- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043878017
作品紹介・あらすじ
私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。悪友の小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。いっそのこと、ぴかぴかの1回生に戻って大学生活をやり直したい!さ迷い込んだ4つの並行世界で繰り広げられる、滅法おかしくて、ちょっぴりほろ苦い青春ストーリー。
感想・レビュー・書評
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今夏、衝撃の話題が読書界を駆け抜けた。
「森見登美彦の新作の題名は『四畳半タイムマシン・ブルース』らしいぞ!」。
森見作品は、未だ4作しか読んでいなかったが、その作品たるや、才弁縦横、軽妙洒脱、機知奇策、因循姑息、満漢全席たるものばかり。しかもリスペクト作品として使われた「サマータイムマシン・ブルース」(2005)は、上野樹里を初めて発見した記念すべき傑作映画である。読まねばなるまい。
しかしその為には、続編の元となる作品には手をつけておかねばならない。幸い舞台になった京都下鴨界隈は、昨年春に歩き通した所なので土地勘がある。さらに言えば、大学受験は兄の洞穴のような左京区の下宿を基地として2週間大学を受けたせいで、その間ずっと寺巡りはするわ、名画座の京一会館で初めてピンク映画を観るわで、憧れの京都の大学生になりそこね、西の京都に都落ちする結果になったのだからなおさら土地勘はある。‥‥それは良いとして、下鴨泉川町にあるという下鴨幽水荘という重要文化財の境地に達した下宿屋の四畳半を舞台として繰り広げられる、大学生活のあり得るかもしれない可能性の物語。主人公たる「私」と友人の小津が、何やら名誉ある「意味のないこと」をする話である。どう考えてても「私」は、読むのはいいけど、友だちにするのには鬱陶しくてたまらない類の人種ではある。自意識高くて、ネガティブで、人見知り。そこへ、同じ匂いを持ちながらテンションだけは高い小津が絡む。おや、これはまるでオードリーの若林と春日の関係じゃないか。因みに、森見登美彦は彼らの舞台など見た事はなかったはずだと、わたしは関係ないけど擁護しておこう。
四畳半には、「私」は3年間しかいなかった(かもしれない)が、わたしは4年間いた。その狭さと男汁が染みつく汚さも、深遠なる世界を有し80日間も彷徨えるほどの可能性あるのも良く知っている。この前30年ぶりに訪ねたが「雨月物語」の浅芽が宿が如く住む人もなく荒れ果てていた。‥‥それは良いとして、この作品が四畳半世界のまさかの並行世界(パラレルワールド)で成り立っていたとは知らなかった。だとすれば、パラレルの横糸にタイムマシーンの縦糸が重なれば、もしかしたら素晴らしい正方形のタペストリーが出来上がるかもしれない。次回作が愉しみだ。
因みに、彼らの「無意味な」足掻きは、2年前の2月に百万遍交差点で「韋駄天コタツ」を囲んだ、著者の後輩たる京大院生たちことを彷彿させる。名前の判明している2人のその後を調べたが26歳男の方は杳として知れず、31歳女性の方は益々盛んにTwitterで発信していた。男の方が臆病で繊細なのは、正に現実社会でも同じということか。さらに因みに、ネットの反応は一様に「最高学府に入って何社会に迷惑かけてんだ」とか「森見登美彦に風評被害じゃないか」とかいうものだったが、「何バカなこと言ってんだ(何、あんたらは親戚でも友だちでもないのに社会や著者に忖度してるんだ)」というのがわたしの感想である。 -
いまベストセラーになっている『四畳半タイムマシンブルース』が読みたかったので、本書を読んでみた。
著者の森見登美彦氏といえば『夜行』なんだろうけど、僕は『夜行』はピンと来なかったんだよね。
でも本書はバッチリはまりました。
面白い。
キャラクターが良い。
文体も独特でこれまたいい。
まあ、本書はパラレルワールドものっていうのかな。主人公が4つの選択肢をそれぞれ選んだらどうなっていたかが、四話の短編になっている感じ。
同じ登場人物、同じシチュエーションがたびたびあるので、ところどころ同じ文章が挿入されるのはご愛敬。
という訳で、クールビューティーな明石さんにヤラレまくりました。
可愛すぎるよ。明石さん・・・。-
こんにちは!
森見さんは、四畳半などの阿呆系列と、夜行などの不思議系列があると思うのですが、私も断然、前者の阿呆系列が好きです。
四畳半がお...こんにちは!
森見さんは、四畳半などの阿呆系列と、夜行などの不思議系列があると思うのですが、私も断然、前者の阿呆系列が好きです。
四畳半がお気に召したなら、夜は短し歩けよ乙女や、有頂天家族を是非!2020/09/12 -
マリモさん。こんにちは!
コメントありがとうございます。
このアホな大学生たちは最高ですよね!
ぜひ、次は『夜は短し』読んでみよう...マリモさん。こんにちは!
コメントありがとうございます。
このアホな大学生たちは最高ですよね!
ぜひ、次は『夜は短し』読んでみようとおもいます。2020/09/12
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職場の同僚に勧められ読んでみました。
本書はぜひ前情報なしで読んでいただきたい一冊であったと私は感じました。その理由としては本書は「いい違和感」が盛りだくさんだからです。「このシーンはどこかでみたな」や「この人ってもしかしてあの人と同一人物なの」のような推理小説さながらの「?」が盛りだくさんです。私はその同僚から大まかなストーリーや登場人物について色々と教えてもらい読みましたがそれでも「?」はたくさん出てきました。推理小説は最後に犯人やトリック、動機が明確になりますが、本書は未知の思想は道のまま終わります。しかし、それでモヤモヤすることは一切なく、謎を謎としてしっかり受け入れることができます。
本書は奇妙な小説ですが、主人公は大学生です。様々なこととを考えるモラトリアム期間の大学生の日常はこの小説のように奇妙であると言えるのではないか。読了後このようなことを考えました。まさしく「事実は小説よりも奇なり」です。
私はもう大学を卒業していますが、これからも本書より奇妙な人生が待っていたら嬉しいなと思います。 -
「あー、鹿男のね」なんて言ったらファンに怒られますね。
「京都・奈良・鴨川」と言うワードで一括りにしてて…別の方でした。
すみません。
主人公と友人の掛け合い、流暢な描写がリズミカルですらすらと流れるように読んでしまった。
短編四話=四畳と真相(半畳?)と言う
不思議な構成、それ故に早く読めたと言うのもあるが、面白かった。
「繰り返す日々」(四話と、四話目の八十日間)の中に、少しずつ相違点や同じ現象、アイテムを見つける体験に
体感したことのない「大学生活」に夢を馳せるがそれでは主人公と同じで…
ダラダラと繰り返してしまい、もともと見えていた「普通の日常」の良さに手が届かなくなって初めて気づく。
みたいなことは、自分も体験することなので「あぁ、抜け出したいけど繰り返してしまう日々って…」と、考え込んでしまった。
その中に自分で見出そうとする変化や、「昨日と同じこと」に感じる安心感について考えを進めて、ふと
「下らない中に大切なことが…」なんてありきたりだけども
小津くんとの縁など、読んできた前の話を振り返り何故か感慨深い
狭いけど広い四畳半の
短いけど長い話を読んだ感覚になった。
オススメです。
次作についても
実は「サマータイムマシン・ブルース」を映画版ながら見たことがあるので、ここにどう化学反応が起こるのか楽しみ。 -
『カラフル&ポップ&摩訶不思議な森見さん節全開な作品』
久々に「夜は短し歩けよ乙女」的な世界観に浸りたいなーと思い手に取った本作。
独特な言い回しの小気味良いリズムで紡がれる森見さんの文章は相変わらず…楽しなぁーーー(´∀`)
…と思って読み始めたんですが、途中から若干の失速あり、読み切るまでに若干時間がかかりました…m(_ _)m
何となく理由を考えるに
①苦手な短編形式
or
②物語、人物を深掘っていかない(森見さんの作品はそもそもそういう特徴かと)
あたりがありそうで、文章の面白さっていう武器だけで読み進めて行くのが若干辛くなったのかなと。
まだ理由の切り分けができていないので、その意味でも少し時間をおいて長編の森見さん作品読んでみようかなと…
また「夜は短し歩けよ乙女」を読んだときのワクワク感を取り戻せたら嬉しいなぁ…(*´ω`*)
<印象に残った言葉>
・野菜嫌いで即席のものばかり食べているから、なんだが月の裏側から来た人のような顔色をしていて甚だ不気味だ。夜道で出会えば、十人中八人が妖怪と間違う。残りの二人は妖怪である。(P8)
・ひょっとすると十年前に生き別れた兄かと考えたが、兄とは生き別れていないし、そもそも私に兄はいない。(P14)
・私と明石さんの関係がその後いかなる展開を見せたか、それはこの稿の趣旨から逸脱する。したがって、そのうれしはずかしな妙味を逐一書くことはさし控えたい。読書もそんな唾棄すべきものを読んで、貴重な時間を溝に捨てたくはないだろう。成就した恋ほど語るにあたいしないものはない。(P94)
・しかし、それらは些細な問題だ。大切なのは心である。(P99)
・世の中にはダッチワイフと俗に言われる切ないものがあることは、多くの人が知っていよう。(P117)
・彼女は急に御蔭橋の欄干に取りつくようにした。そうして、信じられないほどさりげない感じで美しくそろりと吐いた。(P168)
・私は健康のためとなれば、アロエヨーグルトを丼いっぱい食べることさえ躊躇しない男です。(P261)
<内容(「BOOK」データベースより)>
私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。できれば1回生に戻ってやり直したい! 4つの並行世界で繰り広げられる、おかしくもほろ苦い青春ストーリー。 -
薔薇色のキャンパスライフを想像していた京都大学ちょっとくされ気味の3回生男子の並行世界。
入学時どの選択をしていたらどうなっていたでしょうかというお話。大量に配られるサークル勧誘のチラシが運命を左右する。
「太陽と乙女」で、無限増殖する四畳半というアイデアをどうにか作品に。という事で、神話体系が生まれたとの事。ふむふむ、並行世界を渡ってきた男子学生が増殖する四畳半を渡り歩く場面は面白い。
その本の中で、この小説には意味があると読者に信じさせるところまで持っていく過程でコンセプトが成立する。とも。
やっぱり森見さんに騙されているのかもしれないけど、愉しめば良いのです。と思ったらすっきり作品に入れた。
本人が変わっていなければ、パラレル先でも結果はたいして変化ないところが現実っぽい。そして、いつかは並行世界から抜け出して現実と向き合って生活しなくてはね。 -
4つの平行世界で繰り広げられる、滅法おかしくて、ちょっぴりほろ苦い青春ストーリー。
冴えない大学生の私が、どのサークルに入るかでそれぞれエピソードが変わりますが、ちょっとずつ話しが違ったり同じだったりと工夫されていてとても面白かったです。
登場人物は魅力的な人ばかりですが、やはり小津とは運命の黒い糸で結ばれていたんですね。
『猫ラーメン』や『もちぐま』など、登場アイテムも魅力的。
どのような選択をするかが重要ではなく、どのように行動するかで生き方が変わっていく、ということを感じた作品でした。 -
『夜は短し~』『夜行』に続いて、森見登美彦を読むのは3冊目。
上記2冊のどちらにも通じるような物語。
第2話で、この本の仕掛けが読めるが、それでも面白い。
最終話は、ちょっとカフカの『変身』、『世にも奇妙な物語』にも雰囲気が似ていて、それもまたよかった。
選ばなかった人生は、隣の芝生と一緒。
でも、ご縁のある人とは、きっとどこかで出会うのだと信じさせてくれる一冊だ。 -
大学生活を終えて、あのときあのサークルに入っていたら、あのときもしこういう経験をしていれば人生違っただろうかと、考えたことがある人におすすめする。
だんだん分かっていく感じも面白いし、「世のため人のためということを考えたとたん手足の関節が動かなくなる」小津と彼のことを妖怪みたいだと思い、うっとうしく思ったり、たまにぶち殺したくなったりする私との関係がとても面白かった。
「夜道で出会えば、十人中八人が妖怪と間違う。残りの二人は妖怪である。しかしながら、彼は私のたった1人の友人であった。」
パラレルワールドの中で、ひとつの世界では私の下着がなくなり、もうひとつでは2倍に増えたりして、つながったり、つながらなかったりしながら四章の話が横に広がっていくのが新鮮に感じた。 -
複数の世界線?言い回しが面白くて何度も笑いました。
> 「何バカなこと言ってんだ
至言ですね!
単なる"やっかみ"でしょう。何も出来ないご自身を庇うために。。。
> 「何バカなこと言ってんだ
至言ですね!
単なる"やっかみ"でしょう。何も出来ないご自身を庇うために。。。
ネットの反応があまりにも否定意見が多かったので、つい書いてしまいました。この学生たちは交通法違反になる...
ネットの反応があまりにも否定意見が多かったので、つい書いてしまいました。この学生たちは交通法違反になるくらいは承知の上で、やっているのに何言ってんのかと思います。
このそんなことまでダメだと言っているならば、この作品の冒頭で「私」と小津は、変な理屈で逆恨みした映画サークルの面々に、鴨川デルタで焼肉パーティーを開いている所に花火を人目がけて撃っているわけだから、これも犯罪といえば犯罪です。森見登美彦ファンだと自称している輩も、やがて時代が変われば、本書を危険書扱いに変更する輩に変貌しないとも限らないという性質のものであり、わたしはその将来の危険を正すべく警告を放った次第です。(←すみません)
「本書を危険書扱いに変更する輩に変貌しないとも」
kuma0504さんの杞憂であれば良いのですが、、、
緩やかに...
「本書を危険書扱いに変更する輩に変貌しないとも」
kuma0504さんの杞憂であれば良いのですが、、、
緩やかに多様性が大事だと判ってきている反面、急激に上の意向に逆らえない風潮も。。。
尤もらしいコトを述べて、市井の人々を縛ろうとする為政者に取り込まれないようにしなきゃ、、、