- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043917013
作品紹介・あらすじ
ダム建設労働者の松戸与三が、セメント樽の中から発見した手紙には、ある凄惨な事件の顛末が書かれていた。教科書で読んだ有名な表題作他、小林多喜二にも影響を与えた幻の作家・葉山嘉樹の作品8編を収録。
感想・レビュー・書評
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学校の授業でこのお話を読んで、続きが気になり手に取ってみた。
はじめの、 セメント樽の中の手紙 は衝撃的…。
本当に、怖かった…。巻き込まれないことを願うしかない。
恋人の女性も中々することが怖かったが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
近代という時代を築き上げてきた人々の過酷な労働条件、生活を見ることができる。
女工の恋人に対する思いが手紙に溢れていて、切なくなる。また、それを読んだ与三の気持ちも想像してみると、やるせない気持ちになってくる。短いが、プロレタリア文学を代表する素晴らしい作品だ。 -
此樽の中のセメントは何に使われましたでしょうか、私はそれが知りとう御座います。
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日本の労働環境のブラックぶりが描かれる。戦前マインドが21世紀にも残っているところが恐ろしい。
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「セメント樽の中の手紙」葉山嘉樹◆ダム建設現場で働く男がセメント樽の中から、女工からの手紙を見つける表題作ほか計8編。労働者の話が多い。短いけれどギラッと光る、短刀のよう。「淫売婦」「死屍を食う男」が特に印象的。表題作は教科書にも載ったことがあるらしいけれど、結構すごい話だった。
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格差社会において、契約に支配され、労働を提供するものをプロレタリアと呼び、その逆をブルジョア階級とする。自らが組織を立ち上げ、ルールを作り、そのルールの中で働きたいという労働者がいれば、この構図が成り立つ。立場の違いが対立図式を生むが、取り替えが効くような価値は、常に立場が弱いのだ。取り替えが効く価値は、機械化しなければならない。同時に、労働者は価値を高めなければならない。資本主義の初期において、労働の価値が著しく低く、誰でもできる技量へのカロリー提供であった時代、この対立は顕著であった。現代社会も、同様の図式を残す。しかし、現代社会は、低質な労働による差別図式もさる事ながら、無気力、無覇気労働との格差ではないだろうか。
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小林多喜二と並ぶプロレタリア文学者。知名度でだけ比べると小林多喜二だろうか。
『セメント樽の中の手紙』がかつて教科書に載っていたそうだが、世代が違っているのか、見たことがない。
読みたかったのは『新青年』に載った『死屍を食う男』で、こちらは『新青年』らしいホラー小説。尤も『セメント樽~』もかなりホラー寄りで、既に評価が定まっているプロレタリア文学としてではなく、ホラー系からのアプローチで再評価してもいいのでは? ……と思う。 -
表題作をはじめ、どの短編もせちがらく、泣いてしまいました。哀しいだけで終わらない、暗い救いを見出させてくれるのがこの本の素晴らしいところです。