- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043853014
感想・レビュー・書評
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梨木香歩を読んだのはこれが初めて。読む前は旅行記+青春小説みたいな物を想像して期待してたけど、途中からスピリチュアル要素が入り込んできて正直読むのがつらかった…。そういうの興味ないのよ…。でもそれを乗り越えて読破して良かった。村田くんがイスタンブールを思い出すラストシーンに心を打たれます。
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村田が日本に帰る前の夢
「その夜、変な夢を見た。
•••私は•••気心が知れるまでの間なのだ、若しくは全く気心が知れぬと諦めるまでの間なのだ、殺戮には及ばぬのだ、亜細亜と希臘世界を繋げたいと思ったのだろうが、もう既に最初から繋がっているのだ、見ろ、と懸命に説いている。」
多分、ここのアレキサンダー=(諸々の都合で動くという意味での)国、殺戮=WWⅠ、「最初から繋がっている」=イスタンブールで過ごした日々から出した村田の結論・感情
なんじゃないかなと思いました。
鸚鵡の口癖は未だに謎です。 -
梨木さんの本はどれも、最後に心のシーツに重しをストンと落とされたような気持ちになる。
読み方によっては、青春小説、ファンタジー、色んな捉え方ができる。曖昧なカテゴリーって意味では幻想小説かな?
村田君の夢の中で争う動物は、それぞれの国の『神』、言いかえれば『文化』がシンボライズされたもので、「滑稽だけどそれが歴史なんだなぁ」って興味深くもある。
読んだ後、博物館に行きたくなるような作品。 -
第一次世界大戦がはじまる前の時代、考古学を学びにトルコへ渡った村田氏の見聞録、のようなもの。
民族とは何か、信仰とは何か。
文化とは何か、国とは何か。
からくりからくさでも考えさせられたことを
この本で再び考えさせられた気がする。
日本人て何なのだろう。
日本人の基盤て何なのだろう。
今の日本人と、村田氏の時代の日本人は同じだろうか。
輸入してきた概念があまりにも多くて、無理をしているのではないだろうか。 -
『村田エフェンディ滞土録』すごく好きです。
エフェンディとは、学問を志す人のことです。
考古学を専門に学ぶ主人公の村田は、日本語のMURATAという発音が、MURATに似ていたからという理由で留学生に選ばれ、スタンブールにやって来ました。
時代的には、明治辺りのお話だと思います。
この話には、英国人でキリスト教徒のディクソン夫人、ドイツ人のオットー、ギリシャ人のディミトリス、回教徒のムハンマド、など信仰の異なる人々が登場するのですが、なんと言っても「鸚鵡(おうむ)」が良いのです!鳥の鸚鵡です。基本肉食ですが、イチジクが大好きです。絶妙なタイミングで一言を発する、賢いのか狡賢いのかわからない憎いやつです。
日本で無血革命とも呼ばれる明治維新が起こったように、スタンブールでも流血を最小限に防いだ革命を起こそうという活動が水面下で行われていました。
しかし、そんな努力にも拘わらず、人々は世界大戦に巻き込まれていきます。仲が良かった友達同士もそれぞれの故郷を守るために敵同士となり戦地に赴きます。
人は、人種や文化や宗教の違いを飛び越えて友達になることもできる。それなのに、そんな彼らの仲を引き裂き、戦争に駆り出してしまう「国家」とは一体何なのか。考えさせられる一冊です。 -
1899年、時は明治のお話。舞台はトルコ。
主人公村田は考古学の研究のため、彼の地に留学をしている。
同じ下宿先で出会った友人たちとの日常が、
一章一章のテーマに沿って、ゆるく区切られながら、書き留められている。
(しっかり分かれている印象はない。読点を打つ感じ。)
出てくる人たちがみな魅力的で、好きだ。
大家のディクソン夫人から、世話をやいてくれるトルコ人のムハンマドまで、
国籍も、宗教も、バラエティ豊かだ。
考え方の違いや、どうしても相容れないところも度々出てくるのだが、
すっと無理なく折り合っていて、その様もなんとも素敵だなと思う。
時代こそ、現代からは遠いが、
古い感じは全くしないし、村田が悩んだり考えたりしていることは、
今、自分が同じように考えなければいけないことだ。と思う。
逆に不思議なほど、そこは変わらない。
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素晴らしかった。としか言い様がありません。 バラバラな歴史と、文化と、宗教を持つ人間同士でも確かに絆を作るのは出来るのだと。 ディミィトリスと村田が一緒に出かける「馬」と、みんなで仲良く雪玉をぶつけ合う「雪の日」が好きでした。 最後の「日本」ではディクソン夫人の手紙と鸚鵡の言葉に泣きました。 「家守綺譚」の高堂、綿貫、ゴローが出てきて懐かしくなりました。
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歴史や文化について、考えさせられました。テーマがハッキリしていて、よかった。キャラクターもみんな魅力的で、好きです。
とても面白かったけど、読了後の感覚が、淋しかったです。
それは彼らの辿った道のせいでもあるけど、それに加えて親しみを持ったキャラクター達が、物語の終盤で、どんどんどんどん、遠いものに感じられていったからというのも大きいと思う。
まるで、この時代にタイムスリップしていたのに、一気に現代に引き戻されたみたいだった。ホームドラマみたいに身近だった人物が、いきなり歴史の中の一人になるのが切なかった。
視点を彼らのとても生活感のあるところから、ぐんと遠いところに持ってくることで、歴史もあたしたちみたいな普通の多くの人の生活からできたものなんだなあと感じられた。
そして、そのことが作品全体のテーマになっているように見えた。 -
心に刺さる話だった。歴史というものに対してどうやって向き合っていくか、もう一度考えたい。もっと早くよむべきだったな。この人の作品に出てくる「ちょっとした不思議」はすごく品があって、すてき。