ひと粒の宇宙 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043854042

作品紹介・あらすじ

ページを繰れば、てのひらの上に広がる∞(無限大)-。わずか10数枚の原稿用紙に展開される、ドラマティックな小宇宙。祖父の通夜の席に忽然と現れた猫(「ミケーネ」)。単身赴任最後の1日(「それでいい」)。すり抜けてゆく固有名詞(「名前漏らし」)…。当代きっての匠の筆30作が競演する、この上なく贅沢なアンソロジー!所要時間各数分、ジャンル横断現代文学・各駅停車の旅。

感想・レビュー・書評

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  • 30人もの作家さんを贅沢に使い作られた短編集。一つの話が長くて10ページ程だが、勿体ないので通勤途中に1日一作ずつゆっくり味わって読んだ。
    多くの作家さんの中でも一握りの30人だが、その作品は広大で、まさにタイトル通り「ひと粒の宇宙」といった感じ。しかし、広大過ぎて(笑)自分にヒットするのは、最初のいしいしんじさんの作品と最後の吉田篤弘さんの作品だけだった。でも、100人が読めば100通りの捉え方があるだろう。広大な宇宙のひと粒の星を見つけに読んでみてください。

  • 30篇の掌編小説集

    ミケーネ いしいしんじ 著
    おねがい 石田衣良 著
    仔犬のお礼 伊集院静 著
    永遠の契り 歌野晶午 著
    ピクニック 大岡玲 著
    神様捜索隊 大崎善生 著
    目覚まし時計の電池 片岡義男 著
    立ち話 勝目梓 著
    夜尿 車谷長吉 著
    猫雨 玄侑宗久 著
    名前漏らし 小池昌代 著
    焼き鳥とクラリネット 佐伯一麦 著
    あり得ること 佐野洋 著
    それでいい 重松清 著
    たすけて 高橋克彦 著
    凍りつく 高橋源一郎 著
    パリの君へ 高橋三千綱 著
    pearl parable 嶽本野ばら 著
    出世の首 筒井康隆 著
    悪夢 西村賢太 著
    関寺小町 橋本治 著
    繭の遊戯 蜂飼耳 著
    義足 平野啓一郎 著
    あたしたち、いちばん偉い幽霊捕るわよ 古川日出男 著
    雛 星野智幸 著
    樫の木の向こう側 堀江敏幸 著
    コイン 又吉栄喜 著
    彼女の重み 三田誠広 著
    globefish 矢作俊彦 著
    曇ったレンズの磨き方 吉田篤弘 著

  • 国語のテストみたいな短編集だった。印象深い話もあったけど全く覚えてない。頭の切り替えが大変だった。

  • 名のある作家30人の豪華なアンソロジーだ。 (私は)残念ながらあまり印象に残る作品に出会えなかったが、唯一、人の言葉が結晶化するお話は綺麗で好き。

  • 表紙とタイトルに惹かれて手に取ったけど、私が期待した内容ではなかった。
    最後の吉田篤弘の「曇ったレンズの磨き方」はよかった。

  • 短い作品を集めた短編集です。
    印象に残る作品がいくつかありました。

    『ミケーネ いしいしんじ』

    祖父の通夜での話。
    参列者の中に猫のお面をかぶっている人がいた。
    よくよく見てみると正真正銘の猫だった。

    私は声をかけた。
    猫は自分はミケーネという野良猫だと自己紹介した。
    生前故人様に大変お世話になったのでお邪魔させてもらったのだという。
    なんでもミケーネの一族のすみかは街中になるバッテイングセンターの近辺にあるのだが、
    路上にチューインガムの吐き捨てが多いのだそうだ。
    ガムの吐き捨ては猫にとって死活問題らしい。
    前足についたガムに気づかずに顔を洗ってしまうと大変なことになる。
    目をやられた子猫も多いのだという。
    どうやら祖父はそのチューインガムを時折除去していたらしい。
    ミケーネの一族はとても感謝しているということだ。
    それで無礼を承知で人間様の葬儀に参列したのだという。

    祖父は生前我々身内にとってよくわからない人だった。
    無口であるうえに見た目も威厳があった。
    家族といえども近づきがたい人間だった。

    しかし身を寄せてくる小さきものには呆れるほど鷹揚だった。
    祖父の肩や頭上にはいつも蝶や蜂がとまっていた。
    草履の上ではカエルや鈴虫が休んでいた。
    そんな場面を思い出した。

    鍾馗のようないかめしい祖父の遺影に向かって
    ミケーネは背を丸め一礼し、
    ぺろりと舐めた掌に香をまぶしてはらはらと振った。
    慣れていない動作なのだろうがきちんとした焼香だった。
    おそらく事前に何度も練習してきたのだろう。
    私はそうまでしてもらえる祖父を誇らしく思った。

    『たすけて 高橋克彦』

    この話はゴーストストーリーです。
    亡くなった母親の幽霊が病院に出るということで
    娘が確かめにいく。
    すると生前、母親が何度も口にした
    「なっちゃん、たすけて、早く来て」という声が聞こえる。
    娘はその部屋の中に入る。
    そして、その「たすけて」という言葉の真の意味を知るんですね。

    これ以上書くとネタバレになるので書きませんが、
    ゴーストストーリーというのは
    怖がらせるばかりではなくて人を癒す力があります。
    だから人は昔から幽霊の話を語り続けるのだと思います。
    この短い話、多くの人の痛みを伴った共感を呼ぶのではないでしょうか。
    2016/11/12 12:22

  • この本は、偶然なのか全部「死」を扱っている気がする。ドラマティックな物語、を書こうとすると、そうなるのかな。
    いしいしんじ「ミケーネ」
    伊集院静「仔犬のお礼」
    大岡玲「ピクニック」
    大崎善生「神様捜索隊」
    小池昌代「名前漏らし」
    高橋克彦「たすけて」
    蜂飼耳「繭の遊戯」
    堀江敏幸「樫の木の向こう側」
    吉田篤弘「曇ったレンズの磨き方」
    ・・・このあたりが好み。この世ならざるもの、異世界など、あるいは、現実的なものなら騒がしく物語が展開するのではなく、淡々と日常がすぎるようなもの。あんまり現代小説を読まないので、色んな作家のお試し読みができるいいガイドブックだった。

  • 30作品を著者名順に並べてあります。
    「え、その後どうなるん?」という話や、さっぱり狙いがわからない話も結構多いのですが、待合本にはちょうどよかったですね。

    カバーデザイン / 國枝 達也(角川書店装丁室)
    初出 / 『極上掌篇小説』改題

  • 可もなく不可もなし的な小粒な作品ばかりだった印象だが、いしいしんじ、大岡玲、車谷長吉、嶽本野ばら、筒井康隆、西村賢太、又吉栄喜はよかった。いしいしんじと大岡玲の作品以外は再読だったんだけど。一番好きなのはやはり西村賢太の作品かなぁ。

  • こういう小説の場合、レビューをするのが難しい……。
    とにかく、言えることは、色んな世界が広がっていて、好きも嫌いもあって、でも、とても良かったってこと。
    例えば、自分が子供の頃、親戚や父の仕事関係の人からもらったゴディバの一口サイズの色んな種類のチョコレートが敷き詰められたコレクションシリーズの様な。とても美味しいのに、一口で食べてしまえる小ささ、同じものを探してももう残っていない。だから他のものを食べる。これも美味しい。他のも食べるみる。苦くて美味しくない。違うのを食べてみる、苦くないけど甘くなくてなんかよくわからない。
    自分が本作を読んだときに感じたのはこういう感覚だった。だから、順番を収録順とは違う読み方をすれば、もっと味わいも違ったのだろうと思う。でも結局のところ、どんな過程があっても、最後は良かったと思える、そんな一冊だった。
    個人の好みをあげたところで、それは蛇足。きっと、一人は好きになる作家が、好みの物語が、あるはず……。

  • 短いお話が30篇。
    ひと粒ずつ宇宙に散りばめられた1冊。
    好みのお話は少なかったけど、色々な作家さんのお話を少しずつ読めて面白かった。

    いしいしんじ「ミケーネ」、大岡玲「ピクニック」、吉田篤弘「曇ったレンズの磨き方」がよかった。

  • 宇宙とかSF的な話なのかと思って読んだら全く関係なかった‥。最初のいしいしんじが良かったのと短いのとで全部読んだけど。

  • 内容がどうということはないほど短い作品たち。

    名前の順だったことが何より印象的でした。

  • この本の中にあるお話は、
    私の好みに合うものが多かった。

    1人ずつの感想


    いしいしんじ
    さようなら、
    こちらこそありがとう。

    石田衣良
    愛かぁ~

    伊集院静
    この感想を書くうえでは、
    絆という言葉も安く感じるなー
    短い文章なのに、
    泣きそうになった。

    歌野晶午
    切ないけど美しくもあるのか?
    なんだか、そうなるために、
    そうなるようにできてたのかしらね。

    大岡玲
    え、、、まじ?

    大崎善生
    散歩しようかな。

    片岡義男
    はい、すいません。

    勝目梓
    続くなぁ。
    集中しすぎちゃうと、
    全体が見えないもんね。

    車谷長吉
    ある!そういうのある!

    玄侑宗久
    ほうううう。
    中途半端、、か、、。

    小池昌代
    んん?え、何?
    何かこわい、、、
    何かの名前を自分が忘れるんじゃなく、
    名前が自分を忘れる、、、
    ちょっとこわくなった。

    佐伯一麦
    あ、、、予想と違った。
    余所者ね~。
    暖簾の意味が分からない私、、

    佐野洋
    あーーー。おぉ。
    そうだよね。
    物事には色んな側面があるものね。

    重松清
    後からじんわりくるね。
    やっぱ。

    高橋克彦
    母親の愛情って、
    いつだって深くて強い。

    高橋源一郎
    なに?なに?え?笑
    高橋源一郎さんは短編しか読んだことないけど、好きです。

    高橋三千綱
    彼は、本当に優しい人で、
    彼のお母さんもそうで、
    過去の経歴では
    その人が、本当はどんな人なのか、
    分からないんだ。
    必ずしも悪い人だとは言えないんだよねー。

    嶽本野ばら
    ほーーーーん。
    途中から想像ついたけどさ、
    そか!それ忘れてたー!
    みたいな。

    筒井康隆
    ほうう!?
    んなあ!?
    ほほっ!

    え?

    西村賢太
    自分の働いてた店を思い出しつつ。
    ゴミ捨て場のミッキー元気かな。

    橋本治
    ギャルが文学になってる。

    蜂飼耳
    でも、理解されなければ
    意味がない、とも思う。

    平野啓一郎

    古川日出男
    楽しすぎる。
    そんな風にゲットできるのなら
    私も頑張るのに。

    星野智幸
    おっつ。
    おや?
    羽ばたけ~

    堀江敏幸
    大切だと思っていても
    繋がりが途切れたり。
    どういう顔して会えばいいか
    おなじ気持ちで会えるか
    変わってしまってないか。
    でも、会えるだけいいよね。

    又吉栄喜
    女ってすごいな。
    人によって、こんなにも人生って変わるのかぁー。

    三田誠広
    女ってこわーい。
    きゃぴきゃぴしてるほうが
    可愛げがあるな。

    矢作俊彦
    そうかーたしかに。
    国で違うもんなー。

    吉田篤弘
    私のひとり言は、もはや会話だからなー

  • どのお話も秀逸。本当に一話一話きらきら光っているようでした。短い分、その場面の登場人物の気持ちがより理解できる気がした。あまり短編って読まないけど、こういうものなのかな。

  • 短編が全部で30作入っている。おっと思うともう終わってしまう短いモノばかりだけど、それでも作家の特徴は出てくる。
    一番短いのは見開き1ページだけど、それでもひとつの作品として十分な長さである。

  • 中でも平野啓一郎さん「義足」と 重松清さん「それでいい」がよかった。
    「義足」は凄いなぁ、の一言。
    「それでいい」は、日本サラリーマンのお父さんの哀愁というか。これってあるよなぁ、と。

  • ザ・アンソロジーと言える1冊。
    とにかく贅沢。とにかく芳醇。
    短編小説の醍醐味を久々に味わいました。素晴らしい!
    新年1番にこの作品に出逢えるなんて、幸先いいとはこのことです。

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著者プロフィール

1958年生まれ、東京外大卒。「黄昏のストーム・シーディング」で三島由紀夫賞。「表層生活」で芥川賞。小説執筆の他に書評、美術評論、ワインエッセーなど幅広い分野で活躍。「本に訊け!」「男の読書術」「ワインという物語 聖書、神話、文学をワインでよむ」などの著作がある。東京経済大教授。





「2022年 『一冊に名著一〇〇冊がギュッと詰まった凄い本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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