人間はどこから来たのか、どこへ行くのか (角川文庫)

  • KADOKAWA (2010年6月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784043943593

作品紹介・あらすじ

現在、科学の最先端の現場で急激な展開をみせるテーマ「人間とは何か」。DNA解析、サル学、心理学、言語学……それぞれのジャンルで相次ぐ新発見の数々。目から鱗、思わず膝を打つ新たな「人間学」。

みんなの感想まとめ

「人間とは何か」というテーマを多角的に探求する本書は、分子人類学や心理学、ロボット工学など、さまざまな学問分野からの最新の研究成果を分かりやすく紹介しています。著者は、各分野の専門家に取材を行い、科学...

感想・レビュー・書評

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  • 書名の通り、「人間とは何か」をテーマとした本。「人間とは何か」については、色んな学問分野で研究が成されているが、本書は各分野の専門家・研究者に取材したものであり、科学的な解説も多い。ただし、とても平易で分かりやすい説明がなされており、理解は難しくない。
    扱われている学問分野、すなわち、「人間とは何か」を見る視点は、DNA研究、サル学、ロボット工学、心の研究、文化とは、言葉の起源、表情、脳、農耕、アポトーシスと非常に多岐にわたる。
    ホモ・サピエンスと呼ばれる現存人類がアフリカで誕生したのが、おおよそ、15-20万年前。そこからホモ・サピエンスは、アフリカの外にも進出を始めた。日本列島に到着したのが、3-4万年前のことと推定されている。
    ビッグ・バンが起きたのが、約138億年前のこと。地球の誕生が約45億年前のことなので、人類の歴史はそれに比べると、ほんのつい最近のことである。
    昔の人間は今ほど寿命が長くなかったはずであり、平均して100年間で5世代が生まれたと仮定した場合、日本列島にホモ・サピエンスが到着した3万年前は1,500世代前、アフリカにホモ・サピエンスが誕生した15万年前は7,500世代前の話だ。気の遠くなるような話である一方、1,500世代前にも7,500世代前にも必ず自分の祖先はいるわけで、それは、あらためて奇跡的なことだと感じる。

  • 「人間はどこから来たのか、どこへ行くのか」・・・これはゴーギャンの言葉だという。表紙がゴーギャンの絵だ。タイトルが非常に興味深かったので、少々古い本だが読んでみることにした。

    科学を取り扱った本としては、少々古すぎる。恐らくその研究はさらにスピード感を以って進められていると思う。本来は最新情報を知るべきだろう。

    しかしながら研究の視点、人間というものを様々な角度から研究しているその視点が非常に興味深く、読後も何度か読み返すなかで、各章に登場する研究者の方の、「人間とは何か」の定義が一つ一つ記されていることに気づいた。

    これを10人分再確認することで、「人間とは何か」がまた立体的に見えてくるような気がしたので、ざっと各章をまとめてみた。果たして何か見えてくるだろうか。

    第1章:篠田謙一さんの人間の定義(DNAを用いた人類史研究をリード)
    「ヒトとは過去と未来を考える動物である」
    ※DNA研究により、これまでの化石研究に基づく人類史研究の欠点が明らかとなり、ホモサピエンスは旧人類から進化したものではなく、突然変異でアフリカをルーツとする新人類であることがわかった。人類はみなルーツを一つにする兄弟である。DNA研究で人類史の過去を知ることができるが、その過去の突然変異の過程での環境条件との関係性などを調べることができれば、人類の未来の環境変化に対する対応なども研究していくことができるのではないか。ヒトは過去と未来を考える動物である。

    第2章:山極壽一さんの人間の定義(ゴリラの研究の第一人者)
    「ヒトとは他者の中に自分を見たがる動物である」
    ※チンパンジーと人間のDNAの違いは僅か2%だそうだが、サルやゴリラ、チンパンジーとヒトとの間には目立った違いがある。例えばヒトは子育てに手がかかるそうだ。二足歩行になった故に、未熟で生まれ、子は親の手を借りねば育たない。そこから家族というものが形成され、ヒトとヒトの関りが生れ、相互に守り合い、教育を行い、そして共感という心が生れた。

    第3章:石黒浩さんの人間の定義(ロボット学の第一人者、アンドロイドの研究)
    「ヒトとは相手が心をもっていると信じることができる生き物である」
    ※その前提に「心とは何だ」という議論があった。アンドロイドに様々なプログラミングをして、あたかも心をもっているかのような表情や行動をさせることは可能だとすると、「心をもっている」と「心をもっているように見える」との差は何なのだという問題。人に心があって、では犬にはあるのか?蛇にはあるのかという問題。定義のなかの、「信じることができる」「生き物」といワードが、人と他の存在を区別しているように思える。

    第4章:山岸俊男さんの人間の定義(社会心理学者)
    「協力しあうサルである」
    ※人間は他の動物に比べて利他性が存在するという。本来生物学的な理屈で言えば、利己的なほうが生存率が増し、自然の流れは利己的な方が有利なはずだが、人間社会には利他的な行動が残っている。人間社会においては、利他的であることにメリットがある。人間はお互いに協力することにより生き延び、文明を創った。人を信用する人は、人を見る目ができる(失敗により成長する機会があるから)という点も興味深かった。

    第5章:長谷川眞理子さんの人間の定義(=人間の特徴)(行動生態学、進化心理学研究)
    「自分の作りだしたもの(文化・社会)が自分の一番大事な環境となっている。新しい文化は、遺伝子をも変える(遺伝子と文化の共進化)」
    ※殺人の統計をとると、若い男性同士の女性をめぐる(あるいはメンツに関わる)事件によるものが多いという。これは他の動物の繁殖期のオスの行動と一致するといい、生物の進化の中でヒトが受け継いできたものと思われる。一方、そのデータ量は国がらや時代で変わるという。文化や社会によって傾向が変化する。あるいは、社会や文化の変化によって、遺伝子が書き替えられることも研究されている。
     ヒトは文化や社会を創り、それによって遺伝子を変化させることができる存在であるということだ。

    第6章:岡ノ谷一夫さんの人間の定義(理化学研究所・生物言語研究チームリーダー)
    「ヒトとは愛を歌う動物である」
    ※「言語の起源」の研究は、言語は化石には残らないという理由からパリ言語学会では研究として受け付けられないという。それを研究している人がこの人。ジューシマツのさえずり(歌)に言葉があるのではないかという研究をしているが、ジューシマツとヒトには言葉の上で共通点があるといい、それは生活スタイルの変化(集団生活、天敵から逃れた生活)からもたらされたものではないかという。言語中枢やジューシマツの歌う中枢は、左脳部分にある点も共通しており、運動を司る中枢も左脳で近いところにあり、人の言語は身振り手振りなどの行動から生れ、そこから単語に分解されていったのではないか、そしてそれはジューシマツのさえずりとも共通していると分析されている。とても面白く、説得力ある研究だと思えた。

    第7章:金沢創さんの人間の定義(実験心理学・表情認知研究)
    「ヒトとは深読みする霊長類である」
    ※顔に表情が現れるというのは人間の特徴のようだ。犬はしっぽを振って喜びを表現する。人間は顔に表情を集中する。そして、人はお互いの顔の表情をみてコミュニケーションをとる。顔を見てコミュニケーションをとっているとき、人は相手の心を読んでいる。そういう意味で「深読みする霊長類」ということになる。すなわち顔の表情は、心の表れということにもなる。悲しいかな実験では、表情から心を読む能力は、男性より女性の方が優れているようだ。

    第8章:田中啓治さんの人間の定義(脳科学総合研究センター副センター長)
    「ヒトとは自分を訓練する存在である」
    ※将棋のプロの思考と脳の働く部位との関係性を研究されている。人間よりも強いコンピュータの開発が目的ではなく、人間の複雑な思考について研究されており、まずアマとプロの違いとして、大脳基底核という部位(=動物的な脳、習慣的な運動の記憶)を使っているか否かがわかった。すなわち直観力の差で、その部位は、海馬(長期記憶の部位)と連動しているともいう。最近は「脳の可塑性」という表現もされるが、繰り返し行うトレーニングの積み重ねから直感力が生れると考えられ、そこから先の「人間の定義」が発せられた。脳のトレーニングのコツは、よく寝る、運動などで脳をリフレッシュする、繰り返すだそうだ。

    第9章:佐藤洋一郎さんの人間の定義(総合地球環境学研究所副署長・植物遺伝学)
    「ヒトとは環境をつくりかえた生き物」
    ※森から出たホモサピエンスは、狩猟生活から、農耕生活というものを考えた。この農耕生活をするのはヒトだけの特徴であり、他の動物にはみられない。これまでの歴史の中で、河の氾濫など、農耕生活の危機を経験しながらも、農耕生活を続けてきた。この農耕生活の起源としては、地球環境が安定期に入ったことも一因と言われている。そうしたときに、環境が変化しつつある現在~未来について、ヒトの生活は新たな局面を迎えるのだろうか?

    第10章:田沼靖一さんの人間の定義(アポトーシス研究をリード)
    「ヒトとは心を引き継ぐ存在」
    ※アポトーシスとは、「多細胞生物の体を構成する細胞の死に方の一種で、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞の自殺すなわちプログラムされた細胞死のこと(wiki)。これを田沼氏は、「人が生きていく中でDNAに傷が蓄積されていくが、それを子孫に引き継がないための仕組み」と述べていた。死が次の生を生み出す。死の研究は、死というものの考え方を大きく転換してくれるように思える。

  •  2年前に出たとき、タイトル(※)に惹かれて何気なく買った本。読んでみたらすごく面白かった。第一級の科学啓蒙書。もっと話題になってベストセラーになっていても不思議はない本だ。

    ※カバーに使われているゴーギャンの名画「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」をもじったタイトル

     著者は、NHKで看板番組「NHKスペシャル」などを担当しているプロデューサー。
     本書は、NHKで放映された『サイエンスZERO』――「シリーズ ヒトの謎に迫る」をベースにしたものだ。

     分子人類学、ロボット学、サル学(霊長類研究)、社会心理学など、各分野の第一線の研究者を取材し、その研究内容のおいしいところをギュッと凝縮する形で、「人間とは何か?」という問いに迫った1冊。

     立花隆の初期著作『文明の逆説』に「人間とは何か?」という卓抜な論考が収録されていたが、本書はあれをさらに広げ、情報をアップデートした感じの内容である。

  • NHKの取材班が、史学、ロボット工学、社会学、生物学など多彩な視点で人間の成り立ちを追った本。なかなか興味深い。

  • 第一章…DNAが教えるアフリカからの旅路
    DNA鑑定を取り入れて初めてアフリカ単一起源説が受け入れられた。人口の爆発によって人類は世界に拡散していく。
    DNAを見ると母系は先住民であるのに対して父系は外からの場合が多い=圧倒的に男性が世界を移動していた。
    同じ日本人でもルーツを辿ると様々。色々なルーツから偶然日本という島にたどり着いた人たち、と考えることができる。民族紛争のばかばかしさ。
    人間を一文で定義すると「ヒトとは過去と未来を考える動物である」
    第二章…私という不思議のサル
    霊長類の中で人間だけが「性を秘匿し食を公開した」種である。(食の公開とは、仲間内で食を集め分配すること)
    チンパンジーやゴリラと人間との違い=人間は乾燥のため縮小していく楽園(森)を出た→草原を食料を求め歩き回り二足歩行に→産道の形が変わり他の類人猿に比べ未熟に生まれてくる(脳の発達=肉食により頭が大きくなり早く出てこないと産道を通れない)→育児が大変→夫婦単位になる。ヒトの老後が長いのは育児の手伝いが必要だったためではないか。
    ヒトは他の霊長類と違い他者に共感し、他者を教育する。
    第三章…ロボットが問う人間の証明
    心は手に取ってみることができるものではないので、持っているかどうかの確証できない。持っているように見える時、心があるのでは?と思う(exペット)。心があるように見せれば心があるということなのか?境界線は限りなく曖昧になる。人間の中でも殺人鬼は心がないように思える。人間=心を持っているのであれば、殺人鬼(冷血)は人間ではないといえる?
    第四章…私が知らない私の心
    心と言えば意識。けれどヒトは心のごく一部しか意識していない。実験をしてみると、仲間内の評判を気にして下す決断も、本人は相手を慮って、という気持ちで決断を下したと思っている。利益が戻ってくる仕組みが(社会に)あるから他利行動をするように心が動く。一方利己的な人を排除しようとする力も社会の中で起きてくる。
    人を信頼する強さと人を見る目の確かさの関係=他人を信じ易い人ほど、人を見る目がある。人と関わる機会が多く、失敗もあるが心が進化している。集団の大きさと脳の大きさは比例した=複雑な人間関係を処理するため。自分の意志で、と思っていることも遺伝子的に組み込まれていることもあるかもしれない。
    第五章…私の中の「動物」対「文化」
    生物学的にオスはメスをめぐって戦ってきた(自分の種を残すため)。オスの方が闘争的。しかも繁殖期に一番闘争的になる。殺人者のピークは20代。今でも当てはまること。けれど、殺人の件数は社会の豊かさと反比例する。豊かで安定した社会では、殺人がいかにその社会から振り落とされるかを若者が理解しやすい。とはいえ、殺人の背景には生物的一面が潜んでいる。
    性格の遺伝子的影響は?新奇探究性に関しては遺伝子が関与している可能性がある。
    言葉や書物のおかげで文化は飛躍的に進んだ。遺伝子に書かれていることとのずれが起きてきてそれが今問題を引き起こしている(exmメタボ)人間は生物の生息可能数を大幅に超えている。それが可能な理由は人間が地下に埋まっている過去のエネルギーを掘り起こして使っているから=不自然な形で繁茂している。
    第六章…言葉はどのようにして誕生したか。
    歌(文)から単語ができたのではないか(単語→文ではなく)
    クジラ、十姉妹、人の共通項=集団で行動・比較的平穏な環境
    言語が高い表現性を獲得する上で、リプレイス能力は必須。(リプレイス能力とは実際に見ていないものに置き換える能力)
    言葉には実存と非実存の間の垣根を崩す力がある。
    第7章 表情という心の窓
    霊長類・・視覚が中心。 人間は顔の表情で心をを表すが、犬・猫は体全体で表す。
    視線のコミュニケーションは人間しかできない(人間にしか白目がない)
    表情を読み取る能力=心の能力=人間がいかに社会的な関係を大事にしているか。
    第8章 1400グラムのアイデンティティー
    人間の脳はなるべくして大きくなった。なぜなら牙も体力もない人間は知恵を働かせることによって優位に生きられたから。
    第9章 農耕・人類の職業選択の行方
    最近の調査では、農耕=定住=安定(食物確保が容易)という従来の考え方に疑問が出てきた。農耕は狩猟に比べてかなり過酷だった様子。又、農耕から集落ができ階級社会ができてきたという従来の推測も疑問。階級制が先にあり命令系統がなかったら過酷な農耕という作業はできなかったのでは?
    塩害とは乾燥した土地の下に塩を含んだ地層があり、灌漑のより畑にまかれた水が浸透して地下の塩が溶ける。そして水と一緒に地表に向かい上昇。土地が乾燥すると塩だけが残る現象をいう。
    第10章 死と向き合う心
    アポトーシス(ギリシャ語)=木の葉が散る・・・老化で死んだ細胞をきちんとクリアする=個体を活かすメカニズム
    毎日200グラムの細胞が死に200日あまりで体の細胞は入れ替わる。
    「老い」の時間は自分とは何かを追求できるかけがえのない時間。その限られた時間の中で、「自分とは何か」という自分のアイデンティティーを問うことができ、一人一人の一生が問われているのに気付かせてくれる。老いが人生を豊かにし、死によって一つのアイデンティティーが完結する。このプレゼントされた時間は次の世代に良いものを残す大切な時間かも知れない。
    死は前よりもきたらず。かねてより後ろに迫れり(徒然草・吉田兼好)
    生きているところから死を見るのが普通。逆転の発想で、自分を死の終焉においてみると今までと違う死生観が出てくるかもしれない。

    各界の研究がかくも深く高度に行われていることを知り驚く。

  • 久々にガツンときました。凄くいいです。とても興味深い内容。思わず続けて二度読みしてしまいました。

  • NHKの番組が書籍化されたもの。大変興味深い内容。読み応えがありました。再読したい。

  • DNA解析、サル学、心理学、アンドロイド研究等、様々なアプローチで読み解く「新・人類学」。いや面白いです。
    特にアンドロイド研究の部分が興味深かった。手塚治虫が「人間とは?」をテーマに考えた時にあえてアトムという人間でないモノを主人公としてお話を作ったように、人間以外のものから人間のことを考えるというのは中々有意義な手法だと思う。「心を持っているように見えるということと、心を実際にもっているということのあいだには、どれだけの違いが横たわっているのか?」という問も人間としての意識を根源から揺さぶられるようで。科学物はこういう体験が出来るから面白い。

    「人間は話す前に歌ってたかも」という説も好きだ。こっちはロマンチックですね。

  • 『人間はどこから来たのか、どこへ行くのか』(高間大介、2010、角川文庫)

    本書は、生命科学、脳科学、動物行動学、言語学、人類学、倫理学などの諸分野から、「人間」の本質に迫るものである。

    人間はどのように進化したのか、脳の働きとは何か、なぜ人は農業をするようになったのか、なぜ人は死ぬのかなど、様々な観点から人間の本質を検証している。

    一般に思われていることと研究者が考えていることに違いが見えて面白い。 たとえば、人間は農業を始めたことによって、持てる者と持たざる者が生まれ、階級社会が生まれたと一般には思われているが、研究者によれば、むしろ階級社会であったからこそ農業というシステムが生まれたとする説がある。

    教養の一冊といえそうな書である。

    (2010年7月31日 大学院生)

  • このタイトルは科学をテーマにした本にふさわしいのだろうか?
    今最新の科学のテーマをやさしく教えてくれる。
    科学好きにはたまらない本だ。

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