秋の牢獄 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 242
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043892037

作品紹介・あらすじ

十一月七日水曜日。女子大生の藍は秋のその一日を何度も繰り返している。何をしても、どこに行っても、朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。悪夢のような日々の中、藍は自分と同じ「リプレイヤー」の隆一に出会うが…。世界は確実に変質した。この繰り返しに終わりは来るのか。表題作他二編を収録。名作『夜市』の著者が新たに紡ぐ、圧倒的に美しく切なく恐ろしい物語。

感想・レビュー・書評

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  • あっ!もう11月8日やわ!
    良かった〜
    もう一回というか、何度も同じ日の繰り返しって精神的にキツい。
    何しても、元に戻るってのは、魅力的やけど、無限ループなんか嫌や。
    3つの短編集やけど、どれも牢獄というか囚われてる。

     11月7日という時、

     家という空間、

     幻術という力。

    いずれの作品も最終的には、解放に向かうんやけど、そこは、違った形で。

    ホラーというより、民話というか、世にも奇妙な物語というか…
    こういう、何か身近にあるような恐怖。

    「ないわ〜こんなん〜」って思って後ろ向いたら…
    「あれ???」みたいな…

  • 『夜市』の世界よりまだ少し、ひと側に寄った物語だなと思った。
    それは、ひとの意思や所為というものが未だ形を持っていて、こちら側から完全に抜け出そうとしない(したくない)、言うなれば執念、執着などといった人間臭さを持ったまま、異界へと誘われたひとたちだったように感じたから。
    だからなのか、『夜市』のような精錬された幽玄さや艶やかさ妖しさというものに到達するまでの、まだ濾されきれていない泥臭いものが描かれていたように思う。

    『秋の牢獄』では、先に進みたいとの希望を何度も打ち砕かれる朝を迎えるうちに、自分が消えることを待ち望むようになった主人公。
    生が繋ぎ止められた時間の「牢」から解放されることは、精神的な安楽を意味しているようであり、その先が死か、それとも未来かということはとうに大切なことではなくなっている、そんな印象を受けた。

    『神家没落』では、どこにも自分の拠り所がない、その「自由」さに恐ろしさを感じ、もう一度「家」に執着する主人公。
    家という「牢」へもう一度入りたいと願った主人公にとって不意に訪れた「牢」の消失とは、決して自分を解放させるものではなく、よりいっそう孤独を深めることになったのであったろうと想像する。ある意味、「牢」の幻像に囚われたまま生きていくことになったのではないだろうか。

    『神家没落』とは逆に「牢」からの解放を望んだのは『幻は夜に成長する』。
    主人公は生への喜びや自由への渇望というような、希望に満ちた明るいものを決して望んだわけではないのだろう。もっとどろどろした人間の業や欲といった、どす黒い塊をもマグマのようなエネルギーとして生きることへの喜びへと解放させる、そんな印象を受ける。鍵の開いた「牢」から、自分は生かされているのではない、この幻で覆われた現実で生きてやるのだという主人公の力強い声が聞こえるようだった。

    「牢」に対して自分がどのように願い、あるいは対峙するのか。それによって「牢」はどのような試練、もしくは褒美を与えるのか。
    その果てに迎える結末。「牢」から解放された先にあるのは消失なのだろうか、それとも生成なのだろうか。
    誰にもわからないなかで、ただひとつ確かなこと、それは様々なものにひとは囚われながら生きているということだった。

  • 表題作の「秋の牢獄」を再読したくて図書館で借りた。
    内容は作品紹介通りだが、リプレイ関係の物語に惹かれる気持ちってなんだろう?と考えてしまう。
    自分の人生に悔いがあるのか?無い奴は居ないと思うけど。
    やり直しは出来ないからこそ、そこに夢とか物語を紡いだり、それを読んだり観たりして共感するのだろうか。
    いつかまた再読する日が来ると思う。その時は何を思うのだろう?

    作品紹介・あらすじ
    十一月七日水曜日。女子大生の藍は秋のその一日を何度も繰り返している。何をしても、どこに行っても、朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。悪夢のような日々の中、藍は自分と同じ「リプレイヤー」の隆一に出会うが…。世界は確実に変質した。この繰り返しに終わりは来るのか。表題作他二編を収録。名作『夜市』の著者が新たに紡ぐ、圧倒的に美しく切なく恐ろしい物語。

  • 11月7日水曜日を何度も何度も繰り返す女子大生の話。

    面白かった。時間ってなんだろうなと考えた。
    もしかして日常生活に紛れ込んでいるかもしれない【リプレイヤー】。
    この、日常と並行して不思議な世界がすすんでいる感じの物語が好き。

    特に何も起こらなかった日が繰り返されるぶんには良いけど、たしかにテロとか事件とか、身近な誰かが亡くなった日が繰り返されてしまうとしたらつらいなと思った。

    “北風伯爵”が不気味・・・ぞわっとする怖さが良い。
    文章だけでも、得体のしれない恐怖を表現できるのがさすが。


    「ぼくたちの本体はとっくに先に進んでいて、ぼくたちは本体が、十一月七日に脱ぎ捨てていった影みたいなものじゃないのか。世界は毎日、先へ進むたびに、その時間に影を捨てていくのかもしれない。」

  • 秋真っ盛りのこの時期に読むことをずっと前から計画していたので、銀杏並木の木の下で読んでみた。
    11/7から一日も進まなくなってしまった世界線での生活の中に、どこか青春めいたものを感じる「秋の牢獄」
    1人では出ることができない家を舞台に、予想としない角度からの急展開が繰り広げられる「神家没落」
    祖母から受け継いだ魔法を持った少女の絶望を描く「幻は夜に成長する」
    ホラー小説としてよく名の挙がる「夜市」も読みましたが、その時と同様に恒川光太郎さんはただ怖いだけで終わらない物語を描く作家だな思いました。
    3つは全く違う内容ですが、それぞれにある種の”切なさ”を内包されているため、怖くてゾッとしつつもノスタルジックな気持ちになるという、不思議な読書体験ができました。

  • 恒川光太郎さんの作品は「夜市」が好きで、フォローさせてもらってる方の感想でこちらも手にとりました。

    結論から言うと『良い』。

    読んでホラー感は薄いけれども、いざその境遇になることになったらもちろんゾッとする。

    不思議は不思議なまま置いておきながら、納得してしまうお話が心地よく感じてしまう。

    つかみどころのない出来事で終わりが想像に任せる感じだが、それがバチッとはまった作品で大好きになりました。

  • 恒川さん、初読み。読み友さんから表題作をお薦めされる。秋の牢獄、11月7日を繰り返す主人公。得体の知れない北風伯爵。で?結局正体何だったのか?乾くるみ・リピートではなぜリピートするのか?それは時空を操る奴が「暇つぶし」「楽しむ」ため。この徹底的な主張が読者の緊張感を増す。この本はある意味、幻想的。でもうやむや感を超える主張を感じたかった。もしかして自分のバカさ加減の問題か??全体的に幻想的な内容で、森見さんに似たモヤモヤ感。もっとファンタジー感・ホラー感を突き詰めて欲しかったな。中途半端な感じで読了。

    • ポプラ並木さん
      ゆうママさん、どう?ペネロペの冬バージョンにしてみたよ。絵本で一番一番好きかも!ご意見聞かせて~出張は東京都心で授業収録をしてきましたよ。疲...
      ゆうママさん、どう?ペネロペの冬バージョンにしてみたよ。絵本で一番一番好きかも!ご意見聞かせて~出張は東京都心で授業収録をしてきましたよ。疲れた~
      2021/11/08
    • アールグレイさん
      お疲れさま(*^-^)ノ

      授業収録というと大学ですね!ついでに、講義してきたりして
      ヽ(゚ロ゚;)ノ
      アイコン、なんだ~⁉ 水色のマるぅ?...
      お疲れさま(*^-^)ノ

      授業収録というと大学ですね!ついでに、講義してきたりして
      ヽ(゚ロ゚;)ノ
      アイコン、なんだ~⁉ 水色のマるぅ?と思い虫メガネで見たら、ペネロペ、肉眼で見ることができないのが残念・・・可愛いけど・・・・
      ごめん(>_<)私の性格ははっきり言ってしまうこと。水色の玉っころにしか見えない。
      申し訳ない!老眼の私を笑って下さいませ。
      (+_+)
      2021/11/08
    • ポプラ並木さん
      疲れた・・・でも楽しかったよ。

      (⌒▽⌒)アハハ!アイコン小さかったね。すんません。老眼?でも読書てきているんだから大丈夫でしょう~(...
      疲れた・・・でも楽しかったよ。

      (⌒▽⌒)アハハ!アイコン小さかったね。すんません。老眼?でも読書てきているんだから大丈夫でしょう~(笑)
      授業収録は、がんに関する学会の講師として毎年呼ばれています。意外と頑張っていますよ。ペネロペは可愛いよね~
      新幹線で坊ちゃんを初めて読んだよ。面白かった!!
      ではでは。
      2021/11/08
  • 【収録作品】秋の牢獄/神家没落/幻は夜に成長する

    いずれも「囚われた」人の話。
    「秋の牢獄」は、同じ一日を繰り返す。何をしても目覚めると同じ日。主人公たちは現象は理解するが、解決策はない。まさにホラー。
    「神家没落」は、移動する「家」から出られない。こちらは主人公がルールに従って出る方法がある。
    「幻は…」は、主人公が力を蓄えれば出られそう。

    「秋の牢獄」と「神家」は、人によっては救いかもしれないと思えてしまうのがまたホラー。

  • 『秋の牢獄』は11月7日という日にちに、
    『神家没落』は空間を移動する民家の中に、
    『幻は夜に成長する』は特殊な能力を持つ女性が宗教団体の施設の中に、
    それぞれ囚われてしまうお話。
    一番好きなのは、一話目の『秋の牢獄』。
    大学に通う藍という女の子が11月7日から出られない話。
    11月7日を過ごし、眠りについて朝目覚めるとまた11月7日に日付が戻ってしまう。何度目かの11月7日を過ごした頃、自分も同じ境遇だという男性に声をかけられる。他にもそういう人たちがいるから、その集まりに顔を出してみないかと。彼らは自らをリプレイヤーと称し、11月7日という1日を繰り返し繰り返し生きている。

    ・・・ふと11月7日という日付に意味はあるのだろうかと思い、調べてみたらその日は立冬だった。
    秋が極まり冬の気配が立ち始める日。
    つまり秋が一番濃い日だ。

    7日を何度も繰り返すということは、7日の夜に時間が巻き戻るということなのだろうか。
    ということは、このリプレイは人類全体に起きていることなんだけど、それに気づいた人がリプレイヤーということ?
    それとも7日が終わった時点で、パラレルワールドの7日に移動するということなのだろうか。
    たくさんお金を使っても、どんな怪我をしても(極端な話、死んでしまっても)、もちろん誰かを殺したって、何もなかったことになるんだからやりたい放題だ。ある意味うらやましいともいえる。

    角川ホラー文庫なので怖い話ではあるんだけど、幽霊とかお化けとかそういう直接的な怖さではない。ここからずっと抜けられないかもしれないという絶望に近い恐怖を抱えながらも、いつかこれが終わってしまうかもしれないと思う矛盾した思いが、まるで腐った落ち葉の上をぬらぬらと歩くような妙な感覚を呼び起こす。
    それが終わった後、果たして自分はどこに流されるのか。永遠に消えてしまうのか、それとも8日に運ばれるのか。そのとき、自分を捉えにくるものとその瞬間。そういうのがじわじわと怖い。

    もしわたしがリプレイヤーに選ばれ、同じ日を繰り返すとして。
    毎日湯水のようにお金を使い、殺したいほど憎んでいる人(そんな人いないけど)をありえないくらい残酷な方法で殺害し、なんてことはとてもじゃないけど出来ない。
    だって、翌朝起きて11月8日になってたら目も当てられない。それこそが本当の恐怖だと思う。

  • 独特の世界観、読みやすい構成はそのままだった。
    「夜市」のような誘われるような陶酔感は薄かったが、大変面白かった。
    恒川ファンとして、彼の作品中では星3だが、全体のレベルでは星4。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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