Kadokawa Art Selection ゴッホ 日本の夢に懸けた芸術家 (角川文庫―Kadokawa Art Selection)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943791

作品紹介・あらすじ

ゴッホ研究の第一者である著者が、初めて初心者向けに書き下ろした濃密な入門書登場!必ず押さえておきたいゴッホの代表作をカラーで紹介し、その絵の魅力と描かれた背景、そして彼自身と彼を支えた人々の想いを、ゴッホの多くの資料を繙きながら詳しくかつ簡潔に解説。さまざまな伝説が一人歩きするゴッホだが、本当は何を見て、何を感じ、何を表現しようとしていたのか…。彼の気持ちもじっくり味わえる永久保存版の1冊。

感想・レビュー・書評

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  •  先日ゴッホ展を観に行って衝撃を受け、翌日本屋で見つけて早速購入。今まで絵画というものには無頓着だったんだけど、ゴッホの絵から滲み出るその存在感にあてられました。
     こうやってゴッホの生涯を見ていくと、徹底したその駄目人間っぷりには頭が下がる。学校にも画商にも協会にもなじめず、画家として生きていくと身を立ててからも娼婦に熱愛を送り同棲を始め、生活費は全て弟便り。日本の浮世絵に感銘を受けてユートピアを夢想すれば、現実にそれを実践しようとすれば失敗し発狂に至る。そして37歳にしてピストル自殺にて幕を下ろす生涯。こんな、人間らしい人生を歩んだ人を愛さずにはいられないじゃないか。
     彼の人生には絵画しかなかった。他の選択肢も、可能性もなかった。その必然性が、彼の個性を磨いたのだろうか。とにかく実際の絵を観て印象を受けるのが、その特徴的な色彩感覚。原色を殆ど使わず、かつ対となる補色を効果的に使う事で、どこか暗くも目が離せない何かがそこにはあった。そう、同じテーマの印象派の絵が並べておいてあったんだけど、ゴッホの絵は明らかに何か「異常」なものであった。そして、そんな異常さに惹かれてしまうというのも、悪いものじゃないかもね。
     そう、だから、彼が愛したものも大事にしてみよう。メランコリーに花束を、ペシミズムには敬礼を。世界に居場所が無くったって、痕跡ぐらいは残してもかまわないさ。

  • 西洋画について知りたくなったので。
    損保ジャパン日本興亜美術館にて常設されていて身近なゴッホについて読んでみた。実は何も彼について知らなかったんだなぁとビックリした。

    小さい頃から気難しさと真剣さゆえに妥協できず、何をやっても社会に適用できない。

    キリスト教の教えも影響するだろうが、ためらい無く人に分け与えることができる性格で、娼婦の境遇に同情して同棲したり。
    単純な人物像をなぞると、息子に寛容な両親と献身的に支えてくれた弟テオの存在で生きていたわがまま息子という印象しかない。
    若くして未亡人となった名士の娘にストーカー行為を行い迷惑をかけ、娼婦と結婚すると言い出して結果女を捨てたり。

    ファン・ゴッホはいわば古くさいキリスト教的主題から脱しきれない画家であった。それでありながらなお、近代画家になろうと葛藤していたのかもしれない。

    彼は(そう定義されるかわからないが)社会主義者であり、幸福の時代というユートピアを待ち望んでいたみたいだ。
    浮世絵にかなりの影響を受け、
    南仏≒日本=ユートピアと思い込んでいる。

    「タンギー爺さん」はゴッホが持つユートピアと日本と南仏が3重に重なる肖像画であり、タンギー爺さんのような人を理想の人物として描いている。

    「種まく人」はミレーの種まく人(キリスト教の主題に多く、旧体制とみなしていた)をドラクロワ的な色彩(鮮やかなコントラスト。近代的とみなしていた)で書き、自分の古い宗教感と近代画家としての融合を意味しているらしい。

    「ひまわり」19世紀の西洋では向日葵は太陽(神)を向き続けるという話(花は向日性が無いので事実は違う)から、信仰心を象徴していたらしい。
    黄色い家でユートピアを崇拝する仲間たちと共同生活を送る夢を描いている。

    ゴッホの想像する「日本人」は知的で、自然に没入して生きる素朴な自然人であり、兄弟愛に満ちた共同生活をし、そして真の宗教を信仰する人たちだという。
    えーそれ何処から得てきた知識よ、、と言いたいが、当時の江戸ー明治の長屋の暮らしを美化したらそうなるのかしら…(笑)

    その後ゴーギャンとの共同生活および耳切り事件と精神性発作の発症。
    やってみてわかる他人との同居の難しさ。
    ユートピアを実践して失敗したが故に日本への希望も意味をなさなくなり、サン=レミ療養院へ入る。

    「星月夜」や「アーモンドの花咲く枝」は療養院でかかれた作品。発作がなければ明晰な頭脳を持っていた。

    テオも画商として優秀だったと思うが、ゴッホにそこまで援助し続けられたのはなんでだろう?
    子供にもフィンセントと名付け、入院費用や生活費の援助を妻子を抱えながらできたのは、兄弟への深い愛がなければできない気がする。
    ゴッホは自分の存在が弟の負担になっていることを妻の態度で知り、甥の為に自分の命を捨てたのかもしれないが、まさかその2ヶ月後にその弟が梅毒を発症して半年後に死ぬとは思ってなかっただろう。
    もし弟の発症のほうが早ければ、弟家族のために奮起できたのかもしれないと考えるとやりきれないなぁ。

  • 「彼は生きることが難しい人間だった」

    ゴッホ研究の第一人者がゴッホの生涯について解説した一冊。ゴッホ展に足を運んで衝撃を受け、映画を見て更に彼の人生に引き込まれた。だからもっと彼のことを知りたくなった。

    ゴッホは、思ってた以上に不器用で、でも誰よりも絵画に全てを懸けたのかもしれない。
    彼の絵の変遷が、手紙から紡ぎだされる彼の人生のドラマと絡み合い、読む人を不思議な気分に引き込んでいくような感覚に陥った。
    魅力なのか、狂気なのか。
    それでも、こんなに引き込まれる人生を持つ人はなかなかいない、そう思わされる一冊。

  • ゴッホ展に行く前に、予備知識をと思い読了。
    ゴッホという画家がこんなにも壮絶な人生を送っていたなんて知らず驚いた。
    知れば知るほど、どんな人物でどんなことを考えていたのかが分からなくなっていった。しかし、なぜかとても惹かれるのはなぜなんだろう。弟テオとの関係性もとても興味深かった。

  • ゴッホ研究の第一人者によるゴッホの生涯と作品を時代ごとに解説。カラー図版が豊富で分かりやすい。

  • ・基礎にあるのは信仰との葛藤。
    ・27から画家を目指す。弟テオの支え。
    ・いくつもの失恋。
    ・パリにて。浮世絵と印象派の影響、「日本≒南フランス」への憧れ。
    ・アルルでのユートピアの夢想。色彩による象徴。補色の色彩理論→色相環。(ひまわり=ユートピアの象徴。)
    (→自然やアニミズムへの接近? 否? プリミティヴな信仰への回帰、これがユートピアへの憧れに。)
    ・「黄色い家」(画家たちによる信仰集団)の挫折(ゴーギャンとの共同生活の破綻)→耳切り事件。
    ・精神の病。入院。
    ・テオに見捨てられるのでは。テオにできた、自分と同じ名の子供。自分は用無し。
    ・張りつめた糸が切れるような死。→約10年。

    ・手紙。

    特に「黄色」が、父の死を象徴する父の大きな聖書のそばに置かれた小さな小説本から、飛び出し、画面全体にひろがるひまわりのくだり。
    記述自体がドラマチック。

    その後、wikiなどで目についたところ。
    ・オランダ、ベルギーを行ったり来たり。父の死後は弟テオを頼ってフランスへ。
    ・能無しへのお情けと周りから言われないためにも、送金してくれるテオに仕事として絵を送り続けた。
    ・順番に見ていくと、徐々にアウトサイダーアートと呼んでも構わないような色彩と歪みに支配されていく。
    ・「ドービニーの庭」、「ピアノを弾くマルグリット」の素敵さ。これは画集を買わずばなるまい。
    ・没年や原因などを考えると、弟テオドルス・ファン・ゴッホも凄まじい人生だ。この人にはこの人の濃い人生があったはず。
    ・情熱、炎、無私、天才的狂気、という伝説に抗したい。知的で、人情なしで、それでも人がほのかに好きで、小心で、繊細な像を追っていきたい。
    ・ロバート・アルトマン監督作「ゴッホ」(現代 Vincent & Theo,1990) 見たい!
    ・印象派をまず出発点として考える。印象派以後の、象徴主義、表現主義をこそ、追っていくべきか。
    ・モデルの写生をもとに、自分なりのテーマをもって、羽ばたく想像力。
    ・肖像画への情熱……「出現 アパリシオン」

  • とても読みやすく引き込まれる。

  • あとがき含めて読み応えが素晴らしい。必読。

  • 夢に見ていた仮想日本のユートピア、南仏アルルの地でも思うような心の平和と成功を得られなかったゴッホ。

    自身が発症してゴーギャンも去ってユートピアが崩壊したのち、ゴッホの手紙から「ユートピア」という記述が消えた、というのが痛ましい。

    ゴッホにとって地上の世界にはどうしてもユートピアを見つけられなかった。
    色彩や筆跡から感じられる執念とも思えるような情熱、混じりけのない真摯な心、混沌としたこの世界では、ちぐはぐに宙にさまようしかなかったのか。

    来週ゴッホ展に行くのがますます楽しみ。

  • ゴッホは生きることの難しい人間であった。その期難しさと新検査とのゆえに妥協できず、何をやっても、人とぶつかり、何をやっても社会に適応できなかった。ゴッホ美術館は私がアムステルダムに住んでいた時の近くにあった。懐かしいな。
    ゴッホは宗教を重く引きずったまま画家になった。聖職者になることを断念し牧師も教会も嫌いになったとはいうものの、生まれて以来ずっと彼を育んできたキリスト教が心から離れるはずもなかった。
    1885年のオランダはまだジャガイモ食べて貧しかったんだな。
    オランダ時代、ゴッホの色彩は暗かった。
    19世紀末にヨーロッパで日本美術が大流行し、ジャポニズムという現象が起こったのはそれまで鎖国で国外にほとんどでていなかった日本の美術品が流出しはじめ、その価値と新千さを画家たちが発見したから。
    浮世絵が大きな影響を与えた。
    日本美術を研究すると、あきらかに賢く哲学的で知的な人物に出会う。その人物を何をして徳を過ごしているのだろうか。
    宗教的感情と自然を描くというう近代画家としての四迷との葛藤から来る苦しみであった。

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著者プロフィール

1957年、大阪府生まれ。大阪大学文学部卒業後、81年から88年までアムステルダム大学美術史研究所に留学し、文学博士号を取得。博士論文でオランダ・エラスムス財団よりエラスムス研究賞を受賞。広島大学総合科学部助教授を経て、大阪大学文学研究科教授(西洋美術史)。2004年から05年まで、ワルシャワ・ユダヤ歴史研究所研究員。『ファン・ゴッホ 自然と宗教の闘争』(小学館)、『ユダヤ人と近代美術』(光文社新書)など多数の著作がある。

「2019年 『ファン・ゴッホ 日本の夢に懸けた画家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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