漆黒の王子 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.61
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本棚登録 : 389
レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943159

作品紹介・あらすじ

ある地方都市のマンションで、男女の死体が発見された。遺体は暴力団藍原組組員とその情婦。だが、藍原組では以前から組員が連続不審死を遂げていた。しかも、「ガネーシャ」と名乗る人物から「睡眠を差し出せ」という奇妙な脅迫メールが…。一方、街の下に眠る暗渠には、"王子"他6名のホームレスが社会と隔絶して暮らしていた。奇妙な連続殺人は彼らの仕業なのか?ふたつの世界で謎が交錯する超本格ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 推理もの特有のワクワクハラハラはないけれど、痛みは伝わってくる作品です

  • 暗い、重い
    ラストは呆然としてしまう

  • 設定は涎が出るほど好きな感じなんだけど、文章構成が残念な感じなのと(このひと独特の表現はほんとうに美しいんだけども思い入れが強すぎて肝心の本筋を見失ったりする)、後半作者本人が着地点に迷ったのかいろいろ中途半端になってしまったような。
    登場人物それぞれの動機とか気持ちの動きの描写が薄いのと、伏線のしまい方が謙虚すぎるので、さらっと読んでしまえば読めるんだけど、ちょっともったいないかなあ。

  • ヤクザの抗争を中心に描いた作品。
    終始ダークな雰囲気であった。とにかくバンバンひとが死ぬ。(まあヤクザだしね)

    上の世界の殺伐とした雰囲気と、少し陰鬱な不思議な下の世界が交互に描かれているのが印象的だった。

    初野晴さんのシレネッタの丘という作品がとても好きで、2作目として本作品を読んだが、雰囲気が全く違う作品であった。次は水の時計を読んでみたいと思う。

  • ヤクザの変死事件を中心に描かれる「上の世界」。
    ヤクザ同士の駆け引きに、チャイニーズマフィアがからんだり、産廃不法投棄に原発事故、社会の闇だらけのパート。
    だけどプラネタリウムで撃ち合ったり、決着の場所は百合の群生地だったりして、この辺は映像で観てみたい。
    「上の世界」と交互に描かれる「下側の世界」は、完全にファンタジー。ダンジョンみたいな浄水場の暗渠で暮らす、RPGの登場人物のような人々。記憶を失ったガネーシャの一人称で語られる。ガネーシャの心情はわかりやすい。

    「上」はヤクザである秋葉と水樹視点で描かれるのだけれど、たぶん、主人公は紺野と高遠。
    このふたりが何を考えているのか、結局よく分からない…
    ふたりの閉じた世界、他の誰かにわかってもらおうと思っていない、ということなのだろうけど。
    本の冒頭だけ紺野視点で、二人の出会いが語られる。「もう手の届かないキラキラした大切な時間」というかんじがとても切ない。最初は高遠に対して優越感を持っていたけれど、いつしか打算なしに愛したいと思うようになり。けれども、ふたりは引き裂かれる。
    高遠はこのころから、一貫して紺野のためだけに動いているように見える。ふたりはお互いの何に魅かれたのだろう。
    王子が二人について語ったこと…ふたりは命の使い方をずっと探していたけど見つけられなかった、だから人間の天敵になろうとした…が全てなんだろうとは思うけど、もっとふたりのことが知りたいと思った。
    別れてから再会するまでのあれとか、再会してから「人間の天敵」になるまでのそれとか…

    生命連鎖の輪に入れない人間は、命をつないでいくことはできない。けれども、その人がいたという記憶を伝えて、つないでいく。
    人間の天敵になったふたりの記憶は、つながれずに終わるのだろうか。

  • 悪意の話である。
    邪悪な。邪悪な。ひたすらに邪悪で陰湿な。
    二十七年前、同属の人間から迫害され差別され虐待され続けた二人の少年の出会いから全てが始まる。
    互いを唯一の拠り所として寄り添いあう少年たちは人の憎悪と悪意を一身に浴び続け、やがて暴力と破壊衝動の権化ともいえる怪物へと変貌していく。

    何故彼らはそうならねばならなかったのか。
    そうしなければ生きていけなかったのか。

    重苦しい話だ。
    陰鬱な話だ。
    作中頻出する暴力と人の醜悪さはあまりに陰惨で目を背けたくなる。

    悲惨が鍛える魂は少ない。
    大抵は腐る。
    少年時代の凄まじいいじめを経て一人はヤクザの幹部に、もう一人は彼が唯一信頼する裏社会の情報屋となった。
    破壊と暴虐の限りを尽くし、ひたすら破滅の道を転がり落ちていく彼等の殺伐と乾いた現在と、彼らがそうならざるえなかった背景を思うと胸が痛む。

    人はどこまで邪悪になれるのか。
    人はどこまで残酷になれるのか。

    重い。とても重い。
    この話では永久機関の無限連鎖に似て果てしなく悪意が蔓延していく。
    世界に虐げられ続けた二人の少年がやがて大人になり、今度は自ら加害者として周囲に恐怖を撒き散らし、その過程で復讐者《ガネーシャ》が誕生する。
    ナオユキの言葉を信じ「罪」の証拠を隠し続ける墓守りが切ない。
    胸が、痛い。
    痛いという言葉じゃ片付けられない、胸から喉元にかけて膨張した綿を詰められた感覚。 

    幼い約束を軸にした暗黒の絆の物語だ。
    男同士の友情。絆。
    しかし紺野と高遠のあいだに存在するそれは軌道を外れた冥王星の如く限りなく負の方向に傾いている。
    常識人で純粋さを失わない水城と親友・吉山の健全な友情とは対極に位置する二人の絆は、犠牲者の血と涙を吸った呪詛に縛られている。

    読み終わってからプロローグに戻り、理不尽な迫害に遭い続けた「僕」の心情に寄り添って一縷の希望を見出せばなおのこと、彼等がこれから辿る人生を知ってるからこそ……どうしようもなく胸が痛む。苦しくて苦しくて、押し潰されそうになる。
     

    初野晴。
    すごい。

  • ある地方都市のマンションで、男女の死体が発見された。遺体は暴力団藍原組組員とその情婦。だが、藍原組では以前から組員が連続不審死を遂げていた。しかも、「ガネーシャ」と名乗る人物から「睡眠を差し出せ」という奇妙な脅迫メールが…。一方、街の下に眠る暗渠には、“王子”他6名のホームレスが社会と隔絶して暮らしていた。奇妙な連続殺人は彼らの仕業なのか?ふたつの世界で謎が交錯する超本格ミステリ。

  • 残り3分の1あたりから、俄然、先が気になり始めて一気に読了。

  • 初めての初野晴さん。
    現実的なパートと幻想的なパートが交互に。
    独特の読後感。

  • 〈ハルチカ〉シリーズ、『1/2の騎士』、『水の時計』と来て本作に。初野作品の中では、現状おそらくいちばん重い。どことなく浮遊した(ファンタジーとも)「下の世界」と殺伐とした(現実的とも)「上の世界」の交差にどんどん引き込まれていく。クライマックスに至って胸がつまされるとともに、最後の一行に一抹の希望を抱かされる。とまれ、わたくし自身としては、悪意の連鎖を止められたという意味において、救いのある話と信じたい。

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著者プロフィール

1973年静岡県生まれ。法政大学卒業。2002年『水の時計』で第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。著書に『1/2の騎士』『退出ゲーム』がある。

「2017年 『ハルチカ 初恋ソムリエ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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