武田家滅亡 (角川文庫 い 69-1)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009年12月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043943210
作品紹介・あらすじ
戦国時代最強を誇った武田の軍団は、なぜ信長の侵攻からわずかひと月で跡形もなく潰えてしまったのか? 戦国史上最大ともいえるその謎を、本格歴史小説界の俊英が解き明かす壮大な歴史長編。
感想・レビュー・書評
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武田勝頼の時代から武田家滅亡までの過程を、リアルに活写した作品。物語は北条氏康の娘・桂姫の輿入れから始まり、佞奸の臣・長坂釣閑の屈折した心情を交え、徐々に後戻りできない状況に陥り滅亡するという展開。そこに忠臣・小宮山内膳と裏切り者・辻弥兵衛、片切監物、宮下帯刀父子などの脇役たちも、作品に躍動感を与えています。
2010.07.09読了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
はたして信玄に比して勝頼は無能か?
世の評価に疑問を感じている方は必読。
無能ではなく、苦衷する勝頼、今まで読んだ勝頼伝の中では最も面白く、客観的な勝頼評のように感じられました。 -
素晴らしい。武田家滅亡を武田勝頼を中心にして、ここまで仕上げたのは見事としか言いようがない。
偉大なる父武田信玄をもち、本来継ぐはずてなかった武田家を率いる事になった勝頼の苦悩、裏切り、愛情が心に染み入ります。
最後に、あそこまで家臣に裏切られてしまった勝頼の悲劇を思わずにはいれません。 -
面白かった。素晴らしかった。
重厚にして繊細。多彩な登場人物の一人ひとりに陰影と限界があり、武田家滅亡というそのときに向かって収束していく熟練のストーリーテリング。これこそ歴史小説だと思う。
図書館で育ったもので、古い人の古い本は知っているけど、新しい人の新しい本はよく知らない。だからこの伊東潤という作者さんのことはよく知らないのだけど、すごい書き手だと思う。 -
長篠合戦後から武田家滅亡まで物語。
「武田勝頼」、その妻「桂姫」。
武田家家臣、長坂釣閑。
「小宮山内膳佑友晴」。
辻弥兵衛。
武田家国衆片切監物・「宮下帯刀」。
信玄亡きあと大国を受け継いだ武田勝頼は、内憂外患を抱えていた。
近隣諸国からの脅威に加え、財政逼迫や家臣との対立も勝頼の孤立を深めてゆく。
こうした状況のもと、同盟国・北条家から嫁いだ桂姫は、勝頼の苦悩に触れて武田・北条両家の絆たらんとするが…。
信玄をも上回る武人の才に恵まれながら悲劇の主人公となった勝頼の後半生 -
「武田家滅亡」(伊東 潤)を読んだ。
『絶対に泣くもんか!』
そう思っていたのに、両頬を伝うこのしょっぱい水はなんだよ。
伊東潤氏にしてやられたなぁ。
歴史が変わるわけではないのだが、『もしもあの時・・・だったら』そう思わずにいられない哀しい物語。
見事な書きっぷりに脱帽です。 -
桂の苦悩が……勝頼の苦悩が……その他多くの登場人物たちが、本当に胸を苦しくする。勢いを失ったものの哀しみ、最期まで従う忠義。
人間の感情が詰まった、一冊である。 -
結末がわかっているだけに、武田勝頼ものはあまり積極的に読みたいテーマではなかったけど、この作品はフィクション、というか、“大胆な仮説”により、物語としての厚みが増していて、ただツライだけではない、作品になっていると思う。ただ、大胆な仮説があまりに粒が小さく、そうはならんやろーとこころでツッコミながらも、上下二段組みの長い文章を読みきることができたのは、サイドストーリー的な帯刀の存続が意外と大きかったなと感じた。
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物語を膨らませる上で作者はいい仕事はしていると思うが、武田氏滅亡の過程について史実を変える訳には行かず、返って膨らませた部分の作り物感が強調されてしまうのがこのテーマの難しいところではないだろうか。