ひと粒の宇宙 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043854042

作品紹介・あらすじ

ページを繰れば、てのひらの上に広がる∞(無限大)-。わずか10数枚の原稿用紙に展開される、ドラマティックな小宇宙。祖父の通夜の席に忽然と現れた猫(「ミケーネ」)。単身赴任最後の1日(「それでいい」)。すり抜けてゆく固有名詞(「名前漏らし」)…。当代きっての匠の筆30作が競演する、この上なく贅沢なアンソロジー!所要時間各数分、ジャンル横断現代文学・各駅停車の旅。

感想・レビュー・書評

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  • 30人もの作家さんを贅沢に使い作られた短編集。一つの話が長くて10ページ程だが、勿体ないので通勤途中に1日一作ずつゆっくり味わって読んだ。
    多くの作家さんの中でも一握りの30人だが、その作品は広大で、まさにタイトル通り「ひと粒の宇宙」といった感じ。しかし、広大過ぎて(笑)自分にヒットするのは、最初のいしいしんじさんの作品と最後の吉田篤弘さんの作品だけだった。でも、100人が読めば100通りの捉え方があるだろう。広大な宇宙のひと粒の星を見つけに読んでみてください。

  • 国語のテストみたいな短編集だった。印象深い話もあったけど全く覚えてない。頭の切り替えが大変だった。

  • 名のある作家30人の豪華なアンソロジーだ。 (私は)残念ながらあまり印象に残る作品に出会えなかったが、唯一、人の言葉が結晶化するお話は綺麗で好き。

  • 表紙とタイトルに惹かれて手に取ったけど、私が期待した内容ではなかった。
    最後の吉田篤弘の「曇ったレンズの磨き方」はよかった。

  • 短い作品を集めた短編集です。
    印象に残る作品がいくつかありました。

    『ミケーネ いしいしんじ』

    祖父の通夜での話。
    参列者の中に猫のお面をかぶっている人がいた。
    よくよく見てみると正真正銘の猫だった。

    私は声をかけた。
    猫は自分はミケーネという野良猫だと自己紹介した。
    生前故人様に大変お世話になったのでお邪魔させてもらったのだという。
    なんでもミケーネの一族のすみかは街中になるバッテイングセンターの近辺にあるのだが、
    路上にチューインガムの吐き捨てが多いのだそうだ。
    ガムの吐き捨ては猫にとって死活問題らしい。
    前足についたガムに気づかずに顔を洗ってしまうと大変なことになる。
    目をやられた子猫も多いのだという。
    どうやら祖父はそのチューインガムを時折除去していたらしい。
    ミケーネの一族はとても感謝しているということだ。
    それで無礼を承知で人間様の葬儀に参列したのだという。

    祖父は生前我々身内にとってよくわからない人だった。
    無口であるうえに見た目も威厳があった。
    家族といえども近づきがたい人間だった。

    しかし身を寄せてくる小さきものには呆れるほど鷹揚だった。
    祖父の肩や頭上にはいつも蝶や蜂がとまっていた。
    草履の上ではカエルや鈴虫が休んでいた。
    そんな場面を思い出した。

    鍾馗のようないかめしい祖父の遺影に向かって
    ミケーネは背を丸め一礼し、
    ぺろりと舐めた掌に香をまぶしてはらはらと振った。
    慣れていない動作なのだろうがきちんとした焼香だった。
    おそらく事前に何度も練習してきたのだろう。
    私はそうまでしてもらえる祖父を誇らしく思った。

    『たすけて 高橋克彦』

    この話はゴーストストーリーです。
    亡くなった母親の幽霊が病院に出るということで
    娘が確かめにいく。
    すると生前、母親が何度も口にした
    「なっちゃん、たすけて、早く来て」という声が聞こえる。
    娘はその部屋の中に入る。
    そして、その「たすけて」という言葉の真の意味を知るんですね。

    これ以上書くとネタバレになるので書きませんが、
    ゴーストストーリーというのは
    怖がらせるばかりではなくて人を癒す力があります。
    だから人は昔から幽霊の話を語り続けるのだと思います。
    この短い話、多くの人の痛みを伴った共感を呼ぶのではないでしょうか。
    2016/11/12 12:22

  • この本は、偶然なのか全部「死」を扱っている気がする。ドラマティックな物語、を書こうとすると、そうなるのかな。
    いしいしんじ「ミケーネ」
    伊集院静「仔犬のお礼」
    大岡玲「ピクニック」
    大崎善生「神様捜索隊」
    小池昌代「名前漏らし」
    高橋克彦「たすけて」
    蜂飼耳「繭の遊戯」
    堀江敏幸「樫の木の向こう側」
    吉田篤弘「曇ったレンズの磨き方」
    ・・・このあたりが好み。この世ならざるもの、異世界など、あるいは、現実的なものなら騒がしく物語が展開するのではなく、淡々と日常がすぎるようなもの。あんまり現代小説を読まないので、色んな作家のお試し読みができるいいガイドブックだった。

  • 30作品を著者名順に並べてあります。
    「え、その後どうなるん?」という話や、さっぱり狙いがわからない話も結構多いのですが、待合本にはちょうどよかったですね。

    カバーデザイン / 國枝 達也(角川書店装丁室)
    初出 / 『極上掌篇小説』改題

  • 可もなく不可もなし的な小粒な作品ばかりだった印象だが、いしいしんじ、大岡玲、車谷長吉、嶽本野ばら、筒井康隆、西村賢太、又吉栄喜はよかった。いしいしんじと大岡玲の作品以外は再読だったんだけど。一番好きなのはやはり西村賢太の作品かなぁ。

  • こういう小説の場合、レビューをするのが難しい……。
    とにかく、言えることは、色んな世界が広がっていて、好きも嫌いもあって、でも、とても良かったってこと。
    例えば、自分が子供の頃、親戚や父の仕事関係の人からもらったゴディバの一口サイズの色んな種類のチョコレートが敷き詰められたコレクションシリーズの様な。とても美味しいのに、一口で食べてしまえる小ささ、同じものを探してももう残っていない。だから他のものを食べる。これも美味しい。他のも食べるみる。苦くて美味しくない。違うのを食べてみる、苦くないけど甘くなくてなんかよくわからない。
    自分が本作を読んだときに感じたのはこういう感覚だった。だから、順番を収録順とは違う読み方をすれば、もっと味わいも違ったのだろうと思う。でも結局のところ、どんな過程があっても、最後は良かったと思える、そんな一冊だった。
    個人の好みをあげたところで、それは蛇足。きっと、一人は好きになる作家が、好みの物語が、あるはず……。

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著者プロフィール

1958年生まれ、東京外大卒。「黄昏のストーム・シーディング」で三島由紀夫賞。「表層生活」で芥川賞。小説執筆の他に書評、美術評論、ワインエッセーなど幅広い分野で活躍。「本に訊け!」「男の読書術」「ワインという物語 聖書、神話、文学をワインでよむ」などの著作がある。東京経済大教授。





「2022年 『一冊に名著一〇〇冊がギュッと詰まった凄い本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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