白の鳥と黒の鳥 (角川文庫)

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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043918010

作品紹介・あらすじ

はつかねずみとやくざ者の淫靡な恋。山奥の村で繰り広げられる天国に似た数日間のできごと――など、奇妙なひとたちがうたいあげる、ファニーで切実な愛の賛歌!

感想・レビュー・書評

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  • この本をいしいしんじさんの1冊目に読むことはおすすめしませんが、4冊目くらいならいいのかも。もっと他のも読みたいと思わせてくれる本でした。
    今までに読んだいしいしんじさんの本は、悲しくて優しくて、遠い時代や街の話のようで、身近な人々の話のようにも感じる、絵本を読んでる感覚に似てる、それがいしいしんじさん。
    …だと思っていた。
    この本はそれとちょっと違う。
    他の人が表現してるように「黒の割合が多い」という言葉が合う。
    なんか違うなー…と読み進めていると、でもやはりいつものいしいしんじさんがひょこっと存在している。優しいだけでない、黒の現実を一点の曇りなく突きつけてくる柔らかな”ブラックいしいしんじ”を読むことができた。

    「カラタチとブルーベル」「緑春」「太ったひとばかりが住んでいる村」が割といつものいしいしんじさん調なのかな?
    「肉屋おうむ」の息子が父親の最期にささやくシーン。大好きです。

    長くてすみません。
    サリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」の読後感に似てるような…気のせいかも。
    あとがきの解説はどうにもしっくり来ませんでした。

  • なんだか不気味だったり、ほんわかしたり、深い意味があるような、やっぱりなにもないような。いしいしんじさんの作品はなんとも中毒性が高くてやめられない。あれ、自分の方が世界を見逃していたのかな?と感じてついつい読み返してしまう。

    太った人ばかりが住んでいる村の朗らかさ、紅葉狩り顛末の爺さまの格好よさがよかった。しろねずみのなんだか切ないんだか気色悪いんだかな感じもあとを引く。

  • いしいしんじさんの短編集です。
    なんか……いいんだよ……いいんだって………!
    これじゃ説明になってないな……あーでもこの独特な読後感はちょっと言葉にしにくいです。
    物語の芳醇な要素を抽出凝縮し奇想を贅沢にぶちこんだ聖俗清濁併せ呑む短編が収録されてるのですが、いしいしんじさんはファンタジー要素をまるっとぬいた現実の悲哀を描かせても上手い!と炙ったスルメのごとく噛み締めました。
    滑稽味のある人物造形がその裏にひそむ哀しみを引き立てるというか……ひょうたん島さながら泣くのはいやだ笑っちゃお的な人の日常の一瞬が切り取られていて、胸が詰まる。
    中年にさしかかったニューハーフの孤独な暮らしを描く「紫の化粧」、河原の彼岸と此岸に分かれてのホームレスのカラオケ合戦「薄い金髪のジェーン」など、もうね……こういう話も書けるのかと懐の広さに驚かされました。

    人は本質的に汚いということ。
    でもそれだけじゃないということ。

    居場所を失って河原に流れてきたジェーンが呟く言葉、「俺、ず、ずっとこの着物着てるよ。そ、そうすりゃきっと、も、もっとちゃんと、み、みんな俺のこと好いてくれんだろよ」がたまらなく切ない。
    「肉屋おうむ」の息子が死の床の父の耳元で囁く言葉、「カラタチとブルーベル」のおまじないに目から涙がこぼれた。
    そんないい話があるかと思えば、「赤と青の双子」に出てくる奈津川家さながら異形の家族にぎょっとする。
    跡継ぎの長男、父に疎まれる白痴の次男、赤男青男とぞんざいな名前を付けられた末の双子のみ溺愛する母、酒乱の父。
    家の呪縛から逃れられないと悟った長男の最後の言葉がひしひしとおそろしい……背筋が冷える短編です。
    「すげかえられた顔色」は世にも奇妙な物語で実写化されたらさぞ怖そうなシュールな一編。「紅葉狩り顛末」の大胆な奇想、老マタギ二人のかっこよさに痺れた……!
    「ボーリングピンが立つ場所」は傑作です。

  • 筆者のなかでもわりあい読みやすい作品が詰まってると思う。寓話めいたものがたりを描くときの文章はほんとうにうつくしく憧れる。

  • 万人には到底思いつかないような着眼点で魅せる、ファンタジーでもありリアルでもあり、悲しくもあり愛くるしさもあるショートストーリー集。
    こんなにも多面性がある作家さんだったなんてと、驚きの連続。

    すごく悩ましいけど、私は「緑春」の発想や言葉の表現と、「太ったひとばかりが住んでいる村」の鮮やかで艶やかな描写が好きです。

  • 短編集。
    せっかくの奇想天外で思い浮かばないような設定も話が短いせいでイマイチ世界観が伝わってきません。
    現実とファンタジーの間を行ったり来たりするような話が多い本だけに、一つ一つ話にもう少しこい肉付けがされていればなーと感じました。

  • 黒い話とか目を背けたくなるような話も多かったけど、発想が想像つかないのが多くておもしろかった。

  • 久しぶりに物語を読んだ。

    明るい話ばかりではなく、
    もの悲しい哀切なストーリー。
    短編集だけに色々なものが含まれる。

    いしいしんじの長編が読みたいと、
    思わせるには、十分な手応え。

  • ファンタジーな色合いの中に、毒々しさが混じる短編集。
    いしいさんの作品の中では、全体的にはそれほど良いとは思えなかったが、「緑春」と「紅葉狩り顛末」がすごく好き。

    あと、春日武彦氏の解説も「おお、その通りだ」と思えて良かった。

  • ちょっと途中、こわくなって気分が悪くなり中断。
    好きなひとは好きだけど、深く読もうとするわたしにはちょっと向かなかった。

  • 好きな料理研究家が読んでいたことがきっかけで読んだ。
    あまり、つっこみをしないで軽く流す感じで読んだほうがおすすめです。

    2013.10.10(1回目)

  • 周りの声や講評で童話チックな文章と聞いていたのと装丁が可愛かったので借りましたが、何というか肌が合いませんでした。

  • ブラックでユーモア溢れる短編集。
    新鮮だったけどやっぱりいしいしんじ節だった。

  • 妙な気分にさせられる。

    人も動物も植物も非生物も関係なし。

    暗くも寂しくも怖くもありつつ
    あたたかさと優しさも感じられる。

  • いしいしんじ氏を表現するなら、

    「絵のない絵本」



    毎回言ってきたけど、
    この本は、その集大成と言っていい。

    チープなファンタジーがたくさん散りばめられた、短編集。
    昔話などの伝承文学や絵本などは、残酷がつきもの。
    この本に収録された数々の物語も、たくさんの残酷が埋め込まれている。
    深く考えずにさらっと読むこと!!


    お気に入りは
    「カラタチとブルーベル」
    「緑春」



    おススメ

  • ・・・これ、だいすきなんです・・・!!カラタチとブルーベルにウワアア(´;ω;`)となり、横浜ジェーンのなんともいえぬ極彩色に黙り込み、薄桃色の猫たちに震え上がる。なんておもしろい作家さんなんだ・・・! いままで読まなかったことを公開しました。本当におすすめ。ひとりでも多くの人に読んで欲しいです。いしいさん、ほんとにすごい。

  • いつもの童話テイストの話より、ちょっとシニカルでブラックな短編のほうが多かったかな。

  • ヴァンヌーボーは高くておいしいなぁ!って描写にニヤニヤ

  • 「少なくとも最後の最後、ばあさんはいいやつに会ったんだ。それで、きもちのいい運転でドライブを楽しんだ。車に乗ってるあいだは、楽しかったろう。少しのあいだ、身の回りのことさえ忘れたかもしれない。おまえさんはな、まちがった場所へ運んだんじゃあない。あの磯できっと正しかった。ばあさんの行き先が、おまえにはちゃんときこえたんだよ」
    メカさんは口をつぐんだ。
    運転手も黙っていた。
    みな口をとじ、その場に集ったまま、みも知らない老婆の姿を思い浮かべた。それぞれに、思い描いた相貌はちがっていたが、誰の頭にも、微笑みをたたえた皺まみれの顔しか浮かばなかった。
    (ボウリングピンの立つ所)

  • 読んでみたものの…ファンタジーでもちょっとブラックファンタジーっぽいところがあってなんか私には合わないかも。

  • 薄桃色の猫たちという短編が印象に残っている。
    毛をすべて剃られた猫たち。みんなが愛してるのは毛なのだと言う「甥」。
    狂喜的で怖かった。

  • こんな話も書けるんだなあ。ちゃんとできない人たちだったり、ちょっと外れた人たちだったり。主人公になれないような人が主人公だったりした。

  • 短編集なので、読みやすい。でも読み終わったあと何も残らないかな。

  • やっぱりいしいしんじさんの
    短編集は素敵。
    東京夜話よりもメルヘン度が高い。
    しかししっかりと
    いしいしんじさんらしい
    毒が出ている。
    もう一度読み返したい。

  • 色の擬人化ので、自然に存在する青は空と海くらいしかないってことに驚いた
    ちょっと全体的にこわい

  • 衝撃でした。
    でも、ずっと残ってる。

  • 不思議です。
    すこーしブラックな短編が多かったような気がします。

  • 19編を収めたショートショート集。いしい氏というと、「トリツカレ男」など不器用な人を優しく見守る作風のイメージだったので
    残酷さやブラックな終わりに驚くものもありました。一貫して不器用で一途すぎる故に笑いものになってしまう側を主人公にしているからこその結末なのかも知れませんが。
    読み終わった後で幸せとは何なのか考えさせられたラストの「太ったひとばかりが住んでいる村」が印象に残りました。

  • 最後の太った人たちの国の話読んでたら生きる気力がわいてきた

    あ~って話とよくわかんない話があったかな
    いしいしんじさんはクーツェ読んでるけどなんだか不思議だな~

  • 少々ブラックな短編集。
    世にも奇妙な物語的かと思ったら、もうちょっとぶっとんでて、
    自由なかんじ?
    あいかわらず、色んな国(仮想っぽいところも)のエッセンスが織り混ざってる印象を受けます。
    感動的な小説とは違うが、確かに同じ人が書いてるんだなあ、と思う。

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著者プロフィール

いしい しんじ:作家。1966年、大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲二文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。そのほか『トリツカレ男』『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『海と山のピアノ』『げんじものがたり』など著書多数。趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

「2024年 『マリアさま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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