バイロケーション (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943876

作品紹介・あらすじ

画家を志す忍は、自分と同じ人間が現れる奇妙な事態に遭遇。同じ境遇で悩む人々は、それをバイロケーションと呼んでいた。新たな二重存在を提示した、第17回日本ホラー小説大賞長編賞受賞の新感覚ホラー!

感想・レビュー・書評

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  • オリジナルである自分、バイロケーションと呼ばれる自分。
    自分ではあっても自分ではない存在。
    もしもその姿を目の当たりにしてしまったら、精神的に受けるダメージは想像もできない。
    自分だったら・・・そう考えると、見なかったことにしてしまいそうだ。
    それでも実際に被害が及ぶようになったら、どんな解決方法がベストだと言えるのだろう。

    幸せな新婚生活。
    突然現れたもうひとりの自分。
    そして、少しずつ蝕まれていく精神。
    崩壊していく幸せな生活と、転落していくだけの人生。

    人生なんてちょっとした出会いや機会から変わっていくものなのかもしれない。
    そのときは気がつかなくても、人生の分岐点に立っていることがきっと何度もあるのだろう。
    バイロケーションの存在の怖さよりも、徐々にかけ離れていくオリジナルとバイロケーションの生活の違いが怖かった。
    頑なな心は、人を幸せから遠ざけてしまう。
    程度問題ではあるだろうけれど、殻に閉じこもっていては幸せはつかめないと言われているような気がした。

  • 一気読みしてしまった。

    ドッペルゲンガーと似て非なるバイロケーションという
    設定は、突っ込みどころもなくはないけど
    少なくとも作中一貫してブレずに小説の土台として
    このネタを余すところなく使いきっているので
    自分としてはこういうものだと納得して読めたのが
    読後の満足感につながっている気がする。

    こういう新設定は往々にして破綻しがちなんだけど
    最後まで「やりきった」のを素直に賞賛したい。

  • 実はホラーミステリー。
    設定がおもしろそうで購入。オチは期待外れの気もしましたが、ラストは…多少予測どおりとはいったものの、なかなかおもしろかったです。

    途中、まわりくどいとかいうか、スッキリしないというか。伏線張りきれてない感じはありましたが。

    読みどころは、この“もうひとりの自分”という現実離れした状況からの、実は奥深い衝撃的な結末。
    よくあるホラーのただ怖いということではなく、人間であるからこそ・感情があるからこそ、恐ろしいということ。
    幸福は共有できない…でも苦しみは共有してもらう。
    まぁ所詮、現実の世界ではあり得ない。なんて思っていたけれど、読み終わってふと…
    この苦しみや苛立ちの種類は、認知症とか精神病とか脳疾患を抱えている人の苦しみに近いのかもしれないと気づかされたら、私にとってはただのホラーミステリーではない特別な一冊に。

  • 手に汗を握って、というわけではないが、一気に読ませる筆力はある、この先の化け具合が楽しみな作家。
    後半でオチがなんとなく見えてしまい、驚天動地なカタルシスはなかったけれど、安易なハッピーエンドで終わらせないところに非凡を感じる。このエンディングゆえに忘れがたい作品となるのでは。

  • 「分身の恐怖」
    自分が増えると楽になると思ってる人。
    それは間違いですよ。
    不幸が二倍になるどころが、
    二乗も誇張ではない。
    自分が消されるかもしれない恐怖もあるしね。

  • これは一気に畳み掛けて読んだ方が良かった!
    しまった〜忙しくてちょこちょこ読みしか出来なかった事に後悔。

    読んでる間は頭こんがらがってて楽しかった。そしてこのオチ、最高です。

    絶対に再読する本。
    満足しました。

  • 自身と同じ容姿、行動を取るもう一つの存在「バイロケーション」。 いつの間にか顕れ、そして消えていく自分のコピーを目の当たりにし恐怖に怯える主人公・忍。 突然訪れた日常の破綻に手を差し伸べてきたのは同じくバイロケーションに悩まされる人達で組織された「会」彼らはバイロケーションの存在の抹消を目指していた。

     自身とは別の二重存在をテーマにしたSF小説であるとともに、不気味な存在を示したホラー小説である。 そして「会」という謎の存在、彼らはバイロケーションに対して志同じはずなのだが・・・? SF、ホラー、ミステリどれをとっても面白い傑作。

  • 〜じゃ
    と話す老人とか
    主人公の性格の悪さとか
    なのでの多用とか
    なぜ浜松ばかりとか
    いろいろ気にはなるが
    まあ楽しんだ。

  • 榮はなんだかんだでいい奴なのだろうと予想していたから、最後は驚いた。本当に忍たちのことを研究対象としてしか見ていなかったんだろうな。飯塚は被害者たちの気持ちを汲み取れない、ただの残念な男だが、榮はそれらを理解した上で立ち回ってる。本作一番の邪悪だった。

  • 映画を観てから読んだのでどっちが本物か偽物か読み返す事なく内容が入ってきた。もし観ていなかったら一日で読みきれなかったと思う。

    偽物が悪者と思ってしまうけど、本物でも悪者になるんだなぁとの感想と映画の方が映像の暗さのせいかホラーっぽいと思った。

  • これはホラーというよりはSFミステリーですね。設定は嫌いじゃありません。どっちかっていうと好きな方。でも後味悪いなぁ。

    ずっと気になってたのは、本体が死んだらバイロケーションも存続しないだろうから、殺し合うのは違うかな?と。ま、バイロケも自分が本体だと思ってるからなんだろうけど。

    あと、バイロケーションって言葉に凄く違和感を感じる。超常現象用語なんだろうけど、現象はバイロケでも、自分のドッペルゲンガーをバイロケって呼ぶのが気持ち悪かった。これは私の慣れの問題だけど。

  • 飯塚氏が胸糞。
    かつての悲劇的な結末をやり直すために主人公に犠牲を強いるのか?

  • バイロケーション
    201005読了。
    今年77冊目今月2冊目。
    #読了
    #バイロケーション
    #法条遙

    映画未視聴。
    もう一人の私、バイロケーション。
    設定面白いから、ホラーよりだけどもっとミステリに寄せられそう。

    重なる秘密に、募る違和感。
    ちゃんと読んでいれば伏線は沢山ある。

    どうにも、主人公の性格がなかなかきつい。

    映画の方が評価が高いらしい。

    途中までは傑作を疑うことなく読み進めていたが、最後に失速した感じ。

  • 設定がかなり強引な気がした。
    いろいろ都合良く決められている。
    途中、かなりこんがらがってきたけど、ちゃんと最後に謎解き(?)があって、ああ、そうなのかと納得したようなしないような。
    でも、面白かったか面白くなかったかと訊ねられたら、面白かったと答えると思う。
    続編があるみたいなので、そちらも読んでみたい。

  • バイロケーションというドッペルゲンガーの現れる一つの現象を扱ったSFホラーミステリ。特にバイロケーションの設定が面白く、全く同じ記憶を持った自分が現れることの影響や、日常生活に与える不利益などを非常に分かりやすく伝えており、ホラー特有の日常に潜む恐怖という点はクリアしている。記憶が同じ存在の差異を見つけるための策などもよく練られている。可読性も高く、淀みなく読めた。展開の予測のつかなさやテンポなどもよく、結末の理不尽な感覚も作者の持ち味が出ていて素晴らしいが、全体的に細かな設定を積み上げたせいか、やや小ぢんまりと纏まってしまったのが惜しまれる。主人公の独特の境遇も仕掛けを予期はさせるが、真相は予想外ではあった。

  • 「もうひとりの私」が存在する?「バイロケーション」という現象に巻き込まれ、困惑する彼らが集まる「会」とは?ホラーというよりは、SFミステリ。ラストにかけての真相はなかなか面白かった。西澤保彦、ただしダークなしみたいな感じかも。こういう系が好きな人なら楽しめると思います。主人公の感情はちょっと苦手だったけど、次回作にも期待。

  • ジャンルはミステリ寄りのホラーだけど別に怖くはない。実際にバイロケーションが出たら恐ろしいとは思うが、うまく共生できれば二馬力になるかも…と思ったり。
    結局バイロケってなんなのかとか、警察はどうなったのかとか、飯塚の立場とかよくわからないまま終わった部分も多い。オチの展開も早々に読めてしまう。加納が殺された辺りが盛り上がりのピークだった。飯塚に護衛をつけられた辺りの忍は、見張られているというストレスはわかるものの、守ってもらって?もいるのに不満ばかりで、自分ではなにもしないくせに当たり散らして見ていていらっとしてしまった。最後まで本物の忍はいいとこなしだったし。

  • 設定とか面白いと思うし、読んでるときの違和感はなるほどこーゆーことだったのかと思えるし続きも気になり一気に読んだのだけど、なんか浅いんだなぁ。作者の力量のせいか。

  • SF的アイデアと結末の意外性は面白いと思うけど、作者の筆力が追いつかないのか、どこか物語が白々しく感じた。

  • ある日突然,自分にそっくりなバイロケーション(ドッペルゲンガみたいなもの)が現れることで,生活が一変してしまう話。
    登場人物の設定が結構無茶だが,それでも全体としてはよかった。ホラー作品では久々のアタリ。
    ヘンに正体解明とか対決に走らず,切ないラストに持っていったのがよい。

  • 2014.8.8読了。
    この人の作品はリライトを読もうと思って、なかなか読めなくて、リライトには続き(リビジョン?)があると知って、とりあえずじゃあ続きがあるかは知らないがこれを読もうとなった。
    内容は面白かったが、素人が読むと頭がこんがらがりそうになって、消化不良とまではいかないまでも、ストンと腑に落ちてすっきりとしない感じがする。一度最後まで読んでから、全容をざっくり把握してもう一度最初から読むと、より楽しめるのではないかと思う、というか実際にしてみようと思う。
    やっぱり最初にバイロケーションを見たアンリスでの場面が、最初ということもあって一番インパクトがあり面白かった。

  • 複雑なストーリーで、なんで?なんで⁇と思いながらどんどん読み進んでいました。ホラーのくくりですが、怖くはないです。
    おもしろかったんですが、最後は悲しいですね。映画だったら泣いてしまいそう。

  • ホラーや! 途中でからくりは分かったけど、結末はあんまり予想してなかったなぁ。まあ、予想通りとも言えば言えるんやけど。ホラー要素の怖さが勝ちました。

  • ドッペルゲンガーとか分身的な存在、バイロケーションを巡るお話。ジャンルはホラーだけど中身はホラーというよりミステリな感じ。

    ホラーというジャンルにしては、設定が細かく、超常現象への恐怖というより、それに対するそれぞれの考え方に焦点を当てている様に感じた。

    読んでいるうちに語り手や登場人物達が本体なのかバイロケーションなのかわからなくなってくる。
    どんでん返しの連続なので、ドキドキしながら読めた。(実際に現れたらたまったもんじゃないし)
    作者的にも内容的にもオチは読めていたが、それでも切ないラストだった。


    買ってからしばらくしたら映画化した。映画版は色々設定がホラー寄りに変えられてるらしい。

  • 角川ホラーからの刊行ですが、めっちゃミステリー。

    とういえば映画化してなかったっけ?その後話題を聞かないということは失敗したのかしら??

  •  ネタバレどーんとあるので気をつけてください。
     まず始めに、えええええええそんなのありかよおおおおお!????
     いやね、ミスリードは重要ですよ勿論、じつはこんなんでしたーとかよくあることじゃありませんか。ラストも納得が行くけど哀しいというか、映画の宣伝文句である、本物を必ず殺す、というアオリはあながち間違いでもなかったのだなあ、と。
    簡単に言うと、所謂ドッペルゲンガーみたいな自分と瓜二つの存在をバイロケーションというのだけれども、そのバイロケーションはオリジナルの記憶も引継ぎ現れる時間もアトランダムで私生活がぐちゃみそになっちゃうんですよ、さあどうしましょう?というお話です。
     んでもって主人公は結婚して画家じみたことをしてまったり暮らしているのですが、ある日バイロケーションに出会ってしまって、どうすべと奔走するのです。
     そしてその中で、主人公自体がバイロケーションであり、本物は結婚したこともなく処女のままで画家としてのレベルは主人公に及びもしない哀しい哀しい人間で、とりあえずゴミクズじみたものになっちゃってて、ことの真相を知らされて、すり変わりゃ万事解決なんすよどーすか!?と言われて、ふざけんなあたしよりなによりも上にいきくさった人間に屈しろとかあたしである必要性なんかねーじゃねえか!とブチ切れて自殺しちゃいました。オリジナルが死んだので勿論バイロケーションも死にます。旦那はなにひとつ知らないまま、いきなりいなくなったバイロケーションを呼び続けるのです。
     むなしー。
     そりゃ、旦那はなにも知らないのだから、バイロケーションの代わりになればどうにでもなるのかもしれないが、それはオリジナルがなにひとつ関与してないものであって、それの代わりをしろったってしたいわけがねーよ。しかも入賞とかなーんにもとったことがなく決死の思いで送った作品が実のところバイロケーションが描いたものが入賞し自分の作品は一次予選ですっ転んでたなんて、そりゃープライドはズタボロ、自分の存在価値はズタボロ、死ぬことしかえらべないに決まってるべや。

  • 映画を観て面白かったので、原作も買ってみました。
    バイロケーションとは同時局所存在ですが、人が持つ相反した感情が人格を分裂させるのはよくあることで、ホラーでありながらも、ヒューマンな側面もあると思いました。
    人の弱さと少しの優しさが心に沁みました。自分の心の葛藤と向き合い、どんな感情も大切にしたいと感じた小説でした。

  • 映画のCMを見て興味を持ち読んでみました
    CMだとホラー系なのかなと思っていたが、読んでみるとそんなことはなく怖い系というよりも超常現象系なのかなと思いました。
    自分は読み進めていくうちにこの主人公はオリジナルなのか、それともバイロケーションの方なんじゃないか、と思い、途中で混乱していました(笑)
    ただ、比較的ラストを予想しやすい作品だと思います。
    少しひねくれた作品を好む人には合わないかもしれないです

  • もう一人の自分、バイロケーション

    いわゆるドッペルゲンガーとの恐怖と戦いを描いた作品です

    話の展開も早く、主人公の心情もストレートに描かれていて
    スラスラと読める作品でした

    大きな驚きや予想外な展開があまりなかったのがちょっと残念

  • ホラーというより、ミステリー色が強かった印象。まぁ文章だからそう思ったのかもだけど。あと悲しい話だなと思った。途中ややこしかったけど、てか今も腑に落ちない部分もあったけど、読み応えあった。なので読むのに体力いる。自分の偽物を殺す為に本物が死ななければならないなんて。偽物も本物考えていることがわかるから、最後かわいそうだなと思った。でも自分の偽物が自分より幸せを手にしていたら...俺は解り合えるか?やっぱり許せないかな?映画はどんな感じなんだろう。

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著者プロフィール

1982年、静岡県生まれ。『バイロケーション』で第17回日本ホラー小説大賞長編賞受賞。

「2010年 『バイロケーション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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