- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043943555
作品紹介・あらすじ
安政7年、遣米使節団を乗せ出航した咸臨丸には、吉松たち日本人水夫も乗り組んでいた。歴史の渦に消えた男たちの運命を辿った歴史文学賞受賞作が大幅改稿を経て待望の文庫化。書き下ろし後日譚も併載。
感想・レビュー・書評
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「植松三十里(うえまつ みどり)」の歴史小説『咸臨丸、サンフランシスコにて(原題:桑港にて)』を読みました。
歴史小説なんですが、ちょっと立ち読みしていたら、冒険小説の雰囲気を感じて、面白そうだったので購入しました。
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咸臨丸渡米150年 日本人水夫たちがたどった運命。
「新田次郎」賞&「中山義秀」賞作家の原点。
第27回歴史文学賞受賞作、ついに文庫化!
安政7年、条約批准のため遣米使節団が江戸湾を出航した。
「勝海舟」が艦長を務める「咸臨丸」には、瀬戸内の塩飽衆「吉松」たち日本人水夫が乗り組むが、悪天候に悩まされ、病気も蔓延する。
アメリカ人水夫との対立、士官「中浜万次郎」への反発など不穏な空気の中、果敢に太平洋横断に挑んだ彼らを思わぬ運命が待ち受けていた。
書き下ろし後日譚『咸臨丸のかたりべ』を併載し、第27回歴史文学賞受賞作品が大幅改稿を経て、待望の文庫化。
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文庫化にあたり、後日譚の『咸臨丸のかたりべ』が併載され、以下の2作品で構成されています。
■咸臨丸、サンフランシスコにて
■咸臨丸のかたりべ
「咸臨丸」のことは、良く知らなかったのですが、、、
艦長の「勝海舟」や、「ジョン万次郎」として有名な士官「中浜万次郎」ではなく、無名の水夫にスポットを当てたところや、太平洋横断という華々しい活躍ではなく、病気でサンフランシスコに残された人達にスポットを当てたところに好感が持てる作品でした。
当時のサンフランシスコ… 見知らぬ異国の地に病気で残されるなんて、心細かったでしょうねぇ、、、
日本に身重な妻が待っているにも関わらず、看病のために現地に残り、回復した仲間を日本に連れ帰った「吉松」の行動には心打たれましたね。
自分だったら、どんな判断をしたか… 考えさせられましたねぇ。
『咸臨丸のかたりべ』は、サンフランシスコで咸臨丸水夫の墓整備に尽力した後、日本に戻ってから咸臨丸に関する調査に没頭し、昭和13年にその集大成『幕末軍艦咸臨丸』を刊行した実在の人物「文倉平次郎」の物語、、、
目的意識を持って、行動することの大切さを感じさせられました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2作併載されているので、それぞれについてレビューします。
1.「咸臨丸、サンフランシスコにて」
「蟹工船」の読後に読んだので、艦長や士官への不満は「蟹工船」のそれと重なるところがあったがそれほど熾烈な感情ではない。むしろ、水夫たちが抱く望郷の思いがひしひしと伝わってくる。病でサンフランシスコを出港する咸臨丸に乗れず、現地に残された水夫の感情が生々しい。
現代の歴史の教科書では、咸臨丸での渡米はわずか数行が割かれるのみである。しかし、日本の船で、日本の水夫が太平洋を横断するという大きな挑戦である。それが水夫の視点から描かれている。サンフランシスコで描かれる中国人は、西洋列強に敗れ飲み込まれた果の姿。水夫たちが協力する姿は、日本人同士が協力し合えば、西洋列強に屈服することなく荒波を乗り越えていけると、これから訪れる幕末の動乱の行方を予感させる。
2.「サンフランシスコのかたりべ」
後日譚にあたる物語。歴史的資料「幕末軍艦咸臨丸」を記した文倉平次郎が主人公である。学者、文筆家といった肩書を持たずに、生涯で一冊の本を書き上げた。咸臨丸の資料をまとめ、名著と呼ばれる一冊の本を世に出すまでの苦労に苦労を重ねた話から、咸臨丸の乗組員たちへの情熱が伝わってくる。咸臨丸にかける熱量が、専門家以上のものを作り上げる様子が描写されている。 -
『咸臨時丸、サンフランシスコにて』、もっと長編で読みたかった。
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英雄視されているような歴史の主役達をなぞるような小説とは違い、まさにその時代に翻弄されながら生きた、名を留めない人達を描くことで、その時代の肉感を持って感じることができた。
咸臨丸の話など、いろんな本、小説などでもよく語られていて何となく、歴史的にも近いところだし、資料とかは普通にたくさん残っているんだろうなんて思っていたが、たった一人の執念ともいうべき思いが無ければ今も分からないまま歴史の中に埋もれていたかもしれないという話に驚いた。
歴史に名を残すような人物達の陰には多くの無くてはならない仕事を成し遂げた人達がいるんだということをあらためて実感させられる。 -
恥ずかしいことに今まで知らなかったことばかりだった。遅ればせながら今後もっと咸臨丸や開陽丸について勉強していきたいと思う。そして改めてサンフランシスコに行こう。まずは今秋の塩飽訪問が楽しみだ。
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安政7年、咸臨丸がアメリカへの使節団を乗せて太平洋を渡った。
その様子を一水夫の目線から描いた作品。
病気にかかった水夫たちの帰国できない心細さや人情が物語を深めていく。
併載は書き下ろし「咸臨丸のかたりべ」。
一個人が生涯をかけて費やした咸臨丸研究の様子を小説にする。