フェルメール ――謎めいた生涯と全作品 Kadokawa Art Selection (角川文庫 ん 30-1 Kadokawa Art Selection)
- 角川グループパブリッシング (2008年9月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043916016
作品紹介・あらすじ
作品数はわずか30数点、空間トリックと光の独特な描写、計算されたモチーフ-。未だ謎多く注目を集め続ける、17世紀オランダの画家、ヨハネス・フェルメール。その魅力をフェルメール研究の第一人者がわかりやすく解説したハンディサイズのガイドブック登場!全作品を、オールカラーで掲載。作品解説とともに、研究によって明かされた秘密、同時代の画家との対比や時代背景まで紹介。初心者にもおすすめの保存版。
感想・レビュー・書評
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著者のフェルメール研究の集大成である大著『フェルメール論』(八坂書房)の簡易版というべき本です。
フェルメールの作品をたどりながら、彼の作品がたたえる静謐な空間構成や、絵の具の質感を生かした表現技法が、どのようなプロセスを経てかたちづくられていったのか、さらに晩年の作品に向かって、いったん完成を迎えた彼の表現に破綻の影がしのびこんでいることを、ていねいに説明しています。また、彼の生きたデルフトという都市の景観を描いた作品を、その時代背景を参照しながら読み解き、そこに込められていた画家の意図を解明しています。
文庫本ながらオール・カラーで構成されており、作品そのものの美しさをたのしむことのできます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あなたの知らないフェルメールがここにある!
作品解説だけでなく、彼の一生にも焦点をあてたフェルメールガイドブックです!
これを読んでフェルメール博士になろう!
手書きPOPより抜粋 -
フェルメールの生涯、作品の変遷を追った本。
謎が多い作家だけあって、解釈も分かれているらしい。
各作品がどういった根拠でフェルメールのものとされて、どういった技法がもちいられているのかがわかりやすく説明されている。
全作品がカラー印刷されているのも嬉しい。
欲を言えば、各作品が表すもの(寓意など)の解説をもう少し書かれていると、初心者にもとっつきやすくなると思った。
作品鑑賞のときに手元にあると理解が深まる一冊。 -
フェルメールの全作品を網羅しているので、画集としては安価だしコンパクトで申し分ないと思うけれど、どうも文章がつまらない。研究者だから仕方ないかもしれないが、細部にばかりこだわっているような気がする。事典みたいだ。
よくわからないけど、この絵はなんだかいいなとか、なんとなく嫌だなとか感じる程度の自分には、絵画技法のことを延々と書かれても興味がわかない。
でも、ある程度フェルメールのことが分かってきて、好きな絵について調べるときには便利になるかもしれない。
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お仕事。ちょっとは勉強せねば。
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フェルメールの全作品が掲載されているお得感のある本。
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朽木さんの全点踏破の旅を読んだあと本書を読むと、すっと入ってくる。そもそもフェルメールの絵は30数点しかない。数点というのは贋物かどうかで専門家の間でも評価がわかれるものが数点あるからである。本書はフェルメール論という大きな本を書いた小林頼子さんが、一般の読者のためにそのエッセンスを紹介したもので、フェルメールの生涯、時代背景、絵画の発展が細かく分析されている。なかには、かなり専門的すぎてついていけないところもあるが、なるほどと思う点も少なくない。小林さんは本書を読んだ読者に、より専門的なもとの本を読んでほしいと願っているようだが、それはなかなか難しい。むしろ、ぼくは小学館の『フェルメール』という、画質までもわかる本に走った。実際、文庫や新書の絵は鮮明すぎて、筆者たちが、「摩耗がはげしく」と言っても、そこにある絵からそれを感じることが不可能だからだ。
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寡作な画家として知られるフェルメール。
学問的な立場から、彼の作品に対して一般的な見解をベースに、
著者なりの見解を交えて、記述されている。
全作品がカラーで収載されており、絵画を見るだけでもかなり楽しい本。
それぞれの絵に関する蘊蓄も満載となっており、
フェルメール作品について造詣を深めることができる。
しかし、学問的な内容になっているため、
時代背景や他の画家達との関係など、最低限の知識も必要であり、
作品を単純に楽しむにはやや難しい内容。 -
フェルメール研究の第一人者である著者の主著『フェルメール研究』から、主に作品分析に関わる部分を抜粋して文庫本に収録した一冊。様式史を実証的に跡づけるその研究は手堅く、信頼を置ける。ただ、そのような優れて美術史的な研究を、そのままの形で文庫に載せるのには疑問を拭えない。絵画技法に関する術語を駆使した専門的な議論は、本書をハンディなガイドとして絵を見ようとする読者を、フェルメールの魅力から遠ざけかねないのでは、と危惧される。