陸軍中野学校の真実 諜報員たちの戦後 (角川文庫 さ 49-1)
- 角川グループパブリッシング (2008年8月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043903016
感想・レビュー・書評
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著者の特徴ないし独自性のあるしぶとい個人取材ベースの情報源を基礎として陸軍中野学校の戦中・戦後のリアリティを描こうとした一冊。
個人取材ベースであるため、全ての詳細な事実や結論まではたどり着いていない話題も多いが、伝わってくる雰囲気や陸軍中野学校卒業生のマインドみたいなものを知る上では貴重な書物となっている。
この一冊を通じて、陸軍中野学校の自由な発想の推奨や、目的達成のために個人レベルで試行錯誤しその場で最善の手段を講じるというようなマインドが、戦後の各種事件、潜入工作、戦後体制への関与といった部分に現れていることがとても良く感じられた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中野学校もののなかでも、関係者の戦後の動きにフォーカスした作品。
こういうテーマなのでなにかともどかしい思いばかり残るのは仕方がないかな。
憶測が走ってる感じも少しあるが、そこまでトンデモ感はない印象。
情報勤務者マインドの一端がわかって良かった。 -
なんだか、下山事件って、その時代の人には重大な事件だったんですかね?
この本でも、下山事件の章の前までは、比較的客観的な視点で中野学校について描かれているのに、下山事件の章以降は、あまりに主観的で、かえって読みづらくなっている感じがします。
どちらかというと、本編より資料の戦術教材の方が興味深くなってしまった印象です。 -
陸軍中野学校の卒業生に取材を重ね、彼らの活躍と中野学校で教えられていた講義の内容などを取材した本。副題に諜報員たちの戦後とあるように、彼らが戦後、戦犯として裁かれたり、GHQとの取引で戦犯を逃れたりした経緯、更にはGHQとの共謀工作などに、記述の重きが置かれている。 よく噂されている下山事件への関わりとか、占領直後に米軍が皇室をどのように扱うか不明だった時に、皇室護持のために練られた計画とか、などなどだ。
この本では設立時のことにはあまり触れず、戦局悪化以降の遊撃戦の工作員がたどった道の記述が多い。ルバング島の小野田さんが中野学校の二俣分校の出身というのも有名な話だ。小野田さんが戦後もずっと密林に隠れ続けたのも、中野学校で学んだ遊撃戦の任務を怠らなかったからだ。
卒業生たちが身に付けた技能は特別なものだっから、戦後も様々なところで活躍の場を得られた。ただしそれが真っ当な仕事だったかというと、そうでない場合も多いから、特殊技能のおかげで生き延びられたいっても、幸せだったかどうかはわからない。
この著者の一番の成果は、中野学校で使用されていた教材を発掘したことだ。終戦時に資料はすべて処分されたはずだし、そもそも校外に持ち出し厳禁だった教材なので、出てきたことが奇跡に近い。その一部は巻末に資料として載せられている。研究者からしたら、よくぞこんなものが、という感じじゃないだろうか。
ただし、うがった見方をすると、この本の中で証言する関係者が、真実を語っているのかどうかわからない。関係者があまり残っていない現実を考えると嘘をつく理由はないかもしれないが、でも中野学校の関係者でも何でもないただのジャーナリストに全てを語っているかというと、そこまで信じていいの?と疑問に思う。
なぜなら彼らは秘密を守るために、相手をミスリードするのが仕事だったから。
彼らが関わった工作の全貌と真相は、彼らが優秀であればあるほど知りえない。下山事件なんて真相を知ると言う人物が証言すればするほど、新たな謎がでてきくるので、永遠に解決しないと思う。
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●:引用 →:感想
●太郎良は、この計画書を参謀本部第二部第五課長の白木未成大佐に提出した。計画書は若松只一陸軍次官を通じて阿南惟幾大臣の許に上がり、大臣がこの計画に承認を与えたのは終戦二日前の昭和二十年八月十三日であったという。
●また、小俣はGHQ潜入工作について、ごく親しい関係者に「参謀本部からの密命があった」と語っていた。
→戦後の地下活動は、このように各組織からの計画を省部が承認する形で実行されたのだろう。そのため、各組織は別個に活動し、組織間の連携、統括する組織が存在しなかったため、大掛かりな抵抗活動が行われなかったもではないか。 -
京極堂シリーズ読者にはお馴染み、陸軍中野学校。
ははぁ…うーん、実際そんな大層なものじゃ…。てか出来るの遅すぎ!
非公式にしろそれなりに結果残してれば戦後にあっさりなくなってる筈もないしね。 -
コメントが書き難い本。
つらいなあ。