メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943449

作品紹介・あらすじ

暗号名ソリッド・スネーク。悪魔の核兵器「メタルギア」を幾度となく破壊し、世界を破滅から救ってきた伝説の男の肉体は急速な老化に蝕まれていた。戦争もまた、ナノマシンとネットワークで管理・制御され、利潤追求の経済行為に変化した。中東、南米、東欧-見知らぬ戦場に老いたスネークは赴く。「全世界的な戦争状況」の実現という悪夢に囚われた宿命の兄弟リキッド・スネークを葬るため、そして自らの呪われた血を断つために。

感想・レビュー・書評

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  • 伊藤計劃は中二病だ。優しい中二病だ。それをこじらせたまま逝ってしまった。優しさに溢れた中二病的文章をできればもっと読みたかった。
    オリジナルの作品よりは残酷、グロテスク描写は少なかった。文章のそこかしこにメタルギア・サーガへの溢れんばかりの愛情を感じた。
    人は死なない。生物学的に死んでも、その人の遺した物語が誰かに伝わる限りはその人は生き続ける。それがこの作品のテーマでありおそらく原作ゲームのテーマでもある。そしてこの作品自体が、作者である伊藤計劃の死後発表されたこと、彼の存在感を世に強く刻み付けたことにより、メタ的にこのテーマを踏襲しているようにも思える。
    メタルギアシリーズめっちゃやりたくなった。

  • 戦争が抑止される時代から管理・制御される時代に変わった近未来の物語。戦争は地球上から無くならず、戦争は経済の一部となり世界を支えるようになっていた。戦力が売り買いされ兵士、すなわち人命までも合理的に値段がつけられる中で、あがき生きる意味や戦争の意味を見出そうとするスネークたち。人が戦うということを考えさせられる。

    ゲームを買う前に読んでしまったのですが、あまりにも面白く、読破後PS3とソフトを買いに行きました。もしゲームを持っていなくて登場人物や場所などの雰囲気が想像しにくい人はゲームの公式サイトの予告編を見てみるとすごく読みやすくなる思います。もちろん最初から少し絵や図などの要素も入っていたら読みやすくなっていたと思います。

    また小説ならではの細かい表現や独自のシーンなども少々入っていてゲームをやりこんだ人も楽しめるようになっていました。あと語る視点がオタコン中心なところもゲームと違って面白い要素だと思います。削られたシーンとしては、ゲーム内でボスとなっているBBが出てきません。

  • 小島監督と言う人がMGSと言うゲームを作り出し、伊藤計劃と言う人がこの作品を愛し、そのシリーズの四作目をノベライズすることになり、この作品の持つテーマが奇しくも伊藤計劃と言う人の人生にリンクした、奇跡としか言い様がない作品。
    ゲームのノベライズってものを初めて読んだけど、映像から文章へと還元されたことで、文章の持つ力と言うものをはっきりと見せつけられた。
    音楽がある分、ノベルゲーの方が小説より感動する(キリッなんて言ってた自分が恥ずかしい。過去に戻って殴ってやりたい。
    虐殺器官を読んで伊藤計劃さんという作家に抱いた印象は、必要な情報を無駄なく綺麗に表現する人だった。ビューティフルと言うよりはクリーンなイメージ。
    そのイメージの通りの文章を今作でも見せつけてくれたけど、あとがきで小島監督が述べていたように、伊藤さんは作品の行間を読む力がとてつもない。
    その力が持ち前の表現力によって惜しみなく発揮され、MGS4と言う物語をとても繊細なバランスの上に成り立たせている。
    すなわち、伊藤計劃の描くMGS4と小島監督の描くMGS4と言う二つの作品の丁度中間に奇跡的とも言える均衡の上成り立っているのだ。
    伊藤さんもあとがきでノベライズと言うものについて語っていたけど、彼の表現したかったものは、少なくとも自分の目には完璧に表現されていたように映った。
    MGS4と言う作品を見届け、そのノベライズに携わることの出来た後、逝くことの出来た伊藤さんの幸福を想いつつ、最新作であるMGSPWの完成を見届けること無く旅立ってしまった伊藤さんの不幸に心が痛む。
    でも、作中でオタコンも言っていたように、人は死んだ後も、誰かの中に物語として生き続ける、と思えば、文字通り伊藤さんの遺した物語達は、今自分の胸の中に深く刻まれたように、多くの人の中に残り続けると思う。
    亡くなった伊藤さんのため、とかそんな偽善ぶったようなことを言うつもりはないけれど、この小説は一生部屋の本棚に保管し続けようと思った。

  • ゲームはメタルギアソリッド2、3を15年くらい前にクリア済み(だから内容はうる覚え&ストーリーをあまり理解してなかった)
    ノベライズは最近、1,2,3と続けて読み、本作に至る。

    2、3についてはゲームをやったこともあり、当時のプレイの興奮と当時理解しきれなかったストーリー、背景の理解が進む興奮で一気に読んでしまったが、本作は小説としての完成度(文章、内容ともに虐殺器官を思い起こさせる)に興奮して、気づいたら読了していた。

    おそらくゲームをプレイしているだけでは気づかない(そこまで上手じゃなく、クリアするだけで一生懸命になっちゃうから)、濃密なストーリーをたっぷり堪能できるのはメタルギアの20年来のファンであり自身も優れたSF作家である伊藤計劃だからこそかな。

    そしてあとがきに痺れ、小島秀夫のインタビュー内容で泣く。

    私にとってこれは書架のど真ん中に鎮座する小説です。

  • 壮大な男の一代記。相棒のオタコンが語る過去と現在。こんがらがったが、なぜそういう作りなのかがわかった瞬間、泣けた。

    好きだから大切にしたいモノがある。大切にしたいけど好きだから…。こう「好き」が詰まった宝物のような物語。長かったけど、気持ちいい読後感だった。

    「毎日の食卓にも、誰かの物語が生きている。この世界は、そんなささやかな物語の集合体なんだ。」たとえ。まずい目玉焼きがでてこようと…。

  • PS3のMGS4のノベル版。

    この小説にはBB部隊が出てこないので話はわかりやすくなっているのにもかかわらず、このボリュームである。
    キャラクターの個性をしっかりと出している伊藤計劃さんは凄い。

    そして最後の本編にはなかったオタコンの台詞。
    スネークは良い余生を送れていたことがわかって良かった。

  • 伊藤さんの文体で、大好きなメタルギアの世界をもっと読みたかった。もっと早くにこの人の文章を知っておきたかった。
    この天才は何故、死ななければならなかったのか。

  • プレステのゲームのノベライズ版。ベースは4。執筆は今は亡き大好きなSF作家、伊藤計劃。

    メタルギアソリッドは1しかやったことはないのでこっちの世界観はあまりイメージわかないが、「虐殺器官」「ハーモニー」の世界観を十分に堪能できる。

    メタルギアをやってなくても、知らなくても、極上のSFとして楽しめる。

    むしろ伊藤計劃の作品を読むなら、メタルギアを入り口にした方が良いかも知れない。

    メタルギアの世界観をさらにもっと楽しみたい人は「虐殺器官」「ハーモニー」と読んで行く方がオススメだろう。

    それにしてもこの方の早世は本当に残念でならない。

  • その言うや善し。人がまさに死ぬそのときに語ったことは、単なる言葉ではない。それはぼくという存在に根を張って、未来に向け枝を伸ばしていく生命の一部なのだ。

    人間はいつだって時間がないんだ。そうやって互いの距離ばかり探り合っていては、結局何ひとつ伝わらない。けれど、ぼくらはいつだって、それをさぼって先送りにしてしまう。

    すでに決した過去の過ちを償うことよりも、不確定な未来に道しるべを立てるほうが、どれほど価値ある行いだろうか。重石を地面に下ろすより、持ち上げるほうが辛いのは当たり前だ。

    人は誰もが父親になれるわけではない。ある男が父親になる境界、それは愛する人が自分の血を分けた子供を身ごもった時点でも、お腹から子供が生まれ出た時点でもない。自分の子を引き受けて、共に生きる決意を絶対のものとして固めたそのときが、人が父親として生起する瞬間なのだ。

    誰かと比べて勝ち負けを九官鳥のように喧しくさえずるのは、確かに馬鹿げているだろう。だが、自分自身に対する戦いには、確かに勝敗が存在するんだ。

    父親、母親、わずかでも自分の面影を見出すことの出来る、年老いた肉親の死。それを看取るということは、いずれ自分が迎える死の予行演習でもあるのだ。日常避けてきたその想像を、肉親の死によって否応なく見せつけられること。それによって、人は自分に残された時間を何に用いたらよいのか、真剣に考えざるを得なくなる。



    あとがきが、またひとつの物語になっている。境地というものなのだろうか。

  • 伊藤計劃は本当に惜しい。近未来のミリタリーSFとか暗い感じのSF書かせたら右に出るものはいないんじゃなかろうか。前の虐殺器官は終わりにちょっと「?」って思ったけどこっちはすべてしっくりくる。

    しかし、メタルギアシリーズって複雑だ。ゲームやっただけじゃわからん。活字化されて初めて頭で整理できた。
    最初から最後まで「敵」だったリキッド、ソリダス、オセロットには彼らなりの思惑と正義があって最終的に帰結する目的はソリッドと同じものに落ち着いたという皮肉。こういう理不尽さみたいなものを描くのが本当に巧かった。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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