瑠璃の雫 (角川文庫)

  • 角川書店 (2011年7月23日発売)
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本 ・本 (496ページ) / ISBN・EAN: 9784043897032

作品紹介・あらすじ

母と弟の3人で暮らす小学6年生の杉原美緒。母のアルコール依存によって、親類に引き取られた美緒は心を閉ざしていく。そんな折、元検事の永瀬丈太郎という初老の男と出会う。美緒は永瀬の人柄に心を開いていくが、彼はひとり娘を誘拐されており、大きな心の傷を抱えていた。数年後、美緒は事件を調べ始め、あまりにも哀しい真実を知る。家族とは何か。赦しとは何か。今最も注目を受ける気鋭が贈る、慟哭のミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 『瑠璃の雫』罪と赦し。2つの家族の物語。

    【本書の特徴】
    『瑠璃の雫』は、著者伊岡瞬氏による3作目の作品です。子供が誘拐され、行方不明になった夫婦と父親が蒸発、母親がアルコール中毒という家庭に育った姉弟の物語です。
    タイトルの「瑠璃」は、行方不明となった子供の名前です。
    誘拐した犯人グループは誰なのか?その動機は何なのか?というミステリー要素よりも、被害者家族の気持ち、そしてその家族と出会う姉と弟の気持ちの描写に重きが置かれている小説です。

    【物語のはじまり】
    幼稚園児が公園で遊んでいたそのとき、近隣で精神異常者が暴れます。その暴動の裏で、園児が1名誘拐されました。園児の父親は「検事」です。当時担当していた事件は、地元の議員と建設会社の賄賂・汚職でした。
    被疑者は、目撃者情報を含めた状況証拠から、議員・建設会社関連とわれました。しかし、証拠不十分で逮捕にはいたりませんでした。
    結局、犯人は逮捕されず、園児も見つからず時が流れます。

    【主な登場人物】
    1.検事:
    たった一人の長女が誘拐される。妻の死後、妻の遺品を整理しながら、長女の行方・真相探しを始める。犯人と対峙し、真相を知る。しかし、彼は犯人を立件することも、自首させることもしなかった。なぜ?

    2.検事の妻:
    長女が誘拐されたあと、夫の転勤が決まる。夫は単身赴任し、妻は、長女が誘拐された土地に残ることを決意する。彼女は、夫に定期的に手紙を書く。当初は悲しみに暮れていたが、少しずつ光がさすようになる。長女と同い年の子供とその母親と親しくなり、気持ちにゆとりができるようになる。

    3.少女:
    父は蒸発、母はアルコール中毒。弟の長男は知恵に多少の問題があるとされる。弟の次男は、生まれてすぐに自宅でなくなっている。物理的な居場所と精神的な居場所がない少女。叔母が経営するスナックの客、1の検事と出会い、少しずつ心を開くようになる。

    【小説のテーマ「赦し」】
    この小説では、複数の事件が存在しています。
    ・検事の長女が誘拐される事件
    ・誘拐事件の被疑者が失踪し、行方不明となる事件
    ・少女の弟(次男)が自宅で死亡する事件

    すべて事件であるため、実行犯が存在します。実行犯は、逮捕されることなく、物語が進行します。逮捕されない理由、背景は複雑です。

    人は、罪もその罪を犯した人も一般的には憎みます。しかし、この小説ではこの憎しみという感情に対して「幅」を持たせます。その幅が「赦し」です。赦しは、辞書で「罪を咎めない」とあります。

    なぜ、登場人物たちは、「罪を赦した」のか?
    読者がその背景にたどり着いたとき、どうしようもない哀しみに包まれてしまうことでしょう。

  • 3部作からなるミステリー。

    今日今現在、伊岡瞬作品でコレイチと言えるほど読み応えのある作品だった。

    誰かに傷つけられたとき、苦しめられたとき、怒と哀を抱く中で、相手を【許す】ことの難しさ、大切さを教えられ、しっかりと私の感情を揺さぶってくれた名作であった。

  • この小説のジャンルはなんだろう。
    途中少しダレてしまって、なかなか読み進められないところはあったけど、終盤は一気読み。
    丈太郎と美緒が心を通わせるところとか、登場人物の心の動きが丁寧に描かれていてミステリー要素がなくても楽しめた。
    それにしても、充。。ネタバレになるから詳しく書けないけど、1番の衝撃でした。

  • 単純に面白い、面白くないと感想を言えない話だったかな…と思います
    このお話は
    【どうにもならなかったことを、どう許すか、どう忘れるか…そしてどう進むか…】って事がテーマなのかな…
    個人的に薫さんが、とても人として魅力的な人だと思いました

    それと自分に【許す力】があまりないなと実感した作品でした

  • 重い
    テーマは「赦し」、赦すことができるのか..
    なんとも、哀しくなる物語

    三部構成からなる物語で
    第一部はアルコール依存の母と弟と三人で暮らす小学6年生の美緒の目線で語られます。
    そんな美緒は母の従妹の薫の店で元検事の永瀬と知り合います。
    しかし、永瀬も過去に娘を失うという暗い過去が..

    第二部ではその永瀬が検事時代の物語。
    永瀬が大きな事件を追っている中、娘の瑠璃が何者かに誘拐され、事件は迷宮入りに..

    そして第三部では、美緒が社会人となり、美緒が探る永瀬の娘の事件。
    そこで、明らかになる真相
    といった展開です。

    哀しい真実が明らかになります。
    それぞれが重いものを持っていながら、それを「赦す」ということ

    全体的に哀しい物語ですが、お勧めです

  • 残酷な事件と哀しい真実。それに向き合い、前進する事がどれだけ難しいことか。読み応えがあり心を動かされる小説。

  • 自分の子供が、誘拐されて、それっきりやったらどうする?
    幼い弟が、赤ん坊の弟を誤って殺してしまったらどうする?
    そういう境遇の親子以上に歳の離れた2人が出会い、多少なりとも前向きにしていく。
    でもなぁ〜そうは言っても、こんな事を経験したら、自分なら立ち直れんな…一生…
    許すと言ってもそう簡単にはね…
    恨みだけで生きてても、ただの生き地獄。
    それぞれの事件の次第に真相は分かって来るんやけど、心は晴れんわ。
    少しでも前向きに、少しでも明るく生きて欲しいと願うしかない。

  • ★3.5



    母と弟の3人で暮らす小学6年生の杉原美緒。母のアルコール依存によって、親類に引き取られた美緒は心を閉ざしていく。そんな折、元検事の永瀬丈太郎という初老の男と出会う。美緒は永瀬の人柄に心を開いていくが、彼はひとり娘を誘拐されており、大きな心の傷を抱えていた。数年後、美緒は事件を調べ始め、あまりにも哀しい真実を知る。家族とは何か。赦しとは何か。


    重かった。
    読んでいて悲しくて辛い気持ちに押し潰されそうに何度もなりました。
    後半色んな事が繋がっていくにしたがい、色々考えさせられました。
    ケンジさんの気持ちを思うと、切ないな

  • 親を赦す、赦さない。害が大き過ぎて、前を向けるものではありません。

  • 伊岡さんは8冊目となり、私の本棚登録も1位になっておりました^^
    読んだ中では1番読解が難しく(特に2章の政権?がらみ?のあだこだ)、、そして最後まで悲しい寂しい感情が残ります。

    『赦せるか』
    私は赦せない性格の方が強いのかもしれません。
    いつもまあいっか〜と流す方ですが、
    なんだろ、、この話のどことも赦せない、、

    不幸の連続で気持ち辛いが、
    どうかひと時の幸せを感じてほしいな、美緒さん。
    薫さん、こんな良い人います?素敵だわ。

    伊岡さんの積読本は、あと2、3冊
    次の休みでまた読もう

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』(『約束』を改題)で、第25回「横溝正史ミステリ大賞」と「テレビ東京賞」をW受賞し、作家デビュー。16年『代償』で「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、50万部超えのベストセラーとなった。19年『悪寒』で、またも「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、30万部超えのベストセラーとなる。その他著書に、『奔流の海』『仮面』『朽ちゆく庭』『白い闇の獣』『残像』等がある。

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