国家と神とマルクス 「自由主義的保守主義者」かく語りき (角川文庫)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
3.38
  • (5)
  • (13)
  • (32)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 177
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043914012

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • この頃の著者の本は密度が濃かったなあと懐かしくなる。思想的な面では相容れない部分が多く、さほど楽しめない。著者の思想から離れて他者を分析する際の眼差しが
    、硬派でかっこいい。とはいえ近年はその眼差しも突飛な理論を引っ張ってきてムリクリ論評しているように見えて好きになれないが。
    著者独特の自分の思想でさえ突き放して観察するようなスタンスは特に左派の市民運動に著しく欠けていると思う。その意味で、今後に生かしてゆきたい本である。

  • 著者が東京拘置所で過ごした512日間に読んだ読書の記録や、各種雑誌に発表された文章を収録した本です。

    著者は「自由主義的保守主義」を標榜します。これは、「絶対的なものはある。ただし、それは複数ある」という立場で、その一つ柱となっているのが伝統的な公共性への信頼だと言えるように思います。他方で著者は、みずからの伝統への信頼が、他者の信念を否定することになってはならないという寛容の精神を強調しています。このことについて著者は「私はキリスト教徒なので神を信じている。……しかし、人間である私が、それが絶対に真実であると他者に強要することは、人間の範疇を超える逸脱行為だと思う」と述べていますが、キリスト教的な倫理が基礎になっていることがよく示されているように思います。そして、著者の立場を支えている3番目の柱となるのが、マルクス主義です。とくに著者は、日本のマルクス主義経済学者である宇野弘蔵を高く評価しています。

    本書の議論にはさまざまな関心をかき立てられましたが、とくにおもしろく読んだのは、北畠親房、大川周明、葦津珍彦という保守思想の系譜に著者が注目しているところでしょうか。北畠の『神皇正統記』は、積極的に明の冊封体制に参画しようとした足利義満のグローバリズムと対立するものであり、著者自身の寛容な伝統主義に近い立場だと著者は考えます。そしてこの北畠を評価したのが大川周明であり、他方それを批判したのが原理日本社の蓑田胸喜だったとされています。著者によると、蓑田の日本主義は唯一の正しい日本国家のドクトリンを掲げる点でロマン主義的であり、むしろドイツ観念論のような発想に基づいていました。これに対して大川は、日本の伝統を『神皇正統記』のようなテクストに即して理解するという点で、直観に基づいて日本のドクトリンを掲げる蓑田とは対極的なアプローチを取っていたとされます。こうした著者自身の議論自体もまた、テクストに基づく伝統理解になっています。この点に、大川の発想をインテリジェンスの観点から現代に生かそうとする著者特有の知的態度が伺えるように思います。

  • 年明けてから久しぶりの読了σ^_^;
    インテリジェンスの訳語として「秘密戦」とありました。
    秘密戦とは「諜報」「防諜」「宣伝」「某略」に分けられるといいます。
    今の日本では隣国から仕掛けられてると思われています。

    それとは別にインテリジェンスに長けてくると「絶対的なもの」が自分だけでなく他者にもあると理解できるとあります。
    と考えると日本人は他者の宗教に寛容であり絶対的なものが各人のうちにあると認めることができる寛容性があるのかもしれません。

    しかし今の仕事をしてるとその寛容性が失われてきているのかなあとも思います。
    せめて自分はそうならないように気をつけたいと思います。

  • やはり、縦横無尽。その思想の柔軟性は凄い。何と言うか、腑に落ちる。

  • 090728

  • 勉強した人が現代政治・国家について分析したことをとうとうと述べている感あり。単なる陰謀論でないことは評価したいが、so whatという感想。

  • もっと勉強しよう

  • 新しい考え方についての手掛かりをもらえた一冊。

    自分が逮捕されたら、果たして平穏な気持ちでいられるであろうか?

  • 著者との知識に差があり過ぎてとてもすべて理解できるものではないが、
    天皇制、ソ連崩壊、北方領土などについての言説にはなるほどと思わされる。

  • 獄中記だったか国家の罠だったか。君は官僚としてはカリスマ性がありすぎる、みたいなことを言われた、なんて記述があったがその意味がよくわかる。
    この本は右の雑誌から左の雑誌までを横断したコラム集である。で、あるのだが、右とか左とかはほとんど意味をなさない。なぜならこれはあくまでも「佐藤優」のコラム集であるのだから。
    知的水準の高い著作を書く作家だから彼の著作を読みたくなるのではなく、佐藤優の著作を読みたくて彼の著作を読んでしまう。そんなちょっとした中毒症状を起こしてしまう。
    動物園とかのペンギンは、オス度の高いオスがいると、オス度の低いオスがメスの役割を果たすように受けになるって話があるけど、そんなカンジ。彼のカリスマ性にあてられてしまうと瞬く間に信者になってしまう。
    それは知的水準というよりは神学という稀少なバックボーンに因る気がするし、更にいえばそういった学問的な何かとは関係のないところに因っている気がする。そういった恐ろしい魅力をこの著者は持っている。
    いわゆるひとつの、くやしい、でも、びくんびくん。

全20件中 1 - 10件を表示

プロフィール

1960年生まれ。作家。元外務省主任分析官。著書に『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』『自壊する帝国』『獄中記』ほか多数。

国家と神とマルクス 「自由主義的保守主義者」かく語りき (角川文庫)のその他の作品

佐藤優の作品

国家と神とマルクス 「自由主義的保守主義者」かく語りき (角川文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする