瑠璃の雫 (角川文庫)

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  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043897032

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  • ある日突然出て行ってしまった父、アルコール依存症の母、末弟を叩いて窒息死させてしまった弟、そんな家庭環境の中に杉原美緒はいた。美緒と弟は、入退院を繰り返す母の留守の間、母のいとこである薫さんと一緒に暮らす事になった。末弟を叩いて殺したという大きな罪を親から与えられてしまった弟はまだ小さく、無邪気なままで、それが逆に美緒の心をかき乱していく。両親が不仲になったのは弟のせい、時にそんな怒りが弟に向けられていく。「あいつ死んじゃえばいいのに。」 なのに2人の家族という繋がりが、逃れようもない強い絆として2人を繋いでいる。ある日美緒は、薫さんの知り合いの元検事、永瀬丈太郎と出会い、その優しさと人柄に少しずつ心を開いていく。。しかし丈太郎は愛娘の瑠璃という少女が誘拐されたまま見つからずにいるという大きな闇を持ち続けていた。やがてあるきっかけで、その闇の本当の正体を知る。。弟に向けた自分の罪、母親に対する大きな怒りと軽蔑、そして家族だからこその愛情と紙一重の憎しみ、どうすれば永瀬のように運命に降りかかってしまった罪を赦す事が出来るのか、それを見つけるべく美緒は、この事件を調べ始める。いろんな人物が交差しながら、この事件は予想もしない結末へと流れていく。時折ちらりと見せる伏せんのようなモノが、新たな展開への期待を駆り立てていく。
    美緒の心情、怒り、悲しみ、葛藤の描写がとても痛々しく胸に突き刺さり涙がこぼれた。罪を与えてしまったもの、そしてその罰を受けるべきもの、何が罪で、何が罰なのか、何が正義で何が悪義なのか。家族とはなんなのか、考えさせられる作品でした。

  • 父親は家族を捨て失踪。

    母親はアル中で入退院を繰り返す。

    幼い弟、充と、小学六年生の杉原美緒の唯一の味方は、

    母の従妹である薫。


    さらに、一番下に穣という弟がいたのだが、

    生後十か月で窒息死している。


    窒息死させたのは充だと、母はほのめかす。


    美緒自身も、明るく、弟の面倒を見る健気な少女、

    というわけではなく、心を閉ざし、かたくなだ。

    充を鬱陶しく思い、時には殺意まで抱く。


    黒い思いに押しつぶされそうになると、

    傷だらけになるほど、指を噛み続ける。


    そんな毎日を続ける中、薫の知り合いである

    初老の元検事、永瀬丈太郎と出会う。


    永瀬は検事時代、娘の瑠璃を誘拐されるという

    過去を持っていた。


    その誘拐事件は解決には至っておらず、

    娘の行方も不明のままだった。


    物語は3部構成になっているのだが、

    小学生の美緒が永瀬と出会い、

    少しずつ心を開いていくまでを描いた1部は、

    美緒の追い詰められていく心が辛く、

    読み進めるのにも気力がいった。


    2部では、永瀬の娘の誘拐事件が詳しく語られ、

    そして3部では、成長した美緒が、

    誘拐事件や自らの過去をたどり、

    すべての謎を明らかにする。


    謎は明かされても、失ったものは戻るはずがない。

    「害を加えられた者は、加えた者を赦せるのか」。


    赦すのか、それとも、捨て去るのか。


    明日を生きていくために、人ができることは…。



    立ち止まって考えてしまうほど重いストーリーだが、

    結末は、明日へ顔を向ける美緒が描かれ、

    心が少しだけ軽くなる。

  • 問題のある家庭で育った少女、
    娘が行方不明になったままの老人。

    なかなかキツイです。
    読むのが辛くなる部分もありました。
    ゆっくりじっくり読まないと、この作品の良さはわからないかも。

  • 丈太郎と美緒の交流に心温まりつつ、丈太郎の影に隠れているが薫のやさしさはなかなか出来るものでひないと思う。
    丈太郎の赦しと、美緒の気持ちの付け方は正直分からないところもあったし、読んでる途中は充の事は棚に上げてなにやってんだと、半ばモヤモヤしながら読み進めてた。
    ラストの展開であらかたすっきりできた。
    正義と怒り、全てを超越した赦しは、最後に出て来た人物が言うことで理解できた様に思う。

  • 3018.03.27.読了
    伊岡瞬氏に全く良いイメージがなかったので、期待せずに読んだのが功を奏したか?!
    なかなか良い内容でした。
    ところどころになんで?!と思う箇所もありましたが、
    とても読み応えのある作品でした。

  • 読み始めからキツイ。家庭環境に恵まれない杉原美穂。面倒を見てくれる母親のいとこの薫。薫のはからいで元検事の長瀬丈太郎と知り合う。長瀬も悲しい過去を持っている。長瀬のそばで彼の生き様をみて、美穂も自分の中の事件と向き合っていく。読んでも読んでもずっと辛い。赦すとは忘れる事なのか。

  • 【昔父がカルマと言う言葉を使った時、父の子供に生まれてよかったとそう思った】

    人の業。沢山の人の思いや想いが、絡み合う。真実は何も救わないし、救えなくても、確かな未来を照らし出す。いつまでも、消えないかもしれない。明日には忘れてしまうかもしれない。

    狭い世界だよ、子供が住む世界は。だけど、だからこそ、小さな世界を守るために子供は不器用でも自分らしさで考えている。

    君だったらどうする?とても良い作品でした。

  • 切ない気持ちになった。美緒や永瀬の気持ちになってぐっと引き込まれて読み進めるシーンとなかなかページが進まないシーンがあった。途中まったく触れてなかった登場人物の1人が最後登場してくるシーンと穣を殺した犯人設定が…私的にはう~んって感じだった。私の読解能力がないせいかも…。

  • 2015.2.17
    アルコール依存症の母親と娘と弟。元検事の永瀬丈太郎。

    七月のクリスマスカードを、改題文庫化。

  • 途中ちょっと飽きたけど、読み終えてからは三部構成になってるのが効果的だったかなと思う。
    著者の他の作品も読んでみたいと思う。

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著者プロフィール

伊岡 瞬(いおか しゅん)
1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』で第25回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をダブル受賞しデビュー。著書に『145gの孤独』『教室に雨はふらない』『代償』『ひとりぼっちのあいつ』等がある。
2010年「ミスファイア」で第63回日本推理作家協会賞(短編部門)候補、2011年『明日の雨は。』で第64回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補、2014年『代償』で第5回山田風太郎賞候補、2018年『痣』で第20回大藪春彦賞候補。

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