燃える天使 (角川文庫)

著者 :
制作 : 柴田 元幸 
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.69
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本棚登録 : 75
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943081

作品紹介・あらすじ

1本の蝋燭に浮かびあがる仄暗い部屋で息をこらすひとり男。やがて訪れる天使たちが、炎のまわりを飛びまわり…。読み手に鮮烈な印象を残す表題作の他、ニューゴシックの旗手パトリック・マグラア「ブロードムアの少年時代」、北アイルランドの幻想的幽霊譚シェイマス・ディーン「ケイティの話1950年10月」、訳者のオールタイムベスト作家スチュアート・ダイベック「猫女」など、記憶に刻みつけられる、必読の傑作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 柴田元幸さん訳、選出の短編集。
    ゴシック、ファンタジーなど、多様な魅力に富む作品集であるが、なかでも特に、「太平洋の片隅で」という作品に心を打たれた。

    夫を軍にとられ、軍需工場で働く女の物語である。時代は太平洋戦争中で、彼女はアメリカの、太平洋に面した小さな町で働いている。朝は畑をつくり、工場に出勤する静かな日々を送っている。夫は駐屯地にいて、週末には帰省する。それが、永遠に続くかのような日常だった。
    やがて夫たちは戦地にむかう。いままでと同じ太平洋上であるが、今度は戦場で、日本軍と戦うために。
    一人、二人、と同僚の夫たちが亡くなる。はじめは夫とともに戦っているかのような高揚感をともなって工場での作業にのぞんでいた女たちであったが、しだいにその感情は、夫の生を願う祈りに変わって行く。
    だがそれは、決して届かない祈り、と、夫の死を暗示して、物語は終わる。

    主人公のくらしの静けさのかなたに、同じ太平洋の戦場の砲弾の音や激しく舞い上がる血煙り、傷ついて倒れこむ兵士たちが目に浮かび、読んでいるとふたつの場所が同時に目の前に広がって行くようだった。その対照性が美しく、かなしみに満ちていた。

  • 【掲載作品】
    著作名 ーー 著作者名
    ケイティの話 シェイマス・ディーン
    サンタクロース殺人犯 スペンサー・ホルスト
    ブロードムアの少年時代 パトリック・マグラア
    メリーゴーラウンド ジャック・プラスキー
    世の習い  ヴァレリー・マーティン
    亀の悲しみアキレスの回想録 ジョン・フラー
    僕の恋、僕の傘 ジョン・マクガハン
    太平洋の岸辺で マーク・ヘルプリン
    床屋の話  V・S・プリチェット
    影製造産業に関する報告 ピーター・ケアリー
    愛の跡   フィリップ・マッキャン
    燃える天使謎めいた目 モアシル・スクリアル
    猫女   スチュアート・ダイベック

  • 柴田元幸さん編訳の短編集。印象に残る話が多いけど、明快なストーリーですっきりする類のものではないので、詩的な味わいが出来る、もしくは好きな、人向けかと。小さな姉弟の身体的特徴が時折入れ替わる不思議な話、軍需工場で戦地に行った夫を待つ話、などが僕は気に入りました。

  • 柴田元幸のオールタイムベスト作家、スチュアート・ダイベック「猫女」を含む海外文学アンソロジー。

    こ、これは・・・思っていたよりも、上級者向けの本だったのかも。
    あまりピンと来ないまま、「あ、終わっちゃった」という話もいくつかあり、読んでいる間中、「これをなんで文章で書こうと思ったんだろう?」と不思議でならないものもあり。
    「奇妙な味」タッチの話が多いと感じたのも意外だった。日本ではこういう短編は、ミステリーのほうに分類されるのだろうか。それとも、左翼的な(?)純文学と言われるのかなぁ。

    読んでいて面白かったのは、ヴァレリー・マーティンの「世の習い」だったのだが、後半で急に抽象的な話になって、「??」状態になり、がっくり。
    そういう意味では、「燃える天使/謎めいた目」と「サンタクロース殺人事件」が最後まできっちり楽しめたと思う。こういう主観的な話を楽しめることは、嬉しい(私が)。

    「自己中心的」ではなく、あくまで「主観的」であることに、どこまで寛容になれるかで、この短編集の面白さが変わってくるのではないかな、と思った。
    「わからない」ということは、しばしば怒りに繋がりやすい。けれど、「わからない」ことを「わからない」ままに楽しもうとする努力も、時には必要な気がする。少なくとも、そのほうが自分にも寛容になれる気がするから。

  • ダイベック目当てで手に取ったが、モアシル・スクリアルや、パトリック・マグラアの作品も非常に良かった。このように、柴田さん翻訳という一種の保証がある上で、新たな作家との出会いの機会を得られるのは、大変有難い。

  • あまり好みに合う話はなかった。でも「影製造産業に関する報告」は結構好き。

  • アンソロジーなんですけど、柴田さんが解説で言っているみたいにどれも外れなく素晴らしかったです。

    どうしても読む小説はアメリカかヨーロッパ圏になっちゃうんだろうけど、普段なら絶対読まないような国の小説が読めてよかったです。

    一番現段階で好きなのは「僕の恋、僕の傘」。

  • 柴田さん翻訳のはどれも好きだけど、
    これは「どこにもない国」よりもずっといい。
    中に入ってる作品も、柴田カラーあふれている。
    どの作家も、もっと日本で読まれるべき。

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著者プロフィール

柴田元幸(しばた・もとゆき)
1954年東京都生まれのアメリカ文学研究者、翻訳家。東京大学文学部名誉教授。ポール・オースター、レベッカ・ブラウン、スティーヴン・ミルハウザー、スチュアート・ダイベック、スティーヴ・エリクソンなど、現代アメリカ文学を数多く翻訳。
2010年、トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン』(新潮社)で日本翻訳文化賞を受賞。マーク・トウェインの翻訳に、『トム・ソーヤーの冒険』『ジム・スマイリーの跳び蛙―マーク・トウェイン傑作選―』(新潮文庫)、最近の翻訳に、ジャック・ロンドン『犬物語』(スイッチ・パブリッシング)やレアード・ハント『ネバーホーム』(朝日新聞出版)、編訳書に、レアード・ハント『英文創作教室 Writing Your Own Stories』(研究社)など。文芸誌『MONKEY』、および英語文芸誌Monkey Business 責任編集。2017年、早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。

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