- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043943746
作品紹介・あらすじ
死者の弔いのため、遺体を解体し様々な製品を創り出す「遺工」を家業とする庵堂家。父の七回忌を機に、当代の遺工師である長男・正太郎のもと久々に三兄弟が集まる。再会を喜ぶ正太郎だが、次男の久就は都会生活に倦み、三男の毅巳も自分の中の暴力的な衝動を持て余していた。さらに彼らに、かつてなく難しい「依頼」が舞い込んで-。ホラー小説の最前線がここに!第15回日本ホラー小説大賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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死者の弔いのため、遺体を解体し様々な製品を創り出す「遺工」を家業とする庵堂家。
父の七回忌を機に、長男、正太郎のもとに久々に集まる次男の久就と三男の毅巳。
「遺工」で創りだされるのは、櫛や茶碗や箸、財布などなど、日常的に目にする身近な物ばかりだ。
最近では、遺骨をダイヤモンドに加工する技術もあるのだから、近い将来は箸や茶碗に姿を変えていつでも家族を見守ることが出来る、なんてことがあるかも知れないな~。
ある事件をきっかけに三人で最初で最後の仕事をすることになる。
解体シーンは、なかなかのスプラッター激しめでグロだが、グロ以上に三兄弟のキャラクターに愛着がわいてくる。
この感じはグロの巨匠平山夢明に、通ずるものがあると思っていたら、解説が平山さんで解説だけ読んでも面白い。
ホラー要素は無かったが彼の「宝島」も読んでみたい。
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少なくとも私の基準の中では、"ホラー"、という要素は微塵も感じられないので、受賞に限って言えば、それがふさわしいかと訊かれると甚だ疑問だが、とても"上手い"小説であることは間違いない。
"遺工師"なる架空の職業を創り上げ、出てくるキャラクターはブッ飛びまくり、そして思わず顔をしかめてしまうドぎついスプラッター描写がてんこ盛り、と、これだけ見ればどこにも着地できない迷い子になってしまってもおかしくない設定だが、そこにきっちり家族の絆といったベタなドラマも放り込みながら、作品として見事に昇華させている。
死体をバラしていく工程のディテールなんかはどうやって取材したんだろう…、と気になったり。
ただラストは個人的にはちょっとやり過ぎたんじゃないか、という感がある。
締めに向けてインパクトを重視したい気持ちも分からないではないが、もっと抑制を効かせた展開の方が読後感は厚くなったのではないだろうか。
文庫版解説の平山夢明氏はなんだかピッタリ。
1つ、細かいことだが保釈に関する記述で明らかな事実誤認があるのが気になり、残念。
単行本ならまだしも、文庫にするなら誰か気付かないと。 -
読み終わった一番最初に感じたのは、はたしてこれはホラー小説なのだろうかという疑問だ。
確かに描写はホラー小説的な部分もある。
刺激的か?と聞かれたら「かなり」と答えるだろう。
でも、ホラー小説か?と聞かれたら答えに迷う。
一度は挫折して投げ出した物語だった。
時間を置いて再度挑戦したのだけれど、何故か今度は最後まで読み通すことが出来た。
もしかしたら読みきれるだけのエネルギーを必要とする物語なのかもしれない、と少しだけ思ったりもした。 -
いまや直木賞作家となった著者の手による初期作。ホラー大賞受賞だから、それなりのクォリティは期待できるけど、本作もなかなか。読み始め、死体損壊のグロいだけの物語かと思ったら、なかなかそうは問屋が卸しません。さすがというべきか、読み始めの印象とは違う展開を見せ、何だか芸術の域にまで上っていく。グロテスクだけど不思議な印象の佳作。
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読み終わってから、作品の分類がホラーであることに気づいた。ホラーで胸がしめつけられることがあるとは思わなかった。大好き。
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適度におもしろかったし、好きなほうかな、でももってなくていな。
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勢いがある文章で良いが、若干空回りしてる感があり
もったいない気がした。 -
2015年、6冊目。
真藤順丈初読み作品。
第15回日本ホラー小説大賞受賞作。
遺体を用いて生活用品を創る「遺工士」という架空の職を生業とする「庵堂家」の男三兄弟の物語。
家業を継いだ長男。家を出、東京でサラリーマン生活をおくる次男。知人の葬儀会社で働くも、暴力衝動を抑えきれずにいる三男。三人は先代である父の七回忌を前に、久々に顔を揃える。
コレを
「ホラーか?」と問われれば。
「No!」と答えるでしょう。
「では、何か?」と質問を重ねられたら。
「エンターテイメントなヒューマンドラマだ!」と答えるでしょう。
「遺工士」という職業柄、スプラッター場面は度々出てくるが、ソレがメインで話が展開して行くのではない。
「生」と「死」が密接に交わる、特殊な環境下での家族(兄弟)再生と成長。それが、三兄弟それぞれの視点を行き交いながら、ホラーはもちろん、喜劇も、悲劇も、ヴァイオレンスも、絡めて進んでいく。
そして、たどり着くのは……。
読後感としては、平山夢明『DINNER』に近いかな?!
……、と思っていたら、巻末解説は、その平山夢明というサプライズのオマケまで付いてきた。
そこまで含め、折に触れ、読み返したくなるであろう作品。