本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784043854011
作品紹介・あらすじ
池田小学校事件の衝撃から一気呵成に書き上げた表題作はじめ、ささやかで力強い回復・再生の物語を描いた必涙の短編集。人生の道程は時としてあまりにもハードだけど、もういちど歩きだす勇気を、この一冊で。
感想・レビュー・書評
-
1.著者;石田氏は小説家。子供の頃から本を読む事が好きで、図書館から朝に借りた本を夕方返し、また別の本を借りるを繰返していた。特に好きだったのは、ハヤカワ文庫などのSF・ミステリーだったそうです。コピーライターとして広告代理店に勤務後、36歳の時に小説家を目指し、数々の新人賞に応募。「池袋ウエストゲートパーク」で、オール読物推理小説新人賞を受賞。
2.本書;帯コメントから。「苦しみから立ち上がり、うつむいていた顔を上げて、まっすぐに歩き出す人々の姿を色鮮やかに切り取った、絶対泣ける短編集」。「約束」「青いエグジット」「天国のベル」「冬のライダー」など、7短編。喪失した時間が再び動き出す(人生は紆余曲折)。
3.個別感想(印象に残った記述[シーン]を3点に絞り込み、感想を付記);
(1)『第7話;ハートストーン』から、「(医師)お子さんは髄芽腫という小児脳腫瘍にかかっておられます」「(健吾)どうして、僕だけがこんな目に会うんだよ。誰にも悪い事してないし、まだ小学生なのにさ。社会の時間に先生が言ってる事なんか、みんな嘘だ。人は全然平等なんかじゃない・・」「小さなハート形の石(祖父の「健吾との思い出の詰まった石」)には、二人の心を落ち着かせる不思議な力があった」「手術は成功しました」「(健吾の母)お父さん、健吾を守ってくれて、ありがとう」。
●感想⇒この話は、小児脳腫瘍を患った研吾(主人公)が、祖父からもらった石で、手術に成功するという話。「僕だけがこんな目に会うんだよ。誰にも悪い事してないし、・・人は全然平等なんかじゃない・・」。辛い言葉ですね。人は、平等という言葉を使いがちです。しかし、人間は、生まれた時から不平等な点があるのも事実です。身体的不平等、経済的不平等、人間的不平等・・挙げればきりがありません。そう思ってしまうと、将来に希望が持てなくなります。私は思うのです。先ずは、この世に生を受けた事に感謝すべきです。経済的不平等などは、高望みせずに身の丈に合った生活をすれば良いのです。しかし、小児脳腫瘍という病魔には、私達は無力です。回復を祈るしか術がありません。本話では手術に成功し、喜びで終わっています。そうではないケースもあり、運命のなせる業としか言いようがないでしょうか。
(2)『第5話;夕日へ続く道』から、「中学校の半年は何とか切り抜けたが、二学期の後半から雄吾は学校を休み勝ちになっていた」「(源ジイ)俺が兄ちゃん(雄吾)にやってもらいたいのは、ただ一つだ。・・そろそろ中学校に戻ってくれ。・・やっぱり中学校は大切だ。兄ちゃんは頭だっていいし、優しい所もある。・・俺みたいになっちゃだめだ。ちゃんと勉強して、俺より偉くなってくれ。世間を広く見て、俺や家の息子より、立派な人間になってくれ」「(雄吾)約束だから。学校には行く」。
●感想⇒この話は、不登校になった雄吾(主人公)が、廃品業を営む源ジイの仕事を手伝う中で、変わっていく姿を描く話。2024年、不登校の小中学生が、過去最多の35万人となり、4割が専門的な指導受けられない、と言われています。不登校とは、年間30日以上学校を欠席している状態だそうです。この定義からすると、私も小学低学年の時に不登校でした。私の場合、幼稚園に行かずに育ってきたので、友達がおらず人見知り少年でした。なので、小学校入学後、いじめを受け、学校に行かない日が続いても、祖母に「そんな学校に行かなくてもいい」と言われ、休む日が続きました。それを救ってくれたのが恩師の言葉です。「人に負けない強みを持ちなさい」でした。幸い、勉強特に算数が好きで、不登校を克服しました。雄吾も源ジイの励ましに勇気をもらっています。不登校の子らには、何か立直るキッカケが有るといいですネ。
(3)『第1話;約束』から、「(カンタ)死んじゃった。僕は生きているのに、ヨウジは死んじゃった」「ヨウジは最後に僕を守ってくれました。僕の代わりに死んじゃったんです。おじさん、おばさん、ごめんなさい」「(夢の中のヨウジ)冴えなくても、何でもいいからカンタにこれからたくさんのものを見て、経験して、大人になってほしい。それでいつまでも僕を忘れないで欲しい。・・僕はカンタの一部になれるんだ。二人で一緒にもっと生きよう。・・カンタには自分自身と僕の為に生きてほしい。僕はカンタともっと生きたいよ」。
●感想⇒この話は、暴漢から、ヨウジ(親友)がカンタ(主人公)を庇って、死んでしまったという話。カンタは、重度のPTSDとなり、死に場所を探します。町をさまよっている時に、ヨウジが現れ、「カンタには自分自身と僕の為に生きてほしい」と言われ、自殺を思い止まります。ヨウジとの約束を守るために、登校を再開する。自分を庇って目の前で、最愛の友人を亡くす、という場面に遭遇したら、誰もが重度のショックを受けて当たり前です。死に場所を求めて歩き続けるカンタには涙あるのみで切ないです。この状態の時、どう接すれば良いか・・私は、頭を抱えるばかりです。私も、中学の時に友人を亡くしました。彼は、文武両道の秀才で、クラスの人気者でしたが、突然入院したのです。白血病でした。当時の医療では救いようがなく、早い死でした。神はいないのかと、私なりに悲しみました。それにしても、カンタが覚醒した事には他人事とは思えず、涙が止まりません。人はいつか死ぬ、分かっていても辛いですね。
4.まとめ;この7短編は、でどこにもありそうな話です。どれも、悲惨な結末作品とは真逆の希望に繋がる終わり方です。現実はそんなハッピーエンド的な事ばかりでは無いと思いますが、石田氏の優しさが伝わります。さて、私が、上記の3つの感想で、第一話の「約束」を最後に書いたのは、衝撃と感動です。石田氏が、この短編集の依頼を受けた際に蘇ったのは、2001年に起きた「池田小学校事件」だそうです。暴漢による無差別殺人で、8人の児童が亡くなりました。同級生はもとより、多くの関係者の心の傷は、今でも癒えていないでしょう。この事件を想起する「約束」で、責められるべきは暴徒なのに、友人を亡くしたカンタが自分を責め続ける描写には、心を揺さぶれます。私も、白血病で余りにも早く逝ってしまった❝友人❞の事を、今でも思い出します。辛い経験を抱え、人は生きているのですネ。(以上)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ひとり桜、は不思議なお話だった。ふわーっと終るかとおもえば、ラストは幸せの予感で良かった。
-
短編集。良い作品だと思いますが短編過ぎて物足りなさも感じます。
-
苦しみから立ち直り再び前を向いて歩き出そうとする人々を描いた短編集。左足を事故で失った息子がダイビングを始める『青いエグジット』、不登校の中学生と廃品回収のおじいさんとの友情描く『夕日へ続く道』に心を揺さぶられた。『天国のベル』も良かった。いかにもフィクションな展開だが、遺された家族が幸せに暮らせるのならこんな奇跡が起きても良いと思う。傷ついたり心が疲れている時に読むのがオススメ。
-
最初の話は良かったものの、途中からほぼ終わりの方までは"毒にも薬にもならない…"という感想を書くつもりでした。ところが、最後の一編でそれがまた180度変わりました。涙が溢れました。帰宅途中で読んでしまい大失敗でした。
-
「天国のベル」は心に響きました。出張中の車内で泣いちゃいました。我が子が小学校の時を思い出して、可愛かったなぁともシミジミと(^^)
-
石田衣良の短編集。短編集はあまり読まなかった。一つの話を長く深く読みたいから。
しかし、最近忙しくちょっとした隙間に読むことができる短編集がとても良い。当たり前のことだが、自分の時間によって読みたい本も変わる。
石田衣良の本は読んだことはなかった。
読んでいて思ったのは情景の描写がとても繊細であること。
主人公が、子供から大人まで様々な状況なので読む年齢や状況によってどの話が好きか分かれそうである。
好きな作品はこの3つ。
私が最も涙腺を緩くしたものはハートストーンだ。ありがちな展開でもあるが、そこがいい。大どんでん返しがないからこそ、小説の少しのリアルに胸を締め付けられる。
青いエグジットも良かった。リアルに近い感じがする。五体満足で一生を終える人ばかりではない、出世街道まっしぐらの人ばかりではない、そんな誰にでも起こりうる人生の事柄。マイナスに感じることの中でそれが交互に組み合わさり人の原動力にもなるんだと思わされた。
この父謙太郎はリストラ研修にいかされているが、人間性はとても立派で覚悟のある人と感じた。
天国のベルはリアルからは遠いところがある。ありえないファンタジーはあまり好きではないが、この作品はそうだといいなと思わされた。夫の不倫事故で夫を失った主人公と夫と離婚協議中の2人は学生時代なら仲良くなってなかったかもしれない。人の縁は不思議なもので、決して善の感情ばかりで仲良くなるわけではないし、負の感情で結びついて関係性を築くこともあるなと思った。
-
「約束 石田衣良」
2006年9月頃
僕の声はでかいわけでもないが、よく通るらしい。
5Fフロアのちょうど真ん中あたりに座っている僕は、
部署の人との会話がよく筒抜けになっているらしく、
ある日は「給料が安い。やっていけない・・」とぼやいたら、
3日後に人事部長に呼び出され、1時間会議室で説教され、
吐きそうになった。
ということで、
「最近、家で暇なときなにやっとるん?」って聞かれて、
「読書」
「珍しい・・なにをよんどるん?」って聞かれて、
「石田衣良」って言ったら、翌日、僕のとなりの空いている席(物置代わり)に、
この本が置いてあった。
1日は誰のか知らないから、放っておいたけど、
誰もなんで置いてあるか知らないっていうので、頂戴しました。
ありがとう。面白かったです。
それにしても「衣良」がいっぱつで変換できん。
-
久々に石田衣良読んだんですが、面白かった!!!!石田衣良作品の中でもナンバーワンを争うほどに面白かった!短編だけど読み応えあり!!!
実際の事件を目の当たりにして書き出したというこの一冊。なんだかそれぞれの事件なり苦悩がより身近に感じられるものでした。
涙無しでは、、、というほどのものではないけど、なんとなく辛く険しい道のりをそれぞれ強く歩んで行く姿に、そっと寄り添うような気持ちになる。
他人の不幸として読んでかわいそうかわいそうと涙するってよりは、大変だろうけど頑張ってみますか!って気持ちにさせてくれる一冊でした!!! -
-
2001年に発生した無差別殺人事件に作家として出来る事はと悩んだ著者が紡ぎ出した表題作。主人公のカンタとヨウジは、後に別作の長編「カンタ」で設定を変えて、波瀾万丈の青春を生き抜く。
泣ける小説が苦手な人にこそ読んで欲しい、人間のレジリエンスの短編集。 -
まず、本の表紙が気に入りました。
内容もあたたかく、とても読みやすかったです。
私は『天国のベル』という話が1番好きです。 -
【読了】
7つの物語が入った短編集。
全部、最後には心が柔らかく、
あったかくなれるようなお話ばかりです。
※
でも、最後の最後、
7つめの物語は
『優しさに心がえぐられる』
って感じです。
それは決して不快では無く、
強さを与えてくれるような感じ。
とてもオススメです。
#石田衣良 #約束 -
大阪府池田小学校の児童殺傷事件を知った著者が、被害にあった子どもたちにエールを送るために書いた短編小説集です。心の傷を負った人が、新しい一歩を踏み出す物語7編を収めています。
第1話「約束」は、尊敬している友人を通り魔に殺された少年が、PTSDに苦しみながら、友人の励ましの声を聞くことで、もう一度生きようと決意する話。
第2話「青いエグジット」は、片足を失って以来、何に対しても気力を失ってしまった少年が、ダイヴィングに興味を示し、両親が彼を支える物語。
第3話「天国のベル」は、夫が浮気相手と旅行中に事故にあって死亡した後、2人の間にできた子どもが突発性難聴に陥り、やがて彼を通じて夫の最後のメッセージが妻のもとに届けられる話です。
第4話「冬のライダー」は、モトクロスを始めたばかりの青年が、ライダーの夫を失った女性の指導を受けることになり、彼女の心がしだいに開かれていく話。
第5話「夕日へ続く道」は、不登校の少年が廃品回収業の老人の手伝いをし、彼の話を聞くことで、もう一度学校へ行く決意をする話。
第6話「ひとり桜」は、写真家の男が一人の未亡人と知り合う話。ある意味で、一番著者らしいストーリーではあります。
第7話「ハートストーン」は、脳腫瘍が見つかった少年のため、父親が自分の命を縮めてでも息子の手術の成功を祈り続ける話。
「天国のベル」は、あざといストーリーだと思いながらも、やっぱり泣いてしまいます。 -
そういや石田衣良の本ちゃんと読んだの初かも。
涙が出るほどの感動はできなかったけど、
心温まる本だった。
「天国のベル」と
「ハートストーン」が好き。 -
全体的には凄い面白かったとは言いにくいけど、前半と最後の話は少し涙が出た。
青いエグジットと天国のベル良かったな。約束とハートストーンも泣けた。
短編だけど私は少し物足りなさを感じたかも。どんどんページをめくれた訳ではなかった。
でも、心に染みる話は本当に涙が出るし、読んで損はないです。 -
歳を取ると、涙腺が... (つД`)
一度落ちて、でもまた立ち直って行く
人の心や思いの強さを描いた短編集。
「感動しやがれ」と大上段に構えず、
淡々とした描写が心地よい。
また、各作品とも、登場人物の
立ち直るきっかけと言うか
「ターニングポイント」が
きちんと描かれているのがいい(^ ^
世の中も人間も、まだまだ捨てたもんじゃない、
という気にさせてくれる一冊(^ ^
素直に感動しましょう(^ ^ -
子供って繊細。それで心の病を患うこともある。
不倫の末、事故で死んでしまった夫のことを、恨んでいるように見せかけても、ホントは、好きで好きでたまらない。そんな気持ちを押し殺すように生きてきたけど、大人も子供も我慢しなくていいんだよね。
自分の感情に素直になることが幸せの秘訣なのかもしれない。いつまでも、素敵な夫として天国で見守っててほしいな。(天国のベル)
不幸って重なることがある。しかも、自分にだけ。世界で自分だけが不幸なんじゃないかって。
でもね、その中でも、あったかくて、幸せになれる気持ちってあるんだなぁって、感じることができた。自分も、知らない間に、たくさんの人の温かい気持ちに支えられていたのかもしれない。家族のこと、もっと大切にしなきゃな。後悔は、先にすることはできないんだから。(ハートストーン) -
今日読み終わった本は 石田 衣良 【約束】
ドラマで美丘ー君がいた日々ーが良かったので読んでみようと思って買ってみました
池袋ウエストゲートパークもこの人ですね
感動できる短編が7つ入っています
全部短編とは思えないほど凄く濃い内容でした
家族がメインの短編ですが、どれもこれもいい
親友を突然失った男の子、リストラに晒され、息子に侮蔑されながらも日常に踏みとどまり続ける父、不登校を続ける少年が出会った廃品回収の老人、女で1つで仕事を抱えながら育てた息子を襲った思いがけない病____苦しみながら立ち上がり、もう一度人生を歩き出す人々の姿を鮮やかに切り取った短編集。
天国のベル と 夕日へ続く道 と ハートストーン が特に良かったです
あとがきも良かったなぁ
この本は泣ける -
泣ける本…っと言うことで読んでみました。
短編が入っています。
「天国のベル」が一番良かったかな^^
著者プロフィール
石田衣良の作品
本棚登録 :
感想 :
