瑠璃の雫 (角川文庫 い 64-3)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年7月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043897032
作品紹介・あらすじ
深い喪失感を抱える少女・美緒。謎めいた過去を持つ老人・丈太郎。世代を超えた二人は互いに何かを見いだそうとした……家族とは何か。赦しとは何か。感涙必至のミステリ巨編。
感想・レビュー・書評
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3部作からなるミステリー。
今日今現在、伊岡瞬作品でコレイチと言えるほど読み応えのある作品だった。
誰かに傷つけられたとき、苦しめられたとき、怒と哀を抱く中で、相手を【許す】ことの難しさ、大切さを教えられ、しっかりと私の感情を揺さぶってくれた名作であった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『瑠璃の雫』罪と赦し。2つの家族の物語。
【本書の特徴】
『瑠璃の雫』は、著者伊岡瞬氏による3作目の作品です。子供が誘拐され、行方不明になった夫婦と父親が蒸発、母親がアルコール中毒という家庭に育った姉弟の物語です。
タイトルの「瑠璃」は、行方不明となった子供の名前です。
誘拐した犯人グループは誰なのか?その動機は何なのか?というミステリー要素よりも、被害者家族の気持ち、そしてその家族と出会う姉と弟の気持ちの描写に重きが置かれている小説です。
【物語のはじまり】
幼稚園児が公園で遊んでいたそのとき、近隣で精神異常者が暴れます。その暴動の裏で、園児が1名誘拐されました。園児の父親は「検事」です。当時担当していた事件は、地元の議員と建設会社の賄賂・汚職でした。
被疑者は、目撃者情報を含めた状況証拠から、議員・建設会社関連とわれました。しかし、証拠不十分で逮捕にはいたりませんでした。
結局、犯人は逮捕されず、園児も見つからず時が流れます。
【主な登場人物】
1.検事:
たった一人の長女が誘拐される。妻の死後、妻の遺品を整理しながら、長女の行方・真相探しを始める。犯人と対峙し、真相を知る。しかし、彼は犯人を立件することも、自首させることもしなかった。なぜ?
2.検事の妻:
長女が誘拐されたあと、夫の転勤が決まる。夫は単身赴任し、妻は、長女が誘拐された土地に残ることを決意する。彼女は、夫に定期的に手紙を書く。当初は悲しみに暮れていたが、少しずつ光がさすようになる。長女と同い年の子供とその母親と親しくなり、気持ちにゆとりができるようになる。
3.少女:
父は蒸発、母はアルコール中毒。弟の長男は知恵に多少の問題があるとされる。弟の次男は、生まれてすぐに自宅でなくなっている。物理的な居場所と精神的な居場所がない少女。叔母が経営するスナックの客、1の検事と出会い、少しずつ心を開くようになる。
【小説のテーマ「赦し」】
この小説では、複数の事件が存在しています。
・検事の長女が誘拐される事件
・誘拐事件の被疑者が失踪し、行方不明となる事件
・少女の弟(次男)が自宅で死亡する事件
すべて事件であるため、実行犯が存在します。実行犯は、逮捕されることなく、物語が進行します。逮捕されない理由、背景は複雑です。
人は、罪もその罪を犯した人も一般的には憎みます。しかし、この小説ではこの憎しみという感情に対して「幅」を持たせます。その幅が「赦し」です。赦しは、辞書で「罪を咎めない」とあります。
なぜ、登場人物たちは、「罪を赦した」のか?
読者がその背景にたどり着いたとき、どうしようもない哀しみに包まれてしまうことでしょう。 -
単純に面白い、面白くないと感想を言えない話だったかな…と思います
このお話は
【どうにもならなかったことを、どう許すか、どう忘れるか…そしてどう進むか…】って事がテーマなのかな…
個人的に薫さんが、とても人として魅力的な人だと思いました
それと自分に【許す力】があまりないなと実感した作品でした -
重い
テーマは「赦し」、赦すことができるのか..
なんとも、哀しくなる物語
三部構成からなる物語で
第一部はアルコール依存の母と弟と三人で暮らす小学6年生の美緒の目線で語られます。
そんな美緒は母の従妹の薫の店で元検事の永瀬と知り合います。
しかし、永瀬も過去に娘を失うという暗い過去が..
第二部ではその永瀬が検事時代の物語。
永瀬が大きな事件を追っている中、娘の瑠璃が何者かに誘拐され、事件は迷宮入りに..
そして第三部では、美緒が社会人となり、美緒が探る永瀬の娘の事件。
そこで、明らかになる真相
といった展開です。
哀しい真実が明らかになります。
それぞれが重いものを持っていながら、それを「赦す」ということ
全体的に哀しい物語ですが、お勧めです -
自分の子供が、誘拐されて、それっきりやったらどうする?
幼い弟が、赤ん坊の弟を誤って殺してしまったらどうする?
そういう境遇の親子以上に歳の離れた2人が出会い、多少なりとも前向きにしていく。
でもなぁ〜そうは言っても、こんな事を経験したら、自分なら立ち直れんな…一生…
許すと言ってもそう簡単にはね…
恨みだけで生きてても、ただの生き地獄。
それぞれの事件の次第に真相は分かって来るんやけど、心は晴れんわ。
少しでも前向きに、少しでも明るく生きて欲しいと願うしかない。 -
伊岡さんは8冊目となり、私の本棚登録も1位になっておりました^^
読んだ中では1番読解が難しく(特に2章の政権?がらみ?のあだこだ)、、そして最後まで悲しい寂しい感情が残ります。
『赦せるか』
私は赦せない性格の方が強いのかもしれません。
いつもまあいっか〜と流す方ですが、
なんだろ、、この話のどことも赦せない、、
不幸の連続で気持ち辛いが、
どうかひと時の幸せを感じてほしいな、美緒さん。
薫さん、こんな良い人います?素敵だわ。
伊岡さんの積読本は、あと2、3冊
次の休みでまた読もう -
第一部は母と弟の充と三人で暮らす、小学校6年生の杉原美緒目線。
母はアルコール依存で、何度も入退院を繰り返していた。
美緒には充以外にもう一人弟が居たが、乳幼児の時に死亡している。
弟の充が誤って死亡させてしまったと、幼い記憶に刷り込まれていた。
母が何度目かのアルコール依存症で入院した時、
母の従妹である薫に美緒と充は引き取られる。
そこで、元検事の永瀬丈太郎という初老の人物と出会う。
この出会いが、美緒の心に火を灯す。
第二部は永瀬丈太郎目線。
永瀬は長野県勤務の時、ひとり娘を誘拐され、大きな傷を抱えていた。
その時間軸で物語は語られる。
検事は転勤があるが、永瀬の妻はひとり娘の誘拐から気持ちが塞ぎ、長野県に一人残ることになった。
妻は画家である竹本多美雄という人物に出会い、少しずつ心を取り戻していった。
永瀬も過去の事件を引きずったままだったが、もう一度長野へ飛び、事件について調査する。
第三部は時間軸が進み、社会人になった美緒目線。
丈太郎は火事に巻き込まれ瀕死の状態だった。
美緒は丈太郎との過去を回想し、真実を追及する。
このところ、伊岡先生の本には大嵌り♪
ハズレが無い!
この本も未来屋書店さんに、装丁を表にして、大量に積まれていた。
私を伊岡さんに初めて出会わせてくれたのも、未来屋書店さんだったなぁ~と、期待大で読み始めた。
一部は、何だろうなぁ~?
この先どうなるのかなぁ~?
ちょっと不安な(面白くないような予感www)がしたのだが、
読み進めるとどんどん物語に嵌っていく。
美緒の人となりが何となく好みではなかったので、一部はちょっと苦痛に感じられた。
二部は、丈太郎目線。丈太郎の人となりは超好み。
目が離せなくなり、後半は一気読み。
そこからの第三部。
後半は畳みかけて真実が明らかになってくる。
丈太郎の過去の事件、そして現在の美緒。
ワクワクドキドキ感、面白かった~。
さすが伊岡先生。やっぱりハズレ無し♪ -
母と弟の3人で暮らす小6の少女・杉原 美緒。
そして、元検事の永瀬 丈太郎。
アルコール中毒の母、少し知恵遅れの弟。
幼い頃、事故で亡くなったとされる弟・譲。
若い頃、一人娘を誘拐された永瀬。
登場人物は、それぞれ過去の苦悩を抱えて生きる。
そして、美緒と承太郎の出逢いが、2人の過去と未来を変えていく。
全体を通して、暗い雰囲気が漂い、胸が苦しくなります。
特に、知恵遅れの弟が川に沈み、丈太郎の家が火事になる『第一部』の最後は、今後の大きな展開を予想させます。
第一部、第二部、第三部と、それぞれ時間軸が変化するのも、興味深いですね。
最後、これまで隠れていた謎が明らかになりますが、真実とは悲しいものですね。
表紙と内容のイメージが合っていると思います。