ホテルジューシー (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 289
  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943845

作品紹介・あらすじ

大家族の長女に生まれた天下無敵のしっかり娘ヒロちゃん。ところがバイトにやってきた那覇のゲストハウス・ホテルジューシーはいつもと相当勝手が違う。昼夜二重人格のオーナー(代理)や、沖縄的テーゲー(アバウト)を体現するような双子の老ハウスキーパーなど規格外の職場仲間、さらにはワケありのお客さんたちにも翻弄されながら、ヒロちゃんの夏は過ぎてゆく-南風が運ぶ青春成長ミステリ、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 沖縄の夏。
    言葉だけで眩しくて、ワクワクしてしまう。
    いいなぁ。
    また沖縄に行きたい。

    主人公のヒロちゃんは夏休みに沖縄の宿でバイトをして過ごすことにする。
    いいチョイスですねぇ…とにっこり。
    大変そうだけど楽しそう。
    でもしっかり者で他人を放っておけないヒロちゃんは苛立ったり、ハラハラしたり、傷付きながら自分の信じてきた「正しさ」に当てはまらない生き方を知っていく。

    「人生はたまに、他人の手でかき混ぜれた方が面白い。」という言葉が印象的。
    他人に振り回されていると思ったり、迷惑をかけられていると思ったり、理不尽だと感じたり、それらは全て「自分は正しい」という立場からの結論なのかもしれない。
    ヒロちゃんがオーナー代理にお客さんの知らなかった一面を教えてもらうことで、それまでとは全く違う顔が見えてきたように「自分は正しい」を捨てないと判らないことなんて本当にたくさんある。
    この小説を読んでいてすごく素直に自分のことを振り返ることが出来た。
    それはきっと、まっすぐで優しくて男前なヒロちゃんが一人一人と向き合う姿を見せてくれたから。

    世間は夏。
    うだるような暑さとジリジリと肌を焼く日光に嫌気がさしてきたら、秋が来て冬が来たらこの暑さが恋しくなることを思い出してみる。
    夏の終わりはいつも淋しい。
    長い夏休みがなくなってしまっても、やっぱり夏は特別な季節みたいだ。
    沖縄に今すぐ飛んでいくことは出来ないけど、秋が来るまえに夏を満喫しておこう。

  • 『切れない糸』ではクリーニング店、『和菓子のアン』ではデパ地下の和菓子屋、『ワーキング・ホリデー』をはじめとする“ホリデーシリーズ”では配送会社と、いわゆるお仕事小説を多く書いている坂木司。そこに「日常の謎」をからめた作品がいつも楽しい。

    大学2年生のヒロちゃんは、大家族の長女に生まれたしっかり者。弟妹の面倒をみなければならないため、これまで彼女には夏休みというものが存在しなかったが、そろそろみんな手がかからなくなり、親から「今年は自由にすればいい」と言われる。喜んだのもつかの間、何をしていいのかわからない。親友のサキと来年旅行にでも行く資金を貯めようかと、アルバイトをすることに。サキとは正反対の性格だから、同じバイトをするのは無理だろう。夏休み中はお別れすることにしてそれぞれ夏のバイト先を探したところ、ヒロちゃんにこのうえなくピッタリと思えたのは沖縄・石垣島の宿。予想どおり、大家族の世話を思えば宿泊客の世話なんて朝飯前。このまま石垣島で暮らしてもいいなぁなどと思っていたころに、那覇への異動を命じられる。系列の宿でもなんでもないのに、よく知る宿のバイトが急に辞めて困っているから行ってやってくれだなんて。断れずに那覇に行ってみれば名前からして怪しげなホテル・ジューシー。オーナーは常に不在、隣の喫茶店に常駐するオーナー代理はものすごくいい加減。調理担当はおおらかすぎるおばちゃん、ハウスキーパーは双子の婆ちゃん。だらしないことが大嫌いなヒロちゃんははたしてやっていけるのか。

    客はワケありの人ばかりで、なんやらかやらトラブルが発生します。それを解決してみせるのはヒロちゃんではなく、だらしなくいい加減に見える人。物事は正義感だけでは片づけられないし片づけるべきでもないことを思い知らされます。たまに説教臭いけど、鬱陶しいと感じるところと紙一重でいい話のほうに振れています。登場する数々の沖縄料理がとてつもなく美味しそうで、その部分でも興味大。

    本作と対になっているというべき作品が同著者の『シンデレラ・ティース』。ヒロちゃんの親友・サキの夏休みバイトの話だそうで、これを読めばまちがいなくそちらも読みたくなるでしょう。

  • ホテルジューシーの従業員たちのキャラクターが素敵。料理上手の比嘉さんに、清掃係のセンばあクメばあ、結局謎の多いままだったオーナー代理。読み終わった後、私も一緒にひと夏のバイトをしていたような気持ちになりました。
    沖縄の南国的なところだけでなく、夢見て沖縄にやってくる若者の理想と現実も描かれてて良かったです。

  • 困ったなあ…正義感を振りかざすヒロのこの感じは、私にそっくり。長い年月、てーげーな生き方を人にも自分にも許せなかった時代が、確かにあったもんなあ。

    なぜそんなことをするのか、どうしてちゃんとしないのか。その徹底的な原因究明ってやつを求めずにはいられない体質。。。そのわりに、自分の半端な人生経験の中で手に入れた、たいしたこともない価値観に照らし合わせて事の善悪を手前勝手に決めてしまうんだよなあ。挙句に…勝手に熱くなって、あとになれば顔から火が出るほどの勘違いの末、まるっきり見当はずれなアドバイスや行動で、正義の味方の使命を果たした達成感に酔いしれる。。一緒やわあ。

    だから人生50年を過ぎてようやく、自分がいなくても世界は回ることに気づかされ、沖縄に強く惹かれている。てーげーでゆるい時間に浸りたい。そうして生きることがとても大切なことだと思うのだ。

    作者は作品の中で、あるひとつの職業に焦点を当てて描くことが多い。職業は人の拠り所なのだそう。その拠り所を捨てたいと思う私には耳が痛い。

    それにしても坂木司さんは食べ物をおいしく描くのがうまいなあ。ポーク、いわゆるスパムが何度も登場するけど、あれくらい凄い食材ってないんだよなあ。シンプルで体には良くなさそうだけど、スパムにぎりなんてもう、やみつきだもの。

    なんだかスピリチュアルな視点からの沖縄を描く作家さんが多いのに、「初めての取材旅行に行けるかも!」って動機で沖縄を舞台に選んだ作者のゆるさが、この作品の楽しさと味わいなんだと思う。

    シンデレラ・ティースも読まなくちゃ、ね。

  • 石垣島のホテルにバイトに来たはずが、
    あまりに役立つがゆえに、那覇のホテルの手伝いに行く羽目に。
    しかもそこはあまりにもいい加減な、ラフなホテル。
    オーナーは姿を見せず、オーナー代理は全く頼りにならない、
    掃除の二人はお年寄り、頼りになると思った同僚は早々に旅立つ。
    唯一料理がおいしいのだけがとりえだと。
    沖縄の時間の流れに身を任せつつ、お客様や出会った人たちが
    持ち込んでくる謎と、主人公の成長を描いている。

  • 那覇の安宿でリゾートバイトする女の子の話。
    ひと夏の経験として慣れない観光地でバイトするっていいな。
    私もやりたかったな。うらやましい。
    オーナー代理をはじめとするサブキャラ達もみな良い味出してて面白かった。
    沖縄が恋しくなった。

  • 『シンデレラ・ティース』のサキの親友、ヒロちゃんが主人公。
    サキとヒロの会話が、『シンデレラ・ティース』ときちんとリンクしていて、「あのときのヒロちゃんのメールは、こういう背景があったのか」とサキ目線からも楽しめた。

    真面目で、不正が大嫌い、白黒つけなきゃ落ち着かないヒロちゃんが、沖縄独特のゆるい雰囲気の中で、グレーなこともある、正しくないことでも認めてあげる、ということを経験して、心を強くしていく。

    将来どうするのか、どうしたいか…と、これからヒロちゃんは悩むだろうけど、何でも器用にこなせて素直なヒロちゃんは、さらに成長して素敵な女性になるんだろうなぁ。

  • 沖縄那覇が舞台、主人公は大家族の長女として育ったかなり真面目でしっかり者の女子大生ヒロ。ひょんなことからきたばかりのアルバイトなのにひとりでホテルをきりもりするハメに...^^;。小説の中で出てくる様々な沖縄の料理や食べ物が美味しそう^ - ^。比嘉さんのボロボロジューシー食べてみたい〜。

  • ちょっとおもしろかった。

    正義感が強いしっかり者のヒロちゃんの成長物語。長女特性を全面に強調するも、長女関係なくない?と思う面も多数。自分の正しさを頑なに信じ、まぁまぁ上から目線のヒロちゃん。

    ゆるーく優しい時間、だらしなくもあったかい人たち、強く吹く風。沖縄、一度は行ってみたいなぁ。

  • シンデレラ・ティースのサキちゃんの物語と並行して、ヒロちゃんはこんなふうに過ごしていたのかと、楽しく読みました。
    英語通訳をこなし、コーラとファストフードをたいらげるおばあ達がかっこいい。

    「動物園の鳥」に登場した「松谷さん」が「こんにちはセット」とともにこんな所に!
    ハチのマークの宅配便の支店もあるのね!
    他の作品たちを思い返せる小さな喜びも隠れています。

    明日から、少し、肩の力を抜いて生きていけそう。

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