グラスホッパー (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043849017

作品紹介・あらすじ

「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに-「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説。

感想・レビュー・書評

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  • 今月、下旬に『777』(トリプルセブン)が発売されるらしいので、復習しておこうと思って再読しました。
    全然、覚えていませんでした。
    平成16年の初版単行本を買っています。


    この作品は伊坂さんの殺し屋シリーズ1作目です。
    私、ブクログのプロフィールに「伊坂さんのデビュー作からのファンです」と書いているせいか、よくブク友さんから伊坂さんのお勧めを訊かれるのですが、殺し屋シリーズ2作目の『マリアビートル』を挙げたのは覚えているのですが、この『グラスホッパー』は挙げてなかったですよね?もし挙げていたら全然覚えていない作品を挙げてしまって、すいませんでした。(でもたぶん挙げてないと思いますが)



    この作品には殺し屋の蝉と、自殺屋の鯨、そしてもしかしたら押し屋かもしれないアサガオ(漢字変換でない)が出てきます。

    鈴木という元中学の数学教師が妻をフロントライン<令嬢>という会社の息子に遊び半分に殺され、その仇を討つために令嬢に潜入して、社長の寺原の長男に復讐をしようとしますが…。

    鈴木は寺原の長男を押して、車にはねさせたと思われるアサガオを令嬢の手下として追います。
    アサガオは果たして本当に寺原の長男を押したのか。


    アサガオのセリフで「本当に大事なことは、小声でも届くものだ」「本当に困っている人間は、大声は出せない」。
    鈴木の亡くなった妻のセリフで「世の中の不幸の大半は、誰かが高をくくっていたことが、原因なんだってば」などが印象的でした。

    • まことさん
      naoちゃん♪

      9月21日発売です。
      私は、もうAmazonに予約しました♪
      今、一生懸命『マリアビートル』読んでるけど、わ、忘れてました...
      naoちゃん♪

      9月21日発売です。
      私は、もうAmazonに予約しました♪
      今、一生懸命『マリアビートル』読んでるけど、わ、忘れてましたね…。
      2023/09/03
    • naonaonao16gさん
      そうだったんですね!!

      いやもう、完全に忘れてますよ笑
      そうだったんですね!!

      いやもう、完全に忘れてますよ笑
      2023/09/03
    • まことさん
      naoちゃん♪

      (^^ゞ。。
      naoちゃん♪

      (^^ゞ。。
      2023/09/03
  • シリーズ物は尻込みしてしまう私。
    だって読み続けなければいけないし。
    そして、皆さんが夢中になっているシリーズ物を全然読んでいない自分に「今さら読んでもね~」と思ってしまうし。
    でも、この頃、色々なシリーズ物に手を出して、シリーズ物は面白いからシリーズ化されてるんだ!と当たり前のことに気付く。
    殺し屋シリーズの新作が出たこのタイミングで、私も思い切って飛び込んでみましたー。
    皆さんが夢中になる本はやっぱり面白いですねー。
    たった一日のことで、こんなにどっぷりと読者を引き込ませるとは。(今、月9でやっているドラマの『ONE DAY』も3人の目線でたった一日の出来事をを3ヶ月かけて放送するそうですが、同じように面白いのかな?)
    ハラハラモヤモヤドキドキしながら読んだけど、ラストは私的には、なるほど納得と思えるものでした。だけど槿は?アフターを教えてくれないならビフォーを知りたい!
    こんなこと思ってる時点でもうハマってますねw
    そもそもが暴力系のお話に苦手意識があったのだけれど、これはこれでなかなかに面白い!

  • 「777」が新書で発売され、殺し屋シリーズを最初から読んでみようと思い購読。

    最近伊坂さんのポップでセンス抜群の文体にかなりはまっている。

    作品は鈴木、鯨、蝉の三人の人物を主軸に物語が展開されていく。
    例によって登場人物は極めて異端な人物達で、ダークな世界観をポップとまではいかないが軽快に重くなく描ききっている。疾走感も凄く、そして途轍もなく奥深い作品だった。

    読み終わった後で「?」が…
    自分で読み解いてみても「?」が多すぎて、色んな推測をたてて考察してみた。更にGoogleで検索して考察している人達の文章を読み漁った。結果色んな人が多種多様の解釈している事にビックリ。
    文学ってやっぱり読んだ人が感じる物に統一性が無くてもいいこと、すなわち最終的には読者の感受性の物なのだなと改めて理解。

    この作品の登場人物の名前も気になった。
    鯨は深海と海面(幻覚と現実)を行き来して深海(幻覚)に沈む。
    蝉は逆で現実だと思っていた土の中から岩橋を失い(成虫して)、幻覚(土の外の世界)も知りその成虫した短い命をとげる。
    槿(朝顔)の花言葉は調べてみたら「あなたに絡み付く」だそう。だから槿が寺原長男を押した時に信号の点滅(幻覚の予兆)と共にストーリーが展開されていく。鈴木も鯨も蝉も全員が絡まりはじまる訳か…

    最後、鈴木が反対車線のホームに見た少年二人が最終的に全てをほどいてくれたのか?
    この劇団の狼少年二人。
    その時回送電車が通りすぎる、目覚めの前兆、絡まった今までの回想、回想電車?引き込まれそうになりながら「バカジャナイノー」の声。
    鈴木自身へ…寺原長男への復讐の為に教員を辞め、その行動と労力と時間も含めその言葉を言っているのか?
    自分の人生を妻の死のきっかけで方向転換させた鈴木に向けて。この少年二人は実は鈴木と妻の間に生まれてくるであろう子供達だったのではないのか?そんな父親に向け大声で拙い声で「バカジャナイノー」なのかも?
    それとも「生」と「死」、どちらにも足を踏み込める状態での幻聴の最後の救いの声だったのだろうか…
    それとも生きていこうと決意した鈴木に対して「あなたは馬鹿ではないよ」ってこの先がんばれってニュアンスで幼い子供達が叫んでくれたのかな?

    この作品は伊坂さんの数ある作品の中でも人気で、作者には答えはあるのだろうが、人気なのは読者がそういう多様な考え方ができる作品だからなのだろうと感じた。
    このあと、「マリアビートル」「AX」期待して読んでみたい。

  • マリアビートル読もうかな?って思ったら、これシリーズもんやん!
    「殺し屋シリーズ」
    で、順番に読むことに。
    まずは、「グラスポッパー」。これ、映画も観たし、コミックも読んだ気が…
    それだけ面白かったって事。

    この作品で、はじめて殺しに押して殺すやり方があるんや〜って思った。
    それもネーミングが「押し屋」。
    蝉(殺し屋の名前 ナイフ使い)以外は、殺し屋と言っても、格闘とかいう感じやなく、逆に新鮮。
    日本で、映画であるような殺し方はムリなんで、現実味があるかも?

    世紀末やないけど、人も気象も狂って来ている気もするんで…
    都会で暮らす人間は、に「群集相」に似ていると。
    要は、「ごちゃごちゃしたところで、暮らしていたら、おかしくなる」って事。

    鈴木さんには、まともな道を歩んで欲しいな。
    知らんけど(^◇^;)

    人も、最近は、満員電車とかから解放されて、テレワークとかもあって、おかしくならん事を祈ります!




    「世の中に酷くないことってないでしょ?生まれた時から、死ぬのが決まってるというのがすでに酷いんだから」

    • ゆーき本さん
      鈴木大好きですー!
      マリアビートルにも出てきますよ〜´▽`)ノ
      鈴木大好きですー!
      マリアビートルにも出てきますよ〜´▽`)ノ
      2023/08/27
    • ultraman719さん
      えっ!
      出てくるんですか!
      楽しみにしときます〜!
      情報ありがとうございます!
      えっ!
      出てくるんですか!
      楽しみにしときます〜!
      情報ありがとうございます!
      2023/08/27
  • 皆様のタイムラインで伊坂幸太郎が日々挙がっており、
    食わず嫌いでいた伊坂幸太郎を初読了
    サスペンスものだったんですね…

    ミステリー主の読書遍歴だったが、読み易く1日で読める
    読書レベルが上がっているのだろうか?

    3人の登場人物すべてが魅力的で、惹き込まれる
    読書の楽しみを再認識

    「殺し屋」シリーズものらしいので早速次作を読もう!
    本作の人物は登場するのか!?
    続編があるのは幸せですよね
    あのググっても揺れている結末をスッキリさせてほしいー

    『引退したら、何をやりたいか』
    『ピザを食いたい』ジャック・クリスピン

  • 伊坂さんの殺し屋小説の最初の作品。妻への復讐のために殺し屋を追う鈴木と自殺屋の鯨、ナイフ使いの蝉の三人を中心に物語が進む。それぞれの人物の内面が分かって面白い。殺し屋の物語だから残酷な部分もあるが、三人とも魅力的で、物語が進むにつれてどんどんと繋がっていくのも良かった。三人が仲間になるのか敵になるのかが全然想像出来なくてとてもワクワクした。最後の「バカジャナイノー」の後に鈴木は孝次郎と会えたのか、何を話したのか、このバカジャナイノーは何に対してなのか。とても気になる終わり方だが、鈴木が今までのことと決別をつけて、新しい人生を送ることが伝わってきてスッキリした。

    梶とか岩西とかが死んでしまうのは予想がついたが、鯨と蝉が死んでしまうとは思わなかった。この二人が死んでしまったせいか、鈴木も電車に向かって押されて死んでしまうのでは無いかとも考えてしまったが大丈夫でよかった。この物語を簡単に言うと、主人公の周りの人達は死んでしまうが、主人公は今までの自分と決別をつけて新しい人生を歩むこととなる。この設定はこの前読んだゴールデンスランバーとよく似ている。ページ数の関係もあると思うが、ゴールデンスランバーの方がこの作品よりもページが進むのが早くて、終わり方も良く感動できた。伊坂さんが三年間でとても成長したのが伝わってくる。伊坂さんの作品は発売日順に読んだ方が成長が伝わってきていいと思う。

    「息子さんに家庭教師をつける気はありませんか」色々答えを考えていたが、予想外すぎて面白かった。さすが伊坂さん、こんな答えどうやって思いつくのか。他には、鯨が同じ小説を読んでいて同志かと思って殺せなかったと言ったところには、本当に読書には人と人を繋ぐことができるといいう意味が隠されていると思う。

    世の中の不幸は誰かが高をくくったことが原因とか、命より利便性っていうのは現在社会でもいえる。貧富の差はどんどんと広がっていき、海外では、安全性は低いが利便性のいい商品が開発されている。この二つの言葉は伊坂さんの今の社会に対しての考えなのかもしれない。物語の構成もよく、とても面白く、いい作品だった。






  • 今回の作品も、一つ一つの文章を
    無駄なくしっかりと使いきってたなって
    感じました。

    キャラ1人1人もとても良いね。
    そんなキャラ達を、潔い使い方したことが
    見事でした!

    続編も楽しみです。

  • 再読です。

    伊坂幸太郎という作家に中毒のようにのめり込んでいた学生時代、「(伊坂作品)全部持ってるよ!」という知人に借りて、夢中で読んだ。当時は単行本だ。10年以上前になる。

    AXが単行本で出版された時、「グラスホッパーまるで覚えてないなあ。そこから読み直さないとなあ」なんて呑気に思っていたら、もうAXが文庫化されていて、月日の流れの速さに、愕然とした。

    時を戻そう。

    グラスホッパー、文庫版。

    …槿(あさがお)!!
    こんなにかっこよかったっけ?
    伊坂幸太郎が描く、知的でユニークで冷淡、なのにどこか人情深い勧善懲悪キャラクターは大好きで、最近の作品にはあまり出てこないから、とても懐かしい気持ちになりました。
    デビュー作の「オーデュボンの祈り」に出てくる、桜を思い出した。

    ここでがさごそと、本棚からボロボロになった「オーデュボンの祈り」を取り出してみる。

    伊坂幸太郎の初期作品の楽しみは、登場人物の、作品をまたがってのリンク。
    グラスホッパーでは、「神様のレシピ」と「田中」(いつだって足が悪い)にお目にかかれました。
    「オーデュボンの祈り」をぺらぺらと捲っていたら、当時、初めてこの作品に触れた時の衝撃と、それに紐づいた記憶、つまりは学生時代の、今の生活なんて全く想像していなかった頃の自分が走馬灯のように蘇ってきて、また読みたくなってきちゃって。
    AXへ向かうにはマリアビートルへ進まないといけないのに、気持ちがデビュー作にまで戻ってしまうとは。

    時を戻そう。

    • 大野弘紀さん
      漫画とか映画的ですよね
      また一から読み直すみたいな。

      漫画で、「魔王」があって、これには蝉とか槿とか鯨とか出てきますよ。


      ...
      漫画とか映画的ですよね
      また一から読み直すみたいな。

      漫画で、「魔王」があって、これには蝉とか槿とか鯨とか出てきますよ。


      私が好きなのは、
      どういう流れかは忘れたんですけど、

      主人公が槿に怒るんですよね。うろ覚えなんですけど、
      「だったらビートルズだってローリングストーンズだって解散なんかしないじゃないですか」みたいなことを車の中で言うんですよ。
      それで槿が笑って、「君は面白い」て言うんです。

      あと、「僕はけっこう頑張ってるんじゃないかな」てやつですね。
      これが根底にあるから、グラスホッパーはすごくすくわれている。
      2020/06/27
    • naonaonao16gさん
      大野弘紀さん

      「魔王」、小説は読みましたが漫画は知りませんでした。特に作品がリンクしているわけではないのに「グラスホッパー」の登場人物...
      大野弘紀さん

      「魔王」、小説は読みましたが漫画は知りませんでした。特に作品がリンクしているわけではないのに「グラスホッパー」の登場人物が出てくるんですね(´▽`)
      2020/06/27
  •  伊坂幸太郎さんの<殺し屋シリーズ>原点です。『AX アックス』→ 『マリアビートル』と真逆に読み、第一弾の本作は未読でした。また、近々シリーズ最新作『777 トリプルセブン』が刊行されるので、これは読んでおかねばと思いました。
     まぁ、それぞれ関連していても続編ではないので、独立した作品として本作も楽しめました。

     妻を殺された元中学教師「鈴木」が、復讐のため非合法組織《令嬢》に契約社員として潜入しますが、機会をうかがっている最中にターゲットが謎の男に殺されてしまいます。
     並行して、個性的な殺し屋たち 自殺偽装の「鯨」、ナイフ使いの「蝉」、押し屋の「槿(あさがお)」を巻き込み、復讐劇は予測不能な方向へ突き進みます。
     
     クルクルと「鈴木」「鯨」「蝉」の順に視点が切り替わり、それぞれのキャラと殺し屋のこだわり、会話が面白く、それらが交錯しやがて鮮やかに一つに収束していきます。物語の疾走感、緊迫感だけでなく、伊坂さんの言葉の力が魅力的で、目が離せません。

     グラスホッパーは、直訳で「芝を跳ねる者」・昆虫の(緑の)バッタ類のことのようです。
     作中では、押し屋が言います。
    <密集して暮らすバッタは、「群衆相」と呼ばれる黒色・凶暴化した変異種になる。人間も同じ。>

     人の心の闇や非常を描き、人間の傲慢さや世相への警鐘も含めた内容を、伊坂さん独特のセンスで提示している、とも受け止めました。が、難しいこと抜きに、十分に楽しめるエンタメ作品でした。

  • 本来、暴力シーンは苦手なので、そういう類いの本は読むときは限られるのですが、伊坂幸太郎氏は読後感がよいので読めてしまいます。
    前回のAXが面白かったので、殺し屋が登場するとわかりながら、この「グラスホッパー」に挑戦。

    いろんなエキスがちりばめられながら展開していき、最後はすべてが一つにつながる伊坂氏らしい作品。
    読後感もいいなぁと思い、星4つと思っていたら、、、

    他の方(るさん)の感想をみていると、、えぇっそういうことなの????
    付箋をしっかりつけながら読んでいたのに、全然気がついていなかった。
    本を読む自信がなくなるぐらい、ショックでした。
    すごい本でした。




    「兆候はあるんですよ。幻覚のしるしは。例えば街で立っている時に、目の前の信号の点滅がちっとも止まらなかったり、駅にいる時も、通過する列車がいつまで経っても通り過ぎない、とか、この列車ずいぶん長いなあ、なんて思ったら、まずい兆候ですよ。そういうのは全部、幻覚の証拠です。信号や列車は、幻覚のきっかけになりやすいんです。信号はたいがい見始めの契機で、列車は目覚めの合図だったりします。」

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

伊坂幸太郎の作品

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