螺鈿迷宮 下 (角川文庫)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043909025

感想・レビュー・書評

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  • 東城大学医学部の落ちこぼれ学生・天馬大吉は、
    ある日、幼馴染の記者・別宮葉子から、
    碧翠院桜宮病院への潜入調査という依頼を受ける。
    厚生労働省からの要請を受けての調査だと言うが、
    怪しげなにおいを感じた天馬は断る。
    しかし、その後行きつけの雀荘で
    勝負をふっかけた男にこっぴどく負け、
    多額の借金を負ってしまった天馬が、
    その男――結城に連れられていった先には葉子の姿が。
    なんと葉子と結城はつながっており、
    今回の依頼を天馬に承諾させるために一芝居打ったのだと言う。
    実は結城にも、碧翠院を調査したい理由があった。
    彼の娘婿であり、部下でもある立花善次という男が、
    数日前に桜宮病院の院長である巌雄とのアポに向かって以来
    姿を消してしまっているのだという。
    借金返済という理由ができてしまい断れなくなった天馬は、
    葉子の差配通り、ボランティアとして桜宮病院に潜り込むことに。
    黒い噂の絶えない、経営者の桜宮一族。
    院長の巌雄、その双子の娘・小百合とすみれ。
    そして薔薇園の所有者である巌雄の妻・華緒。
    末期患者自身に院内の仕事をある程度担当させるという
    画期的なシステムで運営されている病院。
    しかし、患者たちは天馬の入院後次々と死を迎える。
    果たしてこれは病死なのか、それとも――。
    厚労省からの刺客として院内に潜り込んでいた
    ロジカルモンスター・白鳥と氷姫・姫宮。
    彼らの前に、老獪なる銀獅子の罠が立ちはだかる。

    「チーム・バチスタ」の海堂尊の作品だが、
    本作は田口・白鳥シリーズに連なる物語ではない。
    しかし密接に関連があるので外伝的な作品と言えよう。

    テンポの良さから生み出されるリーダビリティの高さは変わらず。
    この独特の文体は、音楽におけるドラムやベースといった
    リズムを司る楽器のように、物語の根幹を形成し、
    さらに絶妙のグルーヴ感をも生み出す。

    そこに乗っかってくるメロディには、今回はやや陰がある。
    テーマは「チーム・バチスタ」から一貫して変わらない。
    著者が小説を執筆し発表したそもそもの動機、
    すなわちAi(オートプシー・イメージング)の重要性だ。
    しかし本作の雰囲気は、「チーム・バチスタ」とは対照的に暗い。
    それは本作で描き出されている医療の闇に起因するもの。
    医療が本来抱える闇の部分について言及し、
    その闇を封殺しようとする医療行政の矛盾を突く。
    相変わらず、物語として面白いばかりでなく、
    切っ先の向いている先も、その切れ味も実にスリリングである。

    ミステリとしての構成もなかなか良かったし、
    センチメンタルなムードも嫌いではないのだが、
    やや荒唐無稽と思えてしまう展開や設定が多かったのが残念。
    碧翠院という病院が行っていたこと、
    戦時中に軍によって仕掛けられていたという建物の仕掛け、
    そして桜宮の家族にとってもっとも大事であり最大の秘密である彼女。
    ファンタジーと言ってしまってもいいのでは?
    と思えるくらい、これらはちょっと現実味に欠けていた。
    まあそうした夢幻のような雰囲気まで含めて
    この作品の持ち味と評価するほうが良いのかもしれないが。

    圧倒的な面白さを有する小説であることは間違いない。
    海堂尊の作品であるかぎり、それは保証されている。
    だからあとは個々の作品が自分の感性に合うかの問題かもしれない。
    とりあえず、自分は本作にそこまで高評価はつけないが、
    それでも充分に素晴らしい小説であることは認めよう。
    田口・白鳥シリーズの諸作とも併せて読むことをオススメしたい。

  • 設定が別世界のような感じもしながら読みましたが、読み応えのある面白い作品でした。極北、アリアドネの前には読んどく作品ですね。

  •  下巻から引きこまれて,一気に読んでしまいました.続刊が出たら読みたいと思います.巖雄先生がラスボスといった風格で格好良かったです.田口<白鳥<巖雄 大吉に麻薬が使用された理由と,美智さんが生き残った理由が述べられていなかった気がしますが,どうだったんでしょう.
     田口・白鳥シリーズよりも動きがあって面白かった気がします.まぁ,病院モノにドンパチを求めるのもどうかと思いますが.

  • 2012.2.9読了。医学生•天馬大吉が潜入した不審死の続く桜宮病院に、奇妙な皮膚科の医者がやってきた。彼こそ、“氷姫”こと姫宮と共に病院の闇を暴くべく厚生労働省から送り込まれた“刺客”だった。だが、院長の桜宮巌雄とその双子の娘姉妹、小百合とすみれは、白鳥さえ予測のつかない罠を仕掛けていた…。終末医療の先端施設に隠された光と影。


    天馬くんの両親が亡くなった交通事故を起こした男の息子が、小百合やすみれの姉、葵を通り魔で傷つけ自殺に追い込み、その事件で母親は精神を壊し…。負の連鎖。
    病院の光と影、闇と光、の話がちょっとわかりにくかったかな。
    でも、今まで名前しか出てきていなくて、今回初登場の姫宮には楽しませてもらった。

  • 話の進むスピードがちょうどいい感じ

  • 終末期医療。どう取り組むかは、医療関係者、家族、そして本人の考え方によってずいぶん異なってくる。
    最期まで人間らしく生きようという思いから、行き過ぎた治療となったり、また時には自殺幇助となったり・・・・。
    難しい問題ではあるが、それにむきあった病院があった、というstory。
    偶然にも巻き込まれた主人公が、じつは根本に関係する事実があった、辺りがちょっと複雑だった。

  • 「何が」「どうやって」は比較的簡単に分かりますし、最後の展開もお決まりのパターン。しかし、「なぜ」「どの選択肢を選ぶ」が丁寧に書かれていて、なおかつキャラ設定も見事なので引き込まれます。

  • ちょっと医療サスペンスだけど。
    サスペンス色が濃いかな。

    キライではないです。

  • ブクオフで上下ともに300円。
    バチスタシリーズのスピンオフといいますか。面白かったです。
    シリーズ的な意味で言うなら、白鳥がぎゃふんとやられているのは珍しいのでちょっと面白かった。本編だと割と強いよね彼。
    あと、氷姫の意外性。ドジっ子……だと……?

    高齢化社会になって、人間の死の形というのは本当に重要な問題になってますよね。医療技術が伸びるもんだから寿命も延びる。悪いことじゃありませんが、それに伴う意識と制度の変化が全く追い付いていない気がします。尊厳死とかのために必要な何がしかが正直、全然足りていない。
    もっと学校単位で教育からそういう問題を考えさせるべきではないかと。
    何の問題も起きないウルトラハッピーこれで完璧!
    な答えがあるはずもないんです。喜ばしくも残念なことに。だったら考えるしかないじゃない。絶対多数の最大幸福なんて、否定的な意味合いでしか聞いたことないですけどね。でもやっぱりそれも悪いことではないんだよなぁ。

    医療系ミステリ、というのはそこまで珍しい物ではない…多くもないとは思いますが。それがこんだけフューチャリングされているのは、社会情勢の丁度、みたいな所を捉えているからかと。臓器移植しかり。終末期医療然り。
    私は根っからの文系なので、そういう医療方面にはとんと疎いのですが、
    そりゃもう、新聞やらニュースやらの偏り知識オンリーなんですが。これを書いていらっしゃるのが実際の医師の方だということで、より、リアリティを増しているというのは確かなのだと思います。
    ここに書かれている問題は実際に起こっている問題なんだろうなぁと読者に思わせる。だからこそ真剣に読んでしまう。そんな感じです。

    ただ、これを読んだことによって、おおう、日本の医療というのはここまで腐っているのか!!とか、そういう風に思いこむのもいかんせん危険だと思います。そんなこと普通にねぇよwwって思われるかも知れませんが、
    そう思いたくなるくらいのリアリティとは随所に漂っているんです。この本をきっかけに、日本の医療問題について考えるのは素晴らしいと思いますが、この本を基準に考えるのはいかがなものかと。
    1冊の知識は1冊の知識です。しかもミステリ。偏った考えにはなりたくないものです。
    とはいえど、じゃあどの本を読んで勉強すればいいのか。書いてある本によって主張は違うし、だいたいのものは批判目当てだったり説得目当てだったりで、あてになるものは結局自分で考えなくちゃいかんと。
    やれはてさて。
    現場を知らない人間がどんなに見たっって付け焼刃の知ったかぶりです。
    かといって、だからと言って、知ろうとする姿勢を失うべからず。とりあえず、誰か、お勧めの医学書というか、現代医療についての本を教えてくれないかなぁ。あの、トーシロでも判るレベルの難易度で。

  • 大変面白い本です。ミステリーではありますが終末医療について考えさせられます。他シリーズとのリンクにも感服しました。天馬くんと葉子さんの今後が気になります。

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著者プロフィール

海堂 尊(かいどう たける)
1961年、千葉県生まれの作家、医師。医師としての所属は、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所・放射線医学総合研究所病院勤務(2018年3月時)。
2005年に『チーム・バチスタの崩壊』で、第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、作家デビュー。
同作はのちに『チーム・バチスタの栄光』と改題して出版される。映画・テレビドラマ化もされた代表作となった。

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