四畳半神話大系 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
3.91
  • (2176)
  • (2711)
  • (1969)
  • (315)
  • (85)
本棚登録 : 21224
レビュー : 2117
  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043878017

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  「俺」と「小津」の壮大な友情の物語でした。
    「キャプテン・ハーロック」の読後に似た「友情って熱いぜ!」という気持ちがフツフツと湧き、また1話目から読み直したい気持ちになる。
    1話 明石さんと俺の仲を遠くから取り持つ小津。
    人物紹介を兼ねた導入。明石さんの潔い美しさが「俺」のグタグタぶりを引き立たせる。
    2話 樋口師匠と城ケ崎さんが俺と小津の未来のよう。
    樋口師匠の大きさはどこから?1話で敵役なだけだった城ケ崎の意外な一面が。
    「まだ人生が始まってもいないくせに迷っているのか」「貴君、ここはまだ御母堂のお腹の延長だぞ」
    「可能性という言葉を無限定に使ってはいけない。我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々がもつ不可能性である」
    「我々の大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根源だ。今、ここにある君以外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはいけない。君がいわゆる薔薇色の学生生活を満喫できるわけがない。私が保証するからどっしりかまえておれ。」
    3話 明石さんと俺の仲を遠くから取り持つ小津。
    この本で一番恋愛小説的なお話。文通相手の彼女、羽貫さん、香織さん、明石さんの間で揺れる「俺」。
    ジョニーくんとの葛藤が素敵。紳士だ~。
    「男性と女性の結びつきとは、もっと厳粛なものたるべきである。靴紐のようにちょいちょいと結ばれてたまるものか。」
    でも、結局ハッピーエンド。小津くんの暗躍が光る。
    4話 小津との友情に気づく俺。
     こんなに恐ろしい迷宮があっただろうか。扉をあけても窓をあけても壁を破ってもひたすらつづく四畳半。
    孤独と戦うなかで「俺」は思いをはせて、やがて気づく。
    そして「俺」の四畳半からの卒業。
    「俺なりの愛だ」
    「そんな汚いもん、いりません」
    の台詞が最後にふわりとあたたかく響く。
    さすが森見ワールド、どっぷり浸りました。

  • 先日観たアニメが最高に面白かったので購入。

    世の中のほとんどの大学生と同様、無意味なキャンパスライフも3年目に突入した私。
    悪友 小津をはじめ、小津の師匠を名乗る自由人の樋口師匠に振り回され、数少ない理解者であるクールな後輩 明石さんとは距離感が詰められない。
    大学入学時に思い描いていたバラ色のキャンパスライフは何処へ…やり直せることなら、あのときに戻って大学生活をやり直したい!
    そうして迷い込んだ並行世界で、私が織りなす波乱万丈にして空前絶後のありふれた大学生活の果てに、私が辿り着いた結末とは。

    実は以前、『夜は短し歩けよ乙女』という作品を人に借りて読んだことがあって、「この作者の小説はなんだか肌に合わない」と途中で投げてしまったことがあるのです。
    それから長い年月を経て本書を手にとることと相成ったわけですが、本当におもしろかった。
    とにかくすらすらと流れるような流麗な言葉選びと文体が素晴らしいです。
    登場人物の個性際立つ舞台設定や、ただの青春小説で終わらない独特の世界観も魅力的。
    パラレルワールドを描くSFちっくな構成にも関わらず、解説なしに進む展開にまったく違和感を感じることなくするっと入り込めるのが不思議です。
    ラストの盛り上がりはアニメが上ですが、全体的な完成度は原作さまさまといった感じです。
    よき小説・アニメに出会えてよかったです。

  • 私を森美登美彦大好きっ子にした元凶こそ、この「四畳半神話体系」という作品である。
    元々森美登美彦という作家を知っていたわけではなく、本屋でブラブラ物色していた際、たまたま平置きされていたこの本が目に入り、名前の奇抜さと独特な表紙に惹かれ何気なく購入したところ、読み始めて内容そのものの独特さに驚かされた。
    まず特筆すべきはその言い回しである。難しいことを難しく書くことは簡単だが、くだらないことをありったけの語彙と文章力・表現力、知識教養を総動員して綴るその独創性たるや、ハマる人にはとことんハマってくれるのではないか。
    次に物語の構成として、全部で4章、そして章が変わるたびに、読み手は自分が読み進めてきた文章に限りなく近い文章を何度も繰り返し読むこととなる。何故、このような表現技巧が使われているかは、是非、実際にこの本を手に取って確かめていただきたい。
    登場人物達も個性豊かで、主人公である京都大学3回生の「私」を始めとして、悪友である「小津」主人公が恋い焦がれる「明石さん」物語序盤では謎の「樋口師匠」などなど、現実でこのような人達に囲まれていたら、退屈で怠惰な毎日を何色にでも染めることができるだろう。
    ネタバレは極力避けたいが、私が読了して感じたのは「自分が退屈で無意味だと感じている日々も、客観的に見たら雑多で実に面白味のあるものに見える」ということと、「人生において、あの時こうしてればと後悔することは多いが、例え他の道を選んでいたとしても、さほど人生に変化はない」ということである。
    私も現在腐れ大学生の一人だが、私の何気ない日常にも、気づかないだけできっと様々な色が満ち溢れているのであろう。

  • 不可能性が己の可能性を定めるという考えはなかなかに面白い。
    あのときああしていれば、という後悔なしには毎日を送れないものだが、結局どの選択肢を選んでいても、結局落ちつくべき所に落ち着いて、いるべき場所にいて、かかわるべき人とかかわっているんだろうなと思った。

    森見作品らしい、阿呆大学生が詭弁を呈して繰り広げる日常的な非日常世界が広がり、面白おかしく読めるのだが、レビュー冒頭にも書いたアプローチから感じたことというのは、なかなかナイフのように鋭いものであった。

  • やっぱり森見さんワールド!あの独特な文章を読み始めると「嗚呼、森見さんの本だ」となるのです。
    4つの平行世界だけど、どこか繋がっていて共通しているものがたくさんあったりして、
    何回でも読み直せる構成でした。

    この本は、“私”と明石さんの話かと思いきや
    “私”と小津がメインの話だったように思えます。
    切っても切っても切り離せない縁。
    主人公は小津を悪く言いながらも、
    一番頼りにしていて、ほんとはとても好きで。

    主人公はずっと薔薇色のキャンパスライフを夢見ていましたが、
    実は小津のおかげで主人公の日々は充実していたんだろうなと感じました。
    どんな人生を歩んでいても、
    出会うべき人には出会うということを教えてもらえました。

  • 清々しかった。
    何回か同じ文章があり、若干読み疲れはしたが
    それがとても良い効果をだし、非常に味わい深かった。
    日々の選択、それによる変化やそれに関係しないものが、本当に分かりやすく、あたたかかった。
    変わらないものがすっとあり、それに肉付けされていくのが、私達の生活なのだと感じた。

  • アニメから本を手にとりました。愛すべきアホ学生なのだけれども、やはり舞台が京大ということもあり、どこか知性を感じる無駄なエネルギー消費には脱帽せざるをえないです。繰り返される並行時間にちりばめられた伏線が回収されるラストには、責任者はどこか!と叫びたくなりました。きっと小津と「私」は限りなく続く不毛な大学生生活をいつまでもお互いに愛をもって過ごしていくのでしょう!笑

  • 四半畳の下宿に住んでいる(腐れ)大学生三回生と、
    その周囲の人たちが、サークルを通して巻き起こす、青春ストーリー。

    主人公が一回生のとき、どれの入ろうか悩んだ胡散臭い四つのサークル。
    この本は、四つの話で構成されていて、
    その一話一話ごとに、彼がどのサークルを選んだかによって、
    運命(?)が、どのように変わっていってしまったかを描いた作品。

    四つの話すべてが、どのサークルに入るか、
    悩んだところから枝分かれして進めているので、
    話の中の共通点や、相違点、
    そして、ほかの話の謎などの答えなどが見えてくるため、
    1話1話ごとに読み進めていくたびに、
    どんどん面白くなってきます。

    ですからぱらぱらと読んだり、途中で読みやめたりしないことをお勧めします。

  • 森見登美彦さんの小説ははじめて読んだが、語り口が非常に精巧で趣がある。古典的なことばや難解な語彙を駆使しているようでいて、読みやすい。だらだらとした文章ではないので明快で、一文の短さからは主人公の思いつめた心が迫りくるように伝わってきた。
    主人公は、現実を拒んでいた。小津を中心に、現実的でないことが多く繰り広げられることに対して、「これは私の求める現実ではない。あってはならない」として拒んでいた。目の前の現実を楽しもうとせず、楽しめない原因を小津に求めていた。しかし、小津はたしかに様々な物議を醸す種になるが、小津は小津の人生を貫いているだけなのだ。小津が引き起こす現実に対して、どう関わるかを決めているのは主人公自身に尽きるのだ。目の前にある現実を、素直に楽しむか、楽しもうとせず否定するのみか、どちらが人生楽しいか。主人公は四畳半の旅を終えて、人生の楽しみ方を知ったのだろう。四畳半の長旅を終えて外の景色が(きっと涙で)滲む場面は心にじんときた。
    主人公は、違うストーリーの中で、違う決断を下す。しかし、そこには「変わらないもの」が必ずある。それは、小津との関係であり明石さんとの関係でありその他もろもろだ。小津を友人だと認める自分、明石さんを好きだと思う自分はいつでも変わらない。ありとあらゆる選択肢が用意されたこの世の中で、人間は迷うし、後悔をする。でもその人間には必ず「変わらないもの」が存在する。違った選択をしたとしても、そのときの人間の「想い」は行き着くところ同じであるから、大事なところは変わらないのだ。だから、過去を悔んだりせず、現在の自分の想いに従って人生を楽しむほうがいいのだとおもう。
    長い並行物語を経て、最後には主人公の心に赤く灯がともったような変化を生じさせ、「愛」を感じるほっこりとした終わり方をしているところが素晴らしいと思う。

  • 森見さんの書く文章はやっぱり独特ですね。
    パラレルワールドか何かのお話なのでしょうか?
    今まであまり読んだことの無いタイプの小説だったので、楽しみながら読めました。
    最後の話は特に不思議すぎて「ええ、そうくるの?」、ってなった上に、いろいろなことがはっきりして、爽快です!
    読後感も最高でした。

    私が読んだ本の表紙は、確かイラストが違ったのですが、(夜は短し歩けよ乙女と同じ人のイラスト)
    小さく書いてあるあの不気味な怪物みたいなのは小津なんでしょうか・・・・

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「確かイラストが違ったのですが」
      角川のサイトでは新表紙です(中村佑介特有の女の子の横顔)。どうやらアニメ化の時に変えたようですが、、、前の...
      「確かイラストが違ったのですが」
      角川のサイトでは新表紙です(中村佑介特有の女の子の横顔)。どうやらアニメ化の時に変えたようですが、、、前の方がお話のイメージに近いと思うのは私だけ?
      「小津なんでしょうか・・・・ 」
      右下の逆さになっている奴は小津ですね。
      2012/07/07

著者プロフィール

森見登美彦(もりみ とみひこ)
1979年奈良県生まれの作家で、京都を舞台にした作品が多い。京都大学農学部卒、同大学院農学研究科修士課程修了。2003年、『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2006年に『夜は短し歩けよ乙女』で本屋大賞2位、山本周五郎賞などを受賞し注目を集める。2010年『ペンギン・ハイウェイ』で2010年日本SF大賞、2014年『聖なる怠け者の冒険』で第2回京都本大賞、2017年『夜行』で第7回広島本大賞をそれぞれ受賞。2010年に『四畳半神話大系』がTVアニメ化、2018年8月に『ペンギン・ハイウェイ』が劇場アニメ化された。2018年11月に『熱帯』を刊行し、第160回直木賞、2019年本屋大賞にノミネートし、第六回高校生直木賞受賞。

四畳半神話大系 (角川文庫)のその他の作品

四畳半神話大系 (角川文庫) Kindle版 四畳半神話大系 (角川文庫) 森見登美彦
四畳半神話大系 単行本 四畳半神話大系 森見登美彦

森見登美彦の作品

ツイートする