フリークス (角川文庫)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年4月23日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043855049
作品紹介・あらすじ
「J・Mを殺したのは誰か?」-巨大な才能と劣等感を抱えたマッドサイエンティストは、五人の子供に人体改造術を施し、"怪物"と呼んで責め苛む。ある日、惨殺死体となって発見されたJ・Mは、いったいどの子供に殺されたのか?小説家の「私」と探偵の「彼」が謎に挑めば、そこに異界への扉が開く!本格ミステリとホラー、そして異形への真摯な愛が生みだした、歪み真珠のような三つの物語。
感想・レビュー・書評
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あぁ怖い。
なぜこんな夢に出てきそうな表紙の本を手にとってしまったのか。
もう読み終わって返却したけれど、家にある間、何となく気味が悪くて仕方がなかった。
どれも精神病院を舞台とした中編のミステリー仕立て。
精神病棟の母の元を訪れる浪人生。
自分は妻だったのか愛人だったのか…、大火傷を負い記憶を失った患者の日記。
そして患者が書いたという電波な推理小説。
畸形の描写だけでもちょっとエグイです。そしてオチにまたぞくっとする。
夜中にレビューなんて書いてたら、また背中が寒くなってきました。
綾辻さん、しばらくはおさらばです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
Anotherを読んで、綾辻作品が気になり、表紙買い。
短編集なんで、あっさりと読み終わりました。
綾辻さんの作品は気をつけないと引っ張られる感がありますね…この作品も然り。
実際には90年代に書かれた作品にもかかわらず、それを感じさせないのは、精神病棟という設定だからかな。
館シリーズも大好きだけど、こっち系のも大好きです。 -
表題作の『フリークス ―五六四号室の患者―』が一班ミステリ然としていた。『四〇九号室の患者』もオーソドックスで良い。『悪魔の手 ―三一三号室の患者―』は引き際が最高。
解説が道尾秀介さんなのも良かった。
・悪魔の手 ―三一三号室の患者―
浪人を繰り返す青年が、精神を病んで入院している母親の見舞いに訪れる……というていで話が始まる。
母親は突然父親を刺し殺し、青年までも殺そうとした。警察に捕まるも、心神耗弱で不起訴になり、病院に入院。
青年は母の病室に、鍵のかかった箱を持ち込む。鍵は母が持っていた。箱を開けると、中から日記のようなものが出てくる。どうやら青年が昔書いたもののようだが、青年地震には書いた記憶が全くない。日記の中で、少年時代の彼は何者かに何度も襲われかけ、苦しんでいる描写があった。
母は、青年に双子の兄がいたと言い出す……。
青年の心の奥底を覗く話と思ったら、最後の最後に「同じやり取りが何度も繰り返されていた」ことが分かり、驚愕。
精神病棟に入院しているのは青年で、「お見舞い」は青年にとってのいわば「ルーティン」みたいなものだった。
青年は日記を再び箱にしまい、病室へ戻っていく。
・四〇九号室の患者
患者は事故で顔と身体にひどい怪我を負っており、病室で日記をつけている。
ドライブの途中、夫と共に事故に遭い、自分だけ助かった。しかし、この記憶にはどこか違和感が残る。
そうこうしているうちに、夫の妹や、同僚の男性の面会がある。夫の同僚は、夫が派手な女と浮気していたのではないかという。
次第に、主人公は自分が妻ではなく、その浮気相手なのではないかと思うようになる。事故で顔が損傷し、医師も見分けがつかなくなってしまったのだ。本当の妻は、自分の手で殺してしまったのではないか……。
真相は、浮気相手など存在しない。浮気相手ではなく、妻が変装していた(夫婦関係のマンネリを打破する、などの理由で)。
浮気相手の名前だと思っていたのは、妻の名前のアナグラム。
しかし、入院しているのは妻ではない。実は事故で死んだのは妻。夫は助かったが、顔を損傷したうえ、下半身
切断になってしまった。
男性のシンボルを失ってしまった夫が、自分を女性=妻だと思い込んでいる、という話。
・フリークス ―五六四号室の患者―
作家の主人公の元に、精神科の女性医師から原稿が届く。ある病室の患者が書いた小説めいたものらしいが、結末まで書いていない。主人公はそれを「探偵」の友人に読ませる……という感じで話が始まる。
小説の舞台は特殊な館。あるじはJMというマッド・サイエンティスト。彼は身寄りのない子供を引き取り、その身体に改造を施してしまう。
一番上の姉は手足を切られ舌を抜かれた「芋虫」。他に、身体を屈められて小さくされた「傴僂」、目を一つ取られた「一つ目」、腕を余分に付け足された「三本腕」、身体を鱗で覆われた「鱗男」の5人が館にいる。
この館の一室で、あるじであるJMが殺され、遺体を切り刻まれた状態で発見される。
館の中にいたのはフリークスの五人。果たして犯人は誰か。
原稿はここで終わっていた。
探偵は作家の前で推理を語りはじめる。
JMが死んだ部屋に脱出口は二つ。入り口のドアと、高いところにある窓。
「芋虫」は部屋から出られないので除外。
ここで探偵は、遺体の傍にあった部屋の鍵が綺麗に洗われていたことに注目する。
血で汚れたくらいなら洗わなくてもいいはずなのに、何故洗ったか。答えは、鍵に「血以外の物」即ち胃液が付着していたから。
JMは犯人に折檻を加えるために部屋に引き込み、鍵を掛けた。そこで犯人がJMに反旗を翻す。瀕死の犯人は、鍵を飲み込んでしまう。
「傴僂」以外の者は、窓に手が届くので、ドアを締められてしまっても窓から逃げられる。
しかし「傴僂」はドアからしか出られず、胃から鍵を取り出すためにJMの身体を切り刻んだ……。
JM殺害についてはこれが真相。
しかし探偵は、「芋虫」以外のフリークス4人が、「作家の分身」であることを指摘する。
この原稿は、主人公である作家が父親を殺した時の事が描かれていた。
その作家こそ犯人で、精神科に入院している患者だった。 -
収録作品3編。
「409号室の患者」感想
乗っていた自動車が転落事故を起こした。
同乗していた夫は死に、妻である自分はどうやら生き残ったらしい。
らしいとしか言いようがないのは、記憶がまったくないからだ。
自分の名前さえ覚えていない私は、本当は誰なのだろう・・・。
思うように動くことも出来ない。自分の顔を見ることも出来ない。
九死に一生を得た私は、事故によって記憶を失い自分が誰なのかさえわからなくなっていた。
しかし、徐々に断片的によみがえってきた記憶が、私を追い詰めていく。
私は誰かを殺したことがある・・・。
殺人をおかした私は誰で、殺されたのは誰なのか?
やがて記憶の底に眠っていた殺人をはっきりと思い出した私は、担当医にそのことを告げる。
覚えていたとおりの場所から白骨死体が発見されたのだが、殺害時期がどうしてもあわない。
「夢魔の手」を読んだあとだったので、かなり注意深く読んだつもりだった。
なのに、また見事に裏切られてしまった。
示された結末の可能性が少しも思い浮かばなかった時点で、完全に負けている・・・。
いや、別に綾辻さんと勝負しているつもりはないのだけれど。 -
精神病棟の患者を通して見えるこの世の裏表。何がホントかよくわからなくなってくるような感じ。
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精神病院を舞台にしたホラーミステリー短編集。
表題のフリークスは、何が現実で何が妄想なのか、なんだかはっきりしなくてちょっとモヤモヤ。
精神を病んでる人物が主人公なので、3作品とも読後感はよくないが、それがいい。
館シリーズはあまり好みではないので、次はanotherを読んでみよう。 -
精神科病棟を舞台にした3つの中編
香山リカ解説で読んでみたが… -
この作品世界こそがフリークス(異形)なのではないか。人間の内面が作り出す歪んだ、ある種虚構の世界。自らが作り出した異形の世界で人間はさらに苦悩する。心の闇を描き出す、じわじわくるような恐怖。ラストも意味深さもこの歪んだ世界観を表現するにふさわしい終わり方だったと思う。
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たしかにこの物語に出てくる人物たちは狂っている
だが、もしかして狂っているのは自分なのではないのか -
「夢魔の手 ―三一三号室の患者―」と「四〇九号室の患者」は面白かった。最後でひっくり返された。表題作「フリークス ―五六四号室の患者―」はグロテスクな感じが楽しめたけど…。
表題作中の次の文が印象に残った。
「“正常”という概念のいかがわしさについて、僕たちは常に、もっともっと自覚的であらねばならない。そう思わないかい?云うまでもない話だが、この世界に厳密な意味でのノーマルなど存在しやしない。多かれ少なかれ、僕たちはみんな畸型なのさ。」
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