誰の中にでもいる彼 (角川文庫)

著者 :
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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043928019

作品紹介・あらすじ

人生には忘れがたい瞬間がある。十四年前、東京駅のプラットホーム。そこにいたのは互いに縁もゆかりもない29歳の人妻と27歳の独身商社マン。運命が連れ添うはずもない二人を引き寄せたのだった。だが、輝かしい時間も歳月とともに色褪せてゆき…。燃えるような恋とその後の顛末を綴った文庫オリジナル作品「誰の中にでもいる彼」ほか6編を収録。ベストセラー『水曜の朝、午前三時』の著者が贈る、珠玉短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 標題作を含む7編の短編集。
    ーー人生には忘れがたい瞬間があるーー
    「水曜の朝、午前三時」でも直美と臼井が出会うシーンで使われたこの言葉が、この短編集の作品「誰の中にでもいる彼」と「ハッピー・クリスマス、ヨーコ」でも使われている。歳月と共に恋は色あせ、危機を迎えた夫婦の夫が、妻に出会った運命の時を思い出して語るシーン。燃えるような恋とその顛末を語るにつれ、心境に変化が生まれる過程がなんともいい。

    1話だけ趣向が異なる「夜光虫」は、戦争中、潜水艦の中で激しい爆雷の攻撃を受け、死に直面して考えたことを孫に伝える元海軍医官の話で、これも秀逸。このモチーフがのちの作品「八月十五日の夜会」に引き継がれているらしい。
    そちらも是非読みたい。

  • 夜光虫、テレーゼ、結構な人生、心の壁 愛の歌。この4作が良かった。良かったと感じた順番も、この通り。
    蓮見さんの文体には、彼の哲学/美学が、そのまま表れているように思う。センテンスが短く、端的で、言葉の選択に無駄がない。まるで詩歌のような美しさを湛えている。短編だと、その美質がより冴える。
    前述の作品は、題材と相俟って素晴らしかった。
    これほど彼の作品には好感を持っているのだが、ただ一つ、ミソジニー的な視点が散見されるのが、本当に残念。
    ある時代を描く際に、登場する人物や背景が、旧弊な意識を纏っていることは「作中の事実」で構わないが、作者の価値観/蔑視が「現実」として響いてしまうことは、いい作家だけに寂しく思う。
    とはいえ、佳作ではあるので、一読をお薦めする。

  • 「心の壁、愛の歌」に表題作を加えた7篇を文庫化されたもの。作者が40代の終りに「心の壁、愛の歌」は刊行されました。

    各作品に登場する語り手たちの年齢や、舞台となる時代はまちまちです。
    いずれも、ちょっと哀しいけれど、最後にぽっと心を温めてくれます。

    大震災の際、一時思いを寄せた女性の安否を確認するメモを残したり、
    父親が、偶然行き合わせた塾帰りの息子の同級生にグチったり、
    高額の原稿料で依頼者だけのために、被爆者の女性をモデルに小説を書いたり、

    ある年齢になると、誰かに話さずにはいられない、あるいは、伝えておかなくてはいけない、と思うことがひとつやふたつあります。
    読み進むうちに、そうした語り手たちが羨ましく思えてきました。

    作者も40代の終盤ともなれば、気にかかっていたことを誰かに伝えておきたくなる気持ちを、登場人物と共有していたのでしょう。

  • 安っぽいドラマだと思われるかもしれない。
    でも私が蓮見圭一の小説にハマるのは、そのどれもが「誰の中にでもいる彼」というタイトルが象徴するような、誰にでも何かしらあるであろうドラマにこそ価値を求めるからである。
    わかったようでわからない、それでもそれに振り回され、囚われる人生に各々がどう取り組んでいるか、取り込んできたか、小説を読みながらいろんな像が頭の中に浮かんでいる。

    収録されている短編の「テレーゼ」、「夜行虫」は怖かった。著者の「八月十五日の夜会」も併読しているせいか、戦争のことを考えることが多くなった。道端を歩いてすれ違う人の顔を見ながら、私はこの人達と同じ日本人として一緒に戦争に向かえるだろうか?日本のこと、国益を大事に思うけど、思いを同じにして一緒に戦えるのだろうか?そんなことを考えたりしていた。実際には日本が直接戦争に向かうことは無いだろうし、そんなことがあったら全力で阻止するであろう。

    時はまさに終戦記念日が近づく日より。
    遠く神社の階段の木陰で蝉が鳴く声が響く。
    そんな情景がよく思い浮かぶ。

  • やっぱこの人の文章良いな

  • あまり読み進まず…

  • 彼は40歳、丸の内の商社に勤め、背が高くハンサムの部類だった。彼はいつも奥さんを連れてそのバーに現れ、閉店までいることが多かった。なぜだか私はその彼に好意を持ち始めていた。(amazonより抜粋)

    短編集。全七編。
    「夜光虫」がよかったです。綺麗な言葉があちこちに散りばめられている感じ。
    鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす。
    「水曜の朝~」よりこっちが好きです。

  • 2008.11 巻末解説を寄稿

  • うーん。
    いつも最後が残念でガッカリする。
    途中は面白いので☆2つ。

  • 表題作と「ハッピー・クリスマス、ヨーコ」、「アーノンクールのネクタイ」がよかった。
    表題作の、「彼」との会話が凄く好き。「会社の金だと思って、この馬鹿。」〜「ワインぐらい、選ばせてやりましょうよ」の流れがほんとうに秀逸だと思う。「彼」は曲者のようですごく純粋な、妙に味のあるキャラクターですてき、奥さんを口説く台詞なんて。
    でもなんだか全体的にはどことなく散漫で冗長な印象。破線をなぞっているような感覚で読み終えた一冊。

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著者プロフィール

1959年、秋田市生まれ。立教大学卒業後、新聞社、出版社に勤務。2001年に刊行したデビュー作『水曜の朝、午前三時』が各紙誌で絶賛され、ベストセラーになる。他の著書には『八月十五日の夜会』『かなしぃ。』などがある。

「2017年 『水曜の朝、午前三時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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