鼻 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.62
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本棚登録 : 685
感想 : 116
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043873012

作品紹介・あらすじ

人間たちは、テングとブタに二分されている。鼻を持つテングはブタに迫害され、殺され続けている。外科医の「私」は、テングたちを救うべく、違法とされるブタへの転換手術を決意する。一方、自己臭症に悩む刑事の「俺」は、二人の少女の行方不明事件を捜査している。そのさなか、因縁の男と再会することになるが…。日本ホラー小説大賞短編賞受賞作「鼻」他二編を収録。大型新人の才気が迸る傑作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • どの作品も素晴らしい完成度。
    この作品を読んでから本を読むことが好きになり、自分の好きなジャンルがわかるようになった。

    先日上司にも貸し、高評価だったのか上司の旦那さんにまで読まれた。。。

  • 著者の『あげくの果て』が面白かったので連続で読んでみた。こちらも非常にブラックで面白い3本。星新一さんのようであり、筒井康隆さんのようであり、式貴士さんのようであり、そしてやはり藤子F先生的な要素もある。要するに私の好みド直球だということ。

    ■暴落
    家柄や学歴、財産、品性などの個人の価値が「株価」として公開され、就職や結婚などにその値段が大きく影響する……という社会を描いた作品。主人公は中流以下の家庭に育ったが、奨学金で大学まで出た上に一流企業に就職し、エリートとしての株価を手に入れていた。しかし、ある時急にその価値が少しずつ目減りしていることに気づく。調べてみると、実家の兄の音楽仲間が覚せい剤で逮捕されたことを知る。実家を訪れて兄の部屋にも覚せい剤を発見したため、株を完全に売り払って縁を切る。その直後に兄が銀行強盗事件を起こし、縁を切っていたことにほっとしたのも束の間、あまりに良いタイミングで絶縁したことから、インサイダー取引を疑われる。そこが転落の人生の始まりだった。

    現実世界でもよく「スペック」などという言い方をするが、それが目に見える形となり、公然とそれによって差別すら行われている。「法によって統治できなかった社会が、市場によって統治された」と表現されていたが、この設定がまず面白い。が、それだけではない。
    また、インサイダー取引や風説の流布など、実際に株式市場でも起こり得る犯罪を疑われたせいで追いつめられる主人公の転落人生が、身の丈以下に落ちるところで終わらないのもすごい。その部分が最大の謎になっている。「イン・タム」とは何なのか、という思わず吹き出す真相の後でやってくる、ダークすぎるオチ。しかし、格差社会の末路として、まったく絵空事とも思えないのがまた怖い。

    ■受難
    主人公が目を覚ますと、通りから離れた場所の扉の内側に手錠で繋がれている。声を出しても、外を歩く人に届かない。そこに3人の人間が入れ替わり立ち代わりやってくるが、三者三様の理由によって、なぜか主人公を助けてはくれない。

    ミックスナッツと水、というところで実は真相を読んでしまった。このネタは意外と結構、推理物や漫画に出てくる。この女も怖いが、ビルの上から眺めては主人公の元にやってきて、グチと説教だけして帰るオジサンも怖い。

    ■鼻
    「ブタ」と呼ばれる普通の人間が、見た目が少し違う「テング」と呼ばれる人間を差別する。主人公の医師は、かつて「テング」の妻と結婚していて、娘のために一度だけ、「テング」を「ブタ」に見せるための違法な手術をしていた。
    一方、自分の臭気に異様に敏感な刑事は、女児行方不明事件の重要参考人たる「マスク男」を探す。
    この二つの視点が交互に展開され、どちらもどこか現実でないような書き方をされるので、妙にふわふわした気持ちで読んでしまった。ラストのオチは完全に不意打ちで、本当にびっくりした。上記2編を先に読んでいたせいもあり、このパターンの叙述と思っていなかった。

  • 日本ホラー小説大賞短編賞受賞というから、期待大だったが
    後味の悪さは保証します。
    差別ありきで、徹底した管理社会という設定が嫌いってことだな(^◇^;)

    個人的に設定が嫌いってだけで、文章は読みやすいし
    アイデアも面白いと思います。
    だって、うあぁ~(´Д`|||) って思いながらサクサク読めました。
    こういの好きな人にはたまらないかもぉ~

  •  収録作品は3編。

    「暴落」はあらゆる人間の価値を株価で示すようになった世界が舞台。例えばいい会社に入ればその人の株価が上がり、逆に犯罪などを起こせば、株価が下落、さらには上場廃止となります。そして上場廃止された人間に待つ運命とは…

     なんともシニカルでブラックな展開となっています。社会的評価のない人間が地の底から這いあがることの難しさや、一度セーフティーネットからはみ出してしまうと、とことん落ちてしまう日本の現状を皮肉的にとらえた一編だとも思います。そういうわけで主人公の転落ぷりはなかなか笑えないところでもあったり…

    「受難」は目が覚めると手錠で腕をパイプでつながれていた男が主人公。
    こちらは不条理ものの作品。まったく理屈が通らない人間たちの理解不能さが不気味な短編でした。少し平山夢明さんの作品の雰囲気と似ているかも。

     そして表題作の「鼻」。人間がテングとブタという二つの種類に区別された世界。テングたちはブタに差別を受ける中、テングを救うため違法な転換手術を行おうとする医師と、連続幼女失踪事件を追う刑事の物語が交差する短編です。

     独特の世界観がしっかりと作品の中に落とし込まれていて、二つの話がつながる瞬間の驚きはかなりのものです! 真実と虚構、現実と幻想が読んでいる間ずっと自分の中でぐるぐるしているようで、読み終えるころにはそれが解決されるものなのかな、と思いきや、話を合理的に締められるのに、一方で読み終えた後も真実と虚構、現実と幻想が一緒くたとなった不思議な読み心地がずっと残ります。

     いずれもヒトクセのある個性的な作品ばかりで、楽しく読めました。

    第14回日本ホラー小説大賞短編賞「鼻」

  • ちょっと奇妙でブラック味な3話が収録された短編集。
    この作者の本を読んだのは初めてですが、裏表紙の折り返しの所によくある作品名の欄にこれだけなのを見て最近出た作家さんなんだ~と思いました。
    そして、解説を読んでこの本は2冊目だと知り、それにしてはよく出来てるな~と思いました。
    何となく乙一さんをほうふつとさせるような作風ですが、乙一さんほどは残酷でなく、登場人物の言動もリアルに感じられました。

    「暴落」
    人間の価値がそのまま株価に反映される世界の話。
    株価を決めるのはその人間のステイタス、犯罪歴、善行度、交友関係など。
    それらはその人間の結婚や仕事など将来に大きく関わる。
    主人公の男性はエリート層に位置していたが、兄の犯した犯罪によりインサイダー取引の疑いをかけられ、一気に株価は暴落。
    その後も彼の株価は暴落の一途をたどる。
    そんな彼の行きついた先は-。

    何て面白い発想だろう・・・と思いました。
    今までありそうでなかった発想。

    「受難」
    目覚めると手錠をはめられて身動きがとれなくなっていた男性。
    そこはビルとビルの隙間で、近くでは車の走る音、工事の音が響いている。
    そんな彼を見つけてその後も差し入れなどを持ち訪れるが助けようとはしない人々。
    萌え系の少女、いじめられている少年、自殺をしようとした男性。
    「警察を呼んでくれ」という主人公の訴えはむなしく、彼らは男性に思い思いの態度をとる。

    最初読んでいて、主人公と同様に状況がつかめないためにSFなのか?
    異世界の話?などと手探りで読み進めました。
    そして、男性を見つけて助けようとしない彼らの意図が分かった時に「なるほどね・・・」と思いました。
    弱い人間、追い込まれた人間は自分よりもつらい立場にいる人間に心の救いを感じる。
    それが分かりやすくシュールに描かれていて、これもその表現力に感心しました。

    「鼻」
    物語の舞台は東京。
    世界は「テング」と呼ばれる人間と「ブタ」と呼ばれる人間の2種類に分かれている。
    テングはブタに言いように扱われ差別され迫害される。
    医師の男性はテングを救おうと彼らをブタに見せかける手術をする。
    その話と別に、臭いに神経質な刑事の話が描かれている。
    彼は2人の少女の行方不明事件を捜査している。

    この2つの話が後半に違和感なく1つに融合される。
    その様が秀逸で、物語にこめられたテーマも深い。
    考えさせられる。

    3つのストーリーはどれも作者の頭の中で構成され創作されたものだと感じるものばかりで、そこには知識だとか情報だとかは感じられない。
    何かの資料で調べて書いたという小説ではないということ。
    だからそれを物足りないと感じる人もいるかもしれない。
    でも、この発想力はすごい。
    そして、文章もまるで流れるように読ませる。
    すごく読みやすい。

    大型新人だとか、賞をとったなんてコメントを見て読むと期待して読むだけに期待外れになる事が多いけど、これは謳い文句を裏切ってない作品だと思った。

  • 『暴落』がすごくよかった

  • これまで殆ど馴染みの無かったホラー
    えも言えないゾワゾワ感でした。
    暴落
    受難
    鼻(ホラー大賞)

  • 角川ホラー文庫、久しぶりに読んだかも。

    暴落、受難、鼻、の3編。

    私は「暴落」が一番好き。設定がまず面白かったし、先が気になる展開で一気に読んでしまった。主人公がどんどん悲惨なことになっていくのも読み応えがあった。

    「受難」は終盤になるまで不可思議な部分が多くて、よくわからない状態ながらもやっぱり一気に読まずにいられなかった。

    「鼻」は少し難しかった。読後にしばらく考えて、解説で補完もして、理解したくてもう1周した。そうしたらとても面白かった(笑)。

    どの作品も、あり得ないような展開。救いの無さもすごい。だからこそ余計に面白いのかな。こういう、悪〜い話、けっこう好き。人間が一番こわいよね!

  • 3つの短編からなるホラー小説。
    それぞれが趣向を凝らしてあって面白かった。
    3つとも世にも奇妙な‥的な物語だったが、(すでに原作になってたのかな?)特に「受難」のまともに話が通じない不条理さがなんとも言えずもどかしかった。

  • 中編3本収録作。
    最初の2作品は、「世にも奇妙な~」的な雰囲気を感じた。
    読み始めは(なんじゃこりゃ笑)と思ったけど、これはこれで確かに恐ろしい結末。

    表題作「鼻」は、色んな意味で最後の方まで「?」が抜けなかった。
    結末には他の2作品と同じくびっくりはしたけど。

    なかなか見破れなくてちょっと悔しかった(^_^;)

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著者プロフィール

1967年、静岡県生まれ。早稲田大学商学部中退。漫画喫茶の店長などを経て執筆活動を開始。2007年「鼻」で日本ホラー小説大賞短編賞、同年『沈底魚』で江戸川乱歩賞を受賞。09年「熱帯夜」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。2011年『藁にもすがる獣たち』で第2回山田風太郎賞の最終候補作となる。トリックの効いた異色の作風で注目されている。

「2017年 『暗殺競売』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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