オリンピックの身代金(上) (角川文庫 お 56-3)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043860043

作品紹介・あらすじ

昭和39年夏、東京はアジア初のオリンピック開催を目前に控えて熱狂に包まれていた。そんな中、警察幹部宅と警察学校を狙った連続爆破事件が発生。前後して、五輪開催を妨害するとの脅迫状が届く。敗戦国から一等国に駆け上がろうとする国家の名誉と警察の威信をかけた大捜査が極秘のうちに進められ、わずかな手掛かりから捜査線上に一人の容疑者が浮かぶ。圧倒的スケールと緻密なディテールで描く犯罪サスペンス大作。

感想・レビュー・書評

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  • ストーリーと時代考証のバランスに気合を感じます。

  • 時代が最初の東京オリンピックなので、色々と勉強になりました。
    まだまだ、貧富の差が激しく切ない思いでした。
    また、工事による死者の数も多く大変な時代だったのだと思う。
    主人公が悪に染められていくのが、いわゆる闇堕ちみたいでした。


    小生、東京オリンピックのカイサイをボウガイします――兄の死を契機に、社会の底辺というべき過酷な労働現場を知った東大生・島崎国男。彼にとって、五輪開催に沸く東京は、富と繁栄を独占する諸悪の根源でしかなかった。爆破テロをほのめかし、国家に挑んだ青年の行き着く先は? 吉川英治文学賞受賞作

  •  2009年第43回吉川英治文学賞受賞作。
     1964年に開催された東京オリンピック。オリンピック開催に向けて急ピッチで進められる競技場や選手村の建設作業。とある理由からその作業に従事することにした一人の東京大学院生の視点で、オリンピック開催に向けて沸き立つ東京都民とそれを下支えすることでしか生活できない出稼ぎ労働者たちの現実を描くサスペンス巨編。
     アジア初のオリンピックは、日本国民全体が沸き立っていたものと思っていたが、本書でその認識が崩れた。この年、東京はまれにみる干ばつであちらことらで計画断水が行われていた。そんな中、地方から出稼ぎにやってきた労働者たちは、日々肉体労働に明け暮れる。「使う者」と「使われる者」がはっきりと区別されている現状が細かなタッチで描かれているのでよく伝わってくる。本来であれば「使う側」に回るはずの人間が「使われる側」になることで、「東京は祝福を独り占め」と思うようになったことにも一理あるように思ってしまう。
     また、事件を追う警察内部の刑事部と公安部の争いや当時出始めたテレビメディアにおける視点も織り交ぜながら展開されていくところが面白い。

  • 最初なかなかストーリーに入り込めなくて、、挫折しそうになった。
    でも奥田サンだし絶対に面白くなるはず!って思って、がんばって読んでたらやっぱり面白くなってきた。
    下巻でどう収束するのか楽しみ。

  • 上下巻を合わせると超大作でした。
    当時の状況背景は、こんな感じだったのかと思わせるところがあり、面白かったです。
    いろんな登場人物の時系列があって、前後するけどしだいに引き込まれて気にならなくなりました。
    この作者の作品は、ハズレがないので安心して読めます。

  • 戦後の高度経済成長を成し遂げた日本が、国家の威信をかけた昭和39年(1964)東京オリンピック開催を目前に控え、相次ぐ爆破と脅迫で世間を騒然とさせていた<草加次郎>の名を語った、オリンピックを身代金に五輪開催中の爆破を予告する脅迫状が警視総監のもとに届く・・・。都心と地方との著しい経済格差に憤りを感じ、東大経済学部でマルクスを信奉する大学院生(島田国男)と、警視庁刑事部捜査一課の息詰まる死闘が展開する本作は、緊迫感あふれる圧倒的迫力で読者を虜にし、下巻への期待が高まる犯罪心理サスペンスの傑作。

  • 感想は下巻にて

  • 奥田英朗作品久しぶりに読みました。ゆるい作品が多いですが、今回は本格派でいつもと雰囲気が違うので驚きました。テンポよく複数の登場人物が絡み合っていくのは特色がよく出ていて面白かったです。

  • ちょうど10/10に読了。これはすごい。東京オリンピックを舞台にしたクライムサスペンス。犯人サイドの視点と警察サイドの視点を行き来する構成、犯行に至る経緯と時代背景のリンクに引き込まれた。特に時代背景の部分は繰り返し出てくる「変化」って言葉、時代を象徴するような固有名詞、変化を自分たちのものとして受け止めていく人と戸惑う人、東京と地方の差がこれでもかってくらいに書き込まれていて圧巻。

  • 東京オリンピックでのテロを盾に身代金を要求するという事件。犯人側と警察側、そして犯人の知り合いでもあり警察幹部の息子でもある第三者の視点。3つの視点からの物語が章ごとに展開する。時系列が行ったり来たりするが、視点が明確なのでわかりやすかった。犯人や手口がわかっているのに、犯人と警察との攻防戦がはらはらドキドキしておもしろかった。

  • たまに東京オリンピックの映像をテレビで観ると、華やかさをすごく感じる。
    テレビがカラー化したり自家用車を持ったりし始める人間が出てきたりと、本当に戦後の貧しさはどこ行った?的なイメージがある。
    ただ、その裏で虐げられ奴隷の様な生活を送っている人間がいる事を初めて知った。今も格差社会と言われているが、この当時はもっとひどかったんだろうと、本文を読んで思った。
    この時代の光と闇を炙り出した良い作品。

  • 月並みだが、非常に面白い。昭和三十年代、日本がオリンピックに沸き返る頃、そのオリンピックを人質にした事件が起こらんとしている。何故にオリンピックをという犯人の動機、心情が克明に描かれている。犯人がこの犯行を無事完遂してくれと思わず感情移入してしまう。

    日本が元気だった頃、日本がまだ良い国だった頃、読むと元気が出るな。

  • 東京オリンピックの光と影。華やかなイメージしかありませんでしたが、過酷な労働者によって支えられてたんですね。下巻が楽しみです。

  • 物語の最初はミステリー風だが、時々刻々と展開していくストーリーのエンターテイメント性に引き込まれた。作者は東京オリンピックの頃はまだ小学生にもなっていない年齢だろうが、細かく具体的な描写が臨場感を作り上げていく。早く下巻が読みたい!

  • これは面白い!時間が前後する流れで描かれるが、そこがまた面白くて読み進む。今の日本のベースがこの時代にあるのを感じながら読んだ。すぐに下巻にとりかかろう。

  • 図書館で予約して長い間待って手にした。本の傷み具合からして、たくさんの人に読まれてきた作品なんだろうな、ということがわかる。

    昭和39年 、オリンピック開催目前の日本。オリンピック 会場設営のため、奴隷のような過酷な労働を強いられ、どれだけの出稼ぎ人夫が死んでいったことか‥。私もそれは日本の黒歴史として知っている。
    「オリンピックの人柱 として 国家に生贄のように 捧げられた」出稼ぎ人夫たち。作者はそこに目を向けた。そして「この国のプロレタリア アートは歴史上 ずっと支配層に楯突くことをしてこなかったので我慢することになれきってしまった」というあきらめ。そこに一人の学生が一石を投じるようとする。「権力者に対して従順ではない羊もいる」ことを示そうとする。

    私は最初の東京オリンピックを見てきた世代だ。幼心にも強烈に焼き付いたカッコいい日本。そして万能感。その裏で無駄死にした犠牲者がいることの落差と格差。その格差に読んでいて胸が苦しくなる。作者はそこを書こうとしたのだろう。

    容疑者になった学生が その後どうなるのか無性に気になり、後半を手にした。

  • 前半読了。
    ぐいぐいと読者を惹きつけるストーリー。テンポもいい。人物の背景も興味深い。
    後半が楽しみ。

  • オリンピックを人質に、国に対して戦う犯人。
    島崎国男、村田
    何故か憎めない。

    刑事達がかっこいい。
    公安も憎めない

    この時代の熱さが伝わってきて面白かった。

  • 時系列が行ったり来たり。

  •  当時の情景が細かく描写されていることは言うまでもなく、マルクス主義や学生運動、オリンピックへの民衆の盛り上がりなどについて勉強にもなりとてもおもしろかったです。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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