覚悟の人 小栗上野介忠順伝 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 101
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043925025

作品紹介・あらすじ

黒船の来航以来、高まる外圧と倒幕勢力の伸長により瓦解寸前の徳川幕府を支えた男がいた。その名は小栗上野介忠順。小栗は対ドル為替レートの不均衡や、相次ぐ賠償問題を含む外交ばかりでなく、財政再建や軍隊の近代化にも獅子奮迅の働きをみせた。しかし、その小栗をも飲み込む時代の大きなうねりが押し寄せていた-。自らの信念と使命に殉じ、日本近代化の礎を築いた幕臣の姿を鮮烈に描く歴史ドキュメント小説。

感想・レビュー・書評

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  • 徳川慶喜は英明というイメージが一般的である。鳥羽伏見の敗戦で逃げ帰った腰抜けというイメージもあるが、時代の流れを見通したために無意味な抵抗をしなかったとも解釈されている。慶喜を徹底的に扱き下ろした作品に、佐藤雅美『覚悟の人 小栗上野介忠順伝』がある。そこでも内実は卑怯者だが、外面は格好付けている慶喜像を描いており、慶喜の英明イメージを根本的に壊すものではなかった。

  • 徳川幕府と真に心中した覚悟の人、小栗上野介忠順の生涯を描いた作品である。
    最近、この言葉が気に入っているが「社稷」。
    徳川であろうと、薩長土肥であろと、当時の日本国が置かれた状況を勘案し、西欧列強から如何に日本という国家を守れるのか、その視点がもっとも重要なことである。
    水戸がお里の慶喜の思想では、あの困難を打開することは無理だった。
    因循姑息、ひたすら向かうしかなかった。
    その点、小栗は、当時のアメリカを直に見、また、当時の幕府の財政状況の中で、通貨問題を解消すべく動き、また、開港に向け、整備すべき資金の調達にも動いたのである。
    慶喜、勝が生き残り、小栗が非業の死を遂げる。
    勝てば官軍思想、明治維新万歳思想、真摯に戦った人たちの目線、態度、つまり真の「社稷思想」で歴史をきちんと見なければならないとつくづく思いました。

  • 難しかった…。
    けど、強い覚悟と新年の人だということは伝わった。
    何がきっかけでこの本を買ったんだっけ。どこかで見聞きしたはずなんだけど…。

  • 優秀な幕臣の話。

  • ー 小栗上野介忠順 ー

    幕臣にも優秀で明晰、開明的な人物は確実に存在したのだ。
    ただ、明治政府の勝利者史観によりそれらは抹殺され、歴史の表舞台には登場していないにすぎない。

    そろそろ、これまでの司馬史観に基づく、西郷隆盛や、坂本龍馬への必要以上の賞賛をやめて、真に日本の将来を憂いて信念に基づいて断固として行動した、小栗上野介忠順のような人物がいたことを知るべきだ。

    西郷:時代を見通せず結局不平士族に担ぎ上げられて頓死した似非武士(板垣退助に征韓論という濡れ衣を着せられたのだが)
    坂本:脱藩して亀山社中に所属していただけのゴロツキ、ヤクザ。新政府綱領八策も当時の開明的な人々の考えを纏めただけのもので、彼自身の発案ではないであろう

    小栗が存命ならば、富国強兵、殖産興業は明治政府よりも確実に10年は早まったはずである。なにせ、明治政府の主脳は、武力による維新回天は実現できたが、将来のあるべき国家像を指し示せず、数年にもおよぶ留学で日本を留守にした挙句、結局明治憲法の制定は明治22年になってからのことなのだ。

    大河ドラマでの放映を望む。ただ視聴率至上主義の現在のTV業界では無理な話しか。

  • 米国公使ハリスやロシア軍艦の艦長ビレリフ等、米英露の傲岸不遜で貪欲な外交官・軍人たちにまんまと手玉にとられる幕府役人たち。定見がなく上辺だけ取り繕って責任回避・保身に終始した、唾棄すべき卑劣感の慶喜や春嶽。その中で幕府の行く末を考え、財政を支えようと孤軍奮闘した小栗忠順。
    理不尽さにムカムカしてしまって、途中まで読むのしんどかったなあ。
    全編通じて、徳川幕府の忠臣を擁護する立場から描かれた、小栗上野介忠順の魅力に溢れた歴史小説でした。

  • 歴史上、傑出した能力をもちながら損な役回りを担わされる人物はいるものだ。本書の主人公、小栗上野介忠順などはその最たる者であろう。「覚悟の人」というタイトルは、幕臣としてそのような役回りをあえて引き受けざるを得なかったことをも含意していると思える。正論を吐いても歯に衣着せぬ物言いが反感を呼んで要職を追われ、結局事態が行き詰まると再び呼び戻され後始末に奔走する。こうして外国奉行、勘定奉行、軍艦奉行、歩兵奉行などを歴任、特に財政面に明るくあの手この手で瀕死の幕末財政を支えた。戊辰戦争では箱根での陸海邀撃策を献策するも恭順を貫く慶喜に却って役職を解かれ、知行地の上野国に引きこもる。長州藩の大村益次郎は後に小栗の邀撃策を耳にして戦慄したというが、こうした知略を恐れられてか上野国で捕縛され直ちに斬首に処せられた。小栗自身に抵抗の意思はなく、もし小栗が新政府に重用されていれば明治初期の財政的混乱はもっと緩和されていたのではないかと惜しまれてならない。

  • BS時代劇を観て一読しました。
    幕臣としての小栗上野介より、家庭人としての人間性が強調された演出でしたが、本では公人としての経歴が細かく描かれて、良いと思います。
    時代の騒乱期には、不条理に裁かれる傑物が出るものか…
    維新の小栗、大戦の廣田、歴史的には暫く陽の目をみない場合が多いだけに興味深い内容になりました。

  •  力作。この著者はこういう堅めの本とエンターテインメント系の本と2種類に分かれている。堅い方は、江戸時代の経済史・政治史が主題で、歴史経済小説というジャンルの第1人者だ。この本の主人公も、江戸末期のきっての経済幕僚といっていい小栗上野介忠順。
     のっけから、開国まもない日本でのドルと一分銀の交換比率の話で始まる。ややこしい話だけれど、説明がきちんとなされているので落ち着いて読めば理解できる。いろいろな幕末小説でひっかかっていたことが理解できてうれしい。咸臨丸で渡米するあたりの話は、つい最近読んだ「青雲遙かに」と重複するが、国務長官カスに談判して挫折するところなど、まあどこの人間も本音と建前は別なのに、あまりに短兵急に直球勝負しすぎという感じ。全編を読むと、この人はそういうまっすぐに生きた人なのだというのがよくわかる。
     物語は一転して対馬に不法占拠するロシアの話になり、多分に脚色があるのだろうけれど、やりとりがなかなかおかしい。若い小栗は正直すぎていいようにあしらわれているし。後半は、勤皇倒幕から大政奉還への何度も何度もいろいろなところで読んだ幕末史。ただ、金の遣り繰りの話が中心になっているのが他の維新史との大きな違いで、ここでは経済に明るい小栗の面目躍如だ。
     生粋の幕臣として時代に殉じたために、最後は維新のどさくさに捕えられて斬首されてしまうが、薩長の破落戸同然の幕末の無頼漢がそろいもそろって明治の元勲に居座るにいたったことを思うと、そのぶれない生き方はいっそ小気味よい。
     刑死した慶応4(1868年)で享年四十二とあってびっくり。そんなに若かったのか。物語のはじめが安政6(1859)年だから、この重厚な伝記はたかだか10年ほどのことなのだ。まさに歴史が動いたその奔流の中を流星のように生き切った。覚悟の人、まことにふさわしいタイトルだ。

  • 郷土、群馬県になじみの偉人です。憧れです。

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著者プロフィール

佐藤雅美(さとう まさよし)
1941年1月14日 - 2019年7月29日
兵庫県生まれの作家。早稲田大学法学部卒。処女作『大君の通貨』で第四回新田次郎文学賞を受賞。デビュー初期は歴史を踏まえた経済小説が多かったが、次第に時代小説に移行。1994年に江戸の民事訴訟を題材にした『恵比寿屋喜兵衛手控え』で第110回直木賞を受賞する。「八州廻り桑山十兵衛」「物書同心居眠り紋蔵」「半次捕物控」といった各シリーズが代表作となる。

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