うなぎ鬼 (角川ホラー文庫 た 3-1)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943586

作品紹介・あらすじ

借金で首が回らなくなった勝は、強面を見込まれ、取り立て会社に身請けされる。社長の千脇は「殺しだけはさせない」と断言するが、どこか得体が知れない。ある日、勝は社長から黒牟という寂れた街の鰻の養殖場まで、60kg相当の荷を運べと指示される。中身は決して「知りたがるな、聞きたがるな」。つまり、それは一体-?忌まわしい疑念と恐怖。次第に勝の心は暴走を始め…。いまだかつてない暗黒の超弩級ホラー、登場。

感想・レビュー・書評

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  • 借金で首が回らなくなった主人公が、怪しげな仕事を紹介される。じわじわと破滅の道に足を踏み入れていくのから目が離せない。はっきりしないことばかりなのが、恐怖を増幅させる。

  • いつだったか書店で見かけて手にとってからずっと気になっていた。

    帯のコピーに「暗黒ミステリー」だったか、「暗黒ノワール」だったか、作者は「どんな人生送ってきたんだ」みたいな煽り文句が載っていたのと、黒い家の貴志祐介氏も絶賛してるみたいな記載があったのとで、俄然興味があった。でも、買うまではないかな、と思ってなかなか読めずにいた。

    今回読めたのは、図書館で偶然見つけることができたからだ。
    嬉しいことである。


    結論から言う。
    文章力はぴかいち。
    ストーリーテリングはそれほどでもない。

    読み終わった今振り返ってみたときに、これまで読んだことも聞いたこともない新しい読書体験ができたか、という観点から問うてみると、そんなことはなかったなという回答しか得られない。中盤からネタバレしてるし、使い古されている展開のような気もする。

    ただ、文章力がすばらしい。
    思わずノートに書き取ってしまったほどだ。

    一部分だけ抜き出してもいまいち伝わないだろうとは思うけれど、あえて例をあげるとすれば、以下の部分とか。

    P140 12行目 「先入観に縁取られたいびつな人間関係から対話は生まれない」

    P151 9行目 「夢をみたのは俺の勝手な妄想。ただの幻だ。それなのに、俺は秀さんを鬼に仕立て上げ、勝手に恐れていた」

    P96 3行目から
    「この街は毎日がお祭りだ。知らない奴ばかりが虫みたいにいて、どこをどう動いたって人に触れずには歩けない。そのくせ誰もが無関心でそれぞれにどこかの誰かと話している。手に持ったリモコンみたいなおもちゃで。すぐそばの奴と話せばいいのに、話す相手は遠い場所にいる」
    渋谷の描写が生生しい。

    とくに「黒牟」の描写がすごい。
    P23 3行目からほぼ1頁にわたって詳述されている。

    「運河沿いの脇道を折れて、煙草一本が灰になるほどの時間で街の佇まいは一変した。滅入ってくるような臭いが重くたちこめており、いずこともしれぬ場所から巨大な鉄の塊がぶつかりあうみたいな音が腹に響いてくる。ときおり、金属が切断される音が猿の断末魔のような叫びをあげている…」

    お話だって決してつまらないわけじゃない。
    文章力がとにかくすごくて引き込まれる。

    ポジティブな奴は結局最悪の状況に見舞われることはないのだな、と安心したのもつかの間、最後の最後で嫌な気分の余韻が残る。

    とっても勉強になりました。

  • 借金返済のために、裏稼業に足を染める勝。
    運び屋としての仕事をしてから、少しずつ平穏な日々が崩れていく…

    ストーリー展開自体はとても面白く、最後の終わり方も不気味で面白いが、もうひとひねりあると良かったなと思う。

  • 小説があると知らずに、マンガを読んだのが最初。
    ちなみにマンガもそれぞれの雰囲気にあっていて面白い。
    内容を知った上で読んでみたが、鬼畜系のこの感じ嫌いじゃない。
    いや~しばらくは鰻いらないや。

  •  じわじわと風景が浮かんでくる文章だ。生臭い匂いが漂ってくる。安穏としたバラックの並ぶ風景を見たことがないのに、頭の中ではもう黒牟が映像としてくっきり浮かんでいて、その奥にはジトッとこちらを見る人の顔が目に残る。ゆっくりと風景を描写するのが上手い。
     主人公の勝という人間は単純で前向きというバカだ。全てを信じて、裏切られると心がマグマのように憤る。それにより人も殺してしまう。純情な風を装うっているがどうしようもない人間だ。その勝を上手く使おうとしているのが千脇で、千脇はかなりやり手なようだが、読んでいる中ではどこまでが本心かわからない。汚れた仕事をしているが、それに呑まれないように自分のルールを確固たるものにしている。それは仕事のアシがつかないという利点もある。仕事の全貌が分からないので、不気味さは増している。
     この小説ではタイトルにもある、ウナギという生き物を使って何をしているのかを早めに書く。それは死体を運ばせてウナギの餌にして処理しているのではないかというもので、読みながらその粘つく怖さがどうなるのか、確かめるようにページをめくる。全てに、人間の底知れない怖さがあるので、どれが真実か分からない。
     秀が勝に、死体を処理するがウナギを食べさせてはいないと言っていた。これが本当のことなのか、少し気になる。あっさりしすぎているような。勝と同じように、読者も騙されているんじゃないか。秀の言っていたことが本当なら、千脇や秀の端々からでる情けの感情も本当だろうけど、終盤に尻すぼみして良い話にしようとしているのが少し気になったのでこんな風に思った。
     富田は嘘が育って死んだ。千脇は勝に、嘘が育つと退治できなくなって身内で処理するしかないと言っていた。この印象的な言葉を聞いて、他の話に嘘がないとは思えない。そしてその方がホラーとして面白い。

  • 打ち捨てられた貧民窟のような街。不気味な男達が世話をする生け簀で黒く蠢くのは鰻だ…
    「あいつら蛋白質ならなんだって喰うらしい。」恐怖と疑念に心が蝕まれる暗黒ミステリー。
    うなぎが食べられなくなりそうだと思いながらも手に取った一冊。初読み作家さんでした。 まさに暗黒ミステリー!
    疑念に心がざわめき、ついつい悪い方へ想像が傾いていきます。主人公と一緒に妄想を大きく膨らませながら読みました。その辺りが上手くて感心。

  • いやぁ、恐ろしい物語だった。ホラーとあるが、ホラーとノワールが混ざったような話。

    借金で追い詰められた勝は、裏の世界に生きる千脇という男に拾われる。勝の192㎝112㎏というガタイに惚れたのだ。
    千脇の元で裏稼業をして借金を返済していく勝。そんな勝に黒牟という街での仕事が回ってきた。鰻の養殖場に60㎏ほどの荷物を運べというのだが、中身は教えられないと言う。そこから勝の妄想が走り始め・・・。

    というような内容で、グロい描写も結構出てくる。でも、エピローグが一番怖かったかな。心理的に。勝はいつまで恐怖に怯えていなければならないのだろうと。改めて悪いことはするもんじゃないなと思わされる。

  • 一気に読んでしまった。疑心暗鬼の物語。主人公の経歴や職場の雰囲気があれやから、それも仕方ないんやろーけどね。登場人物には良い人だけどどうしようもない人が多い。

  • 高田侑さんの骨太な文体が好きです。ぞっとするほどリアルで、たまらなく不気味な街『黒牟』、着実に緊張感を増していくストーリー。高田さんってそっちの人なの?と思ってしまうほど説得力のある『怖さ』がどっさり詰まってます。面白かった……

  • じんわりとした闇の雰囲気がずっと続く。さらっと読めた

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