つまみぐい文学食堂 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 327
感想 : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943302

作品紹介・あらすじ

つまみぐい、積もり積もればフルコース!メルヴィルの名作『白鯨』の揚げパンから、オースターの人気作『ムーン・パレス』のチキンポットパイまで、当代きっての名翻訳家でもある当店店主柴田氏が選りすぐった文学の中の食の数々。人の心を揺さぶる一皿を、主人公ならずとも、読んだら思わず食べたくなること請け合いの、極上のエッセイ。文庫版訳し下ろしボーナストラックつき。

感想・レビュー・書評

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  • 翻訳家による、文学に登場する食にまつわるエッセイ集。
    現代英米文学を中心にした、さまざまな海外文学が紹介されています。

    「アボカド」を「アボガド」という人が多いということには、私も気付いていましたが、著者がグーグル検索したところ、どちらもほぼ同数がヒットしたとのことで、世の中の人の半数近くが間違えていると推測しています。
    さらにその原因は、高校の科学で習う「アボガドロ定数」からだとも書かれていました。
    著者のそうした推察の進め方に、この本への期待値が高まります。

    吉本ばななの『満月』はカツ丼を食べに行きたくなる話だと紹介されていました。「好きな男の子の泊まっている宿に向かって女の子がカツ丼を抱えてタクシーを走らせる」という表現に、はっとそのシーンを思い浮かべ、(『キッチン』の続編だ)とわかりました。

    「アメリカ文学の場合、小説のパーティーの食べ物で、あまりおいしいシーンを見たことが無い。」という著者。
    『グレート・ギャツビー』は豪華絢爛過ぎて、食べ物というよりは富の記号になっている、という表現になるほどと思います。
    マンスフィールドの『園遊会』も別の意味で残酷な富の記号だとのこと。
    パーティシーンは往々にして、貧富の残酷なコントラストを見せるということでしょう。

    トマス・ウルフは大の大食いで、この人の書く食事のシーンはおいしそうで大迫力なのだそう。
    ただ、食べ物に関しては幸せそうでも、その他の面は悲惨な話になっていると聞いて、読もうかどうしようか悩みます。

    アリスのお茶会は、日本語で言うなら「濡れネズミ」と「脱兎」と「閑古鳥」が一緒にお抹茶を飲んでいるようなもの、とする表現も、オリジナリティあふれていて興味を引きます。落ち着かないお茶会で、アリスは結局お茶は飲めずじまいだったということに、今まで気がついていませんでした。

    後半には対談が載っています。挿絵も担当している吉野朔美氏が、文学中で気になる食べ物として、具合が悪い時にスプーンで飲ませる、子供が顔をゆがめるほど苦い「ひまし油」と「オートミール」を挙げていたのには、なるほどと共感しました。

    池波正太郎の描く食のシーンのような、読んでいるだけで空腹になる、おいしそうな食事シーンを採り上げているわけではないのが、いかにも英米文学。
    よだれがでそうなシーンはほぼ皆無。
    読んでも食欲がわかず、妙にがっかりした読感が残ります。
    こと食のシーンにおいては、フランス文学とはがらりと様相が異なるものだと感じました。

    「不味い食事を巡る文章には、うまい食事を巡る文章にはない文学性がある」などという著者の言葉は、仏文ではおよそ見られないものでしょう。
    そんな、悲喜こもごもの文章効果を出す英米文学の食シーンを、多少のペーソスとウィットを込めながら、次々と紹介してくれる、一味変わったアプローチのエッセイとなっています。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「よだれがでそうなシーンはほぼ皆無」
      そう言われてみれば、、、今思い浮かべてるのですが、ナルホドと思っても、食べたいとは思わなかったです。。...
      「よだれがでそうなシーンはほぼ皆無」
      そう言われてみれば、、、今思い浮かべてるのですが、ナルホドと思っても、食べたいとは思わなかったです。。。
      2012/04/11
    • リカさん
      nyancomaruさんもお読みになったんですね?
      普通は、食べ物をモチーフにしたエッセイを読むと、おなかがペコペコになるんですが、この本は...
      nyancomaruさんもお読みになったんですね?
      普通は、食べ物をモチーフにしたエッセイを読むと、おなかがペコペコになるんですが、この本は不思議とそんな気持ちがわきませんでした。
      う~ん独特!
      2012/04/12
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「う~ん独特!」
      世界三大料理のフランス料理と比べるまでもなく、米・英は、、、ですからね。

      「お読みになったんですね?」
      はい。柴田元幸の...
      「う~ん独特!」
      世界三大料理のフランス料理と比べるまでもなく、米・英は、、、ですからね。

      「お読みになったんですね?」
      はい。柴田元幸のファンなんです。プラス吉野朔実ですから(と言いつつ買ったのは文庫になってからですが)
      2012/04/13
  • 英米文学はからきしなので、正直読み進めただけで内容がさっぱり入らなかった。ちょこちょこ面白い表現だな、と思った部分があったし、後書きがとても良かったのでまた再読したいと思う。
    それこそつまみ食いのように、気になったページを。

  • 食事のシーンを切り出して文学案内をするという企画は結構ありますが、この本は読みやすさと、取り上げる本の種類、食べ物の紹介とストーリーの解説のバランス感がとても良かったと思います。
    軽い書き口も良かったですね。
    割と変わった本も取り上げられているので、何冊か読んでみようかなぁという気持ちになりました。

  • 本を読んでいて、食べたくなる物はあるけれど、ここには無し。
    『スイスにて』だったかな?、凍傷にあった仲間の足を食べる話は面白く、これは食べたい物を見つける本ではなく、読みたい本を見つける本だ。

  • 少々難解であったが、食に絡めた世界文学の一節を知ることで本自体も読んでみたいという思いに捕らわれた。

  • 物語に出てくる食文化論は数あれど、名訳者で知られる著者が記せばちょっと趣向は異なり。
    まず、「美味しそうな表現」というものを期待してはいけない。ここに登場する物語のメニューはすべて、「読んでいて美味しそう!」「食べてみたい」「どんな食材なの?」と追いかけたくなるものではない。(例えば池波正太郎の書く主人公が蕎麦を手繰るような物語はピックアップされていない)
    あくまで食を通した文学論である。O.ヘンリーの短編に登場するメニューから当時の様子をうかがいつつ、結局はO.ヘンリー論に帰結している。
    ただし、そのピックアップしたメニューが本当に些細なもの過ぎて、それがかえって大きな背景を映し出してくれる。
    そんな文学アラカルト論をお腹いっぱい食べさせてくれる一冊。

  • 【本の内容】
    つまみぐい、積もり積もればフルコース!

    メルヴィルの名作『白鯨』の揚げパンから、オースターの人気作『ムーン・パレス』のチキンポットパイまで、当代きっての名翻訳家でもある当店店主柴田氏が選りすぐった文学の中の食の数々。

    人の心を揺さぶる一皿を、主人公ならずとも、読んだら思わず食べたくなること請け合いの、極上のエッセイ。

    文庫版訳し下ろしボーナストラックつき。

    [ 目次 ]
    Menu(メニューについて)
    Hors d’euvre(I love Garlic;Be Vegetarian ほか)
    Fish(鯨の回想風;イカ・タコ ほか)
    Meat(禽類;豚肉を食べましょう ほか)
    Specials(Let’s Party;クリスマス特別メニュー ほか)
    Beverages(一杯のお茶を持てば;一人酒場で飲む酒は ほか)
    Desserts(リンゴはなんにもいわないけれど;カフェ等 ほか)
    あとがき対談 ボーナストラック

    [ POP ]
    この人が訳した本なら面白いに違いないといつも思わせてくれる名翻訳家が、さまざまな海外文学のなかから食に関する印象的な場面をちょっとずつ紹介するという、美味しい趣向のエッセー集。

    食欲をそそるというより、微妙で奇妙な味わいから広がるそれぞれの小説の魅力に読書欲をそそられる。

    メニュー仕立ての目次や吉野朔実によるイラストも素敵。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]

  • BOOK・OFFで購入。私はあまり外国の作家さんの本は読まないけれど、いくつか短編読みたいなと思った。不味いものの描写で想像をかき立てて一人でうへぇ〜ってなってました(笑)後、表紙のイラストがシュールで好きです。

  • あまり楽しくなかったかも…

  • 面白かった! 先輩に借りて読んだけど、知らない話がいっぱいで楽しかった。何度もちょこちょこ読みたくなる。

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著者プロフィール

柴田元幸(しばた もとゆき)
翻訳家、東京大学名誉教授。東京都生まれ。ポール・オースター、レベッカ・ブラウン、スティーヴン・ミルハウザー、スチュアート・ダイベック、スティーヴ・エリクソンなど、現代アメリカ文学を数多く翻訳。2010年、トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン』(新潮社)で日本翻訳文化賞を受賞。マーク・トウェインの翻訳に、『ハックルベリー・フィンの冒けん』(研究社)、『トム・ソーヤーの冒険』『ジム・スマイリーの跳び蛙―マーク・トウェイン傑作選』(新潮文庫)、最近の翻訳に、エリック・マコーマック『雲』(東京創元社)、スティーヴン・ミルハウザー『ホーム・ラン』(白水社)、編訳書に、『「ハックルベリー・フィンの冒けん」をめぐる冒険』、レアード・ハント『英文創作教室 Writing Your Own Stories』(研究社)など。文芸誌『MONKEY』、および英語文芸誌 MONKEY 責任編集。2017年、早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。

「2021年 『性差を考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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