夜市 (角川ホラー文庫 つ 1-1)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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本棚登録 : 8793
感想 : 1014
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043892013

作品紹介・あらすじ

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた-。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 望むものが何でも手に入る市場「夜市」。
    幼い頃、弟と一緒に迷いこんでしまった裕司は一体何を望んだのか・・・
    夏(猛暑)ということでホラー作品を読みたくなりこちらの作品を手に取りました。
    「夜市」「風の古道」の2つの短編が収録されており、
    そこまでホラー感(ファンタジー要素あり)も強くなくて読みやすくかったです。
    ※ホラーが苦手な自分でも楽しめました
    不思議な世界観があり文章を読みながら映像を想像するのが楽しかったです。
    どちらの作品も読了後は怖さよりも切なさや哀しさ、
    夏の終わりに感じる寂しさのような感覚でした。
    夏の夜長にオススメです。

  • R1.8.3 読了。

     ミステリーというよりダークファンタジー的な感じがした。表題作の夜市も良かったが、風の古道のほうが好き。レンの出生の秘密とかレンとコモリの関係とか展開が気になり、一気読みしてしまった。

    ・「遠い未来、その肉体は大樹となり、その魂は古道を越えて世界を渡る風となろう。」
    ・「道は交差し、分岐し続ける。1つを選べば他の風景を見ることは叶わない。私は永遠の迷子のごとく独り歩いている。私だけではない。誰もが際限ない迷路のただなかにいるのだ。」

  • 物語を読んでいると、時に禍々しいもの恐ろしいものに対して心を奪われてしまうことがある。
    なぜならそこに、ぞっとするほどの艶やかさ、なまめかしい美しさを感じるからだ。その妖しさに人は心を惑わされる。
    本来、人が踏み込んではいけないあちら側、つまり異界にある『夜市』には恐ろしさとともに、そこはかとなく憂いをおびた美しさが漂っていた。
    私は読んでいる間じゅう、まるで身体から脱け出した魂だけが、ふわふわと夜中の散歩をしているような感覚に陥っていた。
    そして夢から覚めたとき、なぜかとても悲しいのに、それがなぜなのかもう思い出せない。そんな気持ちになった。

    『風の古道』では、異界に対する畏怖の念を抱いた。
    「どちらかを選んだら、別の方にはいけない」
    はっとする。私たちは、こうやって何かを選び続けながら、戻ることのできない道を歩んでいるのだ。
    古道は分岐を繰り返しどこまでも続いている。
    道は分かれる。人も別れ、想いも分かれる。
    古道は死者のもの。生者は生者の道を迷い歩き続けるしかない。
    きっと私はあの古道へ還りたくなるだろう。喪失感を抱き、風の匂いに郷愁を誘われながら。それでも今はまだ還らない、還れないのだ。

  • 異界か…
    人と人以外が交わる。
    何かの拍子に交わる。人の世界のすぐ隣りにあるけど、行けない…
    「夜市」も「風の古道」もそんな感じの世界やな。
    この世界では、凄いものが何でもあったり、いたりする。
    でも、人が調子に乗ってムチャすると痛い目に会う。痛いというより、その存在自体が…有無を言わせぬ明確なルールがあって、それを破るとアウト(ーー;)
    怖いようで、身近で親近感あるという感じの怪しい作品やわ。
    まさに異界小説やな。

    ちなみに「夜市」は、何かどっか高架下にある闇市みたい。違法なもん色々売ってる。まっ!「夜市」みたいなのは売ってないけど、ある意味、新世界、イヤイヤ、異世界^^;

  • 珍しくホラーです(*^-^*)

    会社の方からお借りしました~。
    凄い薄い本で、2作の短編でございました。


    1編目は「夜市」
    何でも売っている不思議な市場「夜市」。
    幼い頃夜市に迷い込んだ祐司は、弟と引き換えに「野球選手の才能」を手に入れた。
    野球部のエースとして成長した祐司だったが、常に罪悪感に苛まれていた。
    そんなある日、また夜市が開かれ、祐司は友人の女の子と一緒に夜市に迷い込む。



    もう1編は「風の古道」
    7歳の時に父親と遊びに来た小金井公園。
    そこで父親とはぐれてしまい、知らないおばさんに教えてもらった未舗装のまっすぐな道で家まで何とか帰り着く。
    その道が特別であることを何となく感じるも、人に話してはいけない気がして、誰にも話さずにいた。
    十二歳の夏休み、友達と心霊スポットの話になったとき、友達のカズキにその道のことを伝えてしまった。
    カズキがその道に興味を持ち、二人でその古道に再び足を踏み入れる。



    ホラーはあんまり得意分野ではないが、この2作は先が気になる展開。
    夜市では、何か買い物をしなければ、夜市から抜け出すことが出来ない。
    あー女の子を誘ったのは、女の子を売る為か!?等々あれやこれや邪推しながら読み進めた(笑)

    風の古道は、何となく昔遊びに行った、和歌山の熊野古道の風景を思い出しながら読んでいた。


    本の表現も難しいものではない為、小学生くらいのお子さんでも十分楽しめる本ではないかと思った。

  • ホラー感のあるノスタルジックな雰囲気のファンタジー。
    不思議な世界観に冒頭から一気に引き込まれる。
    文章が美しく短文なので読んでいて心地よかった。
    妖怪たちが様々な屋台を出す不思議な市場「夜市」。
    そこでは望んだものが何でも手に入る。
    元の世界に戻るには何か買わなくてはならないが…
    失ったものの大きさに気づいた裕司は、弟と再会できるのか。
    本当にほしいもの、大切なものは何か。
    ちょっと不気味で不思議な世界から最後は感動の展開だった。

    • ひろさん
      まおちゃんだぁ!久しぶり(*´▽`*)ノ♡
      『夜市』読んだよ~!!世界観に惹き込まれました(*´ `)
      『風の古道』もいいよねっ☆現実と繋が...
      まおちゃんだぁ!久しぶり(*´▽`*)ノ♡
      『夜市』読んだよ~!!世界観に惹き込まれました(*´ `)
      『風の古道』もいいよねっ☆現実と繋がっている異世界…ちょっと怖いけど不思議と懐かしさも感じられたなぁ(*´꒳`*)
      2023/05/02
  • ホラーは読めないけれど
    これはファンタジー寄りでそこまで怖くなく読めた。

    ゾクゾクする怖さというより
    じっとりとした怖さ。

  • 夜市の雰囲気はよく伝わってきました。
    妖怪がうようよしているような世界。
    子供の頃夜市に行った裕司が、友人のいずみを連れて夜市に再び行きます。
    この世界にいきなり入り込んでも、初めて行ったいずみが、驚いていないのも自然な感じで読めました。

    ここに迷い込んだら買い物をするまで、出ることができない夜市の仕組み。
    野球の才能と引き換えに、子供の頃、弟を売った裕司。
    「なぜ、青空に吸い込まれる、自分が打ったホームランを見て泣きたくなるんだ?」
    「なんにせよ、買いさえすれば、帰りたいと思った瞬間、帰れます」
    人攫いの店に、果たして、裕司が売った弟はいるのか?
    完結している異世界。
    異世界なのに、すべて納得してしまう。
    なんてよくできたお話しかと思いました。
    日本ホラー小説大賞受賞作。

    同時収録の「風の古道」もホラーというより大人向けの童話のような感じがしました。

  • ホラーと銘打ってあったので敬遠していましたが、感想などを読むと怖いというより不思議な世界の話って感じだったので読んでみました。
    「夜市」に関しては、人ならざるものが営む夜市に紛れ込んだ幼い兄が弟を売って野球の才能を得ます。(そうしないと帰れないから)
    その後、大人になった兄は弟を買い戻そうと再び夜市に向かいます。
    兄の気持ちを考えると……本当に切ないし、しんどい十数年間だったろうなぁ。
    夜市の雰囲気は、千と千尋の神隠しと夏の夜祭のイメージが合わさったような感じで、どこか懐かしさを覚えました。

    2作目の「風の古道」も夜市と世界観は繋がっていて、夜市で分からなかったことが風の古道で回収されたりしてました。
    こちらもまた、何だか切ないし悲しいし怖いしで。子どもがメインなのは、やっぱり子どもの時って、大人が入り込まないような林の中やちょっと怪しい場所とかに興味本位で行っちゃうからかな。私も経験があるので昔を思い出しながらも「こわっ」と身震いしながら読み終えました。

  • たまたま観たテレビで作者本人が著作について語られており、面白そうだったので早速読んでみました。
    不思議な2編のホラーでした。

    『夜市』
    人間の嫌~な部分。あなたならどーする?

    『風の古道』
    小金井公園が、違う世界への入り口とは。

    フッとしたきっかけで違う世界に迷い込んじゃうことって、、、、、無いとは言い切れないなぁ。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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