二度はゆけぬ町の地図 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 502
レビュー : 75
  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943869

作品紹介・あらすじ

中卒で家を出て以来、住み処を転々とし、日当仕事で糊口を凌いでいた17歳の北町貫多に一条の光が射した。夢想の日々と決別し、正式に女性とつきあうことになったのだ。人並みの男女交際をなし得るため、労働意欲に火のついた貫多は、月払いの酒屋の仕事に就く。だが、やがて貫多は店主の好意に反し前借り、遅刻、無断欠勤におよび…。夢想と買淫、逆恨みと後悔の青春の日々を描く私小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 先日、友人の古本屋の店主と話している中で
    「お前みたいなのは西村賢太を読め」というようなことを言われた。
    西村賢太とは先日芥川賞をとっていきなり時の人となった、ちょっと風変わりな私小説家であることは知っていたけれど、まだ彼の文章をいちども読んだことはなかったので、文庫になっているのはあるの?と聞くと一冊だけ角川文庫で出ているのというのでさっそく買ってきて読んだ。

    くだんの古本屋は「お前の好きな村上春樹の対極に位置するような作風」と言う。そういえばこの間某人気ブロガーさんが村上春樹の対極が角田光代さんの世界だとか書いていたような気がするが。
    まあ、対極というのは360度いずれにも位置できるわけで、ひとそれぞれいろんな感じ方があるね。

    結論から言えばこの西村賢太という作家のどこがどう評価されているのか、ワタシにはさっぱりわからん。
    単にココロの極端に弱い、言い訳と責任転嫁となげやりで捻くれた精神のどうしようもない救いようの無い男が、赤裸々に自分の生活をいささか鼻につく近代文学調な書き方で書きなぐった、個人的には正直読むに値しないと思えるような内容だった。
    果たして芥川賞を受賞した「苦役列車」がどんな作品なのかはわからんけれど、まあ、もういいです。

    朝吹真理子さんもさんざん並んで写真撮られて災難だったでしょうなぁ、と。

  • 西村賢太の作品は、『苦役列車』に続いて2作目だが、本当に面白い。貫多の酷さは『苦役列車』を上回っている。せっかく雇ってくれた酒屋の店主を裏切るわ、好意的に接してくれた家主の老夫婦をナメて家賃を滞納し、挙げ句催促されると逆恨みして、孫娘を犯すと呪詛の言葉を吐くわと、きりがない。本当にどうしようもないやつで、下品極まりない表現ばかりだがそれが最高に笑える。やっぱり西村賢太の小説は面白い。

  • 買淫のことを公衆便所的な薄汚さと形容してた。

    小心者で逆恨み甚だしく、人を人として見ないサイコパスのような側面も、その後後悔してシュンとなる側面も全てがこの上なく「人間らしい」。

    これだけ自分のことを客観的に理解しているのにそれでも一般的に良いとはされていない行為を取るのは自分のダメ人間ぶりを責めてラクになりたいからだろうか。

  • 知り合いの芸術家がSNSで絶賛していたので読んで思った。
    「なるほど、僕は芸術で食べて行けない訳だ。」と。
    度を超えたクズっぷりとそれを書ききる才能、そのどちらも自分には無い。
    嫉妬した。

  • 面白い。兎に角、貫多のクズっぷりが素晴らしい。著者の卓越した文章力と類まれな用語センスが相まり、どうしようもない人間の底辺も底辺な負の感情を、嫌悪感を超越した、大正や昭和初期のような雰囲気を持つ回顧主義的作品に仕上げている。赤塚不二夫作品のような、古めかしくもナンセンスでエキセントリックな、日常を描いているが非現実的物語といえばよいか。「どうで死ぬ身の一踊り」と比べると文学性はやや劣るが、漫画的な私小説の面白さがある。

  • 「二度はゆけぬ町の地図」西村賢太
    読み終わりました

    二度はゆけぬ町の地図という一つの物語ではなくて、短編4つの構成になっていた。
    西村賢太といえば、テレビやネットで見た印象では、あまり清潔な作風ではないのかなという感じを受けたのだが、例に漏れず本題や短編のタイトルどおり、どこか気味の悪い作品だった。
    だからといって作品が面白くないわけではなく、薄気味悪さ、不気味さなどがある中でも、所々に笑える部分があったりなど、サクサク読み進めることができた。

    内容は、ふしだらな生活を続ける男の生活を描いたものである(西村賢太自身を投影している?)
    典型的なダメ人間である主人公が日雇いで稼いだお金をその日で使い切り、家賃を払わなかった(払えなかった)り、バイト先の先輩を殴って留置所いきになったなどクズさがいかんなく表現されているこの作品はなんとなく本質的な部分で真面目系クズである自分に似ているなと思った、もっともこの作品の主人公はクズ系クズと表現するのが妥当であると思う。

    なかなか面白かった、西村賢太の違う作品も読んでみることにする。

  • 短篇集。しかし不潔で臭いのしそうなエピソードばっかり集まっている気がした。どうしようもない怠惰でクズな主人公という風に見せているが、けっこう自分のことをここまで客観的に書くことは難しい。露悪的な感じはあるが、ごまかさないでさらけ出している。読者は彼のナルシシズムや身勝手さを完全に否定出来ない。
     ふと思ったが、彼の作品は結局は、自業自得・因果応報という世間の思いにそった終わり方をするのが人気の原因かと。読者も主人公のことを完全に突き放せない状態のままで、主人公にふさわしい顛末を迎えるので他人ごとではなく身につまされる読後感を抱くのではないかと。

  • 主人公が「私」である時と「北町貫太」である時の違いは何だろう?

    性欲が強くて、器が本当に小さく、すぐにキレる人の物語。「自分のことを棚にあげる」主人公が、「自分のことを棚に上げる他人」を口汚く罵るシーンに期待してしまう。

  • 西村賢太の作品は最悪に面白い。内容はこのうえなく下品で最低、結末も救いの無いものが多い。ところが妙に知性を感じさせる文体、淡々とした描写が一種ユーモアじみた趣を醸し出し、不快とも爽快ともつかない不思議な読後感を残してくれる。更に掘り下げたい作家。

  • 病的にクズ過ぎて、もはや愛しいレベル。

    女子としては、自分のセックスにちょっと自信がなくなるし、ちょっと傷つく。

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著者プロフィール

1967(昭和42)年7月12日、東京都江戸川区生まれ。中卒。新潮文庫、及び角川文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』、角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』、講談社文芸文庫版『狼の吐息/愛憎一念 藤澤清造 負の小説集』を編集、校訂、解題。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『暗渠の宿』『二度はゆけぬ町の地図』『瘡瘢旅行』『小銭をかぞえる』『随筆集 一私小説書きの弁』『人もいない春』『苦役列車』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『一私小説書きの日乗』(既刊六冊)『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集 一私小説書きの独語』『*(やまいだれ)の歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『藤澤清造追影』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『羅針盤は壊れても』などがある。

「2019年 『瓦礫の死角』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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