い環境に置かれたって、動物は自分からは死のうとしねえよ。自分たちが生き残るために、他の動物がどれだけ犠牲になったか知ってるからだ。人間ってのは、傲慢だよ。

    3人の人物の視点で話が進む。殺し屋「鯨」のキャラ設定が良い。殺した相手に取り憑かれる。自殺専門。こんなの今までに聞いたことない。
    本作にも「田中」が登場。この田中も足が悪い設定だ。

  • 面白かった、ちょいちょい出てくる
    名言がいいね。いいこと書いてあります。
    殺し屋同士の話読んでてワクワクする。

  • ★2009年4冊目読了『グラスホッパー』伊坂幸太郎著 評価A
    いままで読まずにとっておいた作品でした。最近作のようにスピード感あるストーリーで一晩で読んでしまいました。先の読めない展開で、非日常的な登場人物、鯨、蝉、が出てくる割には主人公鈴木はごく普通の小市民で、面白い!!そして、最後のどんでん返し。
    やはり伊坂は特別ですね。是非一読を皆さんにはお勧めしたいです。今日は充実した気分で眠れそうです。これだから読書はやめられない。

  • 登場人物、全員が主役になり得るキャラで、多分読む人によって変わるのだと思う。
    1番印象に残ったのは、押し屋とその家族を演じた組織。
    マリアビートルに続くらしいが、更に続けて欲しい。

  • とても面白かった。エンタメ小説として一流。

  • まさかの夢オチ、読み返したくなる仕掛け
    点滅で始まり電車で終わる幻覚なのか
    人々の死に様があっさりと描かれ、グロさもなく、ストーリーの邪魔をしない

著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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