ナラタージュ (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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レビュー : 635
  • Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043885015

作品紹介・あらすじ

お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務がある-大学二年の春、母校の演劇部顧問で、思いを寄せていた葉山先生から電話がかかってきた。泉はときめきと同時に、卒業前のある出来事を思い出す。後輩たちの舞台に客演を頼まれた彼女は、先生への思いを再認識する。そして彼の中にも、消せない炎がまぎれもなくあることを知った泉は-。早熟の天才少女小説家、若き日の絶唱ともいえる恋愛文学。

感想・レビュー・書評

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  • 平たく言ってしまえば身勝手な大人の狡さを身につけた教師と、純粋で傷つきやすく未熟だけれど芯の強い、成長過程にある教え子との恋愛の物語である。

    物語は一貫して主人公である工藤泉の視点で進んでいく。
    高校時代、理不尽ないじめにあっていた泉。
    教科担当の教師は見て見ないふりをしていた。
    それどころか、泉の方にこそ問題があるかのような考え方をする教師だった。
    そんな状況から救ってくれたのが葉山先生だった。
    彼女を気遣い、守り、助けてくれた。
    二人の距離は少しずつではあるが縮まっていく。
    だが、葉山には複雑な事情があった。
    信頼関係を築きながらも、どこか泉に対して壁を作っているような距離感。
    中途半端な状態に置かれた泉は、意を決して卒業式に告白しようとしていた。
    卒業式当日、唐突に葉山が壁を乗り越えて泉を翻弄する。
    ほろ苦い恋の思い出として、そのまま過去は過去として泉の中で落ち着くはずだった。
    けれど、卒業式の出来事が、いつまでも泉を過去につなぎとめる鎖となって過去から抜け出せなくなってしまうのだ。
    泉側に寄り添った読み方をしてしまったせいか、どうしても男の身勝手さが目についてしまった。
    さりげなく泉に対してSOSを出し続ける葉山。
    辛い過去の傷跡を泉にだけだと見せるくせに、一番重要な、一番伝えなければいけない、大切なことは隠し通す。
    泉が離れていきそうな気配を感じとると、まるで自分のもとに引き戻すかのようにとんでもない時間に連絡してきたりする。
    本当に泉の幸せを祈っているのか、疑問に思ってしまう。
    葉山先生も小野君も泉に甘えすぎだと思う。
    自分の大切なものは二人とも譲らないのに、言葉にしないまま泉に多くのことを望む。
    優しさで、弱さで、暴力で、泉を引き止めようとする二人を狡いと感じてしまった。
    一方、泉の想いは純粋だ。
    一途な想いは、いつも最後のところで自分よりも葉山先生を優先してしまう。
    葉山先生の心に寄り添い、話を聞いて、ただ傍にいる。
    それだけのために、泉は葉山先生から離れることができない。
    見返りがあるわけではない。
    もともと、泉自身見返りを求めてるわけではない。
    だからこそ、葉山先生のついた嘘は泉に衝撃を与えたのだろう。
    二人が別れたあと、何を思って泉とのツーショット写真を友人に見せたのか。
    葉山先生という人間のいやらしさを見せ付けられたようで、「どうして今さら…」と思ってしまった。
    自分の知らないところで、二人で写っている唯一の大切な写真を不用意に友人に見せる。
    そのことひとつとっても、葉山先生にとっては最初から泉は人生を変えるほどの存在ではなかったように感じた。
    辛くて切なくて、思い出すことさえ苦しい思いをしていないから、安易に写真を見せられたのでは?と思ってしまう。
    柚子のエピソードは読んでいて胸が痛くなった。
    新堂君はこれからずっと自分を責めて生きていくのだろうか。
    いつか彼が前を向いて歩き出せればいいと思う。
    どんな形でも幸せだと実感できればいい。
    泉には今日も幸せな一日だった…そんなふうに思える人生を送ってほしい。
    いつか遠い過去のほろ苦い思い出として、若き日の恋を懐かしむことができるような。
    泉を理解し、ありのままの泉を受け入れてくれる人が傍にいるのだから。

    とても上質な恋愛小説だった。
    切なさも、哀しさも、痛みも、苦しさも、すべては好きだという感情ゆえだ。
    どんな思いをしても捨てることの出来ない感情。
    それこそが恋なのだろう。

  • なんでかわからないけど、
    とにかくこの本はだいすき。
    島本理生は”文章を楽しむ“ということに気づかせてくれたひとで、大体すきだけど、最初の出会いだったこの本はやっぱり特別。


    静かだけど激しさを持った文章のなかに、核心をついた台詞がいきなり出てきて、これでもかってくらいせつなくなる。

    一番共感しちゃうのは小野くんで、彼のことはどうしても嫌いになれない。
    自分から電話を切れなくて「そっちから切って」とか
    別れる間際に「一瞬でもいいからあの先生より好きだったときがあったか教えてほしい」とか
    ほんとに好きなのに、ものすごく苦しそう。


    泉も葉山先生も苦しそうだったけど、好きな人と共有できる苦しさはきっと至福の苦しみなのでしょう。

    改めて読むと、葉山先生はほんとずるいんだよね。受け入れられないくせに、手放すこともできなくて泉を檻に入れてる。
    でも、捕らえられてることも、檻の鍵があいていることもわかっているのに出て行かないのは、ほかでもない泉本人で。
    きっと泉にとっては極上の檻なんだ。


    ずっと先生と生徒だったし
    体の関係も一度しかなかった
    キスすら数えるほどで
    でも、なぜかわかりあえてしまう

    「なにか私にできることはありますか。なんでもします」
    「僕が一緒に死んでくれと言ったら」
    「一緒に死にます」

    何も与えていないのにここまで愛が大きくなってしまうことなんてあるんだろうか。
    不思議だけど素敵です。

  • お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務がある…大学2年の春、母校の演劇部顧問で思いを寄せていた葉山先生から電話がかかってきた。泉はときめきと共に、卒業前のある出来事を思い出す。後輩の舞台に客演を頼まれた彼女は先生への思いを再確認する。そして彼の中にも消せない炎が紛れもなくあることを知った泉は…。早熟の天才小説家、若き日の絶唱ともいえる恋愛文学。

  • 恋愛小説が読みたくて手に取ったのですが・・・評判と違って面白くない。
    常に併読してるので、ついつい他の本と比べて優先順位が低くなり、読み切るのにすごい時間がかかってしまった・・・

    女子学生と教師の恋愛を描いた作品です。

    主人公の泉ちゃんが先生に、捧げるだけの無償の愛を貫きつつ、でも時々自分の気持ちにこたえてもらいたくなったりして、若さゆえのその気持ちの揺れは上手に描けてるなと思いました(上からすいません)
    が。それだけ。
    何がダメって、相手の先生にとにかく魅力がない。私にはいつも逃げ腰、優柔不断でだらしない、としか映らなかった。
    加えて、女子高生に頼る頼る(苦笑)。あなた30代の大人なのに寄りかかりすぎでしょう。
    そのくせ彼女ではなく、他の女を選ぶんだから意味が分からない。事情があるとはいえ他の女を選びながら彼女に頼るっていう構図、嫌悪感しかなかったよ。
    キャラに魅力がないと小説はこうもつまらないものなのか、と再確認してしまいました。

    ついでに言うと、著者は文章力に定評のある方みたいですが、情景の描き方とか雰囲気あるし悪くはないと思うけど、それゆえ?無駄に長い話になってる気がする。
    たとえばドイツ旅行の場面なんて全部いらないんじゃないかと・・・
    その分、葉山先生と親しくなるきっかけとなったいじめのこと、もうちょっとリアルに描けば?なんて思っちゃった。
    だってさー、あの程度の嫌がらせで死にたくなるかなあ、とぜんぜん説得力ないんだもん。
    それとか、後輩の自殺の件もなんだか唐突だし・・・
    著者の書き込みたいところと、読者の納得感を求めるところの温度差を感じてしまったのは私だけでしょうか。

    なんだかこの作品、来年映画化されるらしい・・・10代にはウケるのかしらね。

  • 読み終えてすぐに最初のページに戻った。
    途中まで冒頭の「結婚相手」は小野君なのだと思って読んでいたからだ。それが小野君ではないとわかった上で読むプロローグ… なんとも言えない鬱積した感情が身体の奥の方で浮遊している。

    終始、重くぼんやりした空気感。浮遊感みたいな。水の底で、川の底で、潜って膝を抱えているような。閉塞感みたいな、そんな感覚だった。
    最後まで、決して楽しい読書ではなかった。イライラも募るだけ募って、個人的には不完全燃焼のままに読み終えた。


    泉は、自分で思っている以上にしたたかで、狡くて、本当は弱くなんかなくて 誰よりも強くて、男を惑わす女だと思う。正直、全く感情移入もできず、私のキライなタイプだった。

    葉山先生は…狡い という言葉では言い尽くせないほどのダメな男だと思う。

    お互いがお互いを必要としていた…?

    果たして、本当に必要としていたのだろうか。
    美化していただけのようにも思えるし、愛だと気づかぬうちに愛していた、というよりも、恋に恋してしまった自分たちを「愛」という尊い物語に仕立てあげちゃったのかな、という印象。

    そんな中で、志緒と黒川 はこの作品の唯一の良心であり、真っ当な二人、だった。真っ当な感覚のこの二人がいたからこそ他者が浮き立ったように思う。軽くしか描かれていないが、志緒だって、黒川だって、せつなく 苦しい思いをしていたのだ。それなりの思いで愛を。。。

    そして小野君。あまり肯定的な意見を聞かないし目にもしないけれど、私は 小野君には頷ける。葉山先生や泉に比べたら、自分の気持ちに素直だし、何より他人を傷つけてはいないんじゃない? 泉は彼の言動によって自分の気持ちに気づいただけだ。傷つけられたわけではない。むしろ傷つけたのは泉の方。
    そんな風に私は感じてしまった。


    決して楽しい読書ではない。
    人間の狡さ、非情さ、身勝手さを じわじわと刷り込まれるというか。
    葉山先生の良さもわからないし、泉の、とにかく個人的には 泉の態度が腑に落ちなかったし。
    それなのに読んでしまう、気になる のは、どこかで何か「救われる思い」を期待していたからかもしれない。どこかで誰かが救われることを。
    けれど、結局、誰も救われなかった。
    柚子も然り、新藤君も然り。
    葉山先生も泉も、小野君も。
    結局、「あの頃」の思いから逃れられることなくみんな生きてゆくのだろうな。もう過去になった、と思ってもそれは薄まってしまっただけで消えることはない。
    ずっと、ぼんやりと薄くなりながらも「あの頃」が完全に消えることなどない。
    そんな、せつなくも苦しい人生たち。

    「きっと君は、この先、誰と一緒にいてもその人のことを思い出すだろう。」

    一緒にいる相手を遠い存在に思わせて。
    せつなくて苦しくて。


    しかし、何が凄いって、この作品を若干22歳で書いた島本理生だ。
    「早熟の天才少女小説家、若き日の絶唱ともいえる恋愛文学。」
    と言われているが、確かに、これを22歳で書いた彼女の 10年後、20年後、30代、40代の作品は一体どんな風になっているのか…読んでみたいと思った。

  • 読んで、何を感じたらいいのかわからなかった。
    私とは根本の考え方の違う人が書いた恋愛小説。
    主人公と先生が終始不幸ぶっていて意味がわからなかった。
    主人公はまだ若いからいいとして、
    先生は誰も幸せにできない、1ミリも魅力の感じられない人でした。
    ただ、小野君というキャラクターはとってもよくて、そこだけ楽しめました。

  • すごく良かった
    繊細な表現をされた言葉も
    届いてるのに届かない想いも
    全てが繊細で胸が苦しくなった
    どうしてかなわないんだろう、どうして私じゃダメなのって強く思った
    こんなに愛することができる人は現れるのか

  • 主人公の泉が思い続ける葉山先生が腹立たしく、最後までずるい印象しかない。不毛で辛い。ひたすら終わりのない切なさで、最後まですっきりしなかった。
    この物語からは、切ない、悲しい、苦しい、でも懐かしい感じが溢れている。

    登場人物には共感出来ないことも多々あったけど、それでも読んでしまうのは、細かい情景描写が作る物語全体の雰囲気がそうさせるのではないかと思う。
    読んでいくと不思議なくらい切なく、なんとも言えない気持ちになる。

    また、物語の最初と最後に現在の泉が書かれていることで、何年経ってもお互いがの想いが消えていないことを知り、救いの無い切なさが残ったように感じた。

  • 葉山先生、それはない。

  • 初島本理生。映画化されるということで書店での露出が多くなり、気になって購入。
    ちまたの評判は賛否両論のようだけれど、私的には切なくて、情景描写も美しくて、当たり本。
    主人公の、だめだってわかっていてもすごく好きな気持ち、うそをつかれても嫌いになれない切なさとか、ページをめくる手が止められなかった。
    星をひとつ減らしたのは、身勝手な高校教師へのアンチテーゼ。

    一番好きな部分は、意外にもラストのこの部分。

    「食前酒とワインがそうさせたのか、それまでとても明るい口調で喋っていたカメラマンはそこで言葉を切った。彼はそれ以上、話を続けることができなかった。
    同僚と、一緒に話していた男性も黙った。」

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著者プロフィール

島本 理生(しまもと りお)
1983年東京都板橋区生まれ。都立新宿山吹高等学校に在学中の2001年に「シルエット」で、第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、デビュー。06年立教大学文学部日本文学科中退。小学生のころから小説を書き始め、1998年15歳で「ヨル」が『鳩よ!』掌編小説コンクール第2期10月号に当選、年間MVPを受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第128回芥川賞候補、第25回野間文芸新人賞受賞(同賞史上最年少受賞)。2004年『生まれる森』が第130回芥川賞候補。2005年『ナラタージュ』が第18回山本周五郎賞候補。同作品は2005年『この恋愛小説がすごい! 2006年版』第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位、本屋大賞第6位。2006年『大きな熊が来る前に、おやすみ。』が第135回芥川賞候補。2007年『Birthday』第33回川端康成文学賞候補。2011年『アンダスタンド・メイビー』第145回直木賞候補。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞受賞、『夏の裁断』で第153回芥川賞候補。『ファーストラヴ』で2回目の直木賞ノミネート、受賞に至る。

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