夜市 (角川ホラー文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043892013

感想・レビュー・書評

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  • 初、恒川光太郎。日本ホラー小説大賞受賞作。
    2編収録されているが、表題の作品が秀逸。
    この独特の世界観にグッと惹き込まれ魅了された。
    括りとしてはホラーになるのかなあ。何となくしっくりこないが。ただ結末は涙を誘う。哀しく美しい話だった。

  • お友達から借りて、拝読。

    2005年第12回日本ホラー小説大賞受賞作
    …らしいのだけど、ホラー的雰囲気は薄く
    ダークファンタジーの様相が強い。

    異形の者達の描写などはあるものの
    おどろおどろしさはなく
    登場人物達(たぶん作者も)は「異界」「闇」に対して
    恐れというよりむしろ、惹かれている描写があるのも
    その一因なのかもしれない。

    不意に(中には故意の者も)異世界に迷い込む主人公達。
    読んでるこちら側もそれと同様に
    最初は見慣れぬ用語に戸惑いつつも、訳のわからぬままに
    物語の中に連れ込まれていく。

    その辺りの導入がうまいなぁ…と。


    自分の印象としてだけれど、
    ブラック版伊坂幸太郎氏の様な雰囲気を感じた。

    物語がちゃんとぐるりと回転して
    伏線を綺麗に回収しながら、起承転結する。
    (これが上手くできてない物語は、
     読んでいてイライラすることこの上ない)

    物語の骨組みはもちろんだけれども
    それを支える語彙力や文章力も、申し分ない。

    あとがきにあった、林真理子氏の前述の大賞選評の一部
    「幻想的な美しさを醸し出す無駄のない文章、
     抒情的ではあるが、
     余分なセンチメンタリズムに陥らない知的な文章」

    という描写は、まさにその通りなのではないかと。
    幻想的ではあるものの、余分なセンチメンタリズムがなく
    スッキリした読後感。


    恥ずかしながら「遠野物語」など
    文学界の王道はまだ未読なのですが(今度読んでみよう)

    ネット界での王道「きさらぎ駅」など
    神隠しや異世界物が好きな、私の様な方にはおススメの作品です。

  • ホラーというか、ファンタジーか。
    現実の世界と隣り合わせにある異世界を舞台にした
    中編二編。
    妖怪達が様々な物を売る夜市で、弟と引き換えに野球の才能を手に入れた主人公の話。
    異世界に縦横無尽に張り巡らされた古道を舞台にした話。
    どちらも、ちょっと物悲しいお話。

    解説にもあったが、文体も良かった。

  • [夜市]
    三人称で綴られる文章は世辞にもこなれているとは言い難いものだ。
    人妖問わず誰をも受け入れる怪しげな夜市という魅力的な設定が、良く言えば簡素、悪く言えば物足りぬ文章によって綴られるため、片手落ちの感が否めない。
    主要人物のことごとくが人間であり、妖怪という要素が物語からやや剥離しているようにも見受けられる。
    しかしながら、弟と引き換えに手に入れた野球の才能とそれに翻弄される人生について主人公が述懐する場面では、その文章に光るものを感じた。
    老紳士である弟が、自らの人生を振り返る場面の苦心や煩悶の描写も良い。
    物語の構成としては主要人物からやや外れた、薄い印象の受けるいずみも、裕司との恋愛にまでは発展しない微妙な関係や裕司の真の目的に感付ける人間らしい賢しさがあり他と色褪せない。
    取り立てて面白いと感じたのは夜市で取引される品々だ。
    弟の代わりとして手に入れた野球の才能は、人としてトップクラスの物という訳ではなく、果ては付き合った女の卑しい驕りへと使われて裕司は絶望する。
    弟が自らの若さと引き換えに手に入れた自由は、人攫いの手から弟を開放したものの、両親の庇護からも弟を自由にし、彼は苦悩する。
    対して弟が、出会った少女のために手に入れた治療薬は少女の兄を救った。
    本当に必要な物というのは恐らく取引などでは満足に手に入らないものなのだろう。そう思わせる作品だった。

  • 初見と思いきや、『金色の獣、彼方に向かう』の作者さんだった。風天孔。なるほど。

    表題作「夜市」と「風の古道」という短編で作られている一冊。
    化け物たちがあらゆるものを売買する「夜市」。
    裕司はかつて野球の才能と引き換えに売ってしまった弟を取り戻すために、再び夜市を訪れる。
    「思っていたエンディングとは違う」と紹介された通り、確かに展開はクルクル変わっていく。

    「風の古道」は、神秘的な力を持つ裏道を辿ってゆく少年たちのお話。なんか、森の隙間から入って抜けてゆく道って、トトロに繋がりそうなアレだな、という雰囲気がいい。
    また、そこで現実世界に戻る道筋の案内人を務めてくれるレンの役割も、ちゃんとこの世界観に溶け込んでいる。ただ、コモリが割と謎ホラー。
    人間でないものより、人間の方が実は怖いよね、ということなんだろうか。

    どちらの話にも、もっとエンディングを求めてしまう自分がいる。

  •  異界行って帰って来る話。そこだけ切り取るなら、『千と千尋の神隠し』が近いだろうか。怖い話というわけではない。伏線をファンタジーならではの手法で鮮やかに回収する、さっぱりした読後感の得られる短篇2篇。
     少年時代の、自分が無力な存在である故の不条理さや喪失感を、浮世離れした物語によって少年ではなくなった読者に追体験させてくれるかのような本だった。


  • 夜市.風の古道 どちらも夏の雨降り後のようなジメジメ感があった。
    風の古道の、[異世界への扉は、気づいていないだけで直ぐそこにあるかもしれない]と言うようなところがとても好き。

  • 夏の夜の、土の地面の上にただよう空気を味わえた。

  • 2つの繋がった短編集

    どれも幻想的までも行かないけど
    現実であったらいいな、もしかしたらどこかであるかもしれないそんな風に思える
    2つの話はどれもなんだか切ない終わり方

  • 懐かしくも温かい作品でした。
    表題作「夜市」「風の古道」共に彼岸を思わせる描写でしたが、ホラーというよりはファンタジー的な印象を受けました。
    決して自ら好んで入りたいという世界ではないけれど、
    どこか懐かしくて、一夏の思い出のような華やかな記憶としては残らずに心の奥にひっそりと残る不思議な体験。
    ただの怪談話ではなく、現実か嘘かもわからないような淡く不思議な物語に心が惹きつけられました。

著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、『夜市』で日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。同作で直木賞候補に。14年、『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。著書に『雷の季節の終わりに』『秋の牢獄』『南の子供が夜いくところ』『竜が最後に帰る場所』『金色の獣、彼方へ』『南の子供が夜いくところ 』『スタープレイヤー』『ヘヴンメイカー』などがある。

「2019年 『白昼夢の森の少女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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