いつか、虹の向こうへ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 154
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043897018

作品紹介・あらすじ

尾木遼平、46歳、元刑事。職も家族も失った彼に残されたのは、3人の居候との奇妙な同居生活だけだ。家出中の少女と出会ったことがきっかけで、殺人事件に巻き込まれ……第25回横溝正史ミステリ大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 安定が過ぎる伊岡瞬。絶大な信頼に全体重をかけ手に取ったデビュー作だったが、ハードボイルドにしては柔らかい。ソフトボイルド、半熟だ。半熟卵は好物だが....壮絶な脱線の予感がするので急いでミッフィーを憑依(・×・)ーースッ
    ーーーーーーーーーーーー

    元々は凄腕の警察官だった尾木遼平。「魔が差した」ある出来事によって失落し、酒に溺れ自暴自棄な生活を送る中年警備員となる。彼の家には3人の同居人。皆、個性光るが眼光はくすんだ訳アリの人間たちだ。
    ひょんなことから4人目の同居人を招くこととなる。目を惹く美貌を持った女、高瀬早希。
    その後、早希の男の転落死を発端に、それ以下が無いと思われた尾木遼平の人生は更に下層に潜り込んで行く事となる。果たして彼女は天使の皮を被った悪魔だったのだろうか。
    ーーーーーーーーーーーー

    事前情報無しで手に取ったので、興味深い関係性だがいつまでも続く尾木と3人の同居人+早希のおかしな擬似家族模様をひたすら読み進める前半に早くも意思は削がれ気味だった。
    それを留めてくれたのが私の好物「シュールな笑い」の言い回し。これが首かわ一枚で繋いでくれている状態が続く。
    やっと物語が動き出し、ハードボイルドの片鱗にワクワクしてきた頃には半分以上読み進めていた。とんだスロースターターさんめ( ˶´˘`˶)σ)Д`)である。

    伊岡瞬の作り出す小籠包系男子(訳︰ささくれ、厚い皮に身を包んでいるが中には情の熱さが隠れている。それが破れた皮からジュワッと吹き出してくる系メンズ)と、それが放つ数々のひねくれた比喩表現が大好きなのだが、それはデビュー作でも健在だった。むしろ無駄打ちがすぎるくらいの連撃でお腹いっぱい、幸せです。

    とても面白かったのだが、主人公の原動力がイマイチわからない。それがハードボイルドと言われたら何も言えないが...。ヤクザ抗争も臨場感が感じられない。女の尻で滅ぶ組織。警察癒着はオマケ仕様。
    タイトルに通ずる「童話 虹の種」は美しいものだったが彼の存在はもっと大切にして欲しかった。御役御免な扱いがこの話を後付品質に下げているようで勿体無い...。
    そして何よりミステリとしてのオチが残念だ、伏線など最初から無かった。大砲一発で強行突破された気分である。

    全体的なプロットはどちらかと言うとアニメ寄りなぶっ飛び方だったが、作者のロマンを感じた。
    ここを経て「代償」「赤い砂」「痣」のその他素晴らしい作品達と、素敵なクセのある「漢キャラ」を数々作り出したのだなと思うと、原点であるこの作品を手に取って良かったと心から思いました。これからも追い続けますぜ!!小籠包デカ!!

  • 行きずりの少女を成り行きで自宅に泊めたことをキッカケに始まる元刑事の奮闘劇。

    著者デビュー作ともあってか、読了済みの作品と比べて展開に盛り上がりを見出せず、物足りない読後感であった。

    しかしながら私は著者の言葉選び・比喩表現のセンスが好きなので、他の積読本に期待しよう。

  • これがデビュー作なんやな!
    凄い!
    この作者のは、スイスイ読める!
    ラストも辛くないのが多いので安心!
    とは言え、この作品も刑事から、刑務所入って、その日暮らししてる主人公が辛くないと言えるのか…
    その主人公に、更なる試練が!
    知り合ったばかりの女性が、殺人事件に!自身も巻き込まれ…というか、突っ込んでいく〜
    ボコボコにやられるし、ヤクザに雇われて、失敗したら☠️…
    最悪な状況やけど、元刑事の経験、繋がりなどを使って、女性、同居人を救おうとする。
    クライマックスのヤクザのボスとのやり取りは、凄い!面白い!
    まっ!自分なら、震えて何も出来んけどね(−_−;)
    まだまだ、伊岡さんのは積読してるので読むで(^-^)v

  • 伊岡瞬4冊目。落ちぶれ、荒んだ元刑事・尾木遼平。彼の家には訳ありの若者が同居する。理由は尾木が放っておけないからである。同居人の早希(美人局)が殺人容疑で逮捕される。尾木のハードボイルドっぷりは新宿鮫・鮫島を超えるほどで、彼の優しさや同居人(家族)想いが、尾木への感情移入を容易にさせた。ヤクザ、刑事と対峙し、早希の無実を命がけで勝ち取る。その背景には同居人や刑事時代の彼と関わった者が助け、糸口を広げる。尾木とヤクザのボス(檜山)との対決にはシビレタ。彼は確実に「虹の種」を持っていて、純平に渡すだろう。

  • 続け様に伊岡瞬を読んでしまった。
    一言で言えば泣ける。こんなにも世の中は悪に満ちて、悲しみに溢れている。尾木も悲しい。

    主人公尾木遼平は家に三人もの、居候を置いている。そしてある日
    居候させるつもりのない早希が四人めに加わる。

    はじめに結論ありき
    そこから石渡、潤、恭子と
    4人目の
    早希、それぞれの話が
    でてくる。グイグイ読ませるし
    パズルが埋まっていく。
    まあ肋骨を殴られたり、怪我の治る時がない
    命まで失わないかとハラハラドキドキ。
    ハードボイルドなんだ!

    そこに尾木が世話になる花房弁護士の話
    本文よりー
    「私は他人の不幸を喜んだことはないと断言できる
    しかしあなたが困った状況に陥って
    私を頼らざる得なくなったことを
    そしてやっと借りていたものの一部が返せる時がおとづれたことを喜んでしまいました。
    こんな気持ちでなにが弁護士でしょうか。
    こんな浅ましさを許していただけるなら
    謝礼などいりません。誠心誠意、ことにあたらせていただきます。よろしいでしょうか?」ー
    どう良くない、滲みる。

    もう一つ「虹売りの話」ー絵本
    「あなたが一番悲しかったことの話を聞かせてください。」
    実は虹の種の材料は人の悲しみでできていた。話の中身が悲しいほど大きな虹ができる。
    この話もズドンときた。この絵本があるなら読んでみたい。
    本の趣旨も
    ここに集約されてる気がする。
    お互いがお互いを幸せにしょうとする。
    自然につながっているが無理やり感がない。
    みんなが、尾木も恭子も潤もみんな、幸せになることを祈りたい。悲しいことが一つでも減って欲しい。
    それほど登場人物がかわいそうだった。
    自分の星4.9なんて独断と偏見

    これが伊岡瞬初作品とは
    完成度の高さにびっくり。25回横溝正史賞だって!


  • 尾木 遼平(46才)は、刑事であったが、ある事件がきっかけで職場も家族も失う。そして、3人の奇妙な居候達と共同生活を送ることに。
    そんな時、家出中の少女が天真爛漫な陽気と、厄介事を持ち込んで来た、、、

    徐々に明らかになる居候3人の過去。
    それぞれが悲しい過去を背負い、今日を精一杯生きる姿に、ウルウルします。

    絵本に出て来る『虹の種』は、本当にあるのでしょうか?
    悲しみで出来た虹は、きっと、いつか晴れた空の向こうで、見つけることができるのではないかと思います。

    負け犬達の、明日の希望を渇望するピュアな姿に、ウルウルです。

  • ハードボイルド系であり、さりとて読み進めると人間味が溢れる作品でもあり…って感じでした。

    前半部分は、この作品に静かに引き込まれていきます。途中のハラハラドキドキ感がたまりません。
    後半部分は、少し登場人物同志の繋がりが解りにくくなりましたが、一気の伏線回収!!!

    読み終えてから、この題名が好きになりました!!!

  • 遼平も恭子も早希も淳平も石渡も
    不運すぎて過去が重すぎる。
    虹の向こうとは、平穏な日々でしょうか?
    いつか報われて幸せになってほしい。

    伊岡瞬のこの淀んだ感じ好きなんよねぇー

  • ボソリボソリと面白い文章がツボ。
    伊岡さんのTwitter最近みていて、小さな呟きがこの本でも味わえた笑

    登場人物がたくさん!
    前半の何気ない毎日の構成も面白かった。
    後半にいくにつれて、ヤクザ絡みが多くて、誰と誰が繋がってるか整理が私には大変だったかな。
    車の中のシーンとか怖すぎ。
    ただ、主人公、酒飲みだけど、人情的で憎めない。
    最後全てが繋がる感じ。

    あの居酒屋行ってみたい笑

  • 面白かった
    ハードボイルド+ミステリー+ヒューマンドラマ
    第25回横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞のW受賞作

    アルコール依存症気味の尾木遼平。
    かつては腕利きの刑事だったにもかかわらず、ある事件で刑務所へ。妻とも別れて、今は警備員。
    そして、尾木が住む家には、男女3人の同居人。

    そんな設定で、酒場で声をかけられた若い女、早希も同居することに。
    しかし、早希は実は美人局。
    その男に自宅で、ふるぼっこにされてしまいますが、そのあと、その男は陸橋から転落死。
    早希が逮捕されるも、暴力団から、真犯人を見つけるように強要されます。
    やくざのトラブルや警察内部のいざこざも含めて、ぼこぼこにされながらも尾木は徐々に真相にたどり着いていきます。
    その過程で明らかになっていく同居人たちの過去。
    そして、明らかになる真相
    という展開です。

    本書の中で語られる虹売りの絵本の物語。
    これが最後にささってきます。
    悲しい話を聞かせることでできる虹
    この話から本書のタイトルへの伏線にもなっています。

    これはお勧め

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』(『約束』を改題)で、第25回「横溝正史ミステリ大賞」と「テレビ東京賞」をW受賞し、作家デビュー。16年『代償』で「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、50万部超えのベストセラーとなった。19年『悪寒』で、またも「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、30万部超えのベストセラーとなる。その他著書に、『奔流の海』『仮面』『朽ちゆく庭』『白い闇の獣』『残像』等がある。

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