少女禁区 (角川ホラー文庫 は 3-1)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943883

作品紹介・あらすじ

15歳の「私」の主人は、数百年に1度といわれる呪詛の才を持つ、驕慢な美少女。「お前が私の玩具になれ。死ぬまで私を楽しませろ」親殺しの噂もあるその少女は、彼のひとがたに釘を打ち、あらゆる呪詛を用いて、少年を玩具のように扱うが…!?死をこえてなお「私」を縛りつけるものとは-。哀切な痛みに満ちた、珠玉の2編を収録。瑞々しい感性がえがきだす、死と少女たちの物語。第17回日本ホラー小説大賞短編賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。
    「少女禁区」
    恐怖を前面に押し出す、いかにもなホラー小説ではない。
    すこぶる日本的な恐怖が丁寧に描かれている。
    見えずとも触れずとも感覚として感じることができる恐怖は、目に見えるものよりもはるかに恐怖感を増幅させるような気がしてならない。
    古来より人と違う能力を持つ者は崇められて権を手にするか、蔑まれ疎まれて排除されるか。
    どちらかしかないように思う。
    人ならぬ能力を持つ者は、理解されることは少ない。
    まして現代のように情報が飛び交う時代ではない。
    人々は少女を怖れ遠ざけようとする。

    物語の持つ空気感が好きだ。
    ホラーとは言い切れない、何とも言えない居心地の悪さが蜃気楼のようにかすんで見えている。
    そんな物語だった。
    主人公が少女に傾倒し、やがて精神的にも依存していく過程こそが恐怖なのかも・・・とも感じた。
    人によって好き嫌いがわかれる物語なのかもしれない。

  • 伴名練先生、デビュー作から既に良い!
    これ二編ともどこかに再録とかされてないんだよね?もったいなすぎる!!

    「chocolate blood,biscuit hearts. 」
    親の呪縛から逃げられない姉弟をヘンゼルとグレーテルになぞらえて、でも本当の魔女は……みたいな。
    話としての面白さ自体は「あぁ、初期作品だなあ」って印象ではあるんだけど、姉と弟の歪んだ関係性が好……良……って感じで個人的にかなり好みです。

    「少女禁区」
    本のタイトルとしてはこっちのが目を引くけど、物語のタイトルとしては元の「遠呪」のほうが合ってる気がする。
    痛みでだけ繋がるふたり、良いよね……。
    読み終わってから時間が経てば経つほど思い出しエモでじわじわ良い……ってなってます。好き。

  • 「お前が私の玩具になれ。死ぬまで私を楽しませろ」
    主人公の「私」の主人は、数百年に一度といわれる呪詛の才を持つ美少女。私はその少女に、あらゆる呪詛を用いて玩具のように扱われる……。

    読んだ当時、呪術廻戦を一気読みしていたので呪術繋がりで選んでみました。
    苦しみに満ちた少女たちの生と死。世界と世界をつなぐ歪なそれは、きっと”愛”に限りなく近いんだと思う。

    現在ホラーやSFなど多数執筆している伴名練さんのデビュー作で、面白かったです。

  • なんだか乙一っぽいな~という感じです(良い意味で)
    乙一好きな人には、おすすめかもしれません。
    作品タイトルの少女禁区ですが、他の方のいうように「遠呪」のほうがしっくりかもしれません。
    たしかに、少女禁区といえばそうなのですが…

  • 3時間くらいでさくっと読める表題作含む2編。ホラーとして賞を取ったようだけど、怖いことはなく、普通に読んで楽しめる。

  • 若くないせいか、少女漫画のようなラノベのような展開に戸惑ってしまった。
    ホラーよりでは無かったのも残念。

  • 本作が出た頃くらいから(時期は定かじゃないですが)、角川ホラーがラノベ寄りになっていった印象です。
    ライトノベルが悪いってわけじゃないですけど、やっぱりホラーはずっしりとくるのが読みたい。

    でも、少女禁区は読みやすさが悪い意味での『軽さ』になっていない、稀有な作品でした。
    オチには少し胸焼けしそうでしたが、たまにはこういうロマンスもいいね。

  • 二編収録。「chocolate blood, bisuit hearts.」は父親に支配された生活を送る姉弟が支配から抜け出して……という話。メディアへの私生活の公開という、現実世界のtwitter→動画公開の先に待っている……というような、ある意味ホラーな展開がこわ~。「少女禁区」は呪いによって育ての親を殺したと言われる少女に呪われた少年の話。恒川光太郎をライトノベル化したような感覚だった。乙一もちょい近いかなあ。ダークな味が好きなライトノベル読者ならおすすめです。

  • 完全にタイトル&表紙買いの一冊。
    第17回日本ホラー小説大賞短編賞授賞の表題作ともぅ一編収録。この年は映画化された『バイロケーション』が長編賞取った年なのね。
    先に収められてるのは、「chocolate blood,biscuit hearts」。近未来を舞台とした短編。厳格な父が、一代で築いた巨大企業を相続した姉弟の物語。タイトルにもあるように、スイーツ関連の小道具、描写、比喩。オチはやや、ビター。
    一方「少女禁区」は呪詛の村に生まれた数百年に一度の才を持つ美少女の話。ツンデレ&ドS系。オチは甘口。
    両作品ともに主人公はミドルティーンで、ラノベでも通用しそうな設定ではあるが、まるで異なる舞台で描かれている。
    「chocolate blood,biscuit hearts」★★★☆☆
    「少女禁区」★★★★☆
    の総合★★★☆☆って感じ。
    長い黒髪、黒い和装の美少女に「お前がわたしの玩具になれ。死ぬまでわたしを楽しませろ」何て、オッサン言われたら……(以下、割愛)。

  • この小説を一言で表現するなら、歪んだ愛、と言う。
    chocolate blood,biscuit heartsは、父の幻影から逃げることができない姉弟を、表題作の少女禁区は呪詛使いの少女と男を描く。
    面白い、とは思うものの、読後感は個人的には複雑。
    どちらかといえば少女禁区が好きだが、DVに代表されるような感情なのか、私としては理解に苦しんでしまう。
    感情移入、ではなく、距離をおいて鑑賞するような小説。

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著者プロフィール

’88年生まれ。’10年「遠呪」で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、受賞作を改題・改稿した『少女禁区』でデビュー。編書に「日本SFの臨界点」シリーズなど。最新作は『なめらかな世界と、その敵』。

「2022年 『ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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